カエルくん(以下カエル)
「それでは2017年度9月のおすすめ映画ランキングです!」
亀爺(以下亀)
「まず、ここで1つ大きな発表があるぞ」
カエル「発表? 何、聞いてないんだけれど……」
亀「今月はランキング記事ではあるものの、明確にランキングをつけずに5選という形になっておる」
カエル「……え? 毎月書いているのに?」
亀「詳しくはこれから発表する作品を見て貰えばわかるが、多種多様な作品が並んでランキングをつけることが不可能だという判断に達したからじゃな」
カエル「……毎月のことじゃない? それ?」
亀「先に言っておくと……今月は5つの作品に絞るだけでも大変じゃった。
正直なことを言えば、毎月15作品前後を鑑賞しておるがの、実はTOP5を組むのも大変な月もある。個人的な趣味もあるじゃろうが、やはり当たりと言える作品ばかりを引くわけではないからの」
カエル「以前にも話したかもしれないけれど『好きじゃないけれどうまい作品』とか『うまくないけれど評価しなければいけない作品』などもあるって話だもんね」
亀「実は5位はすでに決まっておって、むしろ4位が決まらずに2作品からどちらを残して、どちらをランキングから除外するか……と考える時もある。
やはり『好き』と『うまい』と『先進的、挑戦的』など、様々な評価基準がある中ではランキングをつけることは簡単ではない、ということじゃの」
カエル「……じゃあやめたら?」
亀「やめてしまったら、何よりも本人が鑑賞した映画を覚えていられんじゃろう」
カエル「公開しているメモ帳みたいな扱いでもあるんだね……」
亀「今月はその基準が全てバラバラな作品が続いておる。
では、5選記事のスタートと行こうかの」
対象作品
9月公開作品
記事にした作品
以上12作品
(パーフェクトレボリューションは10月1日に鑑賞したので来月に回させてください。これ以上惑わせないで!<切実!>)
記事にしていない作品
禅と骨
あしたは最高のはじまり
レゴ(R)ニンジャゴー ザ・ムービー
ソウル・ステーション/パンデミック
以上4作品
(レゴとソウル・ステーションは書く予定です)
公開3カ月以内のノミネート作品
『わさび』『春なれや』『此の岸のこと』 (外山文治監督作品集)
以上の18作品がノミネート作品になります。
数としては……こんなものかな?
ちなみに9月公開分では
『サーミの血』
『望郷』
『わたしたち』
『ドリーム』
なども引き続き鑑賞候補には入っていますが……行けるかなぁ?
単館系は時間が作りづらい……
1作品目
わさび
カエル「この作品はちょっと異質だよね。何せ30分弱しかない短編映画であり、公開時は外山文治監督の他作品と同時に3作セットで公開されていて」
亀「今月の評価が難しかった要因の1つが本作じゃな。
30分の映画を他の映画とは同じように語ることはできんかもしれん。しかし、本作の持つ味というのが日に日に深くなっていき、さらに重要性を増していった作品じゃ」
カエル「主演を務めた芳根京子の存在感が圧倒的、今年の主演女優陣でもかなりの上位に位置する演技だったと絶賛していたもんね」
亀「高校生を題材にした映画となると、やはり明るい、青春万歳! というような作品も多いじゃろう。しかし、みんながみんなそんな青春を謳歌できるわけでもない。彼女の与えられた環境はとても辛く、苦難の道でもある。
それを回避するという選択肢もあるが……その道もまた別の苦難がある。割り切ることができたら簡単なのじゃろうが、そうもいかんからの」
カエル「作中で彼女が告げる『もう詰んでんだよ』ってセリフがあるけれど、このシーンが本当に胸に刺さって……その時の表情と、その後のドラマを思い返してもなんとも言い難い葛藤とか、せめぎ合いというのが感じられるよね」
亀「人生にはどうしようもないこともある。そして、苦難とわかっていても、間違っているとしても選ばなければいけない道もある……かもしれん。特に10代の若い少年少女がその道を選ぶというのは、とても辛いことでもある。
しかしだからこそ、そのような状況でも必死に足掻く姿が胸に刺さるのじゃな」
カエル「公開規模小さくて、ソフト化するかもわからないような鑑賞するにはハードルが高い作品だけれど、ぜひ機会があれば鑑賞してほしい1作です」
2作品目
新感染〜ファイナル・エキスプレス〜
カエル「9月でもかなり話題になって、評価も高い1作だね。韓国映画らしくエンタメ性に優れていて多くの人に楽しめるように作られていて、しかも色々な読み取り方ができるように作られているというね!」
亀「わしなどは、この作品を『面白い作品』ではなくて『うまい作品』としてみておった。
ゾンビものというB級作品も多い分野であり、しかも手垢のついたようなジャンルでもありながらも、電車という限定的であり縦の空間を最大限に発揮しながらも逃げ回るという意欲的な設定に加えて、様々な登場人物たちの性格付けであったり、メッセージ性や映像の迫力など、深い作品に仕上がっておった」
カエル「単なるホラー映画や娯楽作品ではない、それこそロメロ監督が最初に目指した『ゾンビとは何か?』ということもしっかりと意識した作品だったね」
亀「わしは韓国映画はエンタメ性に優れており、メッセージ性や暗喩も素晴らしいものもが多くケチがつけづらい作品が多いが、いかんせん型にハマりすぎている傾向があると思っておる。本作もそれはあり、少し過剰だったり、お約束の展開が過ぎると思う部分もあったのじゃが……そんな不満すらもかき消してしまうほどに優れた作りこみをした作品じゃったな」
3作品目
三度目の殺人
カエル「この週は本当に素晴らしい作家性の尖った作品が多かった!
多分人によっては『ダンケルク』を応援したり、『散歩する侵略者』の方がいいという話になるだろうけれど、うちは三度目の殺人が飛び抜けていた! という評価だったね」
亀「しかし、この作品も賛否がはっきりと分かれたようであるの。困惑させるような作りでありながらも、しっかりと見ればなんとなくわかるようにできている作品でもありながら、やはり煙に巻く描写もあり……と見れば見るほどによくわからなくなる不思議な作品であった。
人によってはやはりあの人が犯人であると思っておるのかもしれんが、そうかもしれんし、そうでないかもしれんという玉虫色の回答をせざるを得ないからの」
カエル「法廷劇というと『異議あり!』なんて言って、裁判でひっくり返るような印象があるけれど、実際は事前に会議をして争点を確認して、しかも司法経済などを意識しながら進めていって……実は、もう裁判前にはある程度の流れが決まっているということもあぶり出した、社会派の側面を備えた作品でもあったね」
亀「法廷は真実、真相を暴く場所だと考えておる人も多いじゃろうが、実際はそんなことはない。やはりある程度の証拠に基づくストーリーが形成されており、その筋書きに沿って進行しておる。
誰も神ではない。だからこそ、真実は全くわからない。自白は限定された状況でなければ証拠として扱われない(自白法則)というが……やはり自白は今でも強い証拠能力を有しているということになる。
結局、容疑者の口八丁、手八丁によっては様々な展開を迎えてしまうということじゃろうな」
4作品め
劇場版 響け! ユーフォニアム 届けたいメロディ
カエル「京アニの大人気シリーズのテレビアニメが再編集されて、劇場公開された作品だったけれど、本作は圧倒的なクオリティを誇っていたね!」
亀「この作品はご存知の方も多いじゃろうがテレビアニメの2期をまとめた総集編の映画である。その意味では他の作品と同一視するのはあまり良くないことかもしれん。絶賛の声が相次いであるが、わしはやはりスタートが……物語の始まりが唐突な印象を受けたこともある。
少なくとも前作の劇場版は見ていないとわからん作品であることを、どう評価するかは難しいところでもある」
カエル「一応続編の物語だからね。スターウォーズをEP4を見ないで5を見ることがいいのか悪いのか、みたいなことかなぁ」
亀「しかし、物語としてはやはり素晴らしい。
特にテレビシリーズの再構成であるが、これほどレベルの高い作品はそうそうない。劇場で見ても何の違和感もない、非常にクオリティの高い作品に仕上がっておる」
カエル「テレビシリーズも前作の劇場版を再び使ったこともあるけれど、演奏シーンは本当に素晴らしいし、しかもさらに迫力を増していて、テレビシリーズだと途中で終わった曲をフルで聞かせてくれたりもして……アニメとしても、物語としても文句のつけようがないという」
亀「実写であっても映画で演奏シーンをフルで描かない作品もある中で、3曲もフルで、アニメとして描ききったこと、これだけで歴史に残る名作かもしれん」
カエル「最近は総集編映画も単なる総集編でなく、いろいろな工夫に満ちているものがあるけれど、本作はその中でも突出した作品でもあって……」
亀「再構成も非常にうまく、久美子とあすかの関係を軸に『憧れるものへの思い』を中心に作られておる。物語も走ることがなく、モノローグで紹介することもなく、単なる総集編映画ではない。
むしろ、もしかしたら総集編映画の完成系かもしれん。
本作が残した功績というのは相当大きいものがあるじゃろう。後々歴史的な作品と言われても、わしは納得するかもしれんの」
5作品目
レゴ(R)ニンジャゴー ザ・ムービー
カエル「レゴシリーズでいうと劇場版は第3段にあたるけれど、この作品もレゴらしさに溢れながらも、それまでの物語をさらにレベルアップさせていたね!」
亀「1作目の『レゴムービー』や『レゴバットマン』もどちらも評価の高い、名作であるから相当ハードルは高くなっておる。
しかも1作目でサプライズもあり、基礎を作るという別の苦労もあるじゃろうが、基本的には自由に作ることができた。バットマンに関してはアクション映画好きであれば誰もが知るような世界的に著名なキャラクターを用いて、番外編だからこそできる物語を作り上げながらも、レゴな自由な遊び方を追求するような物語になっておる。
その2作品の後にオリジナルの物語を作るわけじゃから、かなりの難易度があるじゃろう」
カエル「特に本作はテレビでも放映されていたシリーズでもあり、初見の人が楽しめながらも、見続けていたファンでも楽しめなければいけないというハードルもあって……さらに言えば、レゴムービーが表現し続けたことを継承しながらも、新しい物語を作るという難しさもあって……」
亀「しかし、本作はそのようなハードルを全て乗り越えてしまった。
わしは過去2作よりも本作の方が好きなくらいじゃ。もちろん、名作と呼んでも差し支えない作品じゃろう」
カエル「もちろんいつもどおりアニメーションとしても傑作で、レゴを違和感なく動かしながらも、表情の変化もしっかりと観客に伝わって来るように作られていて、本当にレベルの高い作品だったね」
亀「この週公開の作品『ユーフォニアム』と『レゴ』と『ソウル・ステーション』の3作を見比べてみるだけでも、それぞれの味の違いが楽しめる上に、日本の『アニメ』とアメリカの『アニメーション』と、そして世界の表現する『アニメーション』の違いというのもわかるものになっておる。
ぜひともアニメに興味がある人は見比べてほしいの」
総評として
カエル「では、ここで総評にするけれど……
7月は夏休みシーズンに入ることもあってアニメ映画に大物であったり、傑作が多かった『アニメの7月』だったじゃない?
8月はうち向きの作品ではなかったけれど『スパイダーマン ホームカミング』『ベイビー・ドライバー』『ワンダーウーマン』などの『洋画の8月』だったと思うんだよね。
じゃあ9月は? と言うと、色々な作家性の出た『邦画の9月』だったんじゃないかな?」
亀「9月は作家性の出たいい作品が非常に多かった。
それこそ、今回の5選からは漏れた作品にも『奥田民生になりたいボーイ』や『幼な子われらに生まれ』もあったし、難はあるが『ナミヤ雑貨店』や『あさひなぐ』などは意義のある作品じゃったと思っておる。
他にも小規模公開映画でも『禅と骨』『あしたは最高のはじまり』などもあり、上記の作品は他の月であれば5選には入る作品ばかりじゃ。
もちろん、わしは合わなかったが『ユリゴコロ』や『散歩する侵略者』を評価する人もいるじゃろう。それはよく分かるし、この2作品も意義のある作品になっておると思う。
邦画があまり盛り上がってないと言われておるが、この9月だけでもクオリティは決して低いわけではないというのは、伝わるのではないかの」
カエル「そして今月が5選になってしまった理由だけれど……」
亀「やはり形式があまりにも違うことが多いの。
30分だけの短編であった『わさび』や総集編の『ユーフォ』と長編映画を比べていいのだろうか? という思いもあり……そして評価軸が自分の中で設定することができなかったからじゃな。
しかも、そのどれもが素晴らしい作品であるのは間違いないから……全てを選びたかったという気持ちが勝ったの」
カエル「……まあ、好きにしたらいいと思うけれどね」
最後に……10月公開映画について
カエル「10月も実写邦画映画では『ナラタージュ』や『アウトレイジ』などの重い邦画が続いて、この流れはしばらく続くんだじゃないかな?」
亀「一方の洋画も『猿の惑星』であったり、我らがヴィルヌーブの新作である『ブレードランナー』の新作が公開する。さすがに今月のように邦画ばかりの月にもならなそうじゃな」
カエル「そしてアニメでは『Fate』や『コードギアス』が公開されるという……毎月のことだけれど、話題作が続くねぇ」
亀「先に言っておくが『猿の惑星』はおそらく見にいかんぞ」
カエル「……まあ、9月もエイリアンを回避しているけれどさ」
亀「単純にわしは1作目からしてそこまで好きな作品ではないというのと、シリーズが多くて予習するのが大変じゃからな。さすがに、この作品を単体で評価して『わからんちん』と言ったら怒られるじゃろう。
正直言うと『アウトレイジ』も迷ってはいるのじゃが……まあ、多分行くは行くじゃろうな」
カエル「ああいう残虐描写のある映画は苦手だって公言しているしねぇ」
亀「10月は旧作の記事も増やすかもしれんの……」
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