物語る亀

ネタバレありの物語批評

映画『亜人(実写版)』感想 アクションは確かに最高! でもそれ以外が擁護できない……

カエルくん(以下カエル)

「さて、今回は原作も人気である『亜人』だけれど、こちらはアニメ版も放送していたよね」

 

亀爺(以下亀)

「実は見たことがないんじゃがな」

 

カエル「ブログを始める前は案外見ていないないアニメ映画も多いよねぇ……

 本作はなんで見ていないの?」

亀「単純にCGアニメが苦手じゃからじゃろうな。

 近年はセルルックなどを駆使した意欲的な作品も多いが……やはり癖はまだあるからの。特に従来のアニメに慣れ親しんだことに加えて、アニメ映画を多く見ていると比較対象が劇場版CGアニメになるから違和感があるのかもしれん

カエル「そりゃ、どうしたって2時間を年単位で製作する劇場映画には勝てるわけがないよねぇ」

亀「どうしてもポリゴン特有のカクカクした動きなども出てきてしまい、それが余計なノイズになってしまったり、またキャラクターが画一的で個性が見えづらかったりするからの。

 この辺りは好みの問題にもなってくるが、人物描写をCGで、しかもテレビアニメになるほどの話数で描くというのはまだハードルがあるのかもしれん

 

カエル「と言っても1話を見て『こりゃきつい!』ってなった口だから、そのあとは大分見やすくなっているのかもしれないけれどね」

亀「というわけで、この記事は原作、アニメ共に未鑑賞の意見となるので悪しからず。

 しかし、亜人自体の知名度はどれくらいなんじゃろうな? そこそこあるとは思うが……」

カエル「意外と有名だと思っていた漫画原作作品の興行成績が伸び悩んだりするからね。もちろん、知名度だけの問題ではないにしろ。

 さて、では余計なことを語る前に感想記事に入ろうか」

 

 

 

 

映画 亜人 オリジナル・サウンドトラック

 

作品紹介

 

 櫻井画門原作の同名トコミックを本広克行を監督に迎えて実写映画化。本作は劇場アニメ3作、テレビシリーズも2期も制作されており、満を持しての実写化と言えるだろう。

 主人公の亜人、永井圭を演じるのはアクションにも定評のある佐藤健、相手役の佐藤を綾野剛、女性の亜人の下村泉に川栄李奈など派手な動きができる俳優を集めている。

 またアニメ版の声優を務めた宮野真守も声の出演や、人気声優の鈴村健一、YouTuberのヒカキンなどの各業界の人気者の起用でも話題を集める。

 

 研修医の永井圭は交通事故に遭い大きな怪我を負うが、その後生き返るところを目撃されて国内3例目の亜人として国に保護される。しかし、保護とは名ばかりであり、その実態は死なないモルモットとして薬品の試験体であったり、兵器製造の実験体になるなど非人道的なものであった。

 絶望に陥る中で亜人研究所を佐藤と田中が攻撃を開始、永井の奪還を計画する……

 


映画『亜人』予告【2017年9月30日公開】

 

 

 

 

1 感想

 

カエル「では、まずはいつもどおりにTwitterの短評から感想をあげていきます」

 

 

亀「アクション映画としてはそこまで文句のない作品じゃな。

 今作はアニメ制作会社のプロダクションIGが CGの制作を担当していろうようじゃが、近年の派手な爆発などの作画で話題を集め、やはり製作するのもアクション中心の作品が多く、CGも多用して効果的に魅せておる印象があるの」

カエル「本広監督とIGといえばアニメファンとしてもやはり『PSYCHO-PASS サイコパス』を連想するよね。こちらも大ヒットしたアニメ作品で、2期のテレビアニメに劇場版も制作されるほどの作品で、本広監督は総監督として名前を連ねている。

 あとは『踊る大捜査線』などのドラマ、実写映画の印象が強い監督だけれど、実はアニメでも成功しているという稀有な監督でもあるね」

 

亀「そのIGが制作に名を連ねているだけあってCGのクオリティは非常に高い。特に亜人が出す……ジョジョでいうところのスタンドじゃな『黒い幽霊』と呼称されておるようじゃが、その映像は圧巻の一言。

 グリグリと動くカメラワークもあって、確かに素晴らしいものであった

カエル「もちろん役者たちの体を動かしたアクションも見事の一言で、銃撃戦や肉弾戦もキレッキレで!

 元々動ける人を多く起用しているのは予告編からでもわかるけれど、ほとんどアクション主体でそれがすごく良かった!」

亀「音楽に関してもスタイリッシュでアクションパートを見事に盛り上げておった。いやはや、アクション映画としてみたら確かにかなりの高得点じゃな。予告で相当な自信があったのか、煽り文句を入れておったが……その意味もわかる作品に仕上がっておる」

 

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圧倒的なアクションのクオリティは今年の邦画でもトップクラス!

(C)2017映画「亜人」製作委員会 (C)桜井画門/講談社

 

一方で欠点も……

 

カエル「でもさ、アクションとしては確かに褒めるところしかないような作品だけれど……それ以外が……」

亀「ほぼ全滅じゃな。

 何よりも脚本が致命的にダメじゃ。全くもって意味がわからん上に、かなりの御都合主義であり、次から次へと設定を開示しているような作品になってしまっておる。

 どうやら聞いたとことによると、原作でも永井と佐藤は原作では頭脳戦も繰り広げておるらしいが……」

カエル「昨年公開の『デスノート Light up the NEW world』などもそうだったけれど、実は邦画で頭脳戦って鬼門なんだよね……特にアクションが派手な作品だと、だいたいが残念な作品になっているような印象ばかりで……」

 

亀「この2人が頭がいいというよりも、周囲の人間がバカばかりじゃからの。

 確かに策略が見事と思ったところもあったが……あまりにも警察をはじめとした人間たちが無能すぎる。養護が全くできない有様じゃ。

 頭の良さを見せつけるために周囲を馬鹿にすると、それは単なるご都合主義になってしまう。原作ではうまく描写されておったり、尺の問題でカットされた部分もあるのじゃろうが……映画としてみると非常に気になったの」

カエル「なんていうか、登場人物の行動原理なども意味がわからないんだよね。なんでそんなことをしているのか? なぜ永井はそちらの立場を選んだのか? そういったことが全く伝わってこなくて……」

 

亀「描写が唐突すぎるのかもしれん。アクションというのは派手な場面じゃが、物語としては停滞であることも多い。もちろん、体の動きなどでその人物を描写することはできるが……

 それからアクションが派手なのはいいのじゃが、それが続きすぎてちと退屈になる部分もあったかの。一部では工夫しようとしているところも見られたのじゃが……かなり期待はずれなところがあったと言わざるをえないの」

 

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CGの見応えが抜群!

(C)2017映画「亜人」製作委員会 (C)桜井画門/講談社

 

役者について

 

カエル「役者については文句がないんだよ。

 いや、文句はあるんだけれど、それは役者のせいではないというか……」

亀「結局本作はコスプレ大会に近くなってしまったからの。なんで『踊る』であれだけリアルな警察内部組織を描いたのに、今作ではそれができないのかがよくわからん。全てが見た目だけがいいように繕われた、嘘っぽく見えてしまった。

 本作は確かに漫画原作であり、派手な演出じゃから演技の方向性も派手なものにしようとしたのはわかるのじゃが……かなり中二病感あふれる、痛い人物のように見えてしまったの

 

カエル「それこそ佐藤健を始めとした役者陣は相当頑張っているんだよね。綾野剛もそうだけれど、鍛え抜かれた体を披露するシーンもあって、そこはうっとりするほど美しい。もちろん、何度も語るようにアクションは文句のつけようがない。

 だけれど、じゃあ普通の時の演技は? と言われると……」

亀「漫画原作作品が違和感があるのは『キャラクター』を描こうとしすぎているところかもしれん。漫画やアニメであれば、そのキャラクター表現で違和感は少ないのじゃろう。しかし、実写になると途端にそのキャラクター表現が嘘くさく感じてしまう。

 つまり多面的な要素を持つ『人間』を描かねばいけないのに、それが一面的な『キャラクター』になってしまうということじゃな」

 

カエル「カッコイイと思う人もいるかもしれないけれど、自分は全くカッコよく見えなかったなぁ……特に綾野剛はいい歳した中二病のおじさんに見えちゃった。

 それでいうと他の役者も……」

亀「ほぼダメじゃの。

 じゃが、わしはこれは役者が悪いとは思わん。演技力云々の前に、作品の演出と演技プランの問題じゃ。

 漫画的な『キャラクター』を演じることを求められて、その通りに演じている。玉山鉄二の演じる戸崎のグローブなども含めて、ザ・中二ではあったが、原作通りでありそれが求められておるのじゃから、その意味では100点じゃろう。

 それは川栄李奈にしろ城田優にしろ千葉雄大にしろ浜辺美波にしろ、全員同じじゃな」

 

以下ネタバレあり

 

 

 

2 多数の疑問点

 

カエル「まずさ、最初にわからなくなったのが佐藤の目的なんだよね。あの人、一体何がしたかったんだろう?

 もちろん、原作には色々と描かれているんだろうけれど、映画の中ではただのテロリストじゃない? その意味ってなに?」

亀「現実におけるテロリズムも何らかの理念があり、目的を達成するための暴力としてのテロリズムを選択しておる。一応佐藤は亜人特区設立を求めておるが……世界でも50例もない、日本で3例目の亜人じゃろ? それで特区というのはいささか飛躍しすぎではないかの?」

 

カエル「まあ、特区が目的としてもさ……そのためのテロリズムって逆効果だよね?

亀「間違いなく逆効果じゃの。原作では亜人が危険な存在だと認識されることを嫌って永井が動くようじゃが、映画の中ではそんな描写はほとんどない。結局、彼が佐藤と袂を別つ理由もわからんし、最後のあの言葉が本心からの理由なのだとしたら……わしは『ふ〜ん』としか言えないかの」

カエル「自分だったらもっと『亜人の人権を!』をとか叫ぶかなぁ。それこそリベラルな人たちが仲間になってくれるかもしれないし」

亀「それでは映画として全く面白くなくなりそうじゃがの」

 

カエル「あとは、例えば亜人研究所ももっと色々なセキュリティを組むと思うんだよ。今どき防火シャッターぐらいはどこにでもあるしさ、あれだけの秘密組織ならテロリズムへの防衛機能もあるんじゃないかな? って思ったかな」

亀「もっと方法がいろいろあるのではないか? という思いはあったの。なんでこんなガバガバな警備システムであったり、設定なのかがよくわからんかった。

 まあ、平和ボケした日本らしいといえばそうなのかもしれんがの。意外と国内最先端の機密事項を扱っている研究所も、あの程度のセキュリティである可能性も否定できんしの」

 

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動ける若手女優の代名詞にもなってきた川栄李奈

(C)2017映画「亜人」製作委員会 (C)桜井画門/講談社

 

バカばっかりの登場人物

 

カエル「結構過激なタイトルになってしまったけれど、本当にそうとしか思えないんだよ!

 例えばさ、マスコミが亜人を囲んでインタビューをしているけれど、いつも見るワイドショーとかのインタビューってもっと意地悪だよね?」

亀「政府が発表して色々と語っておるが、そんなものを簡単に信じるのであれば政府ももっと楽じゃろうな。あれだけの証拠があればもっと色々な対応があるじゃろう。

 まるで疑う目を持っていないようにも見える」

カエル「マスコミ描写は直接関係ないといえばないからいいけれど、1番納得がいかないのが妹関連で!

 なんであんなに簡単に超重要人物の永井が近づけるのよ!?

 なんのために警察がいるの!?

 

亀「わしが普通に考えても、脱走した重要人物がまず会いに行くのは家族のところじゃな。ということは家族関連を見張ったり、警護を厚くする。もちろん屋上に行く時も付いて行くじゃろう。

 そこで簡単に撒けたばかりか、脱走を許しておる。そしてそのまま田舎にいって潜伏生活を許しておって……一体なんだじゃったのかの?」

カエル「あとは特殊部隊の警察もだよね。確かに佐藤の計画が中々緻密で、しかも亜人という特殊能力があるのもわかるんだけれど、もっと色々な取り押さえ方がありそうなんだけれど……あとは不用意に近づきすぎ!」

亀「ツッコミ始めたらきりがないからここいら辺で終えるが、ほぼ全ての状況に対してツッコミが必要で……もう笑いしか出てこなかった。シリアスなギャグを狙ったとしたら、これほど成功している作品もそうそうないじゃろうな」

 

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銃撃戦をはじめとしたアクションは素晴らしい!

(C)2017映画「亜人」製作委員会 (C)桜井画門/講談社

 

テーマ性の惜しさ

 

カエル「本作ってそれこそ亜人の設定を色々社会事情を盛り込むことができるじゃない? 王道としてはマイノリティとしての亜人の姿を出すことで、社会に対する批評性を出したりさ……

亀「佐藤が行っていたテロ行為についても様々なものがあったが、厚労省に対してのものなどは911テロを連想したの。

 そしてその次に狙って大きなテロは毒ガスを空から撒き散らすというものであった。これはオウムが空からサリンを撒くことを計画しておったことに由来しておるじゃろう。佐藤の計画自体は、実は世界の恐ろしいテロリズムを踏襲しておる」

 

カエル「でもさ……それが生きたとは思えないんだよねぇ」

亀「前述のように脚本がそこまで緻密にできておらんからの。ここがしっかりとしておれば、あれだけのアクションじゃ、今年の大作邦画でもトップの作品に躍り出ることもできたかもしれん」

カエル「……どうしても同じ迫害を受けるマイノリティを扱ったの漫画原作アクション邦画だから比較対象にしてしまうけれど『東京喰種 トーキョーグール』はそのテーマ性もうまかったんだよね……」

亀「近年の本広監督作品はアニメ以外あまり見れておらんが、決して下手とは思わなかっただけに、少し残念じゃな。まるで『サイコパス』の実写化の前のプロトタイプとして、アクションの実験場にしたのか? と思うほどじゃったな。

 アクションはこちらが勝っていると思わせるだけに……惜しい作品じゃの」

 

 

 

最後に

 

カエル「アクションとしてはみたら悪くないけれど、それだけで評価するのは無理があるよねぇ」

亀「そこを前面に押し出すのであれば、特区だなんだということはいらなかったかもしれんの。もしかしたら、監督はそのつもりだったのかもしれん。ドラマ性を極力排除して、アクションを多めに構成したつもりかもしれんが……」

カエル「ある意味では1番評価に困る作品でもあるんだよねぇ……

 つまらないわけじゃないんだよ。でも、面白いわけでもないからさ、アクションが好きな人はどうぞ! としか言いようがなくて……」

亀「邦画アクションとしては今年トップクラスなのは間違いないじゃろうからの。そちらを期待して鑑賞して欲しいものじゃな」

 

 

 

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