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物語る亀

ネタバレありの物語批評

初見で劇場版『響け!ユーフォニアム』を見た感想を書いていく※ネタバレあり

 劇場版の『響け! ユーフォニアム〜北宇治高校吹奏楽部へようこそ〜』を見てきたのでその感想を。

 今回語ることが多くて長めです。(5000字)

 

 アニメ好きではあるものの、女の子がたくさん出てくる典型的萌え作品は苦手ということもあり、京都アニメーション製作で石原立也監督、山田尚子演出、ベテランの花田十輝が全話脚本でありながらも、1話のみ見た後は全話未鑑賞であった。

 劇場版公開に合わせてみたほうがいいのかな、とも思ったのだが、折角だから初見の感想を書こうと思い、何も下調べせず鑑賞したのでその感想を書いていく。

 先に言っておくが、あの音響のために絶対映画館で観たほうがいい!

 

 ちなみに本日は三本映画を見てきたのだが(響けユーフォニアム、ずっと前から好きでした、ズートピア)三作中一番胸を熱くしたのは本作だった。

 

 とりあえず一言感想から。

 テレビシリーズ未見のほうが楽しめる!!

 

  

 


『涼宮ハルヒ』シリーズなどの石原立也監督作!映画『劇場版 響け!ユーフォニアム~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~』予告編

 

 1 総集編だったので説明多し

 

私は本作がそもそも総集編なのか、テレビアニメシリーズの続きなのかも知らずに、予告編だけを見て劇場へと足を運んだので少しばかり不安だった。

 

 しかし、その心配は杞憂に終わった。総集編なのだから、未見でもある程度楽しめる作りになっているし、話を理解することができる。

 だがこれも当然のことだがテレビシリーズで13話(放送時間だけで1話20分としても4時間20分)もある作品を100分強にまとめるのだから、テンポ感や説明を犠牲にしてでも、切らなければいけない部分はたくさんあるだろう。

 

 前半部分は特にその傾向が強く、モノローグの説明が目立ってしまった印象だった。それだけに展開の速さが目について置いてけぼりだったり、ここをゆっくりとやったらもっと余韻が生まれるのにな、と言う部分はあったのは事実。

 後ほど録画してあるテレビアニメ版を確認したら、5話までを全体の1/4(体感時間)ほどの時間で駆け抜けていたので、どれだけスピーディに説明部分を省いたのか、ということがわかるだろう。

 

 その分だけ一部のキャラクターの描写がカットされた影響でテレビアニメ版と比べて空気になっていたり、個性が失われているということもあるだろうが、初見のためそれは気にならなかった。

 全体的な構成も行進、お祭りの二人だけの演奏(ドヴォルザークの『新世界より』は好きな曲)オーディション、ラストと4つを中心として4分割されており、飽きることなく鑑賞できる。京アニ特有の絵の美しさもあって鳥肌の連続だった。

 

 

 あとは冒頭で挙げた通り、音も非常に良かったし、絵も美しくて幻想的だった。(特にお祭りのシーンは惚れ惚れする)

 最近アイドルアニメなどが流行しているように、絵と音が組み合わさった時の快感は非常に大きいのだが、今作も例外ではない。私は楽器をやらないのでわからないが、京アニだから演奏も絵と音が合っているのだろう。毎度のことながら大変な苦労だなと敬意を表したい。

 

 

 

2 リアル感のある青春群像劇

 

 京都アニメーション製作となると、やはりそのリアル感に注目がいく。私が最も驚愕したのは、同じく劇場版の『涼宮ハルヒの消失』で、例えば廊下のモブの声、なんてことのない下駄箱の靴を拾う仕草などが非常にリアルだった。

 アニメというのは実写映画と違い、自分が思い描くこと以上のものは画面から出てくることがない。

 

 映画であれば物を拾う仕草などは役者が自然に行うことができるが、アニメにおいては『自然に見せるように作る』ということが要求されてくる。そのために人体の構造などを勉強しなければならないわけだ。

 

 非常に細かいことで言えば私はそのリアル感があると思ったのは『靴下の描き方』だったりする。

 この映画を見る前に鑑賞したのが『ずっと前から好きでした』だったのだが、出てくる女子生徒の靴下がみんな黒のハイソックスだったのが、本作では状況やキャラクターによってそこは変わっているわけだ。若干フェチ気味(変態気味)に聞こえるかもしれないが、女子の場合、みんな同じような制服を着ているわけだ。

 みんなが同じ物を着ている中で個性を表そうとしたら、髪の色などもあるが、制服のスカートの長さ、身につけている小物などで演出するしかない。靴下というのはスカートの長さが一定である場合、非常に効果的にその人物の性格を印象つけることができる。

 

 例えば白のハイソックスだと『たまこまーけっと』のたまこ、『氷菓』のえるみたいにお洒落や男ウケに無頓着な素朴な女の子だとわかる。京アニ作品の場合、それが一番うまく出たのはやはり『けいおん!!』で、唯が黒タイツ、澪と梓が黒ハイソックス、律と紬が白ソックスとなる。

 キャラクター描写というとセリフだったり、性格描写ばかりが注目されるかもしれないが、このような細かい身につける小物の1つ1つの積み重ねによるものが非常に大きい。

 その意味においても細かいリアル感の演出ができていた。

 

 

 

 

3 部活あるあるとキャラクターについて

 

 今作を見ていて私は学生時代のことを思い出していた。

 

 私の所属していた学校は吹奏楽部が有名で、全国大会に行くことは当たり前みたいな学校だった。そのため、どこの部活動よりも一番きついのが吹奏楽部であり、休日など一切なく、朝は早くから夜遅くまで練習を重ねてきて、「それって学校としてどうなんだろう?」と疑問に思うほどだった。

 ヘタレな私が当然ながら吹奏楽部に入ることはなかったが、その練習量の多さを目の当たりにしてきたので、今作のランニングすらしたことがないという描写に至っては「マジか!」と驚愕したものだ。

  

 私が入学した直後、人を呼ぶために吹奏楽部が演奏していたのだが、その時に弾いた曲がテキーラ! の掛け声でおなじみのその名も『テキーラ』という曲だった。普段クラシックを聴かない人間でも知っている曲だったので、その辺りのキャッチーな選曲はあるあるだよなぁ、と思ったり。

 

 先生が非常に狡猾なタイプで確かにイラつくし人間的に魅力があるとは思わないが、指導力は非常に高いのも面白くて、この辺りは何でもそうだが人間的魅力と指導力は比例しないから時に困るものだったりする。

 例えば、何かあれば全員で決めさせようという姿勢である。「これはみんなで決めたことだからね」という論理に基づいて多数決での行動は少数派の意見を抹殺するものであるが、全体を動かすためには最も有効な手であると言わざるをえない。

 

 あとは全体の方向性を決める時に、

『強くなるのか』

『楽しくやるのか』

 というのは両立しないことで、これを決めるのに非常にグダグダとして時間ばかりが過ぎて行ってしまったなぁということも思い出した。学生時代の3年間って、長いようで短いけれど、学生時分にはその価値がわからないから無意味に過ごしがちだったり。

 女子のギスギスとか、面倒くさい仲間意識とかもよくあわらされていた。この辺りは女性が多い職場&演出が山田尚子であることも関係あるのだろうか?

 

 あるあるではないけれども、久美子と麗奈の関係性は結構好きだったりする。まどマギもそうだけど、あの危ういほどの純粋さと美しさが魅力的だった。

 あとは黒沢ともよの演技力もまだ20歳というのが信じられないほど高くて、次々と上手い若い子が出てくるから驚愕してしまう。沢城みゆきが出てきた時も度肝を抜かれたが、同じ歳で比べたらそこまで大差ないのではないか?

 

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4 氷菓とユーフォニアム

 私が最も好きな京アニ作品は氷菓である。

 なぜならば、氷菓の文化祭編などがそうであるが、あの作品の主題というものは『持つ者と持たざる者の残酷な差』だからだ。

 

 主人公の捧太郎はもつ者の側にいるようだが、実は姉という上位互換の存在がいてやる気というものが欠片もない。しかし、そんな捧太郎に憧れる親友の里志の存在や、漫画の才能に悩む摩耶花がいて、そのコンプレックスや才能の壁というものが、絵の美しさと共に見事に表現されていた。

 

 本作もやはり目についたのは同じ部分だった。

 

 持つ者としての高坂麗奈

 持たざる者としての中世古香織

 

 二人の対決というのは非常に熱くて、持たざる者だからこそ簡単に諦めきれるものではなく、誰かに評価されることもないソロパートを必死になって練習してきたのだろう。

 その熱意があったからこそ、吉川優子を動かし、再オーディションまでこぎつけたのだ。やり方に賛否は当然あるだろうし、吉川がいかにも女子らしくてムカつくという意見も当然あってしかるべきであるが、私はなぜ彼女がそれほどまでに動いたのか、自分を悪者になってまで香織をたてたのか、その心情を思えば非常に納得できるものがあるのだ。

 だからこそ、そんな香織の努力に真正面から立ち向かい、本気で叩き潰しにいった麗奈に好感がもてる。

 

 では主人公の黄前久美子はというと、彼女は決して才能あふれるタイプではないが、オーディションで選ばれるほどの実力は持つ者である。あの鬼畜眼鏡櫻井先生のことだから、年功序列とかは一切関係なく選んだのだろう。

 中川夏紀の必死の努力とその実力を知りながらも、自分も譲りたくはないので勝負して勝つ。それが勝負であり吹奏楽なのだから仕方ないのではあるが、少しばかりの罪悪感がある。

 

 敗れた中川夏紀はというと、それで腐るわけではなくみんなの演奏を裏で聴いて、新人や後輩たちとそれを分かち合える、この姿勢に私は青春を感じたし、涙すら浮かべてしまった。勝つ者がいれば負ける者がいて、持つ者がいれば持たざる者もいる。だが、敗れたから、持たざるからといって腐ってしまってはそこでお終いなわけで、そこからどうするかという部分が非常に大切だろう。

 基本的に私は敗者が好きなので、特に香織と夏紀には感情移入してみてしまった。

 プロならば話は変わるが、アマチュアで一番大事なことは上手いよりも好きという気持ちだしね。

 

 

5 少年漫画の構造

 本作はかわいい女の子がたくさん出てくる萌えアニメではあるが、基本的には少年漫画と同じ構造をとっている。

 

 私は以前にも少年漫画と少女漫画における構造の違いを指摘したのだが、簡単に言えば少年漫画には明確な勝利条件があり、少女漫画には曖昧な目標があり、それに向かって物語は進行していく。

 

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 本作は全国大会進出という誰にでもわかりやすい大目標を掲げて、それをクリアするために色々な課題、つまりサンライズフェスティバルやオーディションをクリアしていく、という物語である。

 この課題の一つ一つをクリアしていくのに様々な葛藤があるからこそ、本作はよりドラマ性と感動を強くしているのだ。

 

 最近の少年漫画はスタイリッシュな方向に物語を進行させており、あまり泥臭い作品というのはお目にかからなくなってきている。主人公も熱血系よりは、やれやれ系やスカした男性が人気だし、物語も努力を重ねて勝つというよりは才能で圧倒する作品が増えているような印象がある。

 一昔前のような努力を重ねてという泥臭い作品は受けなくなっているのかもしれない。

 

 だが、不思議なことに少女を主人公とした所謂萌え系作品には、こういった努力を重ねて勝利を泥臭く勝ち取っていくという作品が多いのである。

 本作もそうであるが『ガールズ&パンツァー』もそうであるし、『とある科学の超電磁砲』もそうだし、私はあまり見ないが話を聞く限りにおいては『プリキュアシリーズ』もそうであろう。

 これは良い、悪いの問題ではないのだが、かわいい女の子が血反吐を吐いて努力するという姿に今の人たちは感動するのだろう。これが主人公や周囲が男だったら、私は好みであるがおそらく暑苦しくて売れはしないのだろうな。

 

 最後に、強いて欠点をいうならばやはりラストの演奏シーンの途中で演奏がカットされて、他のキャラクターに視点が映ってしまうところだろうか。

 演奏時間や作画の面で所々カットしなければいけないのは大いに分かるし、これがワガママなのはわかるのだが、やはりカットしないで最後まで魅せてくれれば文句なしの今年No,1の傑作だったかもしれない。

 

 

 他の見せ場であるサンライズフェスティバル、祭りの演奏、オーディションがあまりにも素晴らしかったため、ラストは少しだけ惜しいと思ってしまった。

 それでもEDがテレビ版と編曲を変えたTUREの『DOEAM SOLISTER』だったから非常に嬉しかった。歌詞も響けユーフォニアムにぴったしだし、どこかちょっと古いアニソン感があってTUREは好きなアニソンシンガーの一人でもある。

 

 これを2015年に見ていたらランキングも大きく変動しただろう。

 2期も非常に楽しみにしている。 

 

 

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アニメスタイル007 (メディアパルムック)

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TVアニメ「響け! ユーフォニアム」 オフィシャルファンブック

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DREAM SOLISTER(アニメ盤)

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