物語る亀

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物語愛好者の雑文

<辛口>『映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』ネタバレ感想&評価 緻密な群像劇の総集編映画は難しいよね

 

今回はテレビアニメも人気だった作品の劇場版『映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』について、語っていきましょう!

 

これも大変楽しみにしていた作品じゃな

 

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(C)P.I.C.S./映画小戸川交通パートナーズ

 

カエルくん(以下カエル)

「テレビシリーズの時も全部観ていて、記事にしなかったのを、ちょっと後悔したもんね!

 それでいうと、テレビシリーズはもっと積極的に記事にしたい作品もたくさんありますが!」

 

亀爺(以下亀)

「特に今作のようなオリジナル作品であり、意欲的な作品で面白いものは、注目していかなければいけないの」

 

カエル「それでは、早速記事のスタートです!」

 

 

 

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感想

 

それでは、Twitterの短評からスタートです!

 

 

これはこれで、なかなか辛口になってしまうからもしれんな

 

 

カエル「今回はテレビシリーズから人気を獲得し、ついに映画化! という作品でもあります。

 しかも放送終了から1年以内という短さであり、それもまた驚きだよね。

 その代わり、新規カットなどは少なめで、ほぼほぼ総集編なのはご愛嬌として、物語として新しいものを提示したのは、最後の5分くらい、というところなのかな?」

 

亀「テレビシリーズはワシも楽しんで見させていただいたがの。

 残念ながら、この劇場版に関しては、その良さがあまり発揮されていないように感じた。

 この辺りはとても難しいものじゃが……テレビシリーズが全13話の、濃密な群像劇になっていたのに対して、この映画では単なるダイジェスト版のようになってしまっておる」

 

かといって、ご新規さん向けの作品というわけでもないんだよね

 

どうなんじゃろうな……『人気作だから観にいこう』という、新規さんにオッドタクシーの魅力が伝わるのだろうか?

 

カエル「う〜ん……少なくともテレビシリーズを全部観ていたボクとしては、ちょっと微妙だったというのが、正直なところかな。

 知っている情報が出てくるばかりで、それが絡まる面白さとか、どのように物語が発展するんだろう? という面白さに関しては、結構損なわれてしまった気がする」

 

亀「ラストの新規カットに関しても、物語的には余計なアレンジという見方もできてしまう。

 それを提示しなかったから、良かったのに! という思いは、ワシの中でもあるかの。

 テレビシリーズで1つ完結していたので……まあ、劇場版だからこれを入れよう、というのはわかるのじゃがな。

 残念ながら『オッドタクシー』という、テレビアニメオリジナルの新たなシリーズに対して、少し傷ができてしまう作品になったかもしれんの

 

 

 

 

総集編映画の難しさ

 

総集編の意味

 

今作が難しかった理由の1つは、総集編だからということもあると思うけれど……

 

ここで、総集編を製作する意味について、ちょっと考えてみるとするかの

 

カエル「……総集編を作る意味?」

 

亀「うむ。

 パッと思いつく限りでは、総集編というのはこのような意味があるの」

 

◆総集編の意味◆ 1. 長い物語を1つにまとめることで、新規のお客さんを呼び込む
2. 新しい解釈や展開を含めることで、物語に発展性をもたせる

 

簡単に思いつくのは、この2つじゃろう

 

カエル「多いのは1のパターンだよね。

 それこそ総集編映画といえば……『機動戦士ガンダム』とか、あるいは『超時空要塞マクロス』などのように、何クールにも及ぶ作品を1作、あるいは数作にまとめることで、新規も入りやすくなる作品。

 最近だと『コードギアス 反逆のルルーシュ』だったり『劇場版総集編 メイドインアビス』『劇場版 響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ』なども、それにあたるのかな」

 

 

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もちろん、上記の作品もテレビシリーズとは異なる点もあるために、ただ単にまとめて総集編にしただけではないがの。

 

亀「2のパターンで言えば、最近で言えば『ゼーガペイン ADP』『少女☆歌劇 レヴュー・スタァライト ロンド・ロンド・ロンド』などが、思い当たるかの。

 この2作品は確かにテレビシリーズの映像を使った総集編なのじゃが、構成や物語をいじることで、新しい物語として登場している。

 この辺りは特殊な設定も絡んでくるために説明が難しいのじゃが……普通の総集編映画とは異なる、というところかの。

 また、例えば『劇場版 響け!ユーフォニアム 届けたいメロディ』のように、2クール目全てのお話をまとめるのではなく、1つのポイントを絞って総集編とすることで、物語をまとめているのであるが、1つの物語としての完成度を高めるという手法もあるかの」

 

ゼーガペインADP

ゼーガペインADP

  • 浅沼晋太郎
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今作の総集編の意味

 

それでいうと、今回の『映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』は、どのような総集編と言えるの?

 

う〜む……正直なところ、それがぼやけてしまった印象じゃな

 

カエル「ぼやけてしまった?」

 

亀「うむ。

 確かに1クールの長い物語を2時間強にまとめた物語にはなっておる。

 しかし、そのまとめ方がうまかったとは思えないのじゃな。

 ここで難しいのは”総集編映画  ダイジェスト版”ということじゃ」

 

……総集編映画はダイジェストではない、かぁ

 

もちろん、そういった要素があるのも否定はせんがの

 

亀「しかし、ただのダイジェストになってしまうと、それは総集編”映画”にはなりづらい。

 それが映画たりうる何か……それが物語であったり、新たな解釈、あるいは音楽の良さ、映像表現の一新……特に総集編作品において大きいのが、編集による物語の奥深さなどを広げる行為じゃろう。

 上記に挙げた作品たちの多くは、確かにテレビシリーズの映像を使い回している部分もある。

 しかし、それ以外の魅力……例えば新しい物語の解釈であったり、あるいはテレビシリーズでは枝葉に別れた部分を削ぎ落とし、1つの物語として再構成し直している。

 それが今作では……正直、弱かったの」

 

カエル「あんまり総集編映画としての意味合いがないのかなぁ。

 特に『話題になっているから、この劇場版でオッドタクシーに触れてみよう!』という人も中にはいると思うんだよね。だけれど、そういう人に対して、親切丁寧にわかりやすい物語かというと……実はそうでもないんだよね。

 だけれど、この作品をすでにテレビシリーズで観ている人にとっては『知った情報ばかりのダイジェストだなぁ』となってしまって……その点では、本当に勿体無い作品だよね」

 

 

 

 

テレビシリーズの完成度の高さ

 

なんでこんなことになってしまったと思う?

 

単純に、テレビシリーズが完成度が高かったことによる弊害じゃと思うぞ

 

カエル「え、完成度が高いから、総集編としての良さが発揮されなかったの?」

 

亀「多くのアニメ作品には本筋と関係ない、枝葉のような部分がある。

 例えば……そうじゃな、『交響詩篇エウレカセブン』を総集編化しようとした時に、一部で話題となり伝説化しているサッカー回がある。これはこれで、まあ面白いが、本筋には一切関係ない。ということは、総集編にするとき、真っ先に切られるわけじゃな。

 また必要のないキャラクターの改変、あるいはカットなどもある。それが強引すぎる時もあり、ファンからは賛否が出てくるわけじゃがな……」

 

カエル「古い例だけれど『ラーゼフォン 多元変奏曲』でヒロインの1人だった如月久遠が、映画版では出番が相当削られていたりね」

 

亀「うむ。

 では『オッドタクシー』ではどこを切るかというと……実は、それが難しい。

 今作は群像劇として全13話、約6時間の物語として完成されている。

 登場人物の多くが複雑に絡み合い、ある人物の存在が、他のある人物の物語に関与する。そうなると、なかなかカットすることができない。

 そこをカットする必要があるのではあるが、の」

 

カエル「切れるとしたら……煩悩イルミネーションはほぼカットしたけれど、それくらいなのかなぁ。

 あとは……ホモサピエンス絡みも……いや、ここは切っちゃダメかぁ。樺沢太一とかは、結構カットしていた印象もあるけれど……でも、物語の始まりだしね」

 

亀「そう考えると、無駄な部分が少ないため、編集でどうにかすることが難しいわけじゃな。

 またテレビ放送終了から1年以内というハイスピードで公開している。

 これは興行的には成功していることもあり、英断だと思うが……残念ながら、物語の練り込み、という点では少し物足りなくなってしまうかもしれんの。

 その結果、総集編映画としては、単なるダイジェストの域をでないものになり、新規ファンには登場人物も多くて複雑な物語のためにわかりづらく、既存ファンには新しい情報が少ないために物足りない作品になってしまったかの

 

 

 

 

最後に〜今後のオッドタクシーについて〜

 

最後にだけれど、オッドタクシーシリーズとして、もう少し発展させたいという話もあったけれど……

 

これもまた、難しいところじゃな

 

カエル「オッドタクシーの持ち味であった

 

  • 動物を使った魅力的なキャラクターたち
  • ミステリー仕立ての群像劇

 

 という中で、動物を使う意味というのは、今作で回収されてしまっているもんね。

 しかも、このメンバーのお話として、新作を発展させるのも難しいところがあるし……」

 

亀「シリーズものというのは、キャラクターを使い回しできるのが大きい。一度キャラクターに人気がついてしまえば、再びそのキャラクターが見れる! という楽しみ方があるからの。

 しかし、オッドタクシーはそういう作品でもない。

 また『機動戦士ガンダム』のように、象徴的なロボットのようなアイコンが登場するわけでもない。

 結局”オッドタクシーらしさとは何か?”ということを、また模索し再定義することから、始めなければいけないのかもしれんな」