今月、うちとしては1番の注目作である『響け! ユーフォニアム』シリーズの完結編となる誓いのフィナーレの感想記事になります!
以前に映画語り配信でも語ったけれど、今年映画ランキングのBest20入りは間違いない傑作でしょうね
カエルくん(以下カエル)
「予告編が流れた段階ですでにこみ上げてくるものがあったもんね……あの予告編を何回見たんだろう?」
主
「黒沢ともよの『めんどくさいなぁ〜一年生〜』のセリフがたまらなく好きでねぇ……
いや、あなたもなかなか面倒くさい一年生でしたよ? って言いたくなるようなね」
カエル「それでは早速になりますが、映画の感想記事をスタートさせますが……初めに言っておきますが、この記事も長くなります。
もしかしたら後々追記、分割する可能性がありますので、そちらはご容赦ください」
主「ずっと追いかけてきたからなぁ……
ちなみにアニメで楽しみたかったので原作は読んでませんので、物語自体は初見であり、ユーフォシリーズのアニメは劇場版も含めて全て観たファンの感想になります。
では、記事のスタート!」
作品紹介・あらすじ
京都の高校を舞台に、吹奏楽部に打ち込む少女たちを描きテレビシリーズでも人気を博した『響け! ユーフォニアム』の完全新作アニメーション。今作ではテレビシリーズ1期、2期では1年生だった主人公・黄前久美子たちが2年生に進級し、後輩ができたエピソードとなる。2018年に公開された『リズと青い鳥』は本作と同時間軸の物語。
制作は京都アニメーション、監督は石原立也、脚本は花田十輝とテレビシリーズと同じスタッフが引き続き担当。チーフ演出として『リズと青い鳥』の監督である山田尚子が名前を連ねる。
またキャスト陣は黒沢ともよ、安済知佳などのおなじみのメンバーの他、新1年生には雨宮天、七瀬綾夏、久野美咲、土屋神葉などが新たに起用され、物語に新たな風を送り込む。
3年生の先輩たちが卒業したのちの北宇治高校吹奏楽部には、4月から新たに1年生が入部してくる。昨年の全国大会進出と顧問の滝先生の知名度もあり、多くの生徒が入部してきたのだが、その指導担当の1人に黄前久美子が指名された。さらに低音パートには久石奏、鈴木美玲、鈴木さつき、月永求という4人の1年生がやってくるのだが、その癖のある後輩たちの指導に悩む日々が続く。
そんな中でも全国大会を目指し練習の日々を重ねていくのだが、後輩関係以外にも様々な問題が巻き起こり……
ユーフォシリーズと撮影の魅力について語ったyoutubeの自作動画はこちらです!
『響け!ユーフォニアム』の撮影と演出の魅力について語る!〜カメラジ#3〜
感想
それでは、Twitterの短評からスタートです!
#anime_eupho
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2019年4月19日
ユーフォの映画として、青春映画として、音楽映画としてこれ以上ない邦画史上最高傑作が誕生した感すらある
1期、2期、あのリズすらも本作のための下敷きに過ぎなかった
これほどの作品が「アニメだから」と侮られるとしたら本当に悔しい
2019年最高の映画筆頭です pic.twitter.com/VtWJesUvx9
今年トップクラスの衝撃! 2019年ベスト候補入りの傑作!
カエル「もちろんずっとユーフォシリーズを追いかけてきたファンの目線ではありますが……本当にとてつもない作品で、ずっと物語に引き込まれているような感覚だったね」
主「今、最も美しい映像を作ると言っても過言ではない京都アニメーションが力を注いできた作品だから、それなりに高いハードルを課したつもりだけれど、そんなのどこ吹く風とばかりに飛び越えていってしまった。
作画・演出・キャラクター・声優の演技……そして何よりも忘れていけない本作の本当の主役である音楽も高いレベルで一致し、これほどの映画はほとんど生まれてこないのではないか? と思わせるほどの作品だ」
カエル「そんな大げさな……と思われるかもしれないけれど、実際普通の上映なのにもかかわらず……まあ、平日の朝一の回だったから濃いファンが多かったとはいえ、上映後に拍手が巻き起こりました」
主「その前のユーフォシリーズの映画は総集編ながらも1作の物語として成立するように再構成をしたり『リズと青い鳥』に関しては実験的な手法で作られたアニメ映画であり、その挑戦に驚かさられたものだけれど……今作はそれらの傑作、名作達はさらに今作のための助走でしかなかったことを痛感した。
自分は今作以上の青春映画はほとんどないと思うし、さらに音楽映画としてみたらずば抜けていて……全体の完成度もそれこそ洋画を含めても最高峰の1作であることは疑いようがないんじゃないかな?」
カエル「ファンの贔屓目込みですが、最高の音響で観たい作品です」
主「だからこそ悔しい思いもあって……これほどの作品が”アニメだから”として観られない、あるいは侮られる可能性があるのならば、それほど残念なことはない。これが仮に実写だとしたら、それこそ大事件として大騒ぎされるレベルだよ」
『リズと青い鳥』と比較して
一応ユーフォシリーズの総集編ではない作品としては『リズ』があるけれど、どう違うの?
みればわかるけれど、リズの尖った部分が良い意味では丸くなっているね
主「実は最近も映画館でリズを見る機会があったんだけれど、オールナイト上映ということもあって少し寝てしまった。というか、実はリズは自分の体調や感情の調整をしないと120パーセント楽しめない部分があって、感動するかしないかの差が激しんだよなぁ……」
カエル「あくまでも個人の感想ですが、あまりわかりやすいエンタメとして派手な映画ではないもんね」
主「強烈な実験精神によって作られている作品だけれど、あまりにも実験的すぎる部分もあるのかなぁ、と。
観客と終始切り合いしているような映画だから、見ていて疲れる部分もあるんだよね。それだけいい映画ってことでもあるんだけれど。
その点、今作はわかりやすい娯楽性も山盛りです。
だけれど、リズでは監督の山田尚子がチーフ演出をしていることもあり、あの尖った演出は健在です。
そして何よりも、キャラクターがかわいい!」
カエル「リズのキャラクターだってかわいいけれど、いわゆる最近の”萌え”とはちょっと違ったキャラクターデザインだったから、本作の方が一般的な、いわゆるオタク層に受けやすいキャッチーなものになっているんじゃないかな?」
主「だけれど、その萌えが過剰でない。
ユーフォの1期とかはエロいなぁ……と思わせる作画もあったけれど、今作はそこまで行かずに健全な可愛らしさが溢れていて抑制されている感もある。
それがトゲが少なくなってとても見やすくなっているし……一応前作を見ておくことを推奨するけれど、一見さんにも見やすい作品になっているんじゃないかな?」
カエル「……ちなみに、ユーフォシリーズの初見さんにはオススメできますか?」
主「う〜〜〜〜〜ん……すごく難しいけれど、初見さんにもオススメしたい!
一応説明なども入れてくれるので、わかりやすいとは思う。だけれど、なぜ自分がここまで興奮して話しているのか、その熱量まで伝わるかは……わからない。
でもこの作品は絶対劇場で観るべきものだと思うので、ぜひ劇場へ向かって欲しいね」
声優について
一応声優陣についても語っておきましょうか
……実は、ちょっとだけ黒沢ともよに対して思うところがあるんだよ
カエル「あれ? うちではいつも高評価の若手女性声優で、今の25歳以下であれば1番うまいとまでいってなかったっけ?」
主「その評価は揺るがない。
特に自分は生っぽい演技が大好きなので、黒沢ともよのユーフォでの生っぽい演技も大好物!
先にもあげたように『めんどくさいなぁ〜1年生〜』の喋り方も大好きだし、さらに言えば家族との会話も間などが”ちょっとうるさいなぁ〜”という女子高生らしい嫌いなわけではないけれど反抗期でもあって、そこが最高!」
カエル「……じゃあ、気になるとこって何?」
主「彼女の演技だけ上手すぎるんだよねぇ。
系統が違うというか。
もちろん、他の声優たちが下手というわけではない。自分なんかは橋本先生役の中村悠一の今作のような演技は少ない出番ながらもしっかりと印象に残り大好きだし、他の声優陣も好演していた。だけれど、黒沢ともよだけ別世界のような演技をしていて……前作だとあすか先輩役の寿美菜子との演技と張り合っていたんだけれど、今回の雨宮天の演技って黒沢ともよと戦うものではないと思うんだよね。
その分、目立ってしまっていて全体のバランスからは少し外れていた印象もある」
カエル「……うますぎて他から浮いているって話ではなくて?」
主「浮いているとまでは言わないけれど、ここはバランスの難しさを感じたかなぁ。
『リズと青い鳥』の作風だったら、あちらも生っぽい演技だったから問題ないだろうけれど、黒沢ともよ自身はユーフォで求められている演技に120パーセント答えていたと思うから、本当にここはバランスの問題で難しいポイントだと思う。
逆に言えば、こんな文句と言えるのかわからない文句しか出てこないほど今作の演技は素晴らしいね」
青春映画&音楽映画としての魅力について
青春映画とは何か?
そもそも、青春映画として何が優れているの?
青春映画に重要なものってなんだと思う?
カエル「え? え〜っと……恋や友情、進路に迷う姿を応援したりすること? 一言では表せないよなぁ」
主「自分は青春映画とは”青春の感情をどれだけ詰め込めるか”ということだと思っている。
大作邦画は勘違いしているんじゃないかな? と思うこともあるけれど、決してイケメンと美女がイチャイチャしている姿が青春ではない。
むしろ、その裏にある……友達や先輩との確執、教師への感謝と恨み、部活動への真剣な眼差しと悔しさ……それらの、まだまだ未熟だからこそ計算せずに全力で向き合い、突き進む姿。
それが青春映画の醍醐味なんだよ」
カエル「その人物たちが生きている姿をどれだけカメラに収めるかって話?」
主「アニメに限らないけれど、青春映画って本当は偽物なんです。そこに映されたドラマは誰かの筋書きがあり、演出があり、役者も観客もそれを理解して鑑賞している。特にアニメはそうだよね、絵に描いたキャラクターは実在しないし、声優も実際に同じ年齢であることは……ゼロではないけれど、可能性は低い。
だけれど、本作はその青春の一瞬のきらめき……友情、愛情、進路への悩み、友人たちへの嫉妬、才能の壁、本気で取り組むことの意味と疑念……それらの青春期に抱く想いが全て詰め込まれている。
これらが高いレベルで一致し、本作は青春映画としてみるべき傑作に仕上がっている」
音楽映画としての今作〜モブがいない作品〜
それと同時に、音楽映画としてはどういうところがすごいの?
当然のように本作では吹奏楽の演奏シーンがあるけれど、そこは圧巻の一言!
カエル「あまり語るとネタバレになるけれど、その吹奏楽のシーンが見せ場であることは想像できるでしょうが、ここもとてつもないクオリティの作品になっています」
主「これが作品によってはおざなりで終えたりする部分もあるけれど、今作は見事の一言。特にアニメで音楽シーンというとライブシーンやアイドルたちが歌って踊るシーンはよくあるけれど、吹奏楽のように大人数で演奏するシーンはあまりない。それだけ人を書かなければいけないし、緻密な動きが要求されて難易度が高いからだ。
2018年公開の『届けたいメロディ』にて1曲分まるまる演奏シーンを入れてしまうというとてつもないことをやり遂げているけれど、今作はさらにそれを更新した。
ネタバレなしで語ると……本作って吹奏楽部員にモブがいないんだよ」
カエル「モブキャラクター、いわゆる数合わせの通行人とか吹奏楽部員Aみたいなキャラクターはいないってことだよね。EDクレジットロールでは都合上”吹奏楽部員”となっているけれど、実際には顔も名前も個性もあるキャラクターとして描かれています」
主「その個性がうかがえるポイントってたくさんあって、例えば多くのアニメの場合はモブは同じような格好や服装、見た目をしていることもある。あえてメインキャラクターと分けるために、髪を黒く、地味にすることもあるけれど、ユーフォの場合はお気に入りのキャラクターが生まれるくらいにみんなそれぞれに個性がある。
特に女子は髪型、スカートの丈、靴下の色、長さ、小物、カーディガンの有無、リボン、メガネ……それらを含めてオシャレをするけれど、ユーフォはそれがバラバラで個性的なんだ」
カエル「それが演奏シーンにつながってくると」
主「つまりさ、全てにおいて数合わせの要因なんていないんだよ。
その演奏シーンはそこにいる、あまり物語上目立たないキャラクターたちの汗と努力と涙も含めた演奏であるとはっきりと伝わってくる。
その中で1人でも怠けたり手を抜いたら、吹奏楽は成り立たない。だけれど、それができている作品は……アニメのみならず、実写でもほとんどの作品はできていない……というか、できない。
だけれど、ユーフォはそれを完全にやり遂げた。1期と2期、さらにリズのドラマを含めての衝撃がここにあり、みんなの思いが感じられる演奏になっているんだ。
あとはBGMも最高!
こちらは松田彬人が『あまり目立ちすぎないように』と語っているけれど、出しゃばらずに、でもしっかりと場面を支えていた!」
ネタバレに入る前に
ユーフォニアムシリーズが描いてきた”感情”と”仮面”
ネタバレで論評に入る前に、ユーフォシリーズが描いてきた”感情”と”仮面”のお話をしておきたいということだけれど、どういうこと?
基本的にはユーフォは両方の面を持つ久美子が行ったり来たりする物語なんだ
主「まず、久美子を語る際に大事なのは”本音が思わず口から漏れてしまう”ということ。それが性格が悪いと言われたり、色々な人に突っ込まれたり、トラブルに巻き込まれる要因の1つになる。
そして、ユーフォシリーズのメインキャラクターは2つの顔のどちらかを持ち合わせている」
カエル「それを簡単に表すと以下のようになります」
麗奈=感情の人間(感情を隠さない)
あすか=仮面の人間(感情を見せない)
主「まず、テレビシリーズ1期では感情を隠して穏便に過ごそうという久美子が、感情の人間である麗奈と出会い、自分の中にある吹奏楽への熱や思いを再確認する物語でもあった。
その過程において、麗奈の”誰よりも上手くなる!”という熱い思いが巻き起こすトランペットのソロパートオーディジョンにより、麗奈の感情VS香織の感情という熱い青春ドラマが大きな盛り上がるポイントのドラマになる」
カエル「そして2期では前半は置いておいて、後半ではあすかと久美子のやり取りになっていくね」
主「あすかというのは究極の仮面の人間であり、本心は誰にも見せないでいるけれど、その奥には深い思慮と冷酷なまでの計算がある。
その仮面に対して久美子が熱い感情をぶつけていく、という物語になっている」
カエル「それがリズと青い鳥になると、以下のようになります」
みぞれ=感情の人
希美=仮面の人
主「みぞれは感情が薄いように見えるけれど、その奥には情愛がドロドロと渦巻くような人間である。一方で希美は感情をある程度隠し、周囲の友人や後輩たちと交流することができる。
だけれど、みぞれの圧倒的な演奏によってその仮面が剥がされていき……というのがリズと青い鳥の物語だ。
その仮面が剥がれた瞬間に、溢れ出してくる感情の発露……それがユーフォシリーズの青春の真骨頂でないだろうか?」
以下ネタバレあり
作品考察
全てを踏襲する開始5分
では、ここから更に長くなるネタバレありの作品考察です!
今作は開始5分でそれまでのユーフォが全て詰まっていると言えるだろう
カエル「まずはあの衝撃のスタートだよね。1作の物語としての掴みとしても素晴らしいし……」
主「その前に語るけれどさ、今回ってフォトセッションがないんだよ」
カエル「あ〜、京アニの映画では週替わりで挟まれるフォトセッションやミニドラマがなかったね」
主「リズもなかったけれど、ここで今作はそれだけ本気だということが伝わってくる。もちろん、フォトセッションがあるとふざけているというわけではないけれど、そういう映画ではないってことなんだろうな。
そしてあの久美子と秀一のやり取りがあってのOPの入り方が本当に素晴らしくて、ここで1つ感動したなぁ」
カエル「で、本題の5分間に話を進めましょう」
主「あのあすかとの思い出の楽曲を1人で吹いている時、ここで『届けたいメロディ』の感動が巻き起こってきて、これは反則だよ! ともわず言ってしまいそうだった。
本作の音楽映画としての強さでもあるんだけれど、特に回想シーンや説明することなく、音楽を流すだけで感情を思い出させることができる」
カエル「懐かしの名曲を聴くとあの頃について思い出す、というのと同じだね」
主「それと同時に、今度は奏と久美子の会話シーンが出てくる。ここでは吹奏楽部に入ろうか迷う奏に対して、教室のドアのレールを飛び越えて久美子が勧誘に行くけれど、奏が少し断り気味になると教室に戻る。
このレールの溝を境界線として、2人の距離感と関係性を説明しているけれど、これはリズで何度も行われた演出である。
そしてしょっぱなの麗奈が麗奈っぽい発言をするけれど、あれは1期に近い印象を与えているし……ここで、過去の3作品を内包した映画になるよ、という宣言でもあるんだよ」
眩しく設定された光
今回も作画や映像がとても綺麗だったけれど、そちらについてはどうなの?
今作でも撮影監督の高尾一也の腕が光っている
カエル「あまり注目を集めないけれど、実は年々その存在感が増しているというのが撮影に関する技術です」
主「自分はアニメ関係者ではないために特に何かの技術……作画などに詳しいわけではないけれど、近年勉強したいのがこの撮影の技術。光やエフェクトの処理から、被写界深度やら何やらを調整したりと色々とやっているけれど、あまりアニメファンからは注目を浴びづらいけれど、重要な技術となっている。
そして、パンフレットを見ると高尾撮影監督は『光の入れ方などを少し明るい方向にしています』というコメントにもあるように、本作は光の入れ方がとても強い」
カエル「かなり明るすぎる印象もあったくらい、光が強かったよねぇ」
主「その強い光で青春のキラキラ感を増している部分はあるのかなぁ……近年は実写邦画でも青春映画は光が強く、キラキラしている印象があるからね。
そして今作でも安定の光と影の演出は健在であり、そこだけで今誰がどのような状況にいるのか、よくわかるようになっていた。
多分、もっと専門的に勉強している人が見たら数々の工夫がたくさんある作品になっているんだろうな」
奏と久美子のシーンで特徴的だったもの
他にも演出などで目に付いたところってある?
やはり”鉄格子、あるいはネット”の演出かな
カエル「奏が久美子と会って秀一との関係について話をしている際に、屋上に行かないように柵が設けられていたシーンだよね」
主「それと、そこから少しいったところで野球などのネット越しに2人が会話をしているシーンがあった。ここでは格子状、つまり捕らわれている感があり、さらに上からグルグルとカメラを回すことによって奏でという人間がどのような存在かわからなくなるように演出されている。
そしてサンフェスの場面ではこれでもか! というほどにわかりやすく光と影の演出を凝らし、鈴木美玲の心境の変化を演出し、そこでは奏では闇の中にいた。
彼女の持つ複雑な内面などを演出でも補強していたね」
カエル「久美子と秀一のシーンでは何かないの?」
主「電車のシーンかなぁ……久美子の後ろには宣伝文句がたくさん書かれている看板があるんだけれど、秀一の後ろの看板には何も書かれていないんだよね。しかも2人の枠が離れており、決して同じ場所にいない。
これは久美子が指導担当として抱えるものがとても重く、多くのものを背負いこんでいることがうかがえる。
一方で秀一はそういったものが特になく……その意味では大きな問題はないんだけれど、2人の立ち位置の違いを象徴していた」
カエル「ふむふむ……」
主「一方で別場面ではあるけれど、久美子と麗奈の場合は同じ構図なのにとてつもなく近い。
これが秀一と麗奈の差としてつながってくる」
多くの思いが感じられる演奏シーン
先ほどから多く語っているけれど、あえてネタバレでラストの演奏シーンについて語るとしたらどこになるの?
やっぱり、リズと青い鳥じゃない?
カエル「あの映画版では、希美が最後にあのようになってしまい、本当の意味では完成した姿を聴くことはできなかったけれど、今作ではそれが聞けただけでも大満足だよね」
主「今作では2人のセリフは一切なく、声優のクレジットにもありません。 あ、出てきたらそれはそれで別の意味を持ってしまいそうだから、それでいいけれどさ……
今作がとても良かったのは、その裏側でリズと青い鳥があると思えば、希美とみぞれのハーモニーの裏では壮絶な人間関係のドラマと努力があるってわかるじゃない」
カエル「映像でもしっかりとこの2人で魅せてくれたし、一部分では滝先生の指揮もまるで鳥のように見せることでリズと青い鳥を連想させたよね」
主「さっきからモブがいないと語っているのはそういうところで……書き込まれた楽譜、それぞれの表情、音楽、それらからどれだけの努力を払ってきたか伺うことができる。
しかも、演奏中は回想シーンや観客の『なんという演奏だ……』というような余計なモノローグは一切ない。それで映像に飽きることなく、約10分以上? も魅了することができる映画が、果たして世の中に何作あるんですかね?」
ユーフォが描いてきたもう1つの物語
ユーフォを語るときに大切なのが、天才たちの物語ではないことです
特に自分は”持たざる者の物語”や”敗者の物語”が大好きだから、さらにグッときました!
主「今作ではいつも通りではあるけれど、やっぱり夏紀先輩が最高の良い女だったけれど、それと同時に加部先輩の決断にはやっぱり涙腺が緩んだよ。
だってさ、悔しくないわけないじゃない。
口ではああ言っているし、もちろんそれも本音ではあるけれど、あのシーンでは顔は一切見せていないわけ。
彼女はそうならざるを得なかったことに理解も納得もしているかもしれないけれど、でもやっぱり思うところがある。
ここはリズのアンサーの1つでもあって、みぞれが演者として成功しても、希美は演者になれなかったとしてもそれを支える手段はいくらでもある、ということの1つではないだろうか?
そういった色々な人の思い、その場にいない人たちの願い、それらを乗せた音楽が奏でられる青春……
これ以上の音楽映画で大事なことって何があるのよ?」
カエル「吹奏楽だもんね……誰が1人でも欠けたら、それはダメになるわけで……」
主「あの葉月たちの姿を見て、それでも演者にしか目が行かないならばそれはそれでしょうがないけれどさ……この映画は1人のスターが輝くという作品じゃない。
誰もが泥臭いような努力を重ね、華々しくなくても自分の役割をこなし、落ちた人たちの奮闘も交わり、それがハーモニーとなって最高の音となる。
吹奏楽というテーマに人間ドラマを合わせ、青春映画で大事な普遍性のある要素とともに音楽で魅せる。
だから自分は”2019年最高の映画筆頭”とまで言いました」
まとめ
では、この記事のまとめです!
- 作画・演出・キャラクター・声優の演技・音楽が高いレベルで一致した作品!
- モブなどいない、全員が揃った吹奏楽シーンは圧巻の一言であり、最高の音楽映画に!
- 演出が伝えるそれぞれのキャラクターの心情が熱く胸に刺さる!
見なければ映画人生損しているとまで言ってしまう1作です
カエル「たぶん、GWも含めて何度も見に行くので、その度に気がつくことなどがあれば追記や、場合によっては別記事を書くことになります!」
主「4月のGWに絶対に見てほしい、オススメしたい1作です」
カエル「ちなみに、追記するとしたら今の所どういうところ?」
主「う〜ん……各キャラクターの役割とかかなぁ。
例えば奏の仮面の人間っぷりとか、そういう部分」
カエル「インタビューなどたくさん読んで、もっと色々な発見を見つけていきましょう!」
考察記事②はこちらになります!