物語る亀

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物語愛好者の雑文

映画『キングダム』ネタバレ感想&評価! 本気度がうかがえる美術や衣装は◎! ただしアクションの見せ方などに違和感がある……

 

今回は原作漫画も大ヒット中、山崎賢人や吉沢亮、長澤まさみなどの人気キャストが登場する『キングダム』の感想記事になります!

 

 

 

 

原作は未読の人間の感想になります

 

 

カエルくん(以下カエル)

「人気もあって、何度か知り合いに『面白いから読んだ方がいいよ』と言われていたけれど、結局手を出さなかったんだよね」

 

「オススメされた段階で25巻くらいまで出ていて、今では50巻超えでしょう?

 さすがにレンタルや漫画喫茶で読むとしても、それはハードルが高すぎるなぁ……文字数にもよるけれど1巻どんなに早くても10分かかるとして、500分超えだもんなぁ」

 

カエル「どうしても秦の始皇帝になるまでとなると長期連載になるのは仕方ないよねぇ」

主「そう考えると今の子は大変だよなぁ……コナン、ワンピースだって100巻前後だし、長期連載作品ばっかり。

 実はナルトも読んでないんだけれど、理由は全く同じで長期連載すぎて今更ついていけないからなんだよなぁ」

 

カエル「人気シリーズになると売れるのはわかるけれど、その懸念はどうしてもあるのかな」

主「つまりさ、こち亀最強ですよ。

 200巻あってもどこからでも読めるし、何なら200巻から読んでも問題無し!」

カエル「馬鹿話はここまでにして、映画の感想へといきましょう!」

 

 

 

 

 

作品紹介・あらすじ

 

 2019年4月現在にて54巻まで発売されており、累計発行部数3300万部を超える大ヒットを記録している同名原作を実写化した作品。

 監督は『アイアムアヒーロー』や『いぬやしき』などの大作アクション映画にて多くのファンを獲得している佐藤信介。脚本には『累』や『ONE PIECE FILM GOLD』などの黒岩勉が佐藤信介と原作者である原泰久と共同で担当している。

 キャストは多くの若者に人気の山崎賢人をはじめ、吉沢亮、長澤まさみ、橋本環奈、大沢たかおなどが集結し、アクションと重厚なドラマを盛り上げる。

 

 紀元前245年、中国では春秋戦国時代を迎えており、いくつもの国に別れて戦争を繰り返していた。中華西方の有力国、秦で孤児となり奴隷として売られてしまった信は同じ境遇の凛と出会い、剣の腕を磨き大将軍になることを誓い日々訓練を積んでいた。

 そんな中、王都の重臣である昌文に凛が召し上げられることに。それを見送った信であったが、ある日傷だらけの姿で凛が戻る。聞けば王宮で大きな乱が発生したのことであった……

 

 

 

 

 

感想

 

では、いつものようにTwitterの短評です

 

 

これは評価に困るかなぁ

 

 

カエル「予告編を見る限りでは衣装などもしっかりとしていて、見所の多い作品のようだったよね? しかもちゃんと中国で撮影したシーンもあるということで、結構期待値は高いと思うんだけれど……」

主「まず、この映画に関してはしっかりと予算を使って衣装や美術も凝っており、邦画の可能性を広げたことについて、素直に賞賛したい。

 本作が大ヒットしたらそれはそれで嬉しいし、佐藤監督が行ってきた”アクション描写が売りの邦画大作”としても、高く評価されるべき作品でしょう。

 中国の始皇帝を題材にしているということで、もしも中国で公開したら大ヒットを記録する可能性はある。

 向こうでも山崎賢人の人気は高いようだし、邦画の課題と思われる海外へのアプローチという意味でも注目するし、その心意気を買いたい作品だ」

 

カエル「……ということは、高評価なの?」

主「……ただし、残念ながら邦画の悪癖はたくさん見受けられてしまった印象だな。

 それが気になるか気にならないかで、評価は分かれると思う。あとは……原作はもともと大人気だから面白いだろうし、実際大筋の物語は面白いんだけれど、それでも映画にした時の脚色の問題かもしれないけれど、ツッコミどころというか疑問があった。

 その辺りも含めて、微妙な評価にはなってしまうかなぁ」

 

 

アクションシーンについて

 

まず、本作のアクションシーンはとても素晴らしいものだよね?

 

さすがは佐藤監督、様々な工夫を凝らしたものを見せてくれた

 

カエル「まるで一騎当千で駆け巡るゲームのようなシーンもあったり、爽快感が強かったんじゃないかな?

 さらに大軍の迫力もあったし、騎馬で駆けるシーンなどもあったりして、1対1の斬り合い以外でも見所が豊富だったよね」

 

主「全体的には文句が少ないかもしれないけれど……ただ、騎馬のシーンなどは残念ながら現在の日本の映画界の限界が見えてしまう形となってしまった。

 馬が当時存在しないサラブレッドなどの自分でもわかる歴史考証の甘さなどはあるけれど、それは映画的な嘘として見逃すとしても、昔の白黒映画などの場合は本当に馬に乗って駆けるシーンがあって、それがかっこいいんだよ。本作の婆愛は明らかに合成なのが丸わかりであり、そういった点がマイナスポイントかなぁ。

 あとはワイヤーアクションも多いんだけれど、それも明らかにワイヤーに吊られてしまっているとわかる。

 当然ワイヤーを消して隠しているんだけれど、それでもバレてしまうほど直線的な動きというのはどうなのだろうか?

 撮影方法がバレるというのは映画の嘘を積極的に暴くため、ノれないと思うんだよね

 

カエル「……でもさ、今回は動ける役者を使っていたじゃない!?

 山崎賢人などもそうだけれど、左慈を演じた坂口拓はアクション指導の分野でも活躍する人だし、動きがとても素晴らしかったんじゃない!?」

主「そこは認めるけれど……ただ、ものすごくアクション映画としてのテンポが悪い。

 ここはネタバレありのパートで語ろうかなぁ」

 

 

 

 

役者について〜よかった役者について〜

 

今回の役者もそこまで悪くないんじゃないの?

 

……すごく人によるんだよねぇ

 

カエル「じゃあ、絶賛するのはだれ?」

主「長澤まさみと大沢たかおだな。

 特に長澤まさみはその見た目の美しさもさることながら、殺陣のシーンもあるんだけれど、その佇まいや動きがとても美しい。正直、アベンジャーズに出てきてもおかしくないどころか、自分の中では洋画のアクション女優と比べても遜色ないほどの見せ場だった。もしかしたら……初めて本当の意味で目を奪われた女性のアクションシーンだったかもしれない。

 見た目の美しさと体のラインなどの美しさに裏打ちされた、妖しげな魅力のある今作屈指の名演技だった!

 

カエル「そして大沢たかおは圧巻の存在感だったよね。

 最強の大将軍というのが一目でよくわかったし!」

主「彼は演技が舞台調のように見えたんだよねぇ……後述するけれど、この映画って役者の良し悪しというよりも漫画原作の実写化の難しさが出たんだけれど、1人だけ他の役者と系統の違う舞台調の演技をすることで乗り切り、さらに存在感を増すことに成功している。

 声の抑揚が派手だったり常に笑みを浮かべて不穏な雰囲気を醸し出していたり……中盤に彼が王宮で出てくるシーンがあるけれど、そこは完全に歴史ものの舞台を見ているようだった。

 この時代の将軍の圧倒的な強さって体格によるものだと思うんだよね。

 一般人の平均身長が140センチとか150センチの中で、190センチの大男がいたら無双するのは当然だけれど、その身長差はなかなか映画にはしづらい。そこを演技で圧倒的に別格感を出したのはさすが。

 ベテランの味を堪能すると共に、その腕の太さ合わせてさすが名優と納得したよ

 

 

 

 

漫画原作映画の難しさ

 

じゃあ、今度はよくなかった役者についてだけれど……

 

よくなかったというよりは、漫画原作の難しさが目立ったかなぁ

 

カエル「ちなみに……それは主演の山崎賢人?」

主「特に思うところがあったのは山崎賢人と橋本環奈。

 ただし、山崎賢人に関しては演技力がない俳優とは消して思わない。むしろ、自分はその人気にも納得しているんだ。

 だけれど……彼は漫画原作において作りすぎるのかぁ……全員が”キャラクター”のレベルを出なかったのが大きな問題だ

 

カエル「……キャラクター?」

主「なぜ漫画原作の作品を……しかもこういったアクションの歴史物を実写映画化するのだろうか? そこには血の通った人間だからこそ出てくる味があるからだと思うんですよ。

 だけれど、本作はその人間性を出すことを放棄しているようにすら感じられた。

 これは佐藤信介の漫画実写化作品には多いんだけれど……明らかに”漫画原作ですよ”というキャラクターの演技になりがちなんだよ。

 役者たちはただただ漫画の中のキャラクターを演じることに必死になって、人間のもつ複雑さ、あるいは多様な価値観や仕草が反映されているとは全く思えなかった

 

カエル「えっと……キャラクターと人間の違いってどんなところにあるの?」

主「端的に語れば、その人物がもつ一面性しか出さないのがキャラクター。

 今作でいうと山崎賢人はずっと怒鳴っていて、ただの直葉型のキャラクターに徹していた。だけれど人間ってもっと色々な面があるものなんだよ。とても単純でわかりやすい感情だけでは動かない。

 直木賞作家の桜庭一樹が『名前のつかない感情を書くことを大事にしている』ということを書いていたけれど人間を描くってそういうことでさ、本作では信の行動はほぼ全て怒り、恨みなどの直情的な理由で構成されており、それ以外はほぼ何もない。そんな人間はいないし、深みがなくただの”剣が強い乱暴者”というイメージになってしまった

 

カエル「橋本環奈もそうなの?」

主「彼女の場合は単純に少年のような演技をしようとしすぎて、硬くなりすぎている感もある。あとは……正直、役もそこまで良くなったんじゃないかなぁ。

 それは凛/えい政も同じ。彼の頭の良さ、カリスマ性がある程度以上伝わってこず、割と都合よく見えてしまった。

 全体的に脚本が見える演技になってしまっているんだよ。

 次に誰が何をいうのかわかりきっており、その予定調和の反応を返すだけ。 

その与えられた役のキャラクターを演じることに集中してしまい、突発的なことに対応するような人間の魅力がなくなってしまった。

 これは役者の問題というよりも、役と演出の問題も多いにあるかもしれない。

 そこから外れて人間らしさを感じたのは、宇梶剛士と……いつもの小物の偉いおじさん演技だけれど石橋蓮司くらいかなぁ。

 彼らは与えられたキャラクターの演技ではなく、いつもの演技をそのまま演じることで血肉を感じるような演技になっている」

 

カエル「……えっと、長澤まさみと大沢たかおはキャラクター演技とは違ったの?」

主「いや、ほぼ同じ。だけれど、あの2人には美貌と演技のスタンスとという他と圧倒的に違う魅力を出すことでキャラクターでも強い個性を与えていた。

 だからこれって漫画原作の難しさで……特に本作のようなアクション系の漫画原作につきまとう問題じゃないかな

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

作品考察

 

見せ場を信じられない作品

 

では、ここからはネタバレありで語ります

 

1番の問題点から語らせてもらうよ

 

カエル「えっと……Twitterでも”見せ場を信じられない、テンポが悪い”ということを書いているよね」

主「これはさ、邦画の悪癖なんですよ。

 1番の見せ場であるはずのシーン……例えばスポーツ映画の試合シーン、音楽映画の演奏シーンなどで、力を入れて作ったはずのそのシーンの力を信じることができない。

 だから観客やキャストが『なんてすごい試合(演奏)なんだ……』とか呟いたり、あるいは選手たちの独白や回想を入れてしまう。でも、そんなものはいらないんです。何故ならばそれが1番の見せ場だし、そのシーンが本当にすごければそんなこと言わないでも伝わるから。

 今作は最大の見せ場をぶつ切りにしてしまっている

 

カエル「……確かに、ちょっと回想シーンが多かった印象かなぁ。

 しかもつい3分くらい前のシーンを回想するのは酷いかも……」

主「例えば序盤のボスキャラと戦うときに過去の回想が入るけれど、あれは全くいらない。入れるならばもっとタイミングを選んで、バトル中はただただ戦闘だけを見せた方がいいです。

 またさ、作品のもっとも盛り上がる戦が始まる場面で、すでに戦いが始まって時間がないのに悠長に語り合い、誰も危機感がない。

 こんなシーンがあるだけで全部台無し。

 これがさっきから語る”台本の見える予定調和”ってやつ。

 極め付けはお互いの勝利条件である王様の首が目の前にあるのに、誰も取りに行かない、行っても5人くらいで一気に攻めたり弓矢を使えばいいのに、詰めが甘すぎる。何のための弩なんだよ。そして会話が始まるとじっと見ている……何よこれ?

 せっかくの動けるキャストを集めて、あれだけの演出をして、それなのに流れを止めるわけ?

 

 

 

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物語のメリハリの問題

 

それって物語全体にも大きな影響を与えているの?

 

単純に、メリハリがこの映画はあまりないんだよ

 

主「すごく単純に語れば、この映画は3つのパートで構成されている」

 

  • 信とえい政の出会い、共に中国の統一を目指すまで
  • 集合場所に逃げ込み、山の民の協力を得るまで
  • 最終決戦

 

カエル「こうやってみるとわかりやすく3幕構成になっているんだね」

主「さらにいうと、1幕のラスボスに強そうな暗殺者を加えるなどの盛り上がるポイントは作っているんだけれど……やっていることは逃げるor戦うの連続だし、メリハリがあまり感じられない。

 そしてせっかくの戦闘シーンの流れが悪いから、緩急がうまくつけることができずに、ずっと一定のリズムになっているように感じられた。

 しかも上記のように演技もほぼ同じようなものだし、目的もそんなに変わらないし……」

 

カエル「何か大きな変化が欲しかったのね……」

主「全部のパートで戦闘&説明(会話)にする必要はあったのかなぁ。

 あと、全体の状況説明を行う会話パートはもっと工夫を凝らして欲しかったかな。例えば『そのとき歴史は動いた』のような簡単な地図と顔写真付きのCGを使うなどしたら、もっとわかりやすかったかも」

カエル「それだと全体のバランスが崩れるから避けたんじゃない?」

主「面白いと思うけれどなぁ……本作の魅力である大軍を率いる将たちの思惑もわかりやすくて、しかもワクワクするように作れるんじゃないかなぁ」

 

 

本作が描いた社会性

 

褒めるポイントってないの?

 

秦の始皇帝という悪逆非道のイメージも強いキャラクターの描き方かなぁ

 

カエル「やっぱり、秦の始皇帝ってその後の圧政や苛烈な行動もあって……まあ、あの時代の中国って大体そんなものなんだけれど、結構やりすぎな印象も与えるけれど、それが冷静な役になっていたのが印象的だよね」

主「自分がこの手の大作歴史ものに望むものがあったよ。というのは、弱い者が知恵と工夫によってのし上がるというのは物語との常道だけれど、そこに山の民という忘れられた、ある種の被差別民族を含めて血統主義者をぶち壊すという点は良かった。

 ただし、その点でいうと……ラストバトルの中ボスの処刑人の存在が引っかかる

 

カエル「彼って一体何だっただろう……話によると原作ではきちんと描かれているらしいけれど、映画では単なるクリーチャーになっていたよね」

主「あいつが世界観をぶち壊しなんだよなぁ……ラストバトルの中ボス的に強い奴を用意したかった、それこそ『ブリーチ』の時のホロウと同じ扱いなのはわかるけれど、クリーチャーにしすぎたせいでこの”醜いもの、忘れられた者の救済”という点の社会性が弱くなってしまった。

 だって、どう見てもあの処刑人は血統主義の結果生まれていないじゃん。

 その辺りが見た目で差別化したかったのはわかるけれど、映画としてはブレた印象。

 ただ、これだけ文句を言っているけれどきちんと汚れた格好や演技をしていたし、美術や衣装などに関してはかなり良かった。

 この続きがあれば是非とも見たい作品となっているね」

 

 

 

まとめ

 

では、この記事のまとめです

 

  • 圧倒的なスケールと作り込みによってヒットしてほしい邦画大作!
  • ただし漫画原作の悪癖というべきキャラクター依存の演技に思うところも
  • アクションシーンがいい分、流れを切らずに見せ切って欲しかった!

 

悪い作品ではないと思います!

 

 

カエル「これを機に原作を読んでみようという人も多いだろうし、その販促にもなったんじゃないかな?」

主「自分もこの先の展開が気になるし、基本的に戦国時代の群雄割拠ものって面白いから興味があるかなぁ。

 興行も含めてこの先も注目したい1作です!」

 

 

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