今回は、うちが応援している英勉監督の『東京リベンジャーズ』のネタバレ感想記事になります!
アニメ版・原作ともに未見の感想になります
カエルくん(以下カエル)
「実は見にいくか迷っていたのですが、英監督作品ということで見に行っています」
主
「大ヒットしているようで、実に良かった!
もはやエンタメの中心とも言える人気ぶりで、ここまでヒットするとはびっくりだったな。危うくブームに乗り遅れるところだったよ」
カエル「では、そんなにわかのにわかが感じた感想はどうだったのか、記事のスタートです!」
感想
それでは、Twitterの短評からスタートします
#東京リベンジャーズ
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2021年7月10日
英〜!
メチャメチャメチャ面白かった!
ヤンキー映画らしいアクションと意地を通していく男のドラマ
そして過去に言い訳をして逃げていた男の再生のドラマ!
この手の作品は役者をいかに魅力的に魅せるかが重要だがさすが英勉監督、全員がキャラ立ちしていて気持ちいい! pic.twitter.com/1C6UuET6lF
2021年の漫画原作実写映画の中でもTOPクラスに面白い作品だったね!
カエル「うちは英勉監督作品に甘いところがあるんですが……まあ、相性ですね。
その中でも今作は特に満足度が高く、面白い作品でした!
原作を読まず、アニメ版も観ないでなんとなく流行っている作品なだなぁ、英監督だし観に行くか……くらいの気持ちでしたが、それでも問題なく楽しめましたよ!」
主「とてもいい作品だったね。
うちが英勉をとても高く評価しているのは、以下の点が優れているからなんだけれど……
- 漫画の魅力を損なわずに映像化できる
- 役者(特に若手のアイドル役者)を面白く演出することができる
この2点だけでも、かなりの能力がある人だな。
漫画原作はクソだと言われやすいが……まあ、それ自体が誤解だとは思うけれど、その理由の1つが映像メディア→映像メディアの翻訳になる難しさに加えて『実写的なアプローチをしよう』と思ってしまい、かえって作品の魅力を損ねてしまうこともある。
しかし、英作品はそこを見事にカバーすることができるわけだな」
その点、映画ファンからは嫌われやすい印象もあるのかなぁ
言うなれば、目指す先は超B級作品だからね
カエル「昔、立川談志が爆笑問題に対して『お前らは2流芸人だ。ただ、超2流になる芸人だ』と言ったというけれど、この言葉って芸が拙いというというよりも、1流のなんでもこなすスターではなく、一芸に特化したお笑い芸人になるという意味なんだよね。
それでいうと、英勉も映画ファンの誰もが憧れるような1流映画監督ではなくて、むしろB級映画的なものを量産し、あくまでもエンタメに徹していくのではないか? というような思いがあります」
主「世界の映画賞で注目されるということは、決してないだろう。
まあ、そこを目指してもいないだろうけれどね。どちらかと言えば漫画原作が多い監督であるし、映画ファンからは舐められやすいジャンルだ。
しかし、年に1回しか映画館に行かない人、役者を観にいく役者ファンにはわかりやすい物語を作れる人でもある。
その意味では今作も立派な合格点。
アクションよし、役者よし、さらに原作やアニメ版の入り口にもなり、初見も作品ファンも満足できる……そんな作品に仕上がっている」
娯楽性の幕の内弁当
本作の魅力の1つとしてアクション描写があります
うちはそこが専門ではないが、ここも見応えがあったものじゃな
カエル「ヤンキー漫画・映画の魅力の1つが迫力のあるアクション描写だと思います。
特に近年は『HiGH&LOW』シリーズや、コメディにふった『今日から俺は!』シリーズなどもあって、にわかに少しずつ人気を取り戻し始めていますが……その中でも、今作は特に圧巻だったのではのではないでしょうか?
ベテランのアクション監督、諸鍛治裕太の手腕も光ったでしょう!」
主「今作の場合は、日常的なアイテムを使ったバトルシーンが多い。
例えばヤンキー作品の武器の王道であるバットなどもそうであるが、他にもその場にあるカートだったり、あるいは手すりに打ちつける、窓を割って突き落とすなどの日常的なものを使ったアクションが印象に残る。
またタイマン戦、あるいは2対多数、多数対多数の乱闘戦などもあり、さまざまな魅力を醸し出したいた」
そこまで作り込まれていない、観ている最中でも笑ってしまうようなガバガバなSF的なタイムリープ設定だったけれど、そこの緩さも許せちゃうかな
ここは原作から適度な嘘としてあるものだしね
カエル「他にも恋愛もの、あるいは青春作品としても重要な描写もたくさんあったよね。
弱いけれどSFやミステリー要素もあったりとかして……ほんとに、エンタメ映画の幕の内弁当ってくらい満遍なく色々なものが入っていたんじゃないかな?」
主「1つだけ突出したものはないが、多くの物語の魅力が詰め込めれている。
そして長期連載漫画→実写映画に翻訳する際は、その再構成がとても難しいのだが、今作に関してはそこも完璧に近い。
さらに言えば、この先に続編があるとしても問題が少なく、それでいながらも1作に完結できるように調整されている。
もちろん、この映画は娯楽作であり、深い人間性の探求などはないだろう。
だけれど、娯楽映画とすればこれほど上手くいった例も少ないんじゃないか? この映画を極端に嫌う人は、おそらくほとんどいないと思うんだよね。
漫画原作の実写作品として、成功作に名前が挙がるのは間違いないかな」
役者について
それでは、役者についても語っていきましょう!
みんな、快演だったと言えるね
カエル「今作では直接的に言及はされていなかったはずだけれど、原作の中学生→高校生に改編されている印象だったね。
中学生だったらすごく浮いていたと思うけれど、高校生だったら20代から30代のキャストでも、それが許容できる嘘の範囲内で……それぞれの魅力がすごく際立っていた!」
主「まずは、主演の北村匠海であるが、彼が中心としてピッタリとはまったね。
大人バージョンの時は情けないような、いかにもダメ人間というような風貌と怖気付いている様子を演じ、そして過去に戻った際はヤンチャなヤンキーくんになる。ただし、それはヤンチャで収まるレベルである、というのも本作では重要だ。
それでも引かない時は引かない強さを手に入れていく。
単なる喧嘩の強者ではなく、心の強さを手に入れていく様というのは圧巻であり、彼に感情移入する人も多いだろう」
カエル「ヤンキー漫画や映画の主人公って『怖い人だなぁ』と思ってしまって、そこに感情移入できない人もいると思うんだよね。
だけれど、今作の場合は大人バージョンがヤンキーとはかけ離れているから、かつてヤンキーに嫌な目にあった人や、一般のおとなしい人でも感情移入しやすいんじゃないかな。
また、巻きこまれ系主人公というのも大事で、武道自体は平穏を望むんだけれど、色々な事情でそうもできないというのもいい主人公になっているよね」
そして名脇役たちがたくさん登場です!
誰も彼も色々な意味で味のある、いいヤンキーキャラを熱演していたね
カエル「なんと言ってもマイキー役の吉沢亮、そしてドラケン役の山田裕貴だよね。2人の魅力がピカピカに光っていた印象です!」
主「物語の都合上、この2人……特にマイキーは武道が絶対に勝てないような圧倒的な身体能力と、そしてチームを束ねるカリスマ性を持っている必要がある。
それを映像表現で達成しているし、なぜあの2人に人がついていくのか、というのがよくわかる。
それでいて、まだ高校生のヤンチャさもあるし、可愛らしさも感じさせる名演だった。
また、忘れてはいけないのはキヨマサ役の鈴木伸之!
マジでただのクズ野郎で、典型的な悪いヤンキーなんだけれど、武道の最大の敵として立ちはだかる。その大きな体も含めて圧倒的な存在感があった。
今作に関しては誰もがヤンキー演技がハマっていて、見応えがあるものだったのではないだろうか」
以下ネタバレあり
作品考察
冒頭の改編
では、ここからはネタバレありで語っていこうと思います!
まずはなんと言っても冒頭の改編がうまかったね
カエル「うちは実写版が面白くて、そちらを経てから漫画版の1巻・アニメ版を少しずつ見ているような状況ですが、それでも『このように改変したのかぁ』と、感心するような作りになっています!」
主「まず、この映画重要なのはテーマが一貫していることなんだよ。
つまりタイムリープやヤンキー要素はあるけれど、それはあくまでも作品におけるオマケでしかない。今作のテーマは”男の人生のやり直し”なんだ。
それは逃げ続けた男がどのようにして人生を再びやり直すのか……そこが重要なテーマとなる。
そのためには、最初に逃げ続けた情けない姿を強調することが必要になってくるわけだ」
カエル「ふむふむ……それが映画オリジナルの
- 店長に煽られる場面
- キヨマサとの対峙で逃げ出そうとする場面
- 奴隷としての地獄の日々
の描写につながってくるわけだね」
主「こういった情けない描写を重ねることで、原作以上に武道の情けない姿、逃げ続けた姿を強調することができるわけだ。
また、冒頭の東京卍會とヤクザの抗争によって、強烈で観客の印象に残るようなスタートも作れている。これから武道が戦う相手の強力さが、とてもよくわかる。普通に戦ったら敵わない、住む世界が違う相手だと強調しているんだよね。
本作に関してはあくまでも目的は日向の救出であるわけだ。
そのために弱者がどのように立ち回り、運命を変えていくのか……この”弱者が変える未来”という点もまた、面白くなるポイントだね」
ライティングの演出
次に映像的な部分について語っていきましょう
今作でわかりやすいのはライティングだ
カエル「ライティング、つまり場面に合わせて光の強さや色を大きく変えているということだね。
例えば、このシーンなどがわかりやすいかもしれません」
とてもわかりやすく、今後への不安を煽るために紫のライトが使われているわけだ
主「このシーンなんかは、今後の……それこそ続編が制作されるとしたら……まあ、これだけヒットしたら作られると思っているけれど、そこへの伏線にもなる描写だよね。
描かれない不穏な気配をライティングと色で伝えているカットだ」
カエル「そのほかに注目して欲しいのが、このあたりですね」
この2つのシーンはとても重要だね
主「上の画像はこれから死地での決戦に望む姿。真っ青でどちらかというと青白いライトを当てることで、より悲壮感や危ない予感を演出している。それでも、武道の顔が全く諦めていないのがこの後の物語ではとても重要になってくる。
また下の画像ではマイキー無双のワンシーンだけれど、マイキーという存在がどれほどカリスマ性があるか、そして武道などからみたら救いのように見えているかがはっきりとわかる。そのためにスポットライトを浴びるように演出している。
この辺りは照明の三善章誉がエンタメ大作としてとてもわかりやすく、面白い演出をしてくれたのではないかな?」
男の物語へと筋を通す
今作が映画的だと思う部分はどこになるの?
う〜ん……やっぱり、男の意地を通すというテーマになっていくのかなぁ
カエル「原作者の和久井健作品で言えば、実は前作の『新宿スワン』を途中まで読んでいますが、実は結構内容が似ている部分もあったりして。
新宿スワンは新宿を舞台とした風俗のスカウトの話ですが、主人公が童貞で馬鹿なところもあるけれど、それでも情に熱く一本気な性格などは共通しているよね。
その新宿スワンの物語をヤンキーにして、少年漫画として読みやすいように変えたのが本作と言えるのかな」
主「本作は映画的、とはなかなか言いづらいかもしれない。というのも、英作品らしく、徹底的に娯楽にふり、漫画的な要素や魅力を無くさないように映像化されているからね。
それでも、やっぱり自分が1本の映画として上手いと思うのは、男が成長し、自分の人生を取り戻す物語として筋を通したからだ。
もちろん、それだけじゃない。
- 役者陣を徹底的に魅力的に魅せる
- 今後の物語に続くような要素を内包する
- それでいて、1本の物語として完結させる
これらの条件をクリアするのって、相当難しい。だけれど、今作は……例えば原作にあった東京卍會の仲間割れなどをあえて省くことで、物語をスリムに構築している。
それでいながら、青春作品としても優れているわけだ」
ふむふむ……恋愛も含めて、それだけ多くの要素を無理なく入れるだけでもすごいよね
それでいながらも、男の物語になっている
主「作中でも語られた通り『今時ヤンキーなんて古い』というのは、自分はその通りだと思う。2010年くらいの設定だからああいう子供たちもいたような気もするけれど、現代だったら結構ダサい存在に見えるよね。
それでも筋を貫き通し、ヤンキーを時代遅れじゃない、かっこいいものとして描き抜いた、時代に逆行した映画だよ。
タイムトラベルは武道だけじゃない、我々観客も味わっていた。
あの頃の……まあ、実際の現実にいるヤンキーは別としても、80年代ごろからあった古き良きヤンキーの世界へと、観客もタイムスリップしていた。
それを達成しただけでも、この作品は賞賛に値するのではないだろうか」
終わりに
では、ここで締めになります
思えば、ヤンキー映画ってヤクザ映画の亜種なんだよね
カエル「ヤクザ映画ほどの暴力性というか、バイオレンスさがなくなって、拳で殴り込みにいくとか……なんというか、幼児的にしたのがヤンキー映画なのかな」
主「時代はヤクザ映画もヤンキー映画もすっかり昔のものになりつつある気もする。ヤンキーはまだ残るかもしれないけれど……
それでも、これだけ古きものの息吹を感じる作品がエンタメとして生まれたことは、とても誇らしくて喜ぶべきことではないだろうか。
あとは、最後の最後に、うちも応援しているSUPER BEAVERらしい、血の通った意志の強いメッセージのある歌詞も魅力的だから、最後まで鑑賞してね!」