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物語る亀

ネタバレありの物語批評

映画『聲の形』感想 リアルな作画に感情がえぐられていく……※ネタバレなし

映画 アニメ 京アニ アニメ映画

カエルくん(以下カエル)

「いや、いい作品だったねぇ」

 

ブログ主(以下主)

「……なんだかさぁ、最近、色々映画を見ていると思うんだよね」

 

カエル「何を?」

主「『シン・ゴジラ』とか『君の名は。』とか、『今年一番じゃない?』ってレベルの作品が続いていてさ、これだけでも異常だなぁって思っていたけれど、また今月も『聲の形』がここできたわけじゃない。

 もしかしたら、今まで自分が見てこなかった映画でもこのレベルの作品がたくさん公開されていたんじゃないかって。

 これがスタンダードな印象すらしてきたよ。そんなわけないのに」

 

カエル「今年の邦画は本当に良作揃いだよね。それこそ、漫画原作でもいい作品もあるしさ」

主「どうしちゃったのよ? って言いたくなるくらいだよ。これで3ヶ月連続で年間1位クラスの衝撃が続いている。あれ? もしかしたらこれだけ感受性が上がっているとしたら、自分の死期が近いんじゃないかって錯覚すらしてくる」

カエル「はいはい、馬鹿なこと言ってないで感想記事を始めるよ。今回はネタバレなしでいいんだね?

主「ネタバレありはまた別に書くんで、そっちで演出とかメッセージ性とかは考察しようかな。ネタバレは少しだけかな」

 

 

 

ネタバレありの考察記事はこちら

 

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上記の記事の続きはこちら

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 1 全体感想

 

カエル「まずはネタバレなしの全体感想だけど……すっごいリアルで、胸が締め付けられるようだったね

主「『けいおん!』とか『たまこラブストーリー』において圧倒的なリアリティを表現してきた山田尚子監督だけど、それは今作でも見事に発揮されている。特に超絶技巧で知られる京アニ作品だからさ、作画に関しては文句なし。

 体の動かし方も柔らかいし、細かい部分までこだわって作画されているのがわかる」

 

カエル「そうだよね。主がよく言うのが『学園ものでのリアリティのつけ方』だけど、そこはどうだった?」

主「さすがだよね。高校生ってさ、みんな制服を着ているからモブも含めて同じような作画にしがちだけど、実はみんなそれぞれ細かく違っている。そこで性格を表しているんだよ。

 例えば、制服にブレザーをきっちり着込んでいる生徒もいれば、カーディガンを羽織る生徒もいる。そのカーディガンの色もそれぞれ違うし、中にはYシャツ姿の生徒もいるでしょ? 

 男子ならばネクタイの結び方、開けているボタンの数、透けたシャツの色、女子で言えばスカートの長さ、靴下の色、カバン、靴、つけている小物……そういったもので一人一人の個性というのが見事に現れている」

 

カエル「だけど、そこが杓子定規に同じものになっている作品が多いってよく批判しているよね」

主「そう。だけど、京アニはそこをしっかりと考えて、モブに至るまでしっかりと作りこまれているよね。神は細部に宿るというけれど、こういうところがなんとも言えないリアル感に繋がってきていると思う

  

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声優について

 

カエル「じゃあ、次に役者についてはどうだった?」

主「今回もベテランの大御所声優ってあまりいない。いや、ゆきのさつきとかいるけれど、大人はそこまでガッツリと絡んでこないじゃない? 基本的に若手主体の配役と言っていい。

 その中でも実力のある人たちを連れてきているからさ、違和感なく見れる。特に深夜アニメに慣れていると、垂涎もののキャストだよね」

 

カエル「特にヒロインの西宮硝子役の早見沙織が素晴らしかったね

主「そうそう。声がうまく出せない役所で、演技の幅が問われるけれど、個人的には今年見たアニメの中で一番の名演技だったんじゃないかって思うほどに素晴らしかった。

 特にさ、感情が爆発するシーンがあるけれど、そこの声質の美しさとか、呼吸とかが本当にいい。これで今年の声優アワード主演女優賞は決まったとすら思うよ」

 

カエル「主は早見沙織が好きだもんね」 

主「今作にも出ているけれど、悠木碧と早見沙織が25歳以下ではトップ2の演技力だと思っているからね。結弦役の悠木碧はさすがだよね。早見沙織との掛け合いも多いけれど、阿吽の呼吸だったし、少年のようでもあり、少女のようでもある難しい役どころだったけれど、それも何の問題もなく表現されていた」

 

カエル「他のキャストに関しては?」

主「入野自由とか、小野賢章とか若手の中でも評価の高い面々だし、すごく作品や役柄に合っていて良かったよ。特にひどい演技の人は当然いない。

 あとは……また女性の話になるけれど、植野直花役の金子有希が特に印象に残ったかなぁ。結構激しい役でさ、一見するとすごく嫌われやすい性格だけど、すごく魅力的だった。たまこラブストーリーのみどり役の時も思ったけれど、いい声優だよね」

 

カエル「じゃあ今作唯一の芸能人声優である、松岡茉優に関しては? まあ、主は松岡茉優も好きだから、どうせ絶賛なんでしょ?」

主「この若手の中で、しかも基本アニメ演技をしている人たちの中で演技するのはすごく難しいし、浮くのは当然だよね。その中でうまかったと思う。少しアニメ的でない演技があって、違和感があるにはあったけれどさ。

 今回、少年役ということで少し低い声を要求されたと思うけれど、結構女性声のままで、少し、お? っと思う部分はあったけれど、でもさ、松岡茉優だからこそ出るいい演技もあったと思うし、監督が絶賛したというのも納得だね」

 

 

2 原作からの改変

 

カエル「ここは少し荒れそうだね。元々7巻もある原作を2時間に収めるから、削る箇所は出てくるだろうけれど、原作ファンには非難の声も上がるかもね

主「個人的にはいい改変だったけれどなぁ。元々、原作は小学生時代はすごく高く評価しているけれど、高校生時代ってそこまでと比べるとイマイチだなぁって思っていたのよ、自分は。

 特に映画の撮影とかって……それこそハルヒは笑いにしたけれど、高校生の素人が集まっての自主制作映画って碌なことにならないじゃない? しかも仲がそんなに良くない人間が集まってそんなことをしても、揉めるだけだと思うし。そこを改変してきたのは良かったと思う」

 

カエル「そこを望んでいたファンからは非難がありそうだね」

主「あとは……その影響で一部の登場人物の出番がガッツリと削られたことかなぁ。映画をとらないとなると、出番がない人もいるわけじゃない。その人がガッツリといなくなっていることに違和感がある人もいると思う。

 だけど、この作品の2時間に込められたテーマとか、演出の意味とかを考えるとよく練られていて、詰まっているからさ、自分はこの改変は良改変だと評価するよ

 

カエル「漫画向きの描き方と、アニメ向きの描き方はまた違うからね」

主「下手にそう言った要素をつぎ込んで展開が早くなるとしたら、この方が英断でいいと思うけれどね」

 

キャラクター描写について

 

カエル「次にキャラクター描写についてだけど……」

主「……ここは、まあ原作からしてそうなんだけど、結構苦手なキャラクターが多いんだよね。特に男にさ」

カエル「リアルなキャラクターだから余計に想像しやすいしね」

 

主「そうそう。あの先生とか『ああ、いるいる、こんな人』って思ったり。長束も結構周りを気にしないでガンガンと行くタイプだから、苦手なんだよね、ああいう人。それから……真柴もそうだし、川井なんて本当にダメ! 『いやだぁ、近づきたくない!!』って思っちゃう。

 いや、それでいいんだよ? リアルなキャラクター描写を目指しているだろうし、あの……昼ドラで出てきそうな女性キャラクターの嫌なところを濃縮したような人物像だからさ、すごく既視感もあったし。

 演出も作画も声優も、吉田玲子の脚本もうまいからこそ『滲み出る嫌らしさ』に溢れていたね

 

カエル「逆に好印象は……まあ、大体の人は結弦と植野をあげるか」

主「主役の2人を除くと、この2人の描き方というのがすごく他と比べて特徴的だったね。すごく作画に力を入れているのがわかるし、特に序盤の結弦、後半の植野の作画は絶対にスタッフにファンがいるだろ! って言いたくなるくらいに素晴らしいものだった」

カエル「なんでこの2人はこれだけ力を入れらたんだろうね?」

主「今回は、明確に各キャラクターに役割が与えられていると思うんだよね。それもネタバレありの考察記事で書いていくけれど、それが大きく影響していると思う。

 ちなみに、一番好きなキャラクターは植野かなぁ。この子の役割って相当大きいよね」

 

 

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3 えぐられていく感情

 

カエル「リアルな作劇だからこそ、の感情だよね」

主「そうそう。こう、鑑賞中ずっと心が抉られていってさ、もうやめて! って叫びだしたくなるんだよね。だからこそ、彼らの一つ一つの叫びが心に沁みてくるんだよ。

 泣ける映画っていうと……なんというか、言葉が悪いけれど『感動の押し売り』みたいなところがあるじゃない? この作品の感動は『感情の解放』の先にあると思うんだよね」

 

カエル「感情の解放、ねぇ」

主「例えば、いじめの描写もあるけれど、なんでいじめが発生するのかというと、個人の考えでは『全体主義における異物の排除』が原因で発生すると思うんだよ。

 作中でもあったけれど、大きな目標を達成しようと集団で努力しているところに、それができない人物がいるとそれを排除しようという動きになる

 

カエル「でもさ、障害があるから仕方ないじゃない」

主「これは障害の有無関係なく、その能力がないなら何もするなって話でもあるんだよね。例えば、クラス全員リレーで優勝を狙う時に、全力で走っても50メートル10秒台の生徒が、頑張ったら8秒台になるのかというと、そんな簡単な話ではない。

 だったら、全体主義のクラス感情としたら『あいつ休んでくれないかな』っていう思いになるのは、ある種当然だと思う。

 これが大人なら、例えば人事異動だったり、最悪窓際で閑職に追いやられたりさ、自分から辞めるという手もある。だけど、学校はそういう逃げ道がないし、基本的に自分の意思で辞められないし、閑職に追い込むこともできないしというストレスがお互いに溜まる一方なんだよね。

 別に初めからイジメようとしていたわけではないじゃん? あのクラスも。ただ、ストレスのはけ口がなくて、暴走したって感じでさ」

 

カエル「主って全体でやる……合唱とか大縄跳びとか嫌いそうだもんね」

主「もう大っ嫌いよ。好きでもないのに強制させられて、成功して当たり前、失敗したら責められてさ。『みんな一緒』って雰囲気が大っ嫌いだった。

 その嫌いな雰囲気があるんだよね、この作品。だからずっと心を揺さぶられる。じゃあ自分が将也だったら、硝子だったら、クラスの一員だったら何ができたか? と問われたら……今なら何かするかもしれないけれど、あの当時は何もできないと思う。特に先生もあんな感じだし。

 そういう思いをえぐってる作品だよ」

 

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感情の解放

 

カエル「そして、その思いを抱えながら鑑賞している時に、ある瞬間において感情が爆発するわけだ

主「そうそう。こう……溜まっていた感情が一気に解放されてさ、それがグチャグチャになるんだよね。

『幸せになってよかったね』とか『かわいそう、なんとかしてあげたい』とは違う、目の前に鋭いナイフを突きつけられて、チクチクと刺されていくような痛みを感じる瞬間があるからこそ、一気に解放する瞬間がある。

 それがじわじわと効いていくんだよ。『桐島、部活やめるってよ』に近い感情かな?」

 

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カエル「じゃあ、爽快感とかはあるの?」

主「『シンゴジラ』とか『君の名は。』みたいは圧倒的な爽快感は……比べると少ないかな。でもさ、この映画にはじっくりとこちらに突きつけられるような『感情』がはっきりとあるんだよね。

 だから、この映画を見終わった後は相当に心に残るものがあると思う。 同日公開の『BFG』のチケット買っておいたけれど、ほっぽり出して帰ろうかな? って思ったし。

 その意味ではデートムービーとか、ファミリーで一家団欒という映画ではないね。むしろ1人で見て色々考えたり、全てを語り合える親友と見に行って、ああでもない、こうでもないって語り合った方がいい映画じゃないかな?」

 

カエル「なるほどね。その辺りも詳しい話はネタバレ記事の方でしようか」

 

 

最後に

 

カエル「じゃあ、ネタバレがほとんどなしの感想記事はここまでにしようか」

主「色々言ってきたけれど、アニメ映画って基本的に爽快感がすごく強い作品が多かった印象がある。けれど、これはリアルな作劇で、リアルな感情をこちらに訴えかけてくるから、今まであまりなかったタイプのアニメ映画になった印象だな。

 SFでもファンタジーでもないしね」

 

カエル「劇場に観に行く価値はあるでしょ?」

主「そりゃもちろん。この作品が劇場で見ることができるというのは、それだけでアニメオタクからしたら幸せなことだと思うよ。

 今月では一番の感動を与える映画になったんじゃないかな? 最初に言ったたけれど、普通だったら年間トップレベルの映画だから。今年は異常だからそう言いきれないけれど」

カエル「それでは次はネタバレありの考察記事を書くので、そこで会いましょう! 多分この記事よりも長くなるね」

主「それだけ語りたいことがあるってことよ」

 

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