今回はみんな大好き、デジモンシリーズの新作映画の感想記事です!
すんごく楽しみにしていた作品だね!
カエルくん(以下カエル)
「2020年はおジャ魔女どれみを題材にした『魔女見習いを探して』が5月に公開を控えるなど、東映アニメーションの歴史的な作品が公開するね」
主
「その先陣を切るのがこの作品かぁ……
一部では不安の声もあるようだけれど、自分としては予告の段階で絶賛する用意ができている!
それくらい期待度が高い作品です!」
カエル「その高いハードルを乗り越えることができるのか?
そこも含めて語っていきましょう!」
考察記事はこちらです
映画『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』特報
YouTube配信もやっています
映画レビュー『デジモンアドベンチャー ラストエヴォリューション絆』をネタバレ徹底解説!カメガタリ#10〜物語る亀〜
感想
それでは、Twitterの短評からスタートです!
#Digimon#デジモン#ラスエボ
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2020年2月21日
かつてデジモンを愛した全ての選ばれし子供たちに捧げる
無限大な夢の後に残された何もない世の中、それでもぎこちない翼でも飛べると確信させてくれた
20年以上にわたったデジモンへの愛に涙が止まらない
2020年、映画暫定ベストの大傑作です pic.twitter.com/0FZ0WCeQWt
全ての選ばれし子供たちに捧げる、デジモン映画の”ラスト”にふさわしい大傑作です!
カエル「暫定ではありますが、文句なしの年間ベスト候補です!
もちろんデジモンを長年愛してきたファンだからこその意見でもあり、シリーズ初見の方にも届くとは思いません。だけれど、それでも届くものがあると信じてやまない、青春の終わりを描いた映画としても素晴らしき傑作です!」
泣いたねぇ……泣いた
主「一応、春からデジモンの新作テレビシリーズが作られることは発表されていて、それに対して『じゃあ、この映画の意味は?』って首を傾げた部分もある。そんな見切り発車をしているから、デジモンシリーズは高い人気を誇りながらも、いまいち爆発力を持続させることができなかったのではないか? という疑問もあった。
でも、自分の中で全部吹き飛んだ……それこそ、このブログでも酷評したけれど、triが決して無駄ではなかったと思い知った。
それくらい……大絶賛が止まらない作品です」
劇場内でもお客さんが目元を拭う姿が、視界のはしで印象に残ったね
自分も涙が止まらなくなったよ
カエル「じゃあ、感動の押し売りなのか? というと……そういうわけでもなくて。きちんとバトルもある、コメディもある、デジモンたちの可愛らしい描写もある……でも、それらが繋がった時の衝撃というかね」
主「なんで僕たちがデジモンを愛したのか? ということも伝わってきた。
同時に『デジモンとはなんだったのか?』ということを意識的に向き合った結果の作品でもあるんだ。
覚悟にも溢れているし、正直、これ以上の作品は2020年出てこないんじゃないかなぁ……なんてことを思うほど。
もちろん、思い出補正バリバリだけれどね。
自分はほぼ太一たちと同世代だからさ……もちろん、今となっては年下になってしまったけれど、その思い出も込みで蘇ってきたよ」
デジモン映画の難しさ
評価軸1 細田守との向き合い方
予めて決めていた、今作の評価軸の1つが”細田守との向き合い方”になります
現代を代表する名アニメ監督だけれど、だからこそデジモン映画は”呪い”を背負うことになったとも言える
カエル「特にデジモンファンのみならず、アニメファンからもいまだに語られるのが99年に公開された『デジモンアドベンチャー』と『ぼくらのウォーゲーム』です。
特に99年版はテレビシリーズの放送直前に公開ということもあり、制作時期を考えると今ほど設定が固まっていなかったであろうことが予想され、若干テイストが異なっている作品でもあります」
主「流石に『ぼくらのウォーゲーム』では設定も固まっていたけれど、それでも細田守の演出が強かった。
これらの作品は当然”デジモンの映画”でもあるけれど、やっぱり自分が見るとそれ以上に”細田守の映画”という印象がある。これはテレビシリーズの伝説の神回である21話もそうで、放送当時は作家性とかの視点がなかったから、面食らった印象がある」
『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』がうる星やつらの映画というよりは、押井守の映画になっているのと似たような現象だね
『ぼくらのウォーゲーム』はデジモン寄りにはなっても細田守の映画だからね
カエル「それがいい悪いというわけではないし、優れたキャラクタームービーには強い作家性が発揮されているものでもある。
だけれどテレビシリーズやキャラクターコンテンツの場合は作家性が強すぎるのも考えもので……伝説の神作になる可能性もあるけれど、代わりにキャラクターコンテンツそのものが影響を受けてしまうし……」
主「デジモンの場合は初期作がそうだったけれど、特に映画作品は細田守の影響下にある作品が増えるか、あるいはそうではないと評価されづらい印象がある。
やっぱり、お客さんが望む”映画のデジモンらしさ”が細田守演出ありきのようになってしまうからね。
似たような例はポケモンの『ミュウツーの逆襲』でさ、批評性もある作品が生まれたからこそ、一気にブランド化が拡大したけれど、それが仇になっている部分があるように感じられる。今はその立て直しの時期かな。
で、自分の評価軸としては”細田守の作品とどのように向き合うのか”が重要な課題だった……
特に初代のデジモンアドベンチャーを映画化するならばね」
その結果は……見事という他ない
カエル「ここに関しては詳しくはネタバレありで語っていきます」
評価軸2 無限大の夢の後の何もない世の中
そして2つ目の評価軸は『Butter-fry』のサビにどれだけ向き合うか、という点です
ここが1番重要だったと言っても過言ではない
”無限大の夢のあとの 何もない世の中じゃ
そうさ愛しい 想いも負けそうになるけど
Stayしがちなイメージだらけの 頼りない翼でも
きっと飛べるさ On My Love”
カエル「もう、改めて語る必要もない、アニソン界を代表する大傑作であり、ある程度以上の世代では『残酷な天使のテーゼ』などと並んで、必ずカラオケで歌唱する楽曲なのではないでしょうか?」
主「Triに期待していた部分でもあり、同時にがっかりした部分でもある。
彼らの成長を描くのであれば、これは絶対に欠かせない。
おそらく、その思いを強く持っていたのはデジモンのプロデューサーを務め、今作ではスベシャルバイザーとしてクレジットされている関弘美だろう。
インタビュー等でも『現代ならばデジモンはスマホになる』などのような発言があるんだ」
現代で生きる若者たちが、本当に楽しい毎日を送っているのか? と問われると……そこは難しいよね
”過去の方が良かった”というのは、どの世代でも一定の人が思うことだ
カエル「過去の思い出は全て美しい、みたいな話なのかな」
主「喉元過ぎれば熱さ忘れる、とも言える。
今作に関してはこの部分に誠実に向き合っている。
一方で、だからこそ煽りをくらってしまった印象なのがtriで……ここも後ほど自分の妄想を詳しく語るけれど、本当はtriも同じことしたかったんじゃないかなぁ。
まあ、それは置いておくとしても、今作の場合は1つの批評性、あるいは時代の移り変わりを語る上でも大事な作品です」
声優について
今作はtriに引き続き、一部キャストは変更されています
今作くらいになると、もうみんな慣れたものだったね
カエル「特に印象に残ったのは?」
主「当然といえば当然だけれど、花江夏樹と細谷佳正だね。
太一とヤマトというメインキャラクターであることもそうだけれど、この2人は今の時代が選ぶ声なんじゃないかな?
特に花江夏樹は『鬼滅の刃』もそうだけれど、現代の若者の精神性を観客にグッと伝えることができる声質の持ち主なのかもしれない。その意味では……花澤香菜とかに近い存在かもね」
カエル「もちろん、他のキャストさんも不満点は一切ありません」
主「あとは、このテーマをやるのになぜ声優変更が必要だったのかが、よく理解できた。
元々は成長したキャラクター像と合わないとの、一部キャストが高齢化もあるのだろうと思ったけれど……もちろん、それも理由の1つだろうけれど、それが物語の演出に組み込まれていることにも感動した」
今作では批判のありそうな芸能人声優の松岡茉優については?
ファンの贔屓目込みだろうけれど、素晴らしい役者だと感じた
カエル「よくうちでも語るのが”アニメ声優と芸能人声優の演技のバランス”の問題であって……特に今作のようにキャラクターが確立している作品だと、よりアニメ的な演技が求められる関係上、芸能人声優の演技表現が浮いてしまいがちになります。
今作の場合は、そのちょっとした辿々しさを”日本語ができる外国人”とすることで、少しでもカバーしようとしていたよね」
主「そのせいで英語がちょっと怪しいのは、ご愛嬌ということで。
でさ、彼女の役割はリアルタイムでデジモンを知りながらも、現在は選ばれし子供たちではない存在、ということ。
そこを芸能人声優にすることで、ある種の異物感もあった。
だけれど……そういうと酷い褒め言葉なんだけれど、ちょっと意外だったけれど……やはり松岡茉優は現代を代表する若手女優だった」
芸能人さんの演技としては、非常にうまかったよね
彼女の声は決して声優向きだと思わない
主「声優向きの実写をメインに活躍する若手女優だと、上白石萌音とか、あるいは杉咲花あたりだろう。声が可愛らしく、アニメのキャラクターとして聞き応えがある。
アニメの声優の難しいポイントは、基本的にメインとなるのは”キャラクター”なんだ。
つまり、アニメーターさんが絵に描いたキャラクター、声優はそこに声を当てる、あくまでもボイスアクターにすぎない。ボイスアクトが強すぎると違和感が出るし、さらにそのキャラクターに合った演技が求められる。
その結果、いわゆるアニメ的な演技が多くなるわけだ」
カエル「だけれど、普段演劇などをしている方は”自分=キャラクター”になるから、声以外も含めて演技をするわけで、声だけに限られるとちょっと難しい部分があるということだね」
松岡茉優って、本当に努力を重ねる秀才タイプなんだなぁと思い知った
主「松岡茉優の魅力は自然体でどんな役でもできることだと思っていて、いわゆるキャラクター演技ではない。
だからこそ、現実では存在しないような、テンションが異様なアニメのキャラクターを演じなければいけないアニメ声優としては、相性が悪い方なのでは? という思いが今まであった。
だけれど……この作品は圧巻。
様々な演技を使い分けているし、彼女なりのやり方を模索しながらも、映画オリジナルキャラクターに声を当てている。
彼女の演技がダメダメだと、映画の出来もダメになる。
それがこれだけの傑作になっているのは……やっぱり、彼女の演技力あってのものなんじゃないかな。
それだけ、キャラクターの声を、演技を作り込んできた覚悟と努力ってものが感じられて、頭が下がる思いだった」
以下ネタバレあり
作品考察
スタートから”デジモンを語る”覚悟
では、ここからはネタバレありで語っていきましょう!
デジモンをスタートから語ろう! という意思が感じられた
カエル「先に語った”細田守の影響”という部分だね」
主「特に冒頭でボレロが流れてきたところで、自分は涙が出てきそうだった。
細田作品の特徴の1つがクラシック音楽の使い方だろうけれど、特にボレロというのは”音”という強烈な印象を残すものである。
そしてスタートから舞台となったお台場の現在の街並み、そしてデジタルとの向き合い方について語っているわけだ」
カエル「『ぼくらのウォーゲーム』なんて、あの時代のデジタルに対する向き合い方も内包しているよね」
主「その意味ではさ、自分はこの映画も感じたけれど『パト2っぽいな』って印象なんだよ。デジタルというものに向き合った作品だし、同時に東京の街並みについて語った作品でもある。
特になんでもない東京やお台場などの街並み……自分も見覚えがあるような街がそこに現在の姿で存在しているのが印象に残った。
それって最近の細田守が……例えば『バケモノの子』でやろうとしたことでもあると思うんですよ」
特に99年版は必見の内容だったしね
ただし、細田守のコピーになっていない
カエル「下手にコピーに徹すると、それは劣化するものでしかないからそ、現代ならではなの視点が必要とされて、それがすごく難しくもあるという……」
主「それこそ『ぼくらのウォーゲーム』は細田守自身が『サマーウォーズ』という形でさらにアップデート……したのかは個人的には微妙だけれど、再び描き直している。
それをそのままやると、全く目新しさはない。だけれど、特にデジタル描写などが当時とはまた違うような表現であるように感じられたし、爆煙がドットになるなどの映像表現などもあり、意欲的だった。
この細田守を踏襲しつつ、更新しようという試みこそが自分が気に入った理由だね」
triは果たして駄作だったのか?
ここで語るのがtriについてですが……世間では酷い評判が並ぶね
自分も擁護することができないタイプの作品でもある
カエル「ちょっと全6章のOVA作品としては、映像表現もさることながら、お話も中途半端だった印象があって……」
主「たださ、自分としては……完全な妄想だけれど、色々と事情があったんだろうなと思う。
多分、元々はテレビシリーズでやるつもりだったんじゃないかな? それならば納得もできるクオリティや構成だった。だけれど、劇場公開のOVA形式が決定し、それで出鼻を挫かれる一方で、なんとか立て直しをはかった印象もあったけれど……この映画が制作決定して、落とし所が見つからずにあんな形になったのかなぁ」
カエル「上記は完全な妄想ですが、triがやろうとしたことは以下のように考えられます」
- 選ばれなかった子供たちの物語
- デジモンとの別れ
完全に、この映画とリンクしているね
主「だから、triを完全に駄作と言い切ることって中々難しいな、という思いも今ならばある。
特に、今作を見ると完全にこっちに持っていかれた印象だからさ……
でもtriも含めてデジモンシリーズを語ろうという試みもあり……特にアドベンチャー、02をより重点的に掘り下げたこと。また全ての作品が無駄ではなかったと語ってくれたことに対して、すごく満足感が高いです」
魂を示す昆虫、蝶
やっぱりバタフライ=蝶のモチーフが多かったねぇ
ここは当然ながらメインテーマの『Butter-fry』と合致しているんだろうな
カエル「でもさ、蝶を示した理由ってそれだけだったのかなぁ?」
主「……自分は違う気がするんだよね。
以前にも語ったけれど、蝶というのは魂を示す昆虫でもある。例えば『聲の形』である人物が亡くなったときのお葬式のシーンだったり『劇場版SAO』でも蝶は随所に登場している。
それは蝶が魂の象徴であり、誰かの思い、魂が寄り添っているよ……などを示すモチーフなんだ」
カエル「ふむふむ……じゃあ、この映画では?」
主「おそらく、蝶は和田光司さんなんじゃないかな。
当然ながら、デジモンに対して和田さんが果たした功績はとてつもなく大きい。だけれど、残念がら長年にわたる闘病もあり、復帰と休養を重ねながらも亡くなられてしまいました。
その”魂”が示す昆虫……それが蝶だ。
だから、デジモンという作品はすでに、とても大事な方を失なっているんだよ。そして和田さんの楽曲が蝶となり”過去のデジモン”の象徴的なモチーフとして今作でも採用されているのではないか?
蝶のモチーフのデジモンが最後に語ったこと……それがこの映画のテーマであり、メッセージであるわけだ。
あくまでも自分の深読み考察だけれど……でも、そう信じたい」
少しの不満点
だけれど 少しだけ不満があるんだ?
やっぱり、空の扱いに関しては賛否が出てしかるべきだろう
カエル「残念ながら、空は活躍の場がほとんどなかったよね。それも『ぼくらのウォーゲーム』のオマージュなのかなぁ、という思いもありつつ、ちょっとモヤモヤというか。
02で空の恋愛問題などを扱ったから、ちょっと触れづらいキャラクターであるのも理解できるけれど……」
主「これも妄想ではあるけれど、もしかしたら本当は新キャラクターの立ち位置をやるのが空だったのかもしれないね」
カエル「あー、キャラクターの立ち位置の変更?」
主「そうそう。
その結果、空の居場所がなくなってしまった……そう考えると、ちょっと納得がいく部分もある。
だけれど空の選択そのものを、自分は支持するよ。
戦うことが必ずしも重要なわけじゃない、むしろ、戦わないという選択をする選ばれし子供たちがいてもいいんだよ。
だからこそ、空の使い方次第でもっと魅力的な物語になると思うけれど……やっぱり尺の都合もあるのかなぁ。
太一とヤマトの物語に絞ったのは、英断だと思うけれどね」
あともう1つ不満点があるとすれば……最後にアカペラバージョンのButter-friを流して欲しかった
カエル「テレビシリーズの1期最終話の名演出の再現ってことだね」
主「そうそう。
ただ、それをやらないことを決めた作品でもあるから、わからないことはないけれど……むしろ、それをやるとブレてしまうという思いもあるけれど、多分その演出があれば、自分は年間ベストが決定したかもしれない。
やっぱり子供の頃からデジモンが好きだったかつての少年としては……そのノスタルジーだけで泣けてきてしまうね」
まとめ
では、この記事のまとめです!
- デジモンシリーズを内包した、完結篇にふさわしい見事な大傑作!
- 細田守の過去作と向き合いながらも、その更新を志し
- 歌詞にリンクした物語こそが、この映画の見所!
- 一部不満点はあるものの、デジモン愛に満ちた作品!
本当はもっともっと語りたいことが山盛りです
カエル「映画を見た方ならばわかると思いますが、この記事ではそこまで語りきっていません。
考察記事はこちらになりますので、ぜひお読みください!」