カエルくん(以下カエル)
「じゃあ、引き続いて感想記事とは別の批評記事を書いていくことになるけれど……」
ブログ主(以下主)
「このやり方も久々だなぁ……ちょっと前は結構やっていた気がするけれど」
カエル「あんまりそれだけやる意味のある映画がなかったということなの?」
主「いや? そんなことはないよ。
例えば『僕と世界の方程式』なんかは記事の長さも考えたら批評記事とわけても良かったよね。このブログって、基本的に文字数が多いから。
作品によっては1万文字を大きく超えることもあるし……そういう作品はなるべく分割していかないと、ただ読みづらいだけになりそうだから」
カエル「まあねぇ……それで今回はこういう形にしたのね」
主「これからはあんまり長くなりそうだったら、なるべく分割化していきます。そうじゃないと読み手も辛いし。
あと、書きたいことがたくさんあるから!
今作もそうだけど、文字数が増える作品は込められたテーマとか、素晴らしい部分がすごく多いから!
そういうのを逃さないようにと思ったら、やっぱりこの形式が1番なのかもしれないね」
カエル「文字数を誇るのはやめようってことか」
主「短くても密度のあるいいブログは多いしねぇ。このブログもそれを目指して頑張っていくよ!」
カエル「はいはい……
で、今回はネタバレありの批評記事になるわけだ」
主「一応公開初日なんで、あんまりネタバレしすぎないようには気をつけるつもりだけど、さてどうなるか?
ちなみにネタバレなしが読みたい方はこちらをごらんください」
カエル「じゃあ批評記事、行ってみよう!」
以下ネタバレあり!
©2016 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/SAO MOVIE Project
1 スタートのうまさ
カエル「実は冒頭12分間は公開されているから、この部分はネタバレと言っていいのかは難しい部分でもあるよね」
主「自分はその12分間の映像は見ていないから、どこまで公開されているのかわからないけれど……多分あそこまでかな? というのは想像できる。
で、その12分間でもこの作品はずば抜けたうまさを発揮していると思う」
カエル「ほうほう……」
主「まず、開幕で圧倒的なクオリティのCG表現が出てきて、そこからネット上のバーチャル世界の表現に入るわけだ。この場面で観客は映像スケールの素晴らしさに驚愕するよね。
ここで自分は『A-1、今回力入れているなぁ』って感心したし」
カエル「今作の映像表現の素晴らしさはほぼ全画面にわたっているよね。ほんの一部動かないシーンもあったけれど、それも気になるレベルではなかったし
主「そこから、満天の星空が出てくるでしょ?
ここで自然物の描写が圧倒的に綺麗だから、一気にのめり込むよね。静かな始まりだけど、よく考えられているなぁって思った。本作の売りの1つである映像の素晴らしさを前面に出した演出方法だよね」
カエル「よっぽど星の描写などに自信がないと、こういうことはできないもんね」
主「そしてキリトとアスナの2人のお話が続くわけだ。ここで表されているのは、結局はこの映画というのは『キリトとアスナの2人の関係』に終始する映画だよ、ということがメタ的に表されている。
だから、初見の人はこの2人の関係性さえ理解できていれば、まずはOKなんだよ。映画としては、そこが1番重要なわけだから」
物語はこの2人の関係に終始する。このイチャイチャカップルめ!
©2016 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/SAO MOVIE Project
説明のうまさ
カエル「初見さんをどのような形で映画の世界に没入させるのか、というのは結構難しいところだよね。キャラクターがあれこれと説明台詞のオンパレードで説明してしまうのは最悪だし……」
主「昨年酷評したCGアニメ映画でそういうのがあったなぁ……それはいいとして。
テレビシリーズで人気を博したアニメ作品の映画が1番難しいのはこういうところでさ。
どういう風に作品の設定の説明を入れて、作品世界に没入してもらうのか? という問題だよ。
これがあまりにファン向け過ぎると初見には『よくわからない……設定に置いてけぼりになっている』という印象を与えてしまいかねないから。だけどファンには説明的すぎないようにしないといけないし、難しいよね」
カエル「それがうまくいった映画というと、やっぱり『ガールズ&パンツァー 劇場版』になるのかな?」
主「あれは始まる前に3分ぐらいでわかるテレビシリーズのあらすじをキャラクターに説明させてしまう。それだけで基本知識を観客に共有させる。でも、あれって比較的作品世界が緩いガルパンだからできることだよね」
カエル「あとは……『モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ』とか
『傷物語』
のようなエピソード0の作品だね。ここから始まる物語みたいな部分があるから特に説明が要らないというようなさ……」
主「その意味では本作はニューストーリーのEP1でもあるわけだ。全てが終わった後の続編で、ここから新章開幕ということもできる。
それでもここまでのストーリーの解説をどうやったかというと……アナウンサーに解説させたんだよね」
カエル「これは良いよね。決して『うまい!』というものではないけれど、わかりやすくて作品世界観を壊さない説明だよね」
主「現実にも大きな影響を与えた問題であるということを説明できるとともに、不自然な会話にならないで済む。この手法は考えたなぁっと思った。
だけど、本当のスタートはここからなんだけどね」
2 映像と音楽の融合
カエル「ここからとなると……全員が新しい『AR』を生み出すガジェット? をもらって、それが日常に結構浸透しているよ、というお話なわけだけど……」
主「ここでキャラクターたちがそれぞれの個性を出しているし、今回のキーキャラクターのユナの説明もできている。
で、可愛らしい日常描写もあって……前作を見ていた人なんかは、結構グッとする描写なんじゃないかな? 激闘の後の日常描写だし」
カエル「ショッピングモールで歌ってしまうのも、現実的に考えるとどうかと思うけれど、それだけこのARが浸透しているのとキャラクターの可愛らしさも見事に表現されているよね。
あとは、バイク云々とかで如何にキリトがモテるのか、という描写にもなっているし」
主「個人的にはハーレム系主人公って苦手なんだけれど……まあ、それはいいや。
そして本当のスタートはここから。
このAR空間の戦闘描写があるわけじゃない?
そこでユナが降臨するわけだ」
カエル「ユナの歌声をバックに戦闘シーンが始まるよね」
主「それが素晴らしいよね!
小説とか漫画と違って、アニメなどの映像媒体の最大の特徴って『音と絵の融合』にある。小説や漫画は頑張っても音を出すことはできないけれど、映像媒体ならそれが可能なわけだ。
もちろん、それはテレビアニメでも同じわけだけど……ここで圧倒的なスケールの戦闘シーンと音楽が流れるわけだからさ、観客はやっぱりワクワクしちゃうよね」
カエル「ここで一気に引き込まれるわけだね」
SF台詞について
主「もちろん、それだけじゃないよ。
例えばこの作品って、ジャンルでいうと何になると思う?」
カエル「ジャンルで? ……う〜ん、ファンタジーのようでもあるけれど、やっぱりSFかな?」
主「そう。このゲーム世界の説明描写などはSF要素が強いと思うけれど、それも説明台詞などで少しだけ触れられている。
例えば『VR』と『AR』の違いとか、あとは科学的に引き起こした事象の説明だとか……そういう現象に対する説得力があるよね」
カエル「よくわからないけれど、なるほどなぁって思ったかな?」
主「一見バカな意見なように見えるけれど、この『よくわからないけれどなるほどなぁ』っていうのは非常に大切なことなんだよ。
例えばガンダムで『左舷弾幕薄いぞ!』とかいうでしょ? その時の状況って実はあまり説明されていないんだけど、こういうセリフがあることでその世界観に説得力が出てきる。
言っちゃえばさ、ARやVRで人が死ぬっていうのは、超技術なわけじゃない? そんなことが起こりうるのか? と問われると、多分起こらない。だけどそこを疑問に起こさせないことが重要なわけで……ハッタリではあるけれど、それがうまく効いていると思ったね」
カエル「そこで疑問を抱かせるとこの先のお話、全てがおかしいものになるもんね」
主「だからその世界観の説明台詞を、科学的に……ハッタリだったとしても説明しながら、さらに戦闘描写と音楽でその説明を補完して、さらに背景にリアルな街とファンタジー世界を融合させることにより、既視感のある現実世界を忘れさせて作品世界に没入させる……これはうまいよねぇ。
この時点で作品の勝利が決まったと思うよ」
3 キリトとエイジの関係性
カエル「本作における主人公とライバルの関係だよね」
主「ここもしっかりと作られていて、もちろんキリトは主人公として造形されているけれど、ここで出てくるエイジは映画のために登場したキャラクターなわけだ。
この2人の関係が何を表しているのか、ということになるんだけど……カエルはこの『劇場版SAO』って何に似ていると思う?」
カエル「え? 基本的な作りは『.hack//』を連想させるとは主も感想記事で語っていたよね?」
主「自分はこの映画って他の何に似ているか? と問われると、実写邦画なんだけど『桐島部活やめるってよ』だと思うんだよね」
主「この作品って色々と解釈の幅が広い映画でもあるんだけど、自分は『主人公がいなくなった後のモブの復讐』を描いた映画だと解釈している。つまり、普段は主人公がいるから輝く脇役たちも、主人公がいなくなると一気に物語としての存在価値を失う。
そこに『映画』という舞台を与えられることで、モブだった冴えない男子生徒たちが逆襲を果たすという……まあ、詳しくは上記の記事を読んでほしんだけど」
カエル「この映画でもラストで語れていたもんね。
『名もなき英雄たち』云々かんぬんって」
主「そう。主人公であり、かっこよく立ち向える存在であるキリトと、本来ならばモブでしかないエイジをライバル関係として描き出すことに意味がある」
キリトのもう一つの姿
カエル「その意味って?」
主「キリトとアスナは物語の主人公としてカッコよく登場して、颯爽と活躍して去っていく、まさに完全無欠のヒーローであるわけだ。
だけど、もしかしたら……そんなキリトたちにもエイジのようになってしまう可能性は十分にあった」
カエル「ああいう英雄のような人って、その下に何千、何万の……主役になれないモブの上に成り立つヒーローなわけだしね」
主「キリトたちというのは活躍が約束された存在なんだよ。なぜならば、それは物語の主人公だから。
だけど、その主人公になれなかった人たちは?
その姿がエイジ。だけど、VRの世界では死が怖くて英雄になることができなかったとしても、ARの世界では英雄になることができる。これって、モブと思われていた者でも条件が変われば英雄になれる可能性がある、ということでもあるでしょ?」
カエル「だから桐島なんだ」
主「この手のラノベ作品って、他のキャラクターが主人公を引き立たせるための存在に終始してしまう部分って多々あると思うんだよ。それは作品の作り方として間違っていない。
ドラゴンボールにしろ、ピッコロやベジータのようなかつての強敵も悟空を引き立たせるための存在になってしまっている部分があるし。
本作品はそんな『モブの復讐』を描いた映画でもあるんだよ。ここが自分としては近年の『主人公無敵作品』とは少し違う部分を描き出したのかな? という印象だね」
もう1人の主人公エイジ
©2016 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/SAO MOVIE Project
少しだけ苦言
カエル「そういえば少しだけ苦言があるとか言っていたね」
主「まあ、これは趣味みたいなものだけど……そういう目線で見ると、やっぱりエイジの終わり方が肩透かしだったなぁ、という印象はある」
カエル「……どういうこと?」
主「この作品において重要な役割を果たすのはユーナという少女であって、本作はユーナと父親とエイジの物語であると言ってもいいわけだ。
もう1つのありえたかもしれないキリトやアスナの可能性としてさ。
だったら、あのラストバトルの場にエイジがいて欲しかったね。ボロボロになりながらでも、あのモンスターを倒して少しだけいいところを見せて、主人公に華を持たせるとかさ」
カエル「あの描写だとエイジはあの歌を聴くことができていないわけだしね」
主「父親もやり方はともかく奔走したし、エイジもユナのためにあれだけのことをしていたのに、この仕打ちってどうなんだろう? という思いも実はある。
あれだけたくさんの援軍が現れました! ってシーンで、かつては怖くて戦えなかったエイジが、ユーナのために……ユーナを忘れないために戦うって、激アツな展開だと思うけれどね。
それこそドラゴンボールじゃないけれど『お前が1位だ』とか言ってさ。
成長も描けるし、別にキリトの見せ場を奪うわけでもないし」
カエル「その感性って現代では受けないんじゃない?
エイジは続編で活躍するのかもしれないから、そちらにも期待だね」
4 悠那について
カエル「この映画では重要な意味を持っていた悠那(白い少女)について語るわけだけど……」
主「……まあ、この悠那の描写も『.hack』ぽいよなぁって印象かな。アウラ=悠那と考えれば、結構わかりやすいし。
多分こう言うテーマの作品て自ずと似てきちゃうところはあるんだろうね」
カエル「この描き方って結構重要なの?」
主「重要だよ。やっぱりこの作品の根幹に関わる部分だろうし。
ほら、やっぱりこの手の作品ってどうしても事件の大きさの割には大人が不在になりがちじゃない? もっと大きな規制があってもいいはずだけど、そうなっていない。
もちろん、それができないほどに……例えば車の事故や事件で毎年多くの人が死亡しているけれど、車に乗ることを禁止することはできないように、広く浸透してしまった技術というものもあるだろうけれど……」
カエル「お父さんの葛藤は涙ものだったよね」
主「あのシーンはウルウルときてしまったよ。被害者にも家族がいて、その多くが子供だとしたら、それを買い与えてしまった親がいる。そういう部分にも1歩踏み込んでいる」
本作で重要なアイドル、ユナ。 歌がめちゃくちゃうまい!
©2016 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/SAO MOVIE Project
白い蝶について
カエル「そういえば、悠那が出てくるとき白い蝶が出ていたけれど、あれってどういう意味なの?」
主「あれは『映画 聲の形』と一緒だよ。それに大きな意味があるメタファーとしての蝶。
例えば洋画だけど『ドント・ブリーズ』ではてんとう虫がよく出ている。てんとう虫って海外だと『幸福の象徴』とか『聖母マリアの象徴』なのね。まあ、花言葉とか宝石言葉みたいなもので。
で、蝶の意味はキリスト教では『復活』という意味があるみたいなんだよね」
カエル「へぇ……じゃあ、あの描写は復活を示唆していたんだ」
主「日本でも蝶は仏という意味があるから、死者に関連するのは間違いないね」
5 本作のテーマについて
カエル「この作品のテーマって、そんなに大事なことを描いていたの?」
主「結構大事なことをやっていたと思うよ。
ほら、オーグマーほどじゃないにしろ、現実に生きる我々も似たような騒動を知っているじゃない? 現実と仮想現実がくっついて起こってしまった騒動をさ」
カエル「え……あ! 『ポケモンGO』か!」
主「現実世界にバーチャル世界が入り込んでの大騒動というと、実は結構身近なものだと思う。オーグマーをスマホにすれば、そのまんまの意味になるし。
特にこれから先はVR技術も進んでいくと、あのような技術も開発されるかもしれない。
キリトと博士のやりとりであったけれど
『仮想世界を現実世界にする(VR)と現実世界を仮想にする(AR)』というセリフもあったじゃない? あれって、実はそう遠い未来でもないと思う。さすがに劇中のレベルまではできないと思うけれどさ」
カエル「そうなってくると仮想と現実の区別って……」
主「ますます区別がつかなくなってくるし、色々な問題も発生するだろうね。
例えば草食化はさらに進行するだろう。だって、バーチャルな存在で満足する人が出てきたら、現実に恋愛をする必要なんてなくなってくる。
実際、今だってオタクの増加に伴い草食化はさらに進んでいるし、さらに言えば、初音ミクなどのバーチャルアイドルもその存在感を増しているわけだ。現実のアイドルのようにスキャンダルもないし、しかも加齢もしない。いつまでも永遠に若いまま、それこそみんなの『偶像としてのアイドル』でいることができる。
この映画で描かれた『バーチャル世界と現実世界の対比』というのは、実はもう起きているんだろうね」
『ゲーム的』であるということ
カエル「本作の中で重要なテーマになっているのは『嫌な過去を忘れるべきか否か』ということだけど……」
主「実際、あの戦いは本来ゲームなんだよ。だけどそこに取り込まれることで、ゲームの世界から抜け出すことができなくなってしまった。
途中でも『ゲームでそんなにムキになるなよ』というセリフがあるけれど、あそこまでリアルになってしまったゲームは、すでに現実なんだよね。
本来であればゲームの記憶を失う……つまりリセットするということは、そう大したこことではない。それこそスマホのアプリを消すように、スイッチポンで終わるけれど、でも作中では全ての記憶を失うわけだ。
この描写って……自分は『ゲーム批判に対する反論』のように思う」
カエル「どういうこと?」
主「ゲームって確かに仮想なんだけど、でもそれを遊んだ記憶は実在なんだよね。
確かに昔のゲームは『リセットボタンで全てを消去』ということができた。それは今でもできるけれど……でも、例えばネットゲームやスマホゲームのようなゲームって、仮想現実以上にコニュニケーションツールとしての意味合いもある。
つまりさ、ゲームを通して培ったコミュニティ、それは本物なんだよ。そこで嫌な思いもするかもしれない、だけどそれは大切な思い出である、という。キリトの仲間たちってそうでしょ?
だから『ゲームはリセットできる』とか『所詮バーチャル』ということに対する、反論のようにも思えたね」
ユーナとバーチャル
カエル「そう考えるとあのユーナとバーチャルって……」
主「今でも人の記憶を電子媒体に保存して、意識を保存するという研究が進んでいるみたいだけど、そう考えるとさ、もしかしたら人は『死』をも超越することができる存在になるのかもしれないよね」
カエル「え? それって生きているって言えるの?」
主「その生と死の……生物と物質の間を描いたのが今度実写映画も公開される『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』だよ。
あの時は『体のどの部分まで人体であれば、人は生きていると言えるのか?』というサイボーグの人間の境目について論じられていたけれど……今はさらに進んでバーチャル環境下のおける人の生死の境目はどこか? ということを探しているんじゃないかな?」
カエル「結構深いテーマなんだね」
主「今でもアニメキャラなどを『俺の嫁』なんて言ったりして熱狂しているけれど、これもある意味ではバーチャルで生を受けたということができると思うんだよ。その人の中では現実に生きる人よりも、はるかに実感を持って受けて入れられる存在でさ。
あの博士がやろうとしたこと、妄言でも頭のおかしい行動でもなく……それまでの研究を考えたら当然のことなんだろう」
6 胡蝶の夢
主「自分はこの映画を見ながら『君の名は。みたいだなぁ』と思っていた部分もあってさ。
仮想世界のことを忘れてしまう、というのは、そのまんま入れ替わりのことを……というのと被ってくるでしょ?」
カエル「偶然似たようなことになったんだろうけれど……記憶と感情って色々と昔から言われているテーマでもあるし……」
主「これは予告編で見た『眠り姫』もかわいそうだなぁって思ったよ。君の名は。があれだけヒットしたから、余計なことを色々言われるんだろうけれど……まあ、それはいいや。
結局はさっき語ったことと似たようなことでさ。
じゃあ『生きている実感ってどこから始まるのか?』ということだよね」
カエル「作中でも語られているけれど『これが夢なのか本当なのか、まだバーチャルなのか……』みたいな話だよね」
主「昔から言う胡蝶の夢ってやつだよ。
今この現実が果たして本当に現実なのかどうか、それを証明する手立てはないわけだ。今はまだいいよ? そんなのバカな話だって笑えるから。
だけど、あれほどの技術を得た場合に、どちらが現実なのか? そもそも現実とはなんなのか……わからなくなるんじゃないかな?」
カエル「それを評論的にヒットの理由とするの?」
主「現代を生きる若者には『生きている現実感がない』からこそ、それを描いた上でハッピーエンドを迎えたこの作品を評価するという言い方はできると思う。
まあ、本作がヒットするかはわからないけれどね」
記憶と現実
カエル「そうなってくると……現実って一体何?」
主「それはやっぱり記憶ってことになるんじゃないかな? 自分が今見ているものが夢だとしても、自分が体験してきたこと、覚えていることが現実なんだ、ということ。
だから記憶を奪われたというのは……忘却というのは、リセットのようで実は『過去を奪う』という行為なんだね」
カエル「……あのラストは映画的で良かったよねぇ」
主「え? 何が?」
カエル「え? だってあのラストって、アスナが記憶を取り戻したってことでしょ?」
主「……あ、そうか! 『あの時の約束』と言っていたから、あそこで記憶を思い出していたのか!」
カエル「え? 今まで気がついてなかったの?」
主「ということはだ、本作はやっぱり肉体的な死を描いた『SAO』の本編とはまた別に、精神的な死を……記憶の排除という形で、精神的な死を描き、そこからの復活を描いた作品ということができるわけだな。
つまりは『死と再生の物語』であり、現実と仮想、生と死を描くという壮大な作品でもあると……」
カエル「……ああ、ただでさえまとまってないのに、さらにまとまらなそうだからとりあえずここいら辺で一回終了しようか!」
最後に
カエル「主はこの作品の不満点は先にあげたことだけ?」
主「……う〜ん……ファンがなんていうかはわからないけれど、やっぱりこの作品はケチのつけようがないんじゃないかな?
面白いし、映像的にも綺麗で、キャラクターも可愛らしい&かっこいい、音楽もいい、テーマもしっかりしていて色々と複合されていて……文句のつけようがないんじゃない?
まあ、アスナの記憶が戻るとか、後半はちょっと雑になった部分もあるけれど、そこまで気にならないんじゃないかな?」
カエル「おお……ここまで褒めているのは珍しいかも!」
主「あ、1つだけ文句があった!」
カエル「え? 何?」
主「キリトとアスナは末長く爆発してしまえ! 馬鹿野郎!」
カエル「……まあ、デートムービーとしても最適ですので、ぜひ楽しんでね!」
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