今回はこの夏の大注目作! 細田守監督の『竜とそばかすの姫』について語っていきます!
これはうちも思わず力が入ってしまうね
カエルくん(以下カエル)
「ちょっと観賞後の印象として、結構長くなってしまいそうなので、多分2記事構成になるかと思います。
この記事ではネタバレ薄めで作品の大まかな感想・細田守のこれまでのついて語っていきます」
主
「これから2記事目を書くので、そんなに書くことがなかったら追記形式にするかもしれませんが……こればっかりはなんとも言えないかな」
カエル「それでは、速報的な感想記事のスタートです!」
感想
それでは、Twitterの短評からスタートです!
#竜とそばかすの姫
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2021年7月16日
細田守史上最高傑作
世界を見据えて作ったというアニメ表現は多種多様に移り変わり世界の広さを教えてくれる
暗闇の中の星空は観客と演者を一体にし、叫びにも似た歌はどこまでも響き渡る
何十年もかけて傷だらけの体で掴み取った細田守の新章幕開けを告げる奇跡のような1作 pic.twitter.com/UI43TM4D0H
細田守史上、最高傑作でした!
カエル「おぉ! そこまで高く評価するんだ!」
主「ただし、人は選ぶ。
まず間違いなく言えるのは映像表現に関しては、今年のアニメ映画でもTOPと言えるくらいの超一級品。
それこそ『シンエヴァ』と肩を並べるクラスで、庵野秀明・細田守という日本の誇る名アニメ監督の大作が2本並んだことに、感謝したいくらい。
もしかしたら監督個人の名前のブランドもあって、ここまでの映像を構成できる……それこそ予算とか人員、スケール感などを用意できるし、今が全盛期であろうことを考えても今の日本のTOP2のアニメ監督なんじゃないかなぁ……
それくらい圧巻。
間違いなく劇場で観るべき作品だし、それだけのモノに仕上がっている」
今回は音楽映画でもあるということだもんね
世界を意識しているというのも、よく伝わってきた
カエル「例えば同じように大作系アニメ映画を作るという意味では新開誠もいますが、RADと組むことで日本国内では特に注目度を増しました。
ただ、今作はそういった作品とはまた違って……何というか、JPOPやアニソンを活用したアニメ映画とは、またちょっと違うよね」
主「日本制作だし、歌手が日本だからもちろん日本語だし、JPOPらしさが0というわけではないけれど、でももっとグローバルな印象を与えるのではないだろうか。日本の売れているバンドとかの挿入歌を使わなったということで、日本らしさをあえて消し、もっと日本の色がついていない音楽を披露しようとした印象がある。
この映画は映像と音楽の一体感がものすごくあるんだよ。
だからこそ、素晴らしい」
映画館で観るべき作品に
ほとんどの映画はそうだけれど、この作品こそ映画館で観てほしいよね
テレビ画面で観たら、その真価は発揮できないだろうな
カエル「もちろん映像が綺麗、音楽が素晴らしいという理由もありますが、それ以上に没入感が異なります。
例えば、以下のシーンをご覧ください」
このシーンが象徴的だけれど、映像の奥行き、そして広さが圧倒的なんだ
主「映画館と自宅の違いは色々あるけれど、最大の違いはその明るさだろう。
この作品では、黒の描写がものすごく凝っている。
夜の闇の中を2人が動き回るシーンなども多く、そこが一気に引き込まれる。
背景にある星などが煌めくと、まるでスクリーンがなくなり、映画館全体が物語世界に飛び込んでいるような気配すら漂ってくるんだよ」
カエル「まるで舞台を見ているようだったよね。
目の前に本当にベルと竜が登場していて、それを観客が眺めているような……スクリーン越しの空間が消失したような雰囲気を感じたね」
主「他にもアート的なシーンや、冒頭から広がるUの世界の広さなども、映画館だからこそ感じ入るものに仕上がっている。
だからこそ、この映画は映画館でこそ楽しんでほしいね」
声優について
それでは、声優についても語っていきましょう
これがまた、素晴らしいんだよ
カエル「今回は主人公のすずちゃんを中村佳穂が演じており、その圧巻の歌唱力は文句がなかなか出ないのではないでしょうか?」
主「今作って、ものすごく難しい演技をしているんだ。
それは”映像に応じて演技そのものを変える”ということ。
例えば、映画内では手書き作画の見た目こそ変わらないものの、細かな動きなどがより写実的になる部分がある。冒頭パート、Aパートがそうなんだけれど、そこでは演技そのものが生っぽいものに変わっていた。
それこそ間から何から、より実写的なものを志向していることが伝わってきた。
その後のアニメ的な映像とアニメ演技も含めて、彼女のうまさがものすごく出ていた」
カエル「ふむふむ……今作って芸能人声優だけれど、そこは気にならないの?」
主「気になる人はいるだろうね。
というのは、やっぱり演技がコロコロと変わるから。Uの世界と現実世界の演技も異なるんだよ。だからこそ、その統一されていないように感じたり、あるいは得意不得意が出たりしているから、気になる人もいるかもしれない。
だけれど、それがうまく映像とマッチしている。
本職声優がやっても良かっただろうけれど、ベルを歌も含めて演じられる人が限られるだろうし……バランスも良かった。
飛び抜けてうまい! とかはないけれど、でもよく調整されていた印象だね」
細田守監督について
自身を強く入れることができる細田守監督の脚本
もはや日本でも有数の人気監督ですが、細田守監督についてどのように捉えているのか、という説明をしておきます
これがものすごい重要なんだよねぇ
カエル「うちは細田守のオリジナル長編アニメ映画に関しては、主要な部分は記事にしていますが、特に前作の『未来のミライ』は絶賛する箇所も否定する箇所もたくさんある、という評価をしています。
それと同時に、それまでの細田守作品の集大成であり、これからの細田守の新章幕開けだという評価もしています」
ここはとても評価が難しい部分でもあるんだよ
主「よく語られているように、細田守は演出家としては超が頭につくくらいの一級品の実力を持っているのは、もう疑いようがない。もちろん、それは日本トップクラスのアニメーターたいてこそだけれど、純粋な映像演出や音楽、その画面のバランスで観客を魅了することができる、数少ない人物でもある。
一方で、脚本を担当すると物語のバランスが悪いというか、色々とチグハグな面も見えてきやすいという評価もある。
この辺りは、まあしょうがないのかなぁ。
脚本家出身ではないしね」
カエル「脚本家を起用しろよ! という意見も散見されるし、それこそ『サマーウォーズ』お前の、奥寺佐渡子と組んでいた時代の作品の方が、平均的には賛否が割れない印象があるかなぁ」
主「……個人的にはあんまりノレてないからの感想だけれど、『サマーウォーズ』こそご都合主義の連発作品だけれどね……」
一方で、細田守って自分で脚本を書く監督としては、とても大きな力を発揮することができる。それは”自分の人生やメッセージ”を込めることができるんだよ
カエル「自分の人生やメッセージ……それは、こういう裏目よみもできますよ、ということだね」
- サマーウォーズ→ハウルの途中降板という失敗があっても、自分を信じてついてきてくれたスタッフへの感謝を、大家族に見立てた物語
- バケモノの子→誰も育てられない天才(宮崎駿)の弟子だった自身を重ね、そこからの脱却を誓う物語
- 未来のミライ→自らのルーツを遡りながら、最後は家を飛び出す=これまでの集大成と新しい細田守像の構築宣言
主「自分は上記のように受け取っている。
特に一時期語られていた『ポスト宮崎駿』の最右翼だったわけだけれど……まあ、ポスト宮崎駿論争は新開誠などの登場、そして鬼滅の刃の爆発的ヒットでもう終わった話だろうが、自身も影響を受けた宮崎駿からの脱却と進化を大いに語っている。
映画というのは総合芸術だけれど、中には脚本を魅せる作品、音楽を魅せる作品、役者を魅せる作品などがある。
では、細田守は? と問われると……それは2つ
- 映像(作画・演出)で魅せる作品
- 監督自身を魅せる作品
この2つの要素が特に多い。
だからこそ、脚本の整合性などにはあまり頓着していない印象。それが引っかかる人もいるけれど、別の見方をすれば、そうしなければいけなかった理由が見えてくる作品でもあるわけだな」
作品と商品
そういえば、こんなツイートもしているよね?
竜とそばかすの姫は万人が楽しめるエンタメ大作という“商品“を期待したら不満が残るだろう
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2021年7月16日
細田守という監督の映像手腕と作家性を期待した“作品“目当てならば拍手喝采だ
(商品と作品、どちらが高尚かという話ではなく)
商品と作品という考え方は、最近『映画大好きポンポさん』にハマって以降、よくしている考え方なんだよね
カエル「まあ、前々から意識はしているけれど、言葉としてわかりやすいからね。
簡単にいえば、万人に受け入れられて誰もが楽しめるエンタメに特化したものが”商品”であり、監督やスタッフ個人の作家性を全開に発揮したのが”作品”という考え方のことだね。
これでいうと商品が悪いように聞こえるかもしれないけれど、多くの人に届けるという意味ではとても大事な工程であり、どちらが上・下というものではありません、念の為」
主「極端なことを言えば、細田守作品は半分私小説なんだよ。
それこそ、庵野秀明に似ている。作品の中に自分個人の思いや境遇を入れて、それを巧みな映像手腕で多くの人に魅せることができる。
そしてその私小説度が高まれば高まるほど、エンタメ度数は減っていく。
その両立っていうのは本当に難しいものなんだよね」
でもさ、それだけ強い作家性を込めることができる監督でもあるってことでしょ?
そこいらは、凡百の映画監督とは異なるわけですよ
主「細田作品は作品を重ねるたびに私小説的な作家性が強くなっていき、作品の度合いを増していく。
だからこそ、徐々に万人受けするエンタメ性を失っていき、『未来のミライ』はもはや自身の作家性ばかりが叫ばれる形となってしまった。
あれはあれで尖りすぎていて、夏の大作エンタメ映画としては問題があるし、実際興行収入も落ちてしまったんだよねぇ。
だけれど、それは必要な行程だった。
なぜならば、それまでの細田守を総括し、新しい細田守像を生み出さなければいけなかった。
それは本当に難しいことだよ。
同時に、全く新しいアニメの姿を提示する必要がある。
そして、それに成功した。だから、自分は観賞後1発目にこんなツイートをしたんだよね」
おめでとう、細田守
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2021年7月16日
細田守監督はこの作品で、全く新しい細田守像を提示し、日本と世界のアニメを一歩前進させ、高らかに世界に新たな細田守を宣言した、それまで以上に完成された作品なんだ!
最後に
とりあえず、速報としてはこんなところでしょうか
細かいことはこの後に詳細に記事を書いていこうと思います
カエル「もしかしたらものすごく短くなって、この記事の後半に貼り付けるかもしれませんし、めっちゃ長くなるかもしれません。
ただ語りたいことはたくさんあるタイプの作品ですので……詳細な考察記事は少しお待ちください」
考察記事はこちら!
物語る亀、全編書き下ろし書籍がKADOKAWAより発売です!
電子書籍版もあるので、是非ともご購入をお願いします!
上記画像クリックでAmazonのリンクへと飛びます