それでは、今回は注目のCGアニメ映画『HELLO WORLD(ハローワールド)』の感想記事になります!
2019年9月では最大の注目作アニメ映画になるのかな
カエルくん(以下カエル)
「2019年のアニメ映画一覧を見ると、9月以降は10月の『空の青さを知る人よ』が大きくて、あとは12月のお正月休みを狙った時期にたくさん公開されるアニメ映画まではそこまで盛り上がりそうな作品は少ない印象かなぁ」
主
「5月6月にあまりにも注目のオリジナルアニメ映画が重なりすぎたから、少しくらいずれていれば良かったけれど……みんな夏休み前の時期にいれてしまった結果かなぁ。
いい作品が潰しあったようにも見えて、ちょっと残念だったなぁ」
カエル「こればっかりは各会社も読み合いだろうし、今年は『アベンジャーズ エンドゲーム』などの話題作もあったから、それらの競合を避けた結果が重なり合ってしまったのもあるだろうけれど……」
主「2019年もCGアニメ映画が多く生まれているけれど、今作はどのような物語を見せてくれるのか楽しみだなぁ。
というわけで、感想記事のスタートです!」
カエル「なお、この記事は9月15日の公開前にアップしており、予告やあらすじ以上のネタバレはしませんので、ご了承ください。
詳しい感想は公開後にアップorこの記事に追記する予定です」
作品紹介・あらすじ
テレビアニメ『正解するカド』の脚本やSF小説家としても活躍している、野崎まど脚本に迎えてCGアニメ映画化した作品。
『世紀末オカルト学院』や『ソードアート・オンライン』シリーズなどの伊藤智彦が監督を務めるほか、キャラクターデザイン・作画監督に『けいおん!』などの堀口悠紀子、主題歌にはOKAMOTO'Sや髭男dismなどの人気アーティストが参加。制作会社は『楽園追放』などのグラフィニカが担当する。
キャストには主人公の堅書直実を北村匠海、ヒロインの一行瑠璃を浜辺美波のキミスイコンビが務めるほか、直実の前に現れる謎の男を松坂桃李が演じる。そのほか福原遥、寿美菜子、釘宮理恵、子安武人などの人気声優が脇を固める。
2027年の京都ではデジタル化がさらに進んでいた。本が好きなごく普通の少年、直実は高校生になり、引っ込み思案の自分を変えようとするがうまくいかない。そんなある日、10年後の未来からやってきたというナオミという男性と知りあう。彼の役目は直実の彼女となるクラスメイトの瑠璃が事故に遭うのを防ぐことだった。ナオミの指示に従いながらも、瑠璃との関係を深めていくのだったが……
映画『HELLO WORLD』予告【2019年9月20日(金)公開】
感想
では、Twitterの短評からのスタートです!
#HELLOWORLD
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2019年9月14日
SAOなどの伊藤智彦監督らしさを感じさせるSF恋愛オリジナルアニメ
CGのカクカク感は気になるが決め所は美しい&スタイリッシュでカッコ良く音楽も含めて映画館映えする作品に
2019年はセカイ系に言及したオリジナルアニメが多く見受けられるが本作が1番安定しており、安心してみていられた pic.twitter.com/heEZ3zY5vw
劇場で鑑賞することを強く意識した映画に仕上がっています!
カエル「2019年のアニメ映画はセカイ系に言及したような作品も多く生まれている印象だけれど、この映画もその中の1つになるんじゃないかなぁ?
全体としては満足度のある映画になっています」
主「ただ、おそらく万人が絶賛する作品ではないと思う。
SFらしく結構難しいポイントもあるし、頭がこんがらがったり『あれ、このシーンてどういうことなの?』という意見も出てきてしまうかもしれない。
決して不親切とか、バカには理解できないとか、そういう問題ではなくて……単純にSFやこの手のアニメにどれだけ見慣れているか、という問題じゃないかな」
カエル「SF作品は一般的に馴染みが薄い描写や、説明しても余計にこんがらがることもあるからね」
主「ただ、そのこんがらがりそうな部分も普遍的な”恋愛”という要素である程度カバーしているんだ。
今回、企画・プロデュースをしているのが武井克弘なんだけれど、過去作では『君の名は。』『宝石の国』『ペンギンハイウェイ』などもプロデュースしている。これらの作品はSF要素もあり、わかりづらさもあるものの恋愛や感情の人間らしい部分で気持ちよくドラマを動かしてきた。
今作もそれと同じように考えてほしいかな。
設定やSFがわからなくなったら、それぞれのキャラクターに寄り添って考え行くとすんなりと理解しやすくなると思う。
頭空っぽでも『瑠璃ちゃん可愛い!』とかでも楽しめるよ」
カエル「……ちなみに、ポスターにある『ラスト1秒でひっくり返る』というのは……」
主「多分、ここが1番賛否割れる。
自分も観終わってエンドロール中に『ああ、そういうことね』と納得したけれど、ダメな人はダメかもしれない。野崎まどの作家性の部分なのかなぁ……
その意味でも万人に受けるとは言わない。でもハマる人にはどハマりする作品に仕上がっているんじゃないかな?」
本作の見所
見所① CGでも見劣りしない映像表現
では、今作の見所について紹介していきましょう!
まずは映像表現の面白さだね
カエル「特にうちなんかは手書きのアニメに慣れてしまっていることもあって、日本のCGアニメには少し違和感もあるんだけれど、それも問題なく鑑賞することができたんじゃないかな?」
主「実際のところ、予告でもわかるようにカクカク感はどうしても気になってしまった。
どうしてもCGアニメでは比較対象が海外のものになりがちだし、キャラクターデザインも堀口悠紀子の手書きの可愛らしさを知っていると、日常描写などには課題があると言わざるを得ない。
でも、決めるべき部分はキチッと決めており、そこがとても魅力的だった」
カエル「制作を担当したグラフィニカは『楽園追放』なども制作しており、セルルックで可愛らしいキャラクターを魅力的に描いており話題になった会社でもあります。今回、これだけ大規模上映になったのも『楽園追放』の成功も後押ししたのかな?」
主「今作はSFであると同時に恋愛映画でもあるけれど、もっとも重要な”キャラクターの魅力”特にヒロインである瑠璃の可愛らしさをどれだけ表現できているのか? という問題がある。
その点において本作はうまくできていて、きちんとCGの光沢感などもありながらも、堀口デザインの可愛らしさを発揮している」
カエル「それとSF作品らしいデジタル描写も面白かったね」
主「今作がCGで描いているのか? という表現技法の問題もしっかりとカバーしており、CGだからこそ意義がある物語になっている。さらにいえばデジタル表現などは『デジモン』風の、細田守的表現が多かった印象もあるけれど、本作はあまり見たことがないものと感じられた。
伊藤監督のこだわりも感じさせる映画だったな」
見所② この座組だからこその映画に!
次の見所は座組……つまりスタッフの起用についてということだね
今作はこのスタッフだからこそできた味に満ちている
カエル「ふむふむ……それはどういう意味なの?」
主「とても単純にいうと”この映画は誰の映画か?”という問題だよ。
もちろん基本的には監督が高評価も悪評も受けるべきだろうけれど、中には脚本家やプロデューサーの意向の方が強いと考えられる映画もある。総合芸術だから、分けて考えることはできないのは当然だけれどさ。
その意味でいえば、この映画は”このスタッフだからこその映画”に仕上がっているんだ」
カエル「それぞれの個性が発揮されているんだね」
主「おそらく一番影響を強く与えたのは、脚本という物語において重要な基礎を担当した野崎まどだろう。
自分は『本作は誰の映画か、1人だけをピックアップしろ』と問われたら、野崎まどの映画だと答える。
それだけ野崎まどの影響が強く出ている」
カエル「物語としては当然かもしれないけれど、SFなどの設定は野崎まどっぽいと言えるのかな」
主「SF作家らしく物語も大きな破綻がないように思えたし、設定や展開もしっかりしている。
Twitterの短評で『安心して観ていられる』というのはその部分で、セカイ系やSF作品は思い切りだけで乗り切ってよくわからないこともあるけれど、本作はその物語の作り方がしっかりとしているように感じられた。
ただ、もしかしたら……野崎まどの物語の作り方などが合わない人はダメかもしれない」
他のスタッフはどうだったの?
伊藤監督の映像化の手腕を堪能したね
主「例えば……主人公の直実の性格を表現する冒頭の描写などは、ノベライズの小説でもあるんだけれど、もっとコメディチックで観ていて楽しめるものになっていた。
それが瑠璃との対比になっており、原作からしてしっかりしているとも言えるんだけれどテンポも良買った。
あとは今作はSAOファンが多く劇場に向かうだろうけれど、その層に向けてのご褒美もある。バトル、デジタル描写、SF描写、日常などもCG表現の限界もあるとは思うけれど、どれもしっかりと”映像で魅せよう”と力を発揮していたのではないだろうか」
カエル「キャラクターに関してはさっきも語ったけれど堀口悠紀子の力も大きいよね。作画監督なども兼任しているし」
主「キャラクターが可愛い、あるいはカッコイイなどの魅力を最大限引き出したのは堀口悠紀子の功績だろう。
さらに音楽ではOKAMOTO'Sなども起用されているけれど、楽曲の1つ1つがカッコいいし、この映画で重要な雰囲気を作っている。
今作の音響監督は岩浪美和だけれど、おそらく今回も一部の映画館では特別な音響調整を行うだろうし迫力のある音楽になっていた。
自分がなんとなくでもわかる範囲では
- 野崎まどの物語(脚本)
- 伊藤智彦の映像表現
- 堀口悠紀子のキャラクターデザインの可愛らしさ
- 音楽を務めたアーティストの楽曲の迫力
- 岩浪音響監督の迫力ある音響
これらの上に成り立っている。もちろん、自分がここで挙げなかったアートディレクター・CG監督の横川和政や美術監督の長島孝幸などの味もしっかりと出ているのだろう。
これらの座組の味がしっかりと味わえる作品になっているのではないだろうか?」
見所③ セカイ系への言及
これはあまり語りすぎるとネタバレになりそうなので、かなり濁した書き方にしましょう
セカイ系に対して語っているような部分もあるんだよね
カエル「予告を観た段階で『またこの手の作品か……』と語っていたけれど、2019年だけでも似たような設定は何回も観た印象もあるのかな」
主「その中でも本作はもっともうまくまとまっているというのは、先ほどにも語った通り。
自分はセカイ系に対して比較的好意的だからかもしれないけれど、この映画の描き方が面白かった。
多分、多くの人が2019年の大ヒットアニメ映画を思い浮かべるんじゃないかな?
そこと比較して考えると色々と面白い発見があるような気がする」
カエル「この辺りは公開後にネタバレありで考えていきましょう」
キャストについて
気になる方も多いでしょう、キャストについて考えていきます
ここは賛否割れるかもしれない
カエル「あれ、うちとしては不評?」
主「いつも語るけれど自分は顔出しの俳優が声優を勤めることには反対ではない。上手い人もいるし、声優には出せない味もある場合だってある。
だけれど……本作のような映画の場合は本職の声優の方が向いているんじゃないかな」
カエル「ザ・アニメというような作品だもんね」
主「今の声優の演技が過剰演技だっていうのもわかるんだけれど、でも本作の場合は明らかにラノベ的でありアニメを意識しているセリフが多い。
そこで顔出しの俳優がアニメ声優のモノマネのようなことをしても、どうしても見劣りしてしまう部分がある。特に本作は脇役に有名なアニメ声優が多くいるし、彼女たちと対等に立ち向かう必要がある。
福原遥は顔出しの女優業もしているけれど、声優業での実績も十分にあるから話は変わるけれどさ、主要の役の3人は……どうだろう、やっぱりアニメ声優の演技に慣れた自分には物足りなかった」
カエル「このあたりはオタクだから、というのも大きいかもね」
主「そもそも『楽園追放』も釘宮理恵の演技あっての魅力だったと思うんだよ。
CGアニメの身体表現はどうしても細かい感情表現には劣ってしまう。だからこそ記号的な表現や漫画的表現を駆使しているけれど、声優の演技もそれを補うものだろう。
その点で見劣りしてしまった感はどうしても否めない。
ただし、彼らの役が致命的に悪いということは絶対にない。
中盤以降はほとんど気にならなくなってくるしね」
カエル「オタクだからこその複雑な思いだと受け止めてください」
まとめ
では、この記事のまとめです!
- 野崎まどの作家性に溢れたセカイ系の物語に!
- 伊藤監督の味や他のスタッフ陣の魅力が詰まったいい座組の作品!
- キャストは悪くないもののアニメ声優の方が……と言いたくなるかも?
- セカイ系の物語として色々と語りたくなる!
みなさん、ぜひ劇場で楽しんでください!
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カエル「あとは……本当にちょっとした小ネタなんだけれど、映画に登場する子安武人が演じる博士がきているシャツが気になったねぇ」
主「あのネタ、わかる人どれだけいるんだろう?
多分『SAO』の時に伊藤監督が気に入ったのかもしれないけれど、ちょっとだけ笑っちゃった。そんな遊び心も多く含まれた作品です。
まあ、わからないかもしれないけれど!」
カエル「ぜひ劇場でお楽しみください!」