カエルくん(以下カエル)
「3月のライオンの記事は1話以来だね。結構空いちゃったなぁ」
ブログ主(以下主)
「……正直、ミスをした部分もあるんだよね」
カエル「ミス?」
主「節目節目で感想記事を書いていく方針だからさ、本当は3話で1記事書こうと思っていたんだよ。だけど……もしかしたら4話でもしかしたら一区切りかもしれないなぁ……と思って書くのを一時止めたんだよね」
カエル「あ、もしかしたら来週の部分が4話に来ると思っていたの?」
主「そう。今思い返すとそんな早いわけがないなぁ……と思っていたけれど、それでも予想以上にスローペースだなと思って。1巻の部分はスタートだから少し遅めにやるけれど、4話まで行けば結構省略もすると思っていたけれど……本当に丁寧に丁寧にアニメ化していると感じるよ」
カエル「だけど同じように作っているようで、読んだ時と印象が全然ちがうだよね」
主「声がついたり、音楽がついたり……そして何よりも絵が動くという、演出があるというだけで、これだけ印象が違うんだなぁと思い知ったよ。これはアニメ化した意味があると思うし、新しい3月のライオンになっているんじゃないかな?」
カエル「じゃあ感想記事を始めようか」
主「ちなみ原作ファンのため、ネタバレはしていないけれどニュアンスなどで伝わってしまうかもしれないので、そこは注意してくだい」
1 桐山零の孤独
カエル「特にこの5話は零ちゃんが抱える孤独についての描写がすごく多かったよね」
主「漫画を読んだ時も胸にくるけれど、こうやってアニメで見るとより強く胸に来るんだよなぁ……ももがさ、漫画よりも久野美咲の演技力もあって生き生きと動くわけじゃない? だからこそ余計に胸にくるものがあるんだよなぁ」
カエル「特にシャフトの演出ともうまく合致したという印象だよね」
主「空から降ってくる将棋だったり、独特の色彩感覚だったり……動き回る将棋の駒や、絵の構図だったりというものが、この作品に合致しているよ。
特に5話でいうと、やっぱり香子の紹介の場面で、外に立たされるけれどさ。ここの『彼女は嵐のように激しかった。棋風も、気性も、その美しさも』の絵が深く印象に残っているかな」
カエル「香子関連はまた別に語るとして……零ちゃんの孤独というのが、本当に重くて……あの部屋の伽藍堂の空間でさえ、零ちゃんにとっては唯一手に入れた安息の地っていうのがね……」
主「たったあれだけの空間であっても、零にとってはようやく手に入れた理想郷だったんだよなぁ。
それと、やっぱり絵に関して語らざると得ないのは、あのお父さんが語った『自分で自分を鼓舞する事のできること奴だけだ』のシーンかな。あそこで、まどマギのような演出がなされていたじゃない?
確かに比喩表現ではあるけれど、あれって、今の零が歩んでいる道そのものなんだよね。なんと辛く、苦しく、孤独な道なのだろうか、と感じいるよ」
羽海野チカとシャフト
カエル「あれは羽海野チカが漫画道について語った面もあるのかな?」
主「どうだろう……でもさ、羽海野チカとシャフトの相性ってここでも抜群にいいのが発揮されていると思う。
別に他のアニメ製作会社や漫画家が違うという意味ではないけれど……この両者って、やっぱり『血を流して創作している』という感がすごく強いんだよね。目を背けたくなるような現実に対してもしっかりと直視して、どんなに辛くても、どんなに苦しくても、そのことについて考えて表現していく。
多分、相当な無茶ぶりのようなことを要求されていると思うんだよ。誰に、ということではなくて、自分にさ」
カエル「妥協が少ないってこと?」
主「そう。本当なら、もっと楽な作画だったり、もっと楽なキャラクター像や逃げの結論を生み出すことっていうのもアリなわけじゃない? むしろ連載中の漫画だったり、毎週公開し続けるアニメだから、ある意味……言葉は悪いけれど、手抜きというか、省略っていうのはすごく大事なことだと思う。締め切りがあるからね。
だけど、そうじゃない。新しいものを作る気概というか、もっとも先進的な物語表現を追求する姿勢というか……そういうものを強く感じる両者だと思うよ」
カエル「独特な部分が多いからこそ、余計にそう感じるのかもね」
2 香子について
カエル「いよいよ主が大好きな香子についてだけど……」
主「いやー、アニメで見るとさらに苛烈な女性だよね。嵐のような、っていうモノローグがあるけれど、漫画版の香子は実は強風ではあっても、台風ではなかったのかもしれないと思ったほどだよ」
カエル「賛否は分かれるキャラクターかもしれないね」
主「この……零を含めて3兄弟の中で、歩ってあまり描かれないんだよね。主に零と香子の関係で兄弟の話は進行していく。
その中でも香子って……すごく複雑なんだよ。この5話だけを見てもわかるけれどさ、父に対する愛も深いし、将棋に対する思いも強い。それを阻害する零のことを嫌ってはいるけれど、だけどやっぱり意識するところがある。
どうしてもキャラクター表現って一面性を強調して記号的になることが多いけれど、香子はその激しい内面描写だけじゃなくて、その裏に見えてくる……ような気がしている面もあって、すごく惹かれるんだよね」
カエル「香子と零ちゃんの関係ってすごく独特なものがあるもんね」
主「でも、香子の下りを原作で読んでいる時も思ったけれど、将棋って不思議な競技じゃない? 特に筋力の差が必要になる競技でもないのに、男と女では棋力が全然ちがう競技で。今の女流トップでも男とでは差は歴然なわけだ。
その差っていつから生まれるんだろうね? もうあの歳で零との差があるわけだけど、中学生でプロ入りしている天才児じゃない。比べる相手が悪すぎる気もするけれどね」
カエル「やっぱり4年の差は大きいんじゃないの?」
主「女流を目指していたら、あの情熱を考えたら相当な上位になれたんじゃないかなぁ? と思う時って、結構ある。なんで辞めさせたんだろう? ってさ」
3 幸田の選択
カエル「この……将棋のお父さんが、ある意味では全ての元凶なんだよね」
主「元凶って言い方はあれだけど、将棋の鬼ではあるからな。もっと家族を見て、真摯に付き合えばまた違う形になったと思う。だけど、将棋のプロになるということは、まさしく人生の大半を将棋に捧げるということでもあって、こういう形になるのかもしれないな」
カエル「あまりにも将棋中心すぎるもんね。それ以外の選択肢を示してあげられなかったというか……」
主「生き方が限定されているんだよな。でも、そんなお父さんだからこそ、香子や歩も慕っていたわけで……
いや、こう書くと悪人のように決め付けているように思われるかもしれないけれど、そんなわけはないよ? 当然。
ただ、やっぱり将棋が中心にありすぎた。本当はもっと色々な選択肢があったと思うけれど、父として示すことができなかった。それしか知らない人生だったからね」
カエル「零を引き取ったわけだから、むしろ自分に子供よりも目をかけるというか、可愛がるというのはバランスとしてわからなくもないというのが、またね……」
主「本当に誰が悪いという、簡単な話じゃないなぁ……
零を引き取った時、葬式での……まあ、惨状と言ってもいいと思うけれど、あの状況を見て明らかに怒りを募らせていたし」
カエル「同志の親友の葬式に来たら、そこにあったのは詰まらない欲の話だもんね……」
主「そこで引き取るという選択肢を与えるわけで、その口実を欲しがったんだろうな。だからあの『君は将棋が好きか?』と聞いたわけだ。
だけど……ここでついた『嘘』が一生を左右するものになるわけだからなぁ」
零の嘘
カエル「幸福な家庭の象徴でもある川本家において、ももと猫がついた大嘘はなんてことのない、ほんの冗談みたいな嘘だったのにね」
主「それに対して、あの葬式での嘘というのは人生を左右する永遠に縛られることを強要される嘘なわけだ。零の将棋人生って嘘から始まっているんだよね。
だけど、その……本来ならばなんでもないはずの嘘にしがみついて、それしかないという人生を歩んでいる。だから、零って本当の意味で将棋が好きなわけではない。それが強みでもあり……弱さでもある」
カエル「香子はそこも見抜いているんだろうなぁ。だから1話の『あなたって本当に零なのね』という言葉につながると」
主「そう。だから零が他の棋士と……香子や歩のような棋士に憧れる存在とは動機がぜんぜん違う。そこにかける思いが違う。だからこそ、その先を歩み続けるんだろうな」
カッコウと将棋
カエル「あのカッコウの下りのモノローグもまた、胸にくるものがあったよね……」
主「でもさ、棋士に限らず、人生ってあのモノローグと同じだと思うんだよね。誰かを蹴落とした先にある幸せ、誰かを蹴落として上に立つ幸せっていうさ」
カエル「……まあ、将棋に関してはそうだよね」
主「すごく強い誰かを打ち負かして、その上に行く。名人になるのは、タイトルを取るのは、その下にいるたくさんの敗者の上に立つほんの一握りなわけだ。
その現状と思想が……零ちゃんの人生と合致してしまったというのが、またね……」
カエル「本当に零ちゃんの人生で将棋が強いというのが、将棋の天才という才能が果たして幸福になることにつがったのか……全くわからなくなってくるよ」
主「……カッコウだって托卵したくて托卵をするわけじゃない。生まれた雛は生存本能としてそうしているだけだし、習性と言うある種の運命だ。
だけどその潰してしまった家庭に気がついてしまったカッコウの一生というのは、どういうものなんだろうね」
最後に
カエル「改めてこうしてアニメで見ると、いかに零ちゃんが苦しい人生を歩んでいたか、はっきりわかるよね……」
主「原作よりも音と色など、いろいろなものが足されているから、さらに胸にくる内容になっている。
この先を知っているとさ、安心するとともに、心配にも成るんだよ。クオリティの心配は何もしていない。だけど、そのクオリティで……あの場面をやると思うと、どれだけ心をかき乱されるのだろうか? ってね」
カエル「正直、辛いものもあるからね……」
主「だけど、当たり前だけどそれだけじゃない。辛いことの先に素晴らしいことがあるわけで、そのメリハリがまたいいんだよね」
カエル「で、この先の更新スケジュールはどうするの?」
主「もう、気が乗ったら書くことにしよう。多分6話がまた一つの大きな区切りになるから、そこでは感想記事を書くと思う。
そのあとは……基本は3話ごとになるけれど、書くときは書くよ」
カエル「……えらい行き当たりばったりだね」
主「だって計算するとミスするから!」
カエル「その計算だって普通に考えれば間違えているってわかると思うけれどねぇ……」
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