物語る亀

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物語愛好者の雑文

映画『3月のライオン 前編』感想 零ちゃんが生きて動いている! 後半ネタバレあり

カエルくん(以下カエル)

「それでは今週の注目作第2弾、3月のライオンの記事になります」

 

ブログ主(以下主)

「今週は忙しい……さらにひるね姫もあるんだから、てんてこ舞いだわ」

 

カエル「今日の夜にはアニメの最終話が放映されるしね

主「しばらく更新が止まっていましたが、今週はやります! というか、やるために頑張って映画版の記事も書き終えます!

 3月のライオンはずっと追いかけてきたから、是非とも語り尽くしたい作品だし……現代の漫画文化の中でもすごく重要な立ち位置にいる作品だと思う

カエル「個人的な話をすれば1巻からずっと追いかけてきたからね。まあ、羽海野チカということを考えればそんな人は何万人もいるんだろうけれど……」

 

主「特に本作は漫画は当然のことながらアニメ版もなかなか素晴らしく、丁寧すぎるほどに丁寧に描きながらも原作の魅力を最大限引き出しているからさ……それでいてシャフトらしい先進的で特徴的な演出もあって、非常に期待値の高い1作となっている。

 多分このまま2期も制作する気満々だろうけれど、そちらも素晴らしい作品に仕上がるだろうね」

カエル「そんな中で実写映画化を、しかも大友監督がするということもあって、注目度は結構高いよね」

主「もちろん本作は前編だけなので、すべてを断定することはできないけれど……さあどうなったかはこれから感想を語っていきます。

 あと、当然ながら前編の内容以上のことは書かないですが、原作を読んでいるため先の展開を知っているため、ニュアンスなどでなんとなく伝わってしまう可能性もあります。そこはご承知おきください」

カエル「そんなことがないように配慮はしています。

 それでは感想記事スタート!」

 

 

 

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映画チラシ 3月のライオン 神木隆之介

 


映画『3月のライオン』予告編

 

1 ネタバレなしの感想

 

カエル「ではまずはネタバレなしの感想からだけど……」

主「これは原作の良さもあることは間違いないけれど、前編だけならば『ちはやふる』を超えたかもしれない。それくらいの作品だよ。

 漫画、アニメ、そして映画と全てが成功した……かはこれからの売り上げ次第なところもあるけれど、作品のクオリティ自体はメディアミックスの成功例と言っていいのではないだろうか?

 

カエル「なんだか最近賞賛してばかりだけど、こういう大規模公開映画の邦画がちょっと前から力を持ってきたということかもね」

主「最初は『これは大丈夫か?』と思う部分もあるけれど……特に漫画をそのまま映画にできないから、オリジナルを少し入れながら再構成しているけれど、それが……なんというか、さすがにと思う部分もある。

 だけどそれもちゃんと後半になると少なくなるし、うまい具合にマッチしてくる。省略のための犠牲という言い方はあれだけど、再構成もうまくいっていると思うよ」

 

カエル「この手の作品はファンが見て『こんなのライオンじゃない!』って意見も多いけれど、本作はその手の意見も少なそう?」

主「多分、少ないでしょうね。元々リアル志向の漫画だから実写化には向いているし、大まかな流れは原作を踏襲している。役者もキャラクターのイメージを合う人を選んでいるし、その多くが納得のいく演技をしている。

 少なくとも自分は漫画もアニメも感想記事を書くくらいにはファンだけど、納得できる作品だった

 

 

 

 

2 役者について

 

神木隆之介

 

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本作の主人公を演じた神木隆之介。零ちゃんそのものです!

(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

 

 

カエル「じゃあ役者について書いていくけれど」

主「まず、主演の桐山零役の神木隆之介だけど、一切の文句なし!

 時代の選んだ美少女が広瀬すずだとしたら、男性だと神木隆之介だろう。他の男性役者では、零ちゃんは演じることができなかったと思う。予告編の段階から『零ちゃんが生きている!』って思ったほどだから」

 

カエル「神木隆之介の出演する映画にハズレなしって言われるけれど、今作もそれは同じなんだね。なんでそんなにヒット率が高いのかな? もちろん演技力はあるだろうけれど……」

主「現代の青春劇とか学生の恋愛映画ってジャニーズなどのイケメン俳優が演じることが多いじゃない? もちろん、それはそれでいいんだけれど、それだと『王子様』タイプのイケメンは演じられても『草食系』の優男は演じられない。

 ほら、多くの青春ドラマの男性役がいかにも自信に満ち溢れているでしょ? もちろん、女性向けだとしたら『女性が望む理想の男性像』なんだからそれは間違いではないけれど、現代の男性像には合致しにくい」

 

カエル「現代の男性でそこまで自信満々の人ってそんなに多くなくて、むしろ草食化やオタク化が進行しているわけだから、現代のリアルな男性像を描こうとするとおかしなことになりやすいよね」

主「だけどこれは当たり前だけど、イケメンは自信満々なんだよ。だってずっとルックスを褒め称えられてきているし、自信に満ちているからイケメンであるとも言えるわけだ。

 そう考えると現代のイケメン俳優の多くが、実は現代の青少年を演じる際にバイアスがかかってしまう」

カエル「自信満々な草食系男子っておかしいもんね」

 

主「だけど、神木隆之介って確かにイケメンなんだけれど、どことなくオタクぽさもあって……どちらかというと『こちら側』の人間みたいなんだよね。一時期志田未来とか佐野ひなことの熱愛が取りざたされたけれど、その際に『ゲーム友達』って回答しているじゃない?

 男女が同じ家にいたらやることは1つってみんないうかもしれないけれどさ、それで何も起こらないから草食系男子なわけで……真相はどうでもいいけれど、自分は神木隆之介なら本当にゲーム友達かもって思ったよ」

カエル「何となく納得できるオーラがあるんだよね。だからこそ、それが役にも生きてオタクのような草食系男子を見事に演じられるのかも」

 

 

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有村架純

 

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いい人のイメージが強い有村架純が悪女を演じる

(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

 

 

カエル「主が作中で1番好きなキャラクターでもある香子を演じるのは有村架純だけど、これが意外となかなかハマっているんだよ」

主「そうそう。予告編を見たときは『怒鳴るな!』って思ってさ……機嫌が悪い演技や悪い人の演技ってすぐに怒鳴る人もいるけれど、それはそれで正しい場合もあるけれど香子ってそういう役ではないじゃない?

 むしろ怒鳴ることなく静かに静かに包囲網を敷いていって……生殺しのようにしていくタイプのいやらしさがあるじゃない? ちなみに、これ、最大級の褒め言葉です。

 そんな女性は近寄りたくはないけれど大好き!

 

カエル「主の個人的な感情はどうでもいいとして、アニメ版の井上麻里奈が完璧だったからこそ、余計にそう思うよ。決して心を開かないし、敵意すらむき出しにしてくるんだけれど、その奥にはあまりにも複雑な感情が垣間見えたりもして……

 こういうと怒られるかもしれないけれど、女の持つ業をその一心に受け持った人という印象だね」

主「そう。だけど、有村架純ってどことなくいい人オーラがあるじゃない? あ、多分優しい人なんだろうなっていうさ……男性だと妻夫木聡に感じるオーラ。

 それが香子には全く合っていないだろうなって思っていたけれど……意外や意外、これはこれでアリだと思った。原作に近いイヤらしさがあるのは井上麻里奈なんだけれど、セクシーで複雑な感情を見せた時の有村架純はなかなかよかったね」

 

カエル「特にセクシーなシーンもあるけれど、そこもきちんと隠しすぎないでセクシーになっていたし」

主「健全だけど妖艶なエロスって香子には絶対不可欠なものだけれど、それがある程度は出ていたんじゃないかな?

 

 

 

川本3姉妹について

 

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今作のヒロインのひとり、ひなた役の清原果那

(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

 

 

カエル「実はこの映画化で1番出番が削られてしまったのは、この3姉妹だったりして……

主「もちろん出番はたくさんあるけれど、零のドラマにそこまで積極的に関わりはしなくて……というか、将棋のお話のときは全く関わりようがないしさ。家族のお話のときは理想の家族像として描かれるけれど、漫画における零ちゃんと3姉妹の交流は多くがカットされている。

 当たり前といえば当たり前で、この短い時間の中に詰め込もうとするとどこかをカットせざるをえない。そうなると、日常描写がその矛先を向けられるのは道理といえばそうなんだよ。ドラマに直接かかわってこない描写だし。

 そうなると川本家関連が1番カットされてしまうから……実は3姉妹の出番は多いものの、そこまで激烈に印象に残るわけでもない

 

カエル「結構たくさんのテーマが詰め込まれているからね」

主「仕方ない面も多々あるけれど、でも後編の予告では大活躍しそうな雰囲気があったから、楽しみだね」

カエル「その中でも長女のあかり役の倉科カナはきちんと2つの顔を演じ分けていたし、優しいお姉ちゃんだったね。あとはひなた役の清原果那もどことなく花澤香菜の演じるアニメ版のひなたのような雰囲気も残してあって、中々好評価じゃない? 

 これは日本アカデミー賞新人賞確実かもね

 

主「あとはモモ役の新津ちせも如何にも子役の演技ではあったけれど、年齢を考えると中々良かったんじゃないの?

 それにしても……『君の名は。』の監督でもある新海誠の娘さんらしいけれど、アニメ監督の娘が子役をやっているって初めて聞いたかも。同じ業界に行くことはあっても、まさか役者の道へ行くとは……

カエル「神木隆之介は新海誠の大ファンとして有名だし、君の名は。の主演も務めたけれど、その娘さんとの演技ってどうなんだろうね? ちょっと意識してやりずらかったりして……」

 

 

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他のキャストについて

 

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ちょっと原作よりも老けた名人。落ち着きはこちらの方が上

(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

 

 

カエル「もっと色々と語りたいけれど、あまり語りすぎてもしょうがないので他のキャストはざっと紹介していこうか」

主「今回素晴らしい配役だったのは後藤役の伊藤英明と、島田役の佐々木蔵之助でしょう。特に後藤は伊藤英明のガタイもあって、棋士でこんな人がいたら注目を集めるのも納得の出来!

 島田八段は髪の毛が薄くないけれど(笑)! でも優しいながらにも厳しさがある、いい配役だったよ」

 

カエル「そして主が絶賛する配役がこちら!

 

 

 林田先生役の高橋一生!

主「本当に林田先生がいると思ったからね。原作よりも若干チャラくなってはいるけれど、この馴れなれしい雰囲気などが林田先生らしくて……だけど冷めているようでいて、芯は熱くて心配しているというのも伝わってくるナイスキャストだった」

 

カエル「他の役者でいうとちょい役かもしれないけれど、安井役の甲本雅裕もよかったね。なんというか……『心が弱い棋士』というのがしっかりと伝わってきた」

主「あとは山崎役の奥野瑛太もしっかりと原作に寄せてきたし、多くのキャラクターが納得のいくものになっていた。

 一部原作と違うキャラクターもいるけれど、それも映画化に伴う仕方ない事情だからね、しょうがないよ」

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

3 原作との相違点

 

カエル「じゃあ、簡単に原作との相違点を書いていこうか」

主「箇条書きで書いていくと

 

 

  • 物語スタート時に川本姉妹と零は会っていない
  • 後藤対宗谷の対局がある
  • 零が棋士であることを知るタイミングが早い
  • 酔っ払った零を放置したのは一沙とスミス(半分事故)
  • 新人戦の後に宗谷対島田の対局がある
  • 零の過去話が多く挿入されている
  • 後藤に殴られる時期が違う(原作は川本姉妹に会う前、映画はお正月)
  • 神宮寺会長の性格が若干違う(破天荒さがない)
  • ひなたの友人関連、零の友人関連はほぼ全カット

  

 

 大きなところではこんなところかな? 後は細かいところでいうと二階堂の最初の登場が若干違っていたり……ここは流石にどうかと思って減点ポイント。

 時系列なども若干入れ替わっていたりするけれど、大まかには原作準拠と言える。上記の中でも……後藤と宗谷の対局を入れてきた以外は映画化に伴う説明描写の簡略化と省略だから、そこまで決定的な場面はない」

 

カエル「それでいうと、キャラクター性の変化は置いておくとしても、気になるのは後藤と宗谷の対局と零ちゃんの幸田家の描写が大幅に追加されたことだよ。わざわざ短い映画の中で追加してきたから、何らかの意図があると思うけれど……」

主「これはあくまでも予想だけど、後藤と零の対局があるか、何らかの大きな事件が後編であるんだろうな。結構後編は変えてきているという噂もあるし。

 いや、試写会の感想ではなくて、羽海野チカが『最初に構想していた終わり方をやってもらった』って言っていたから、多分それに向けての伏線でもあるんだろう」

 

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この改変は良かったのでは?

(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

 

 

改変した良かった部分

 

カエル「この中で改変して良かった部分というと何がある?」

主「1つは後藤と零ちゃんの確執について。

 やっぱりさ……原作の最初の方で後藤と零の確執って明らかになるけれど、それって失敗だと思うんだよね。というか、羽海野チカが悪人を描けるわけがなくて……この前編だけを見てもわかるけれど、後藤と香子って零が思うほど恋愛関係でもないんだよ。単なる香子の横恋慕。

 後藤のキャラクターからすると結構な愛妻家で、多分浮気ができないタイプ。もちろん男だからやるときはやるかもしれないけれど、だけどその割には愛情が全くない。

 映画ではこの設定は出てこなかったけれど、やっぱり兄弟子である幸田父に対する義理もあるだろうしね。それから、作品が進むにつれて後藤が人を簡単に殴るようには思えないし……

 ここは連載が続く中でよくある関係性の変化、通称『キャラクターの成長』かもしれないけれど、整合性がないような気がしていた

 

カエル「そこを今回のように描きなおしたことによって、納得はいったのね」

主「確かにあの零はうざったいしさ、殴りたくなる後藤の気持ちもわかる。そしてその後の零の暴走にも見事につながっていくし、これはこれでアリだなって思った。ここは良改変じゃない?」

 

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二階堂の登場は少し……常識がなさすぎる

(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

 

 

悪い改変

 

カエル「じゃあ逆に悪い改変は?」

主「整合性を持たせながら省略して説明をするために、キャラクターが大きく変化してしまったこと。特に二階堂のあの登場は絶対にないと思う。

 確かにボンボンではあるけれど、最低限の常識はあるキャラクターじゃない? 原作通りの登場は一応法に触れるからできないこともわかるけれど、だけどあの登場はないよ。二階堂らしさがない」

 

カエル「原作も熱い男ではあるけれど、もっと冷静な面を持ち合わせているキャラクターだったはずだしね」

主「それから零を置き去りにしたのが一沙とスミスというのも納得いかなかったなぁ……もちろん、あれは事故のようになっていたけれど、特にスミスは放置しないでしょ?

 お店を紹介したのもスミスたちではなくて、逆に零がスミスたちを案内してしまったから、あかりが高校生をクラブに招待する常識のない女のようになっていたし……ここは時系列をいじってわかりやすく改変したかったのはわかるけれど、さすがにどうかと思う」

カエル「確かにね。もっと常識があるキャラクターのはずだしね」

 

主「他にも仕方無い面もあるとはいえ、全体的に親切設計なんだよね。2人には確執があります、そのわけは……って感じですぐにその理由を開示する。

 これは日本の邦画全体に言えることだけど、説明しすぎなんだよ。物語って『想像する』という楽しみ方もあると思うけれど、それが説明を重ねることで奪われている。

 特に対局中にナレーションでペラペラ喋るのはどうかと思った。もっと役者を信じて、無声の演出をしても良かったんじゃないかな?」

 

カエル「その意味では後藤と島田の対局は緊迫感もあって良かったね。あとは零ちゃんと山崎の新人戦は見応えがあった!」

主「将棋という派手さの少ない静かな競技だから魅せるのが難しいとは思うけれど、だからといって喋りすぎだよね」

 

 

 

 

4 見えてきたもの

 

カエル「だけど、この映像化で見えてきたものも当然あるんでしょ?」

主「もちろん!

 ここ最近このブログでも賞賛したけれど、たとえば『ラ・ラ・ランド』や『チアダン』や『SING シング』のように夢を追いかけよう、好きを貫こうという作品はいくらでもある。

 まあ、自分もそういう作品が大好きなんだけれどね!

 でも、本作が描き出したのはそういうところではなくて……『夢を叶えた先』を描いた映画だとも言える」

 

カエル「日常描写をカットしてまで、棋士としてのドラマを多く入れてきたのは、多分ここが描きたかったからだよね」

主「おそらくね。

 しかもさ、本作が面白いのは『零は将棋が好きなわけではない』ということだ。確かに父親の影響もあって、興味はあったけれど特別好きなわけではない。だけど生き残るために、捨てられないために将棋に熱中するしかなかった。まさしく『将棋しかない人生』なんだよ。

 それって多くの夢を追うよ!系の映画とは全く違うよね。しかも、なんとかして登ったその先が、実は他の人にとっては憧れの場所でもあったわけで……それが歩と香子につながっている」

 

カエル「夢を叶えてはい終わり、ではなくて、その先にずっと続く長く苦しい戦いがあるわけだもんね……

主「その通り。

 苦しみを抱えながらも、壁にぶつかりながらも必死に登りつめていく……それってすべての競技に、仕事に共通するものでもあるんだけどね」

 

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全てはこの2人の関係に終始していく……

(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

 

 

幸田父の選択

 

カエル「だけど、やっぱり何度も見ても幸田父はおかしいよ!

 あの人がすべての元凶じゃない!」

主「言いたいこともわかるけれど、不器用すぎるよなぁ……香子は年齢のこともあるだろうし、歩は自分から学ぶことをやめてしまった部分もあるけれど、それにしてもあの物言いは酷い。

 将棋って不思議な競技で、女性と男性では実力が全然違ってしまっていて……それが何歳ごろから始まるのかわからないけれど、零に勝てないからって奨励会をやめるというのはなんだか納得できないんだよね。特にあの苛烈な性格を考えると棋士向きだとも思うし

 

カエル「そういうところも含めて不器用と言えるのかもしれないけれど、全然納得はいかない!」

主「だけどお陰で見えてきたものもあって……

居場所が欲しいために将棋に打ち込む零と、

居場所はあるけれど将棋の才を持たない香子(歩)という対比ができている。

 ここで川本3姉妹が絡まないことにより、よりこの物語が……少なくとも前編は『零と香子の物語』であることがはっきりと見えてくるわけだ」

 

カエル「あの2人の関係ってただの恋愛関係ではないよね?」

主「全然違うよ。これはアニメの感想の時も語ったけれど、香子って強烈なファザコンでもあるんだよ。だけど、父親に愛されなかったからこそ、他の男性を求めた。

 おそらく香子にとって理想の男性って『将棋の強さ』なんだよね。だから香子の知っている中で……面識がある中で1番強い後藤になびいていった。

 だけど、香子よりも将棋が強い人って零も同じなんだよ。何十回、何百回と自分を打ち負かしている。だからこそ強く惹かれもするし、その分自分を貶めたことに憎みもして……という愛憎入り混じる複雑なことになってしまった」

 

カエル「その関係性が見えやすくなったってこと?」

主「そう。やっぱり本作って零の成長物語であるのと同様に、香子の自立のお話にもなりそうだと思うけれど……さてそれがどうなるかは、後編のお楽しみだね」

 

 

 

最後に

 

主「あとは語りたいのは宗谷の『美しかったのに』のところかな。簡単な一手のようだけれど、誰もが宗谷の実力を知るからこそ疑いようがないかった。『君は僕を信じすぎた』のセリフが無かったのが本当に残念だよ」

カエル「あそこも名シーンだよね。この島田と宗谷と零に関してはアニメ最終話の記事で語ることにするんでしょ?

 

主「演出が過剰気味だったし、少し説明描写も多かったから賛否は割れるかもしれないけれど、自分はやっぱり賛だね。もちろん、それだけ3月のライオンというお話が大好きだから! というのもあるけれど。

 羽海野チカは本当に魂から血を流してこの作品を作っているよ。創作の基本かもしれないけれど、それができる作家はほとんどいない。だからこそ素晴らしい!」

カエル「これは後編も楽しみだね!」

主「まずはアニメの最終話を楽しもう!」

  

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