物語る亀

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物語愛好者の雑文

映画『コウノトリ大作戦』感想 大人も子供楽しめるアメリカCGアニメ!

カエルくん(以下カエル)

「今月はアニメ映画がたくさんあるけれど、その中でも先陣を切ったのがこの作品だね」

 

亀爺(以下亀)

「しかし、公開館数はこちらが圧倒的に多いが……話題性ではもう一つのアニメ映画の方が圧倒的なようじゃの」

 

カエル「『ソーセージパーティ』でしょ? あれさ、面白そうではあるけれど、全国で6館だっけ? 上映規模が小さすぎるよね」

亀「テッドのような大ヒットをする可能性もあったのに、惜しいものじゃの。そしてそちらに食われてしまった感もあるのが、この作品じゃな」

カエル「向こうはR15だから客層は被らないはずだけど、タイミングが悪すぎるよね……世間的には『君の名は。』が大ヒットしていて、さらに『映画 魔法つかいプリキュア! 』が公開初週だもん。

 どう考えても客を取られているよ。これは時期が悪すぎる」

 

亀「プリキュアは映画館が満席になっておったが、こちらはガラガラ……20人も人が入っておらんかったな」

カエル「宣伝も少ないみたいだし、ディズニーとかピクサーのようなブランドもないし……日本では苦戦しそうだね」

亀「ではそんな作品の評価はどうなのか、これから語っていこうかの」

 

 

 

1 安定した作品

 

カエル「アメリカのアニメ映画というと、安定した作品が多いような気がするね。どの作品も一定以上の面白さは保証されているというか」

亀「元々日本でこれだけの規模で公開されることでわかるように、アメリカ国内だけでなく世界中で大規模で公開されることを意識しておるからの。各国の多様な価値観にさらされた時、あまり違和感がないということを強く意識して描かれてあるからの。

 もちろん、それでも国によっては理解に苦しむ部分もあるであろうが……同じような価値観を共有する日本人には分かりやすい話かもしれん」

 

カエル「あとはアニメという媒体の作りやすさもあるかもね」

亀「作りやすいというと語弊がありそうじゃが、それこそファンタジーのようなこともたくさんできるしの。この作中でいうと、狼の組体操だったり、少し痛々しい場面もあるにはあるが、それが柔らかく表現されてうまくカバーされておると感じたの」

カエル「子供を機械で作るとか、考えてみると結構……議論を呼ぶよね」

亀「それこそミスリードをさせるようなことを言うと、これはクローンの話ということもできるかもしれんからの。もちろん、そういう話ではないぞ? だが、実写でやると中々えげつない話になるじゃろうな

カエル「『チャーリーとチョコレート工場』もアニメで見ると結構マイルドなんだろうけれど、人が演じるとキツイ部分もあったもんね……」

 

亀「さらに……ピクサー出身の監督が作っておるからの。ピクサーは今、世界で1番物語を安定して作れる会社じゃろう。そんな会社出身の監督がおるのじゃから、大人も子供も安心して見られるの」

カエル「結構子供向けアニメだと敬遠されがちだけど、実際大人向けの実写映画を見るより当たる確率は高いもんね

亀「なので見に行こうか迷っている人は、子供を連れて安心して見に行って欲しいの」

 

 

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声優について

 

カエル「今作は日本語吹き替え版が多いから、声優について語ってみようか。えっと……今作だとアンジャッシュの2人がフューチャーされているね

亀「主演がアンジャッシュの渡部、脇役に児島がおるのじゃが、さすがは芸人じゃの、いい芝居をしておったわい」

カエル「芸人だといい芝居をするの?」

亀「『ボクの妻と結婚してください』の時も語ったが、あの作品に出ておる原田泰造もうまいじゃろ? 舞台で演技をするというとどうしても役者ばかりが連想されるが、舞台の上でネタをやる、演技をするという意味では芸人も同じじゃ。

 アニメや映画の声優と演技は違うから癖はあるが、基本的にアンジャッシュも練りこまれた台本を演じるタイプの芸人じゃからな。演技の訓練を積んでいるのと同じじゃと思うの」

 

カエル「いろいろな役を演じているからね。ネプチューンも似たようなネタだから上手いのかな?」

亀「あとは落語家なども上手いの。癖は強いが、声も出ておるし、林家正蔵なども評価が高いじゃろ。声を作る基礎は共通しておるのかもしれんな」

カエル「じゃあ、今回のアンジャッシュも絶賛!?」

 

亀「う〜む……難しいの。児島はキャラクター自体がすごく独特だから声もあっておったが、主人公を演じた渡部は大変じゃったろうな。色々な面を演じなければならないし、そのメリハリは少し薄いように感じたの。

 ましてや共演者の……相方役の声優の子が(名前を忘れてしまい検索しても出てこず……若い女の子なのは覚えているけれど)非常にうまいからの。この子の相手をするには、少し弱いと思ったの

カエル「キュラクターイメージからして、山寺宏一を連想しちゃったからね。しかも玄田哲章とかもいるわけだし、相手が悪いよね……」

亀「じゃが悪いというほどでもないがの。周囲がうますぎるかの。他の本職声優は言わずもがなじゃな」

 

以下ネタバレあり

 

 

2 脚本について

 

カエル「じゃあ……ネタバレをあまりしないように話すけれど……面白いは面白いよね。ただ、もう少し面白くなるかなぁ? という思いもあるかな」

亀「コウノトリというテーマは非常にいいの。

 生命の誕生という重要なテーマを、男女の関係抜きに表現できるからの。その目の付け所は非常にいいと思ったが……」

カエル「少し後半ダレちゃったかな?」

 

亀「前半はとても発想が豊かで面白かったの。飛べない鳥の移動方法だとか、激しい空中移動であったり、ギャグであったり……そういった面がよく表現されていたの。中々面白かった

カエル「少しきついギャグもあったりするけれど、CGアニメだからそれもだいぶ見やすくなっているしね」

亀「ただのぉ……その分、後半が重くなってしまった印象があるの

 

カエル「お話としては主に2つの場面が出てくるよね。赤ちゃんを待つ家と、その赤ちゃんを運ぶコウノトリが出てくる」

 亀「この描き方自体は悪くないんじゃが、脚本として弱くなってしまった感もあるの。

 このお話でのテーマはもう一つあって、それが『仕事と育児』じゃ。仕事が忙しくて子供に構えない家族像が出てくる。それが赤ちゃんを待つ家じゃな。

 そしてコウノトリの方もそれは同じで、子供のことが会社にバレると会社の社長になれない。だからバレないように慎重に行くのじゃが……ここが微妙にリンクしておるようで、うまく接続することができなかった印象じゃの

 

 

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2つの物語の意味

 

カエル「これは前から語っていることだね」

亀「そうじゃの。物語を2つに分けるということは、それがどこかで交わった瞬間に面白みが湧くわけじゃ。じゃが、この作品では直接的にコウノトリと家が交わることがない。

 これが例えば、コウノトリが起こした行動が回り回って待つ家に影響を与えたり、逆であったりということであれば、分ける意味があったかもしれん。じゃが……この辺りの脚本が少し辛く感じたの」

カエル「難しいことだけどね」

 

亀「単なる配達人と配達先の関係ではなく、赤ちゃんを通して一蓮托生の中だったり、ピンチの時に助けになる展開であればなお良かったかの。それから、あとは……やはりあの両親の心変わりが少し唐突すぎて、そこが納得いかなかったかの

カエル「ひとつひとつはしっかりしているけれど、それが繋がることで少し違和感があるんだろうねぇ」

亀「これは難しいところじゃからな……整合性のある脚本が素晴らしい物語であるというわけでもなく、逆もまた然り。アニメに限らず脚本に穴がある名作というのもたくさんあるからの」

カエル「全体としては面白いからね」

亀「テーマを考えてももう少し深くすることもできたと思うが、その分、教育くさくなっておらんし、気楽に見れるのも事実じゃ。皆が皆、ズートピアのようになってはそれもそれで面白くないからの……」

 

カエル「ディズニー、ピクサーとの差別化が、これからのアメリカアニメの課題かもね

亀「ある種、日本でジブリ以外の作品がどのような道に進むかということに似ておるかもしれんの」

 

 

最後

 

カエル「子供向けアニメとしても面白かったし、気楽に見れるというのはいいよね」

亀「日本のアニメも子供向けアニメというと、キャラクター物が多いからの。その意味ではオリジナルでたくさん作るアメリカと日本の違いはおもしろいの」

カエル「そのアニメを見ていないとわからない作品もあるからね。いきなり名探偵コナンを見せられても、話の意味がわからないだろうし……」

亀「安定感はあるし、それだけ根強いファンをたくさん抱えておるキャラクター商品が多いということもあるが、こういったオリジナルの子供向けアニメ映画を日本も作って欲しいの」

 

カエル「『ルドルフとイッパイアッテナ』もあったけれど、オリジナルアニメは子供向けとは言い難いからねぇ。君の名は。も子供向けかと言われると微妙だし……」

亀「そういう作品も見たいの。

 アメリカの作品と違い、日本のアニメの売りはその多様性だと考えておる。キャラクター映画もあれば、子供向けアニメもあれば、大人向けアニメもあり……『聲の形』のような重いアニメもある。

 だからこそ、いろいろと問題はあるとは思うが、たくさんの種類のアニメを作って欲しいの」

 

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