今回は『ハケンアニメ』の感想とまいりましょう!
アニメファンからすると、なかなか注目度の高い作品じゃな
カエルくん(以下カエル)
アニメを制作する実写作品だもんね……どんな作品が生まれてくるのか、楽しみです!
亀爺(以下亀)
色々な見どころも多そうな作品じゃな
カエル「それでは、早速ですが感想記事のスタートです!」
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感想
それでは、Twitterの短評からスタートです!
#ハケンアニメ
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2022年3月25日
5/20公開作品
アニメを作る人々を監督を中心に描く群像劇。実写映画のアニメパートってアニメファン的には苦笑の作品もありますが今作は別!
覇権と言われる説得力に満ちていてそのアニメのクオリティの高さが仕事への情熱として伝わってきます!
オススメしたい作品! pic.twitter.com/U375UWEtgQ
原作がドラえもんを愛する作家であり映画の脚本も手がけた辻村深月ということでアニメを愛する気持ちへの啖呵の切り方も迫真のものを感じました
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2022年3月25日
また声優の役を声優が演じるのも◎!
耳が幸せになります
アニメが好きな気持ちを後押ししてくれるし、仕事に対してより真摯に向き合える作品です
アニメファンも実写ファンも、面白いと感じてもらえるような作品になっておるの
カエル「この作品は試写会で鑑賞させていただきましたが『ちゃんと褒める部分が多い作品でよかったなぁ』と思うくらい、良いポイントが分かりやすくて、面白い作品だったね。
良い作品だけれど語りにくい……という作品もあるから、このストロングポイントがしっかりしているというのは、とても大事だと感じます!」
亀「今作のストロングポイントは、以下のようになっておる」
○ 女性に向けられたお仕事応援ムービー!
○ アニメを愛する気持ちがダイレクトに伝わる!
この強みがあるからこそ、本作は面白い作品となっておるの
カエル「多分、この映画って原作が女性週刊誌である『an・an』にて、連載されていた作品でもあります。
なので原作から3人の女性を中心にしたお仕事ものなんですが、この映画も明確にターゲットに女性を狙ってきているのが伝わるよね」
亀「基本としては群像劇であるが、メインとなるのは吉岡里帆が演じる斎藤瞳、そして尾野真千子が演じる有料香屋子であると行ってもいい。
その2人が働くことを通して、色々と感じることを描いているわけじゃから、お仕事ものであると同時に、女性の活躍を応援する作品ということもできるわけじゃな。
同時にアニメ界の制作現場を追っていることもあり、いろいろな発見がある作品と言えるじゃろう。
これは観て得るものが多いであろう作品に仕上がっておるの」
○ アニメの制作現場に興味がある人たち
○ 普遍的なお仕事ものが好きな人たち
原作について
『ハケンアニメ』は原作がありますが、こちらは本屋大賞・直木賞作家である、辻村深月の小説です!
これがまた、素晴らしいわけじゃな
今作は原作の完成度がとても高いからこそ、映画版も面白い作品になっていると感じたね
カエル「辻村深月は昔から好きな作家で、何作か読んでいるけれど……おそらく、今の時代を代表するエンタメ作家の1人と言っても過言ではないくらい、平均的に面白い作品を多く生み出しているよね。
しかも『映画ドラえもん のび太の月面探査記』では、脚本を書き上げるほどのドラえもんファンとしても有名で、アニメに対する理解&熱い思いも持ち合わせている人だよね!」
やはり、辻村深月の魅力がよく出ている作品と言ってもいい
亀「わしとしては、辻村深月の作品の魅力は以下の2つだと感じておる」
もちろん、作品にもよるけれど、どちらかというとライトノベルとまでは言わないけれど、娯楽作品らしく読後感なども軽くて、楽しく読める作品も多いよね
それはキャラクターが活き活きとしていること、そして読後感が爽やかなハッピーな物語であることが、とても大事なわけじゃな
亀「お仕事小説でありながらも、同時に群像劇であり、さらにキャラクター小説の魅力も兼ね備えておる。
それだけでも、やはり物語として相当優れた作品に仕上がっておる。
そこに辻村節とも言える人生観や作家性が加わり、多くの人が共感できるような物語に仕上がっているわけじゃな。
さらに言えば、作家本人が”面白そうだからアニメ業界をテーマにしました!”というよりは『アニメが好きだからこそアニメ業界をテーマにした!』というような作品になっておる。だからこそ、より情熱を感じやすい作品に仕上がっておるの」
アニメ表現の面白さ
今作で発揮されるアニメ表現は、どれも抜群に面白いものばかりです!
邦画内でここまでしっかりと作られたアニメ作品は、そこまで多くないかもしれんの
カエル「これは言ってはなんだけれど……邦画に限らないけれど、映画の中で登場するアニメや、もしかしたら実写もそうかもしれないけれど、そこまで面白くなさそうなものも多いよね……
物語の設定上は傑作! 名作!と呼ばれているけれど、そのジャンルのファンが見ると苦笑してしまうようなものも多くて……」
亀「今作はそこに嘘がない。
主に2作品が作品内で制作されているが覇権アニメと呼ぶには、素晴らしいクオリティを発揮している。
近年流行りのリアルなテイストを大事にしたSFロボット作品の『サウンドバック 奏の石』では監督に『テルマエ・ロマエ』などの谷東、キャラクターデザインに日清のCMである『HUNGRY DAYS 』などの窪之内英策が起用されいる。
またその相手であり、少しデフォルメの効いた熱血アニメ路線の『運命戦線リデルライト』の監督には『ONE PIECE STAMPEDE』や、映画プリキュアシリーズなど、東映アニメーション作品の看板監督の1人である大塚隆史が務めておる。
このビックネームが揃うだけの価値がある、確かに覇権アニメだと感じさせるようなクオリティに仕上がっておるの」
ここが嘘があると、登場人物たちのそれまでのドラマが嘘になっちゃうものね
このクオリティの高さが、彼らの才能と努力の最大の結果として、観客に提示させるわけじゃな
カエル「このアニメ表現を観るだけでも、映画館に向かう価値はあるかもしれません!
それくらい、面白い映像で、まったく違う魅力を持つ2作品が堪能できると思います!」
声優役を声優が演じる意義
今作では、声優の役を声優がそのまま務めているシーンも多くあります!
アニメ声優がここまで実写で出演した邦画作品というのも、かなり珍しいかもしれんの
カエル「Twitterでは、このように発言もしているよね」
この『声優の役を声優が演じる』というのは、結構実写邦画では珍しいのではないでしょうか。有名な人気声優が普通に出てきたりして、ボクは1人でニヤニヤしていました
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2022年3月25日
メインで出てくるまりんか(高野麻里佳)が相変わらずめちゃくちゃ可愛くて、それでもニヤニヤするというね https://t.co/7LKIcTsEmE
実写作品で声優業メインの人が出てもほんの数カットで終わりなこともある中で、こういうしっかりとした配役を見ると声優の地位というか、注目度や人気が一般映画でも起用したくなるくらいに高くなっているんだなぁ、と感じますし、制作側の本気を感じますよね
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2022年3月25日
アニメの現場を描く作品だから、当然アフレコ風景もあります
カエル「その中では声優の役がたくさん出てきますが、メインキャラクターの群野葵を演じる高野麻里佳をはじめ、多くの声優がそのまま出演することでも話題です」
亀「とは言っても、コロナ前のような集団で録る光景になっているがの。今はコロナもあり、声優同士の掛け合いができず、個人で収録することも多いと聞くから、この光景が観れるのも今となっては基調になってしまったかもしれん。
しかし、ここはとても大きなことであると思う。
というのも、一昔前であれば、声優の役を声優がそのまま演じるということは、少なかったかもしれんからの」
それこそ声優の役を実写の俳優さんがそのまま演じることもあっただろうね
そのほうが知名度もあるし、顔出しの演技慣れしている分安心、という考え方もあるのじゃろう
カエル「もちろん、今作でもかなりピックアップされている高野麻里佳は、ルックスがかなり優れている人で……一般人の役とはいえ、女優である吉岡里帆と並んでも、全く違和感のない芸能人っぽさを出せる、美女声優の1人として知られていることもあると思うんだよね。
その強みは当然あったとはいえ、きちんと”声優が声優を演じる”という、考えてみれば当たり前のことができるようになっている、というのが、とても斬新かも……」
亀「それだけアニメ業界、そして声優の地位や知名度というものが上がってきているという評価じゃろう。
今は本職声優をピックアップして、お客さんを呼ぶ時代でもある。
下手な顔だし俳優が演じるよりも、集客力や話題性があるかもしれない、という考え方もあるのかもしれんの。
もちろん、高野麻里佳以外にも多くの声優が……ちょい役であったりするかもしれんが、顔出しで出演するシーンや、アニメのシーンでもアフレコしている。
だからこそ、このアフレコシーンだけを抜き取ってみても、嘘が少ないように感じられるわけじゃな」
以下ネタバレあり
作品考察
実写映画だからこその面白みで勝負している部分も
では、ここからはネタバレありでいきましょう!
まずはわしが気に入ったのは、最序盤の長回しカットじゃな
カエル「アニメのプロデューサーでもある、尾野真千子が演じる有料香屋子が現場で四苦八苦しているシーンだよね。ファーストシーンの次のシーンだったと思うけれど……」
亀「ここは長回しで、狭いスタジオ内を色々と行き来するカットとなっておったの。
ここの面白さはアニメではなかなかできないカットとなっている。
というのは、アニメが最も苦手とするものの1つが、長回しカットじゃからな」
カエル「アニメって、その制作過程上、仕方がない面も多いけれど……長回しのような長いシーンを作りづらいんだよね。それこそ1カットが重くなりすぎて、1人のアニメーターさんに負荷がかかりすぎるし……
それこそ『エヴァ』が特徴的だけれど、動かない長回しの1カットならばできると思うけれど、カメラも複数人の人物も動き回る、カットって、アニメではカロリーが高すぎてなかなかできないよね……」
ここを長回しで描いたのが、面白い試みだと感じたの
亀「それだけでも、アニメと違う実写ならではの試みといえるじゃろう。
また小説とも微妙に流れが変わっており、今の有料香屋子の状況が端的に視覚的にわかる作品に仕上がっておる。
ここだけでも、この作品にかける意欲が伝わってくるような思いがあったの」
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リアリティラインの難しさ
ちょっとだけ苦言を呈するならば、このリアリティラインになるのかなぁ……
ここがかなり曖昧で、難しいラインを行き来するんだよね
カエル「お仕事ものの難しさだとも思うけれど、リアリティラインって色々と気になってしまうんだよね。
簡単に分けると、以下の3つのように分けることができると思います」
② 虚構のリアル → ファンや制作者があってほしいアニメ制作現場
③ 虚構の虚構 → ただの空想、あるいはファンが見ても嘘に感じる描写
このように分けると、かなりわかりやすいかもしれん
カエル「①の完全なるリアルは、それこそドキュメンタリーみたいな形で、実際に制作する現場のことを示します。
ここはリアルではあるけれど、案外地味だったりして、エンタメとして見るには面白みが少ないかもね……
②の虚構のリアルは、嘘なんだけれどファンや制作者があってほしい制作現場の姿を描くという”本当っぽい嘘”と言ったところかな。
それこそ『SHIROBAKO』なんかは、典型的なここだよね!」
リアルであればあるほど面白い、というわけではないのがポイントかもしれんの
亀「一方で③の完全なる虚構は、外部のファンが見ても嘘だろう、と思うポイントのことじゃな。
今作は②と③を交互に行き来するような作品となっているから、見ているこちらも はてなマークが浮かんでくることは、実はかなりある」
カエル「つまり
- フィクションのお仕事もものとして楽しむ
ようにはしてほしいけれど
- リアルなアニメ現場を楽しむ
という作品ではない、ということだね」
例えば、最も根本的な設定であるが、覇権に対する理解も映画版はリアルと若干異なるわけじゃな
カエル「覇権って、結局は1番話題になった作品程度の意味合いで、明確な基準がないんだよね……
劇中では偶然同じ時間帯になったから、視聴率で争っているけれど……実際にアニメファンって、そこまで視聴率を重要視していなくて、ここはテレビ業界マンの常識を合わせただけの描写だよなぁ……って感じたり」
亀「むしろ今では
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などの方が、アニメファンの心理に合致するかもしれん。それですら、数ある指標の1つでしかないがの。
少なくとも覇権とは、感覚的に決められるものであって、どれか1つの明確なデータのもとに決まるものではないわけじゃな」
しかも、アニメの制作現場もファンの知っている知識レベルからでも、笑っちゃうようなものがあったりね……
そこは、まあフィクションとして楽しむべきものかもしれんがの
亀「結果的には、今作はその怪しいリアリティのラインを行き来するような作品になってしまっておる。
そこが少し惜しい部分であり、評価が分かれるかもしれんかの」
カエル「リアルではなく、熱い虚構を楽しみにしてほしい! ということだね」
辻村深月のアニメへの思い
今作って誰の映画だという評価なの?
わしは、原作の辻村深月の魅力を引き出した映画だと感じておる
カエル「え、原作者だけれど、映画化でもその影響はやっぱり絶大なんだ」
亀「わしが見た限りでは、原作が優れていたからこそ、映画もまた優れていたものになったという印象じゃな。
実写パートは上記のように危ういところもありながらも、働く女性に対して2タイプの理想の王子様を提供することもできている。その意味では、女性を応援し、接待するムービーとしてよくできているという評価もできかの。
しかし、作品の面白さの核は、辻村深月にあるように思う」
例えば、この原作のこのセリフなんかも印象的だよね
結局、辻村深月本人が、ハケンアニメという競争に対する疑問をすでに提示しているわけじゃな
カエル「もう、この時点でこの映画のリアリティラインやもやもやポイントの1つについて、しかも割と序盤で言及しているというね……」
亀「この辺りは『ドラえもん』などを愛してきた辻村らしいポイントと言えるかもしれんな。
他にも、これは映画にも明確にあったが、このような思いも書かれておる」
この言葉、本当に痺れた!
カエル「やっぱり、アニメが好きということを公言できるかどうかって、世代によって変わると思うんだよ。
だけれど、ここでベルダンディーとか、草薙素子という実際のキャラクター名を挙げながら、この思いを語り切ってくれたことの思いの強さに、すごく感動しちゃうよね!」
亀「ここは紛れもなく、嘘がないリアルじゃからな。
この思いを抱える人は、一定の世代以上のアニメファンであれば多いじゃろう。非モテで、世間からはバッシングされながらも、どうしようもなく愛してしまったアニエ業界への想いというものも感じ入る。
映画もそこは特に着目していた印象じゃな」
そして、ラスト付近ですがこの言葉ですよね!
これぞ、辻村深月の真骨頂じゃな
カエル「これは個人的な思いも強いけれど……ここ最近は安易な死だったり、暴力的、性的、グロテスクな表現でお客さんを釣る作品も多いと思います。
だけれど、辻村深月はそっちじゃなくて、このような言葉を言い切れるところが、まさに素晴らしいわけだね」
亀「紡がれるアニメ映像と、それまでの葛藤の果てにこれが出てきた時に、わしは思わず胸が震えたからの。
これこそが物語であり、祈りであると感じた。
『運命戦線リデルライト』は、お話的にも『魔法少女まどか☆マギカ』の影響を受け取れる。しかし、それとは同じ道を選ばず、辻村流のアンサーで返したというのが、とても面白い。
この切り返しができるからこそ、間口が広くて、多くのファンに愛される作品になっているのではないか……わしは特に、そう思うの」
最後に
というわけで、この記事を終わります!
色々と語ることもある作品じゃな
カエル「結構アニメファンからしたら、語るポインチが多い作品だよね!
王子千晴のモデルって幾原邦彦なんだろうなぁ〜とか、あるいは聖地巡礼とかの話題も取り扱っているし!」
亀「リアリティラインが怪しい部分もあるが、そこも含めての面白さじゃと思うし、何よりも作品制作の熱意は本物じゃ。
とにかく、この熱い思いを楽しんでほしい作品じゃな」