物語る亀

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物語愛好者の雑文

<辛口>『映画 五等分の花嫁』ネタバレ感想&評価 ファンに向けられたファン向けアニメ映画

 

今回は『映画 五等分の花嫁』の感想記事になります!

 

頑張って1週間ちょっとでテレビアニメ26話全部を観たぞ!

 

映画「五等分の花嫁」 オリジナル・サウンドトラック

 

 

カエルくん(以下カエル)

今回は ○原作未読 ○テレビシリーズ1期、2期を鑑賞済み の意見となります!

 

突貫工事的に、1週間で全部見ましたね

 

 

カエル「先に言っておきますが、批判的な意味合いが強い評になります。

 絶賛評価が見たい方は、こちらでご退散ください。

 また、上記のように作品の根強いファンというわけでもありません」

 

主「これだけファンで盛り上がっている作品だと、批判的なことも言いづらいけれどね。

 でもこれも1つの意見だと思ってほしい……と言いつつも、まあ、どうせ色々と文句を言われるんだろうなぁ……という思いもありつつ」

 

カエル「ちなみに、誰派なの?」

 

主「う〜ん……一花推しかなぁ。

 声が花澤香菜だし、お姉さん系が好きなので。

 でも1番良い子は妹のらいはちゃんだと思うから、らいはちゃんを妹か娘に欲しい派です」

 

カエル「……では、切り替えて感想記事のスタートです!」

 

 

 


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感想

 

それでは、Twitterの短評からスタートです!

 

 

ファンが喜べば、それでいいのかもしれないな

 

カエル「うちとしては一応テレビアニメの1期、2期を慌てて観ていたけれど、今作の魅力はなんと言ってもキャラクターだよね。

 誰が可愛いとか、そういうことが特に出てきやすい作品と言えるのではないでしょうか?

 その自分の好きなキャラが躍動している姿を見るだけでも、とても楽しめるのでは?

 

主「……」

 

カエル「あとは、なんと言っても豪華声優陣の熱演だよね!

 キャラクターたちに命を吹き込むことが仕事だけれど、それがしっかりとなされていた印象だね!

 この豪華声優陣を楽しむだけでも、劇場の価値はあったのかも!

 

主「…………」

 

カエル「えっと……あと作画!

 すごく安定して可愛かったよね!

 キャラクターを絶対崩さないぞ! という覚悟が見てとれたし、その意味でも、ファンの人がとても喜びそうだったし!」

 

主「…………………」

 

カエル「え……えっと……

 あと、あとは……やっぱり五等分の花嫁の魅力って、誰がメインヒロインに選ばれるのかが、最後までわからなかったところだよね!

 今作で色々なことに決着がつくのだけれど、この結果に対して『あ〜!』ってなっちゃって!

 選ばれた子は良かったね、だけれど、選ばれなかった子を思うと、ちょっと色々と悲しくなってきて、でも祝福しないといけないとか、色々な感情が出てくるし!

 

主「………………………………………」

 

あの、どうして何も言わないの?

 

……なんだかなぁって気持ちがすごく多いんよねぇ

 

主「なるべく褒め中心でいこうと思ってはいるけれど、個人のブログだし、今回は辛口でいいかなぁという思いが強い。

 特にファン向け映画だから、ファンの方が喜んでいただけたらそれで結構。

 この映画に合わせてテレビシリーズを一気見しただけの、自分みたいな存在は門外漢だよ! と怒られるのもガッテン承知の助ってところだ。

 だけれど……やっぱり1本の映画として、そしてアニメ映画としてかなり歪だったし、そこはどうにかして欲しかった。

 これがテレビアニメ3期だったら、特に文句もなかっただろうけれど……映画ならば、正直、言いたいことが山ほどあるんだよ」

 

 

 

 

ファンに向けられたアニメ映画

 

ま、まずは、この作品はファンに向けられたアニメ映画だということは、異論ないよね?

 

もちろん、今作から『五等分の花嫁』に入門するには、ハードルが高すぎると言わざるを得ないだろう

 

カエル「うちは一応テレビシリーズ1期、2期を観て、内容を理解してから劇場に向かいましたが、これが『アニメ映画だから一応見ておくかぁ』くらいの感じだったら、何も理解できなかったかもしれないね

 

主「それが悪いというつもりはないよ。

 それを考えると、すごくファンに向けられた作品ということもできる。

 テレビシリーズは1期、2期ともに色々な評判があって……特に1期はファンの中でも論争になった部分もあると聞いたけれど、それはわかる。後日配信で観た分には、そこまで劇的に悪いとは言わないけれど、褒めるほどすごくいい部分も少なかった。

 もちろん、1期も光る回はあったけれどね。

 それでいうと2期はまだ安定している部分もあったし、監督・キャラクターデザイン・制作会社など、変更が大きくて、色々と画面のルックから何からが変更されたけれど、それでも『なるほど』とうなづける部分も多かった」

 

じゃあ、この映画は……

 

悪い意味で”テレビアニメ通り”すぎるよね

 

カエル「ここ最近は映画用に原作やテレビシリーズから変更されることを嫌がるファンも、結構多い印象だよね」

 

主「確かに、その気持ちはわかる。

 そのIP(知的財産)を使うならば、そのIPに則ったものにしなければならない。監督の作家性のために、その作品を壊すのもまた違う。

 だけれど、同時に劇場というメディアに合わせる工夫も多いに必要なんだ。

 この作品はあくまでもテレビアニメのクオリティ、あるいは演出を2時間強繋げただけの作品になってしまっている。

 だから、自分は大いに批判したい部分があるし……人気タイトルでファン向けだからこそ、これでいいのか? という思いがすごく強いんだよ」

 

 

 

作品に対する疑問

 

映像面について

 

まずは、映像面についてだけれど……

 

これはもう、はっきりと劇場で見る価値がある良いシーンが、ほとんどないと言って良いレベルだよ

 

カエル「そこまでは思わないファンも多いかもしれませんが……

 近年はアニメ映画のレベルが上がってきており、特に映像面に関しては進化が素晴らしいレベルでたくさんあります。

 中にはヒットはしなかったけれど、映像のクオリティに関しては文句がないというアニメ映画も、2022年はたくさん生まれていた印象もあるね」

 

主「映画って残酷で、どんな傑作も駄作も等しく1900円(1800円)なんだよね。

 作品のクオリティで価格が変わらない。

 今作は確かにキャラを崩さないように安定はしていたけれど、それはあくまでもテレビアニメならば問題が少ない、というレベルに感じられた。

 それ以上の描写が少なくて……いや、スポット的にはある。

 例えば中盤に文化祭最終日を待つ5人それぞれの物語が挟まれて、各部屋で待つ5人の様子が描かれている。この1枚絵などは、きちんと力を入れて描かれていたし、さまざまな処理もなされていた」

 

そう言った部分で褒めているファンも多い印象だね

 

だけれど、それって結局は映画である意義というのもがないんだよ

 

主「この作品、EDのクレジットで観ただけだから数えてはいないけれど、作画監督でざっと30人くらいはいたんじゃないか?

 しかも原画は会社名も含めて100人はいそうだったし、2原や動画も含めたら……とてつもない規模の人数が関わっている。

 もちろん、130分代という長尺だから、それだけ関わるスタッフも多くなるだろうけれど……でも、今作はそれが良い方向に向かったとは思えない。

 むしろ、短い制作期間で期日に合わせるために突貫で大量にばら撒いたのでは? という思いが強くなる

 

それでも1つの制作方法ではあるけれど……

 

誰の個性が発揮されたんだろう? という印象もあるんだよね

 

カエル「強烈に印象に残る絵も少なくて……ってこと?」

 

主「少なくとも自分には、そう見えた。

 先ほどから挙げられているキャラクターの良さは認める。

 で、それがあまり崩れていないという評価も、まあわかる。

 でも、それ以上がない。

 映画だからこその世界一の美少女にもなっていなければ、特徴的な映像演出も、圧倒的な絵作りもない。

 それで136分という長尺をやっているから、飽きやすい作りになっているし……あくまでも『何とか映像化に間に合わせました』レベルにしかなっていないのではないだろうか」

 

 

 

『原作に忠実にアニメ化』することの是非

 

次に物語ですが……

 

ここが1番問題なんだよね

 

カエル「えっと……うちは原作は読めていませんが、結構『原作に忠実にアニメ化だった』という意見が散見されているし、ファンの方はそれが嬉しいのではないのかな?」

 

主「う〜ん……

 そもそもさ”原作に忠実”って、それって褒め言葉なの?

 

カエル「え、いや、それは褒めてはいないだろうけれど、貶してもいないんじゃない?」

 

主「例えば、劇場版でよくある『〇〇編の映画化!』とかならば、まだわかるんだよ。

 つまり、原作の中の1エピソードだけを抜き出して、それを映画サイズに収めるというね。それならば、確かに原作に忠実でも、映像化可能かもしれない。

 だけれど、今作のようにテレビシリーズの途中から最後まで映像化となると……結局は週刊連載の構成のまま、最後まで駆け抜けることになる。

 そして週刊連載の構成と、テレビアニメの構成と、劇場アニメの構成はまた違うわけだ」

 

構成の違いねぇ……

 

この映画は1本の物語として機能していないし、物語がフラフラしすぎていて、全く軸も核もない

 

カエル「物語がふらふらしていることって、どういうところ?」

 

主「例えば、中盤で上杉風太郎の幼馴染の女の子が出てきたり、あるいは中野姉妹の実の父親の無堂が出てくるわけだ。

 風太郎の幼馴染が、教師と生徒の関係性である中野姉妹との関係性の裏表であり、また無堂が風太郎&中野マルオの対比する相手というのはわかる。でも、それが物語に有機的には絡みついてこないし、30分くらいの1エピソードを構成するための単なるモブに名前がついただけの存在になってしまっている。

 そんなやつ、必要?

 本当にこの映画に?

 カットしても、どうにでもなるんじゃないの?」

 

カエル「それは、まあ、原作にあるんだろうし……」

 

主「だから週刊連載の漫画の構成ならば、それでもいいよ。

 毎週のように引きを作り、そのために色々な展開を用意して……という試みが必要だから。

 でもそれを2時間近くを集中して観る、映画というものでやるには構成が変になる。

 今作はただのエピソードの詰め合わせでしかなくて、総集編に近いような……エピソード集にしかなっていない。

 それが映画ではない、とまでは言わないけれど、大きな1つの塊として物語が機能するかというと、全く機能していないわけだ」

 

いや、でも、5人の恋愛関係には決着がついたわけじゃないですか!

 

そこも不満なんだよなぁ

 

カエル「え〜……じゃあ、決着がつかない方がよかったの?」

 

主「そうじゃなくて、別に誰と結ばれようが、別に構わないんだけれど……

 今作は『最後に誰とくっつくか』というのが、ある種のミステリー的な感じで予想する楽しみ方もあったと思う。そして、その人物は、自分の中ではかなり意外な展開ではあったかな。

 ただし、そこに至るまでのストーリーに、ある種の……まあ、いまよく言われるような言葉で話すならば、伏線と回収のような、あるいはフラグのようなものが物語の中に果たしてあったのか? ということだ

 

カエル「なぜ、彼女を選んだのか? という理由ということ?」

 

主「そう。

 その後に『彼女はこういう子で〜』という、バックボーンが語られるけれど、それを窺い知れるようなものがそれまでなかった。

 だから唐突感がとても強い。

 1つの塊として物語を描く、ということをせず、単にエピソードを1つ1つ消化しているから、全体を通して観るとかなりチグハグで、しかも突貫工事の連続に見える。

 もちろん、週刊連載ならばそれでもいい。

 だって1つの塊として発表できる形式ではないし、とりあえず事件は起こして、後で解決を考えよう! という書き方だってあるしね。読者の興味を毎週引くというのは、かなり難しいのは重々承知だよ。

 だけれど……映画は違うでしょ?

 1つの物語の塊として観るわけだし、すでに完成した物語として作られているのであれば、そこを再構成して、読後感や物語を大きく損なうことなく、同じメッセージを紡ぐことも可能なはず。

 もちろん、それが簡単なことだとは言わないけれど、その試みそのものを放棄したようにすら見えてしまうような、この構造に対して、自分は大きな憤りがある」

 

 

 

 

本作に対する憤りの理由

 

え〜……でもさ、ファンの人が喜んでくれればそれで良いんじゃないの?

 

もちろん、それも1つの考え方だ

 

カエル「何を持ってファンが喜ぶのか、という考え方は色々あるしさ。

 

  • 原作を一切変更しないこと
  • 監督の作家性などを入れないで無難に終えること
  • 自分の愛する(担当する)キャラが可愛ければOK

 

 そういう人だって、一部にはいるんじゃないの?」

 

主「もちろん、その通りだ。

 ここは考え方が難しいところで……自分は先にも述べたように、そのIPを使うならば、IPに対する敬意は絶対に必要と考えている。だから、無闇に変更することが正義だとは思わない。

 でも、そのIP通りにすることも絶対的な正解ではない。

 正解がないからこそ、面白いんだよね、表現って。

 だから本作から感じる『とりあえずテレビアニメレベルは崩さないほどの映像で、原作をそのまま描く』という方向性を選択するのは、まあ理解はできる。

 でもさ……やっぱり、ファンに対して甘えているという見方もできるよね」

 

甘えかぁ……それは「信頼している」とか、言葉の問題とも思うけれどね

 

少なくとも、ファン向け以上のものがあってほしいんだよね

 

主「これだけ文句を言っているけれど、スタッフやキャストに対して文句をいうつもりは無い。

 確かにできるだけのことをしているし、スタッフも2期から考えると時間がない中で、136分もの長尺を作り上げたのは、素直に賞賛だよ。

 でも、今作はファン以外の人が見たら、全部ポカ〜んだと思う。

 それでもファンだけで興行収入が得られるほど『五等分の花嫁』という作品が人気を獲得したとも言えるけれど……やっぱりクオリティ的にも、あるいは制作時間にしてもやはり3期で描くべきだったのではないだろうか、という思いはどうしても拭えないし、もっとできたのでは? という思いは強いかな

 

カエル「ファン向けに作られて、ファンが喜んで、興行収入が稼いで……って、何も悪いことがないように感じるけれどなぁ。

 それはそれであってもいい、映画の形態だと、ボクは思うけれどね」