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物語る亀

ネタバレありの物語批評

映画『ペット(2016)』感想 ユーモアの効いた一作 ※後半ネタバレあり

アニメ 映画 アニメ映画

亀爺(以下亀)

「今日はペットの感想じゃが、なんというか、語るのが難しい作品じゃの……」

ブログ主(以下主)

「いやぁ、ここまで語りにくい作品もそう多くないよなぁ」

 

亀「見所も亀が可愛いくらいじゃし……」

主「そこ!? いや、そんなに出番ないし、活躍しないし……」

亀「いやいやいや、カエルに比べればまだ仕事しておったじゃろうが! 何を見ておったんじゃ!!」

主「……いや、カエルの方がいい仕事していたんじゃねぇかな……

 ちなみに、お前らはペットでも何でもないからな。ただ勝手にこのブログに登場するだけだからな!」

亀「いや、それはないじゃろう!! お主が呼ぶからこうして出てきたのに……!」

主「いやいやいや、一度も呼んだことないからな!! 大体な……」

 

見苦しいため以下略

 

 

 1 ネタバレなしの感想

亀「ゴホン! それでは気を取りなおしての……まず、予告編で受ける印象と内容が全く違うものじゃな

主「そうだな……予告編からは、ペットの留守番の裏事情を描いた、単純なコメディだと思うけれど、そうじゃないんだよな。ペット達が飛び出して行って、帰ってくるまでを物語にしているんだけど、それが結構波乱万丈な冒険ものになっているんだよ

 

亀「予告編だと『知られざる、飼い主がいない時のペットの生態を探る!』みたいな内容じゃったが、そうではなかったのがびっくりしたの……」

主「あとはディズニーとかピクサーの可愛らしい絵柄で、子どもに見せたいアニメだと思うと大間違いというか。中々お下劣なシーンもあるし、暴力シーンもあるしだから、人を選ぶかもしれないな。

 もちろん、R指定がつくほどの過激なシーンはないけれど、個人的には少し嫌だなぁって思う部分もあったからなぁ。まあ、少し過敏すぎるかもしれないけれど」

 

亀「その意味ではディズニーとの差別化も出来ているし、予告の作り方も上手いといえば上手いんじゃけどな」

主「そうね……だからこそ、より語るのが難しくなっちゃったのかもしれない。面白いかつまらないかでいうと面白いんだけどさ

 

上手いポイント、微妙なポイント

主「まず、また同じことを繰り返すけれど、面白いかつまらないかというと、十分面白いんだよ。レイトショーの字幕で見ていたけれど、当然のように大人ばかりでさ。結構わらい声も上がっていたんだよね。

 個人的にも笑うシーンは笑ったしね。

 あと、字幕版を見て思ったのが、今作は多分吹き替えの方が面白い。それだけアニメ的な演技をしているし、字幕版は結構……なんというか、ブラックだったね。何より声優陣が豪華だし」

亀「確かに面白いし絵作りも上手いんじゃが……どうしてもピクサーやディズニーと比べると、一つ落ちてしまうの……」

 

主「まあ、あれほど上手く話を作る会社も他にないし、一枚、二枚落ちるのは当然といえば当然なんだけどね。ズートピアに匹敵する、うまい作品なんて、アニメも実写も含めて、今年ではまだないんじゃないかな? それほどまでに圧倒的なうまさだから」

亀「それでは、ここからネタバレ感想といくかの」

 

以下ネタバレあり

 

 

 

2 脚本について

主「すべてはこの脚本が微妙ということに尽きるね

亀「悪くはないの。悪くはないが、良くもない」

主「まずさ、主人公のマックスの目的がないんだよ。いや、その都度その都度はあるけれど、状況によってすぐに変化する。最初は邪魔な同居人を追い出そうから始まっているのに、その次では家に帰ることになっている。そして、同居人を元いた家に帰すことにして、最後はみんなで帰るということになる」

 

亀「各シーンごとではうまくいっているのじゃが、それが通してみるとよくわからんことになってしまっておるの。それがマックスだけじゃなくて、話全体でそうなっておるからタチが悪いの」

主「物語のカタルシスが薄いんだよね。そのシーンごとではいいんだけど、それが次に繋がらない。それこそ、短編アニメを何本も繋げたような作り方だからさ、同時上映のミニオンズみたいに5分だったり、10分のアニメだったら何の問題もなかったかもしれない

 

前半について

亀「まず、前半はそこまで気にならんかったが、あの主人公格のに2匹の険悪さが嫌じゃったな」

主「あの2匹の関係が受け入れられれば、面白いと思うけれど、さすがに露骨すぎる気がしたよね……そこまで険悪に描く? って思っちゃった」

亀「こう、子供向けアニメの持つ優しさが一切なく、大人が大人向けに作ったような印象もあるの

主「でもさ、この感じがアメリカ人にはすごく受けるっていうのが、よくわかるのよ。あのブラックさなんか、アメリカのやりすぎなくらいのブラックジョークも効いていてさ、あっちの文化だったら『イエー!』ってなるんだろうね

 

亀「あと、予告編の内容をほぼ開始10分ほどで出し切ってしまうのもの……あれではまったく違う物語と思って行ってしまうわい」

主「別に、その手法自体は悪くはないんだけどさ……でも、ねぇ、それで肩透かしを食らった感はあるねぇ」

 

blog.monogatarukame.net

 

中盤について

亀「ここから迷走の始まりじゃな。まず、喧嘩から猫の集団に襲われるわけじゃが、そこ自体はコミカルでいいのじゃが……」

主「あの首輪を取り戻す話になるのかな、と思いきや途中で鳥が見つけてくるためのアイテムにはなったけれど、そこでおしまい。あの鷹は優秀だなってのは思ったけれど、もう一つ二つ欲しかったよなぁ……

 

亀「全体的にそんな描写が続いてしまうの。例えば、もう少し先のところで仲間を人質にとられるけれど、それが全くの意味を為しておらん。それで敵に人質がいるからしぶしぶ降伏する、とかあれば意味もあったんじゃろうが、一切なし。こういった部分が全く勿体ないの」

主「これも全て、主人公たちに目的がないことに由来しているような気がするんだよね。目的があれば、必然的に障害が決まる。そしてその障害を乗り越えるために色々と案をめぐらせたり、頑張るんだけど、それが一切ないからカタルシスに繋がらないんだよ」

 

亀「あとは2つの集団に分けて物語を紡ぐ必要があったのかも疑問じゃな

主「物語において2つの集団に分けるというのは、片方が目的を持って行動していて、もう片方がそのための重要なキーアイテムを持っているというのが大事になってくる。そうしないと、この2つの集団が合流した時の意味が減ってしまうからね。

 でも今回は、そうなっていないからさ……だから単なる援軍で終わっちゃった感があるよね。いや、面白いんだけど、到着したっていうカタルシスはないかな」

 

後半について

亀「もったいなかったのは後半に物語が走ってしまったことじゃの」

主「そこはいただけないよね。本来ならばゆっくり溜めを交えながらカタルシスを呼ぶための後半に走るとなると、それはもうカタルシスを放棄しているようなものだからさ。むしろ中盤のソーセージ工場とかをカットして、後半に尺を譲った方が良かったんじゃないの? って思う。

 そのせいでウサギのキャラクターが軽くなってしまったよね」

 

亀「あとよくわからんのは、あれだけ下水道の匂いを強調しておきながら、それが何の伏線にもなっておらんところじゃな」

主「マックスたちと敵のウサギは海に入ったから洗い流されたってことでいいよ。でも他の飼い犬、飼い猫はそうじゃないんだから、最後の辺りで匂いを気にするシーンがあってもいいじゃない。でも、それがないのね。

 あとは途中でこれだけ荒らしたらおこられるっていうのもあったのに、結構あっさりと許したじゃん。あれも伏線として生きてないよね。

 だから、余計に毎回行き当たりばったりな印象を受けちゃったのかもしれないな」

 

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3 テーマ性について

亀「……この作品のテーマって何かの?」

主「ないんじゃない? そんなに強い思いがあるとは思えないけれど」

亀「いやいやいや、ペットを取り巻く状況だとか、どんなに大冒険をしても飼い主を待つ健気な心とか、色々あるじゃろうに」

 

主「……でもさ、結局そのテーマを回収する結論がないじゃない。あのウサギは飼われてハッピーかもしれないけれど、豚とかは変わらず野良のままでしょ。そりゃペットを捨てるなって啓蒙にはなったと思うけれど、強烈なメッセージとまでは感じなかったし。

 飼い主との絆と言っても、ほとんど飼い主が出てこないじゃない。ほとんどペットの片思いみたいなものでさ、もちろんあの飼い主達には愛があるけれど、飼い主はスタートから終わりまでペットに注ぐ愛情の量は一緒だよ。減ってもいなければ増えてもいない」

亀「……まあ、それだけ深いテーマ性を獲得できればこんなに行き当たりばったりにはならんかの」

 

映像について

主「ここはもう文句無し! さすがはアメリカのアニメ映画だと感銘を受けたよ!」

亀「……よかった、ここまで文句を言ったらさすがに叩かれる気がするからの」

主「特に水の表現が良かったよね。波うつ様子とかさ、動物のデフォルメ化した動きとか、とても面白かった。

 だから1シーンごとを切り取れば本当に面白いんだよ、この映画。それを90分くらいにするから疑問点がわくだけでさ」

 

亀「それから、1つ付け加えておきたいのが、車椅子の老人犬が猫を口説く時に言う、『誰でも欠点はある』というのは『お熱いのがお好き』のラストシーンの『完璧な人間などいない』のオマージュじゃな」

主「種族を超えた愛を語る場面だから、性別を超える愛を語る場面を持ってきたのかもね。挿入歌のクイーンといい、大人もニヤリとする場面は結構たくさん含まれていたような気がするよ。

 もしかしたら、自分がわからなかっただけで、そういうシーンはてんこ盛りだったのかもね

 

 

最後に

亀「というわけでペットについて語ってきたが……」

主「同時期公開の動物問題を扱った映画ということで、『ルドルフとイッパイアッテナ』と比べると、対照的な作品だったね。

 ペットは細かい部分や絵作りはいいけれど、全体の構成は怪しい。

 ルドルフは全体の構成はいいけれど、絵や1シーンずつだと劣る。

 どちらに軍配を挙げるかと問われると、やっぱり脚本云々を語りたい人間だからルドルフになるかなぁ。でも趣味によって分かれるね。

 日本のCGアニメ映画もいい勝負ができていると思うよ

 

亀「しかしのぉ……もう少し亀が活躍しても良かったのではないかの? ほら、ラストの海に飛び込む役とか……」

主「亀だと地上の動きが鈍くなるだろうが」

亀「そこはうまくカバーしてもらって、悪役として見事に描きつつ、ラストに美味しいところを持っていくように……」

主「あれはウサギだから可愛らしくなったの、亀じゃ子供受けしないだろう」

亀「何お!! 亀だって大ファンの子供達はたくさんいるというのに!!」

主「だから! そんな特殊な子供相手にしても……」

 

以下略 

これにて終了