ブログ主(以下主)
「結構多くの映画館を回っていて、実は密かに楽しみにしていることがあるんだよね」
亀爺(以下亀)
「なんじゃ? ポップコーンの味とか?」
主「……いや、それはそれで悪くないと思うよ。どこのポップコーンが1番美味しいと思うかっていう記事もそれなりに需要はあるだろうけれど……
ちなみに自分はキャラメルポップコーンオンリーで、朝ご飯代わりにムシャムシャと映画が始まる前に食べてるよ。本編が始まると音が気になって……じゃなくて!
ほら、本編が始まる前にマナーに関するお願いが流れるじゃない?」
亀「映画泥棒の前などに流れるやつじゃな。携帯の電源は切ろうとか、前の席は蹴らないなどの注意がある映像で、時折新作映画の宣伝と一緒に注意喚起が入ったりもするの」
主「あれって結構各劇場によって違うからさ、知らない劇場へ行った時に見るのが好きなんだよ。
で、今回語るベイビードライバーは全国でも40館くらいしかやっていなくて、関東圏でも結構限られるのね。新宿とか、品川とかの数館でしかやっていなくて……今回は宇多丸もよく行くという品川の映画館で見たんだよ」
亀「水族館の横にあるところじゃの。長い直線の両脇にスクリーンの入り口があって……100Mほど真っ直ぐな道が特徴的な映画館じゃ」
主「たまにそこに行くんだけれどさ、T-JOY系列で全国各地にあるんだけれど、そこのマナー注意広告が面白いんだよ。
結構アニメで注意喚起をする映画館も多いんだけれど、そこは子供達が劇場で映画を鑑賞しているのね。でもさ、音楽といい、雰囲気といい、まんま『まどかマギカ』みたいなのよ。
どっちが先なのかは知らないけれど……
で、マナー違反をした子供? 小人がさ、クレーンゲームのアームみたいなもので連れされて……あのシュールさがたまらなくいいね」
リンクはこちら
https://www.youtube.com/watch?v=qADLYbCyzGA
亀「……おかしな楽しみ方を見つけたものじゃな」
主「色々と凝った演出もあったりするので、みんなも注目してみてね」
亀「では本題の『ベイビードライバー』の感想記事に行くとするかの」
(記事中の文字リンクで該当作品の感想記事へと飛びます)
1 感想
亀「では、まずは感想から入るが……この映画はハリウッドでは中規模の制作費で制作されたが異例の1億ドル(約110億円)を稼ぎ出したことでも話題になっておる。
色々とトラブルもあるようで……実は、一部の重要な楽曲の使用に関する裁判もあるとか」
主「向こうじゃ日常茶飯事じゃない? 映画制作に裁判は付き物で、映画プロデューサーのお友達は弁護士だってもっぱらの噂だし。パクリ、パクられということに非常にうるさいし、少しでも隙を見せれば多額の賠償金を払う未来が待ち受けているという、恐ろしい世界。
まあ、日本がゆるゆるなだけかもしれないけれどさ」
亀「先に言っておくが、おそらく今年の洋画でも屈指の人気を誇ることはほぼ間違いないし、年末に上がるであろう『今年のTOP10』にもノミネートされる可能性が大の作品じゃ。
アメリカでも高評価を受けており……実を言えば、日本公開前でもコアな映画ファンの中では飛び抜けて話題になっておった」
主「こういう言い方は嫌味くさくなるけれど『日本でも成功が約束された、洋画ファン狙い撃ちの映画』だよね。
全国でも40館規模とのことだけれど、その数字は絶対に少なすぎる。
それこそ100館規模はないとおかしい作品なんだよ。でも、まあ、これはしょうがないけれどさ。全米公開でもここまで流行るとは思っていなかっただろうし、アメリカで公開して……2ヶ月くらい? で日本でも封切られたのはよくやったと褒めるべき」
亀「どうしても日本公開はどんどん遅くなる一方じゃからな」
主「そんな話は置いておくとしても、この映画の持つ魅力は本当にすごい。確かにみんな納得するよ」
音楽にノリノリ、映像で快感
圧倒的な映像とドラッグ映画
亀「いつも語っておるが、本作はOPがトンデモナイの」
主「『ラ・ラ・ランド』と比較する人がいるけれど、それもわかる。この映画を一言で表現をすると『映像と音楽の嵐』だよ、これは。問答無用に襲いかかってきて、こちらを圧倒したまま、運び去ってしまう」
亀「とんでもなくクラクラするようなアクションシーンや、冒頭のカーチェイスであったり、それから1カットで音楽と一緒に流れるコーヒーを買いに行く場面などは、確かに素晴らしいものがある。
スタイリッシュでキレッキレのカット割りだったり、音楽との融合などで……観るものを虜にする力がある」
主「中毒性が高いよね。
いつも語るけれど映像表現の最大の強みは、この音楽と、映像の融合なんだよ。この2つが合わさった瞬間に、トンデモナイ快感が生まれる。それは今年ヒットした『ララランド』『美女と野獣』や、アニメならば『SING 』や『モアナと伝説の海』であったり、個人的に高く評価した『夜明け告げるルーのうた』などもそう。
映画の半分は音楽でできている……そういったのは押井守だけれど、実際そうだと思うよ。だからこそ、邦画が音楽に対して全く力を入れているように見えないのが腹立たしいんだけれどさ……まあ、一部の映画は演出として取り入れているけれどね」
亀「それは置いておくとして、来年の賞レースの話題の中心じゃろうな。
アメリカの映画事情はまだわからんが、おそらく『ダンケルク』と『ベイビードライバー』が中心になるじゃろう」
主「少なくともゴールデングローブ賞のミュージカル・コメディ部門は固いんじゃない? それは日本のファンや、向こうの評価を見ていればそんな気がする。少なくとも有力候補なのは間違いないし」
亀「誰が見ても楽しめる映画、であるの」
出てくる演者もイケメン&キュートな人ばかり!
個人的な感想として……
亀「……で、この項目になるのじゃな」
主「いや、頭ではわかっているのよ。この映画を好きだっていう人も多いし、確かに技術もカットもいいし、音楽もカッコよくてキャラもいい。自分が普段語る『音楽と映像の融合』に関しても文句無し、圧倒的にうまいよ、この映画は。
特に否定するところはそうそうない。それはわかっているんだけれどさ……」
亀「わかっているんだけれど?」
【悲報】亀さん、試練の週を迎える
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2017年8月20日
ベイビードライバー……みんな好きなのすごくわかるよ
確かにあれは上がるよ
アクションも派手だし、カットや構図もうまいし、イケメン、おっさん、美女ばかりだし……
でもね……自分はあんまり好きじゃないなぁ
主「……どうにも『ノれない』のよねぇ」
亀「……個人の趣味じゃな」
主「ここ最近『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか』や『牛乳石鹸CM』において、世間と真逆のことを言ってきたからさ、これじゃただの目立ちたがり屋の逆張りブログじゃないか! って思いもあるんだけれど……
個人的には……つまらなかったんだよねぇ」
亀「まあ、趣味はあるし、そもそもアクション系に対して強いブログではないからの。エドガー・ライト作品もいつかはみようと思ってはいたものの、代表作の『ショーン・オブ・ザ・デッド』などはゾンビ映画と聞いて尻込みしていることもある」
主「なんかさぁ、退屈になってきちゃって……113分とそこまで長くないけれど、時間の経過が長く感じたんだよねぇ。
最近は映画を楽しもう、感性を合わせようと頑張っていて、一部の鬱になりそうな映画以外はなるべく楽しもうとしている。それでも原作が好きだったり、予習が邪魔して楽しめない映画もあるけれど、基本は褒めるブログにしたいから。そっちの方が評判いいし、アクセス数も多いし傾向にあるし。
で、本作は何もしなくてもチューニングが合うはずだと思ったの。だけれど、全然合わなくて……中盤から『まあ、そうなるよねぇ』の連続で、後半は『なんでそうなるの?』の連続になるという」
亀「冷静に見れた分、色々な考察はできたのではないかの?」
主「この映画のうまさについてならある程度は……でもみんな語っているからなぁ。
改めて語ることはないかもしれないけれど、じゃあ、ここからはネタバレありで語っていきますね」
以下ネタバレあり
2 序盤のカタルシス
亀「では、ここからはネタバレありで語るとするが、序盤は最高に良かったの。
今も動画サイトに冒頭のみ公式がアップしているようなのでチェックするといいが、確かに中毒性が高くて引き込まれるのもわかるの」
主「これだけでもう説明はいらないよね。
CG全盛の時代ではあるけれど、現代では法律上や安全性から難しくなったカーチェイスをこれでもかと盛り込んでいる。
そして序盤で音楽がしっかりと流れながら、3人の男女が銀行強盗に向かうわけだ。それに合わせて主人公のベイビーが踊っている。これだけでも徐々に観客もアップになっていく展開。
ここで注目してほしいの『赤』の車だよね」
亀「まず、警察のパトカーが黒ということもあって、赤い色は目を引くこともあるの」
主「それだけじゃない。赤は人を興奮させる色なんだよ。情熱の赤とかいうけれど、赤い物を見ると高揚する特性が人間にはある。これは血液の色に反応しているという説もあるね。
で、この冒頭を確認したけれど、全くの0ではないけれど、赤い色はほとんど使われていない。あそこまで鮮やかな赤い色は極力排除している。まあ、一部では出ているけれどね。
そして追ってくるパトカーは黒が基本で……黒は高級感や威圧感を与える。ダースベイダーが全身黒ずくめだったり、皇帝が黒のフードを被っているのもそれが理由」
亀「黒いものに追われる=強大な敵に追われている、という意味もあって、視覚効果でも抜群じゃの」
主「これだけでもわかるように、この映画は視覚効果も含めて様々な工夫に満ちている。決して派手なだけではなくて、主人公たちを如何にして目立たせ、観客を作品世界に引き込むのか、という思いにあふれているわけだ」
赤い色に満ちた冒頭がうまい
ロングカットのコーヒー
亀「その次もうまかったのぉ……
ロングカット、1カットで音楽とセットでベイビーがコーヒーを買いに行く。これだけで、見ていて飽きんからの」
主「もちろんこのロングカットも素晴らしいし、音楽とのセットもいい。そして何よりもスタイリッシュに作品やプロデューサー、役者などの名前を出して、全く邪魔していないどころか、むしろ作品世界と一体化している」
亀「この辺りはアニメのOPを見慣れていると、結構気がつくことも多いかの」
主「一部のアニメは、監督の名前などをOPでどのように見せるか、ということで遊んでいるんだよ。
音楽、映像、役者……その三位一体も魅力の1つだけれど、ここで自分がうまいなぁ、と思ったのは、ここでそこまでアップテンポではない曲を使ってきたことなんだよね」
亀「というと?」
主「つまり、この映画は『ララランド』と同じことをやっているわけ。
スタートで圧倒的なスケールにおいて観客を高揚させて作品世界へと誘う。だけれど、そのままだと高揚しっぱなしでしょ? だから1回クールダウンさせるの。
『ララランド』の場合は色彩のマジックを使った。つまりエマ・ストーンに青系の色と白シャツを着せて、周囲の壁の色などを青くしたんだよね。青は人を落ち着かせる色だ。
で、本作も一緒。そのままロングカットでそこまで激しすぎない音楽、そして街ののんびりとした風景を入れることによって、観客をクールダウンさせている」
亀「ふむ……確かに、ここだけでも圧倒的なうまさを感じさせるの」
主「この映画ってもしかしたら『アクションシーンが凄いだけなんじゃないの?』って言い出す人もいるかもしれない。でもそれは違う。
画面構成から構図から、何から何まで計算されているよ。
これは凄い。
ちなみに……余談だけれど、自分はこのシーンを見て『あ、この映画はカウボーイビバップだな』って思ったんだよね」
亀「山寺宏一が主演の、ハリウッド実写化の話もあって世界的に有名なアニメ作品じゃな」
主「劇場版の天国の扉のOPってニューヨークぽい場所でのおっさんとかを映しながら、スタイリッシュに撮っているんだよね」
亀「調べたらが、エドガーライトとカウボーイビバップの関係性は全く出てこなかったからの」
主「まあ、別に深い意味はないんだけれど、余談としてね」
特にキャラクターの魅力が抜群! もちろん演者もね
魅力的なキャラクター描写
亀「もはや誰が見ても好きになりそうなキャラクターばかりじゃの」
主「悪い奴もいい奴もみんな魅力的。ベイビーの仲間たちもイケメンと美女ばかりだし、ボスもかっこいいしさ。それぞれにキャラが立っていて、しかも意味もある。
例えば……夫婦の強盗がいたじゃない?
あの奥さんが言うんだよね『何も知らないくせに』って。
あの人たちってすごく悪いことをしているようだけれど、そのバックボーンはベイビー以外は見せない。何か理由がありそうだけれど、その理由は会話の端々から連想するだけのしている。この辺りはうまいよねぇ」
亀「そして、一緒に暮らす黒人の……あれは祖父なのかわからんが、扶養者が声を発することができない、という設定も良かった。
本作は『なぜ両親が亡くなったのか』という問題はサラリと演出などで表現して、それ以外のことは想像に任せるようになっておる。この養父とベイビーの関係が実際のところ何なのかはよくわからんが、それでも現在の絆を感じさせればいいわけじゃからな」
主「そう考えると、手話という会話もいいよね。同じだけれど、他の人と違う言語を持つ、というのは強固な関係性を示すにはすごくわかりやすい」
亀「そして、何よりも『声』……つまり『音』のない関係性というのも重要じゃの。
声や音がなくてもコミュニケーションが取れる関係性ということも伝わってくるし、ベイビーがそれだけ声や音について敏感に考えているということも伝わってくる」
主「キャラクター描写というと個性や笑いもあるしねぇ。
子供のシーンとか場内で笑い声が響いていたよ」
亀「それぞれの味を持った豊かな登場人物こそが、本作を盛り上げている。キャラクターは物語の基本であると言われるが、それは間違いなく完璧に出来上がっておるの」
3 個人的な違和感
亀「と、まあ、ここまでどこをとっても否定のしづらい、うまい映画だし多くの人に賞賛されるに足る工夫に満ちた映画だというのに、どこに難癖つけようというのかの?」
主「う〜ん……まず、単純に退屈になってきたんだよねぇ。うまいんだけれど、時間が長く感じた。
音楽で展開のメリハリもすごくつけているし、アクションばっかりではなくてヒューマンドラマとしてのシーンもなかなか良い、裏世界の恐怖も描いている、しかもカットもスタイリッシュな上に……あの2度目の事件の際に何が起きているのか、ということを見せないために車を動かしたシーンなんて『そういうシーンを見たくない、暴力は嫌い』という説明にもなっていて、すごくうまいんだよ」
亀「……いや、全部褒めておるではないか」
主「だからノレなかったっていうのが不思議なんだけれど……『ああ、うまいなぁ』」とは思っても、画面にクギ付けにはならなかった。
終盤の走るシーンとか、本当に素晴らしいよね。スピード感はすごくあるし、若者映画として走るというのは非常に重要。あとはラストに襲撃する場所も意外性もあるし、その計画も確かに予想を上回るもので『う〜む、うまい』と唸ってしまった。
だけど、どうにも高揚することがなくて、だからこそ終盤の展開についてすごく疑問が湧いてきてしまったわけだ」
展開が読めなくもないけれど、恐ろしい裏社会の一面もしっかりと描く
終盤の展開の疑問
亀「終盤の展開の疑問?」
主「……あの状況下で逃げることができなかったというのはわかる。どうすればいいのか? ということをベイビーがずっと考えていたのもわかるし、暴力の連鎖から逃げることはできないとか、テーマ性もわかるんだけれど……
あれだけ暴力を憎んでいたベイビーが……結果的には2人の人間に対して直接的に危害を加えているわけじゃない? 1人目なんてそれが原因でああなるわけだし」
亀「あの最後の事件のシーンじゃの」
主「そこからすごく疑問があったんだよね。暴力について拒否を示していた人間が……しかも事故に対して恐怖感を持つほど、耳鳴りをするほどのトラウマを抱えている人間がわざわざあのようなことをするだろうか?
そして、それまでの暴力の否定の物語が、全て意味をなくしていく展開……確かにベイビーは警察から逃げるよ。そして自分のそれまでを振り返って、保護者の後始末であったり、自分の重要なアイテムを取り返しに行くよ。それは確かにいいよ。
でもさ……本当に大事に思っているなら、あそこで彼女を巻き込むか? って」
亀「伏線は貼られていたがの、何も考えずに明日も考えずに……20号線だったかの? をかっとばしたいという……」
主「だったら、かっ飛ばせばよかったじゃん!
最後まで警察からも逃げて、悪党からもとことん逃げて、明日をも知らぬ逃走劇を……カーチェイスを繰り広げて逃げればよかったじゃん。
もちろん、そんな人間でも追いつかれてしまう裏社会の恐ろしさということは作中でも描写されていたよ。ベイビーが仲間に入った経緯というのが、決してそれだけでは逃げられないという説明になっていたかもしれない。
だけれど、ベイビーは銃を手にとって撃つんだよ。そしてそれで直接的に人に危害を加えるわけだ。確かに悪党だよ? やらなければ殺されるよ?
だけれどさ『一度手を染めた人間は決して逃げることはできない』というテーマを抱えるならばこそ、その暴力は最後までふるってはいけなかったんじゃないか? とすら思うわけだよ」
銀行強盗といえばこの映画もオススメ!
個人的なベイビー像
亀「確かにヒロインが急に武器を持って戦ったり、割と荒々しい行動に出るのも勝気な女性なのはわかるが、少し思うところはあるかの」
主「結局彼女も逃走幇助なんだよね。もちろん、うまく人質だったことなどにしてごまかすんだろうけれど……犯罪に加担させている。
だったら、最初から最後まで『ドライバー』として逃げて欲しかった。どこまでもハイウェイを走って、誰かも逃げ切って、その先で……あのラストがあったら自分は満足していたのかもしれない」
亀「ではベイビーが橋の上で起こした展開自体には文句はないと?」
主「……なんかさ、最後の『彼は優しい男だ』ってのも変な話だなぁって気分だよ。
本当に優しい人間が人を銃で撃つだろうか?
車を盗み、乗回すだろうか?
確かにそれは最初の過ちだったかもしれない。だけれど、あそこまでのことを……強盗殺人にまで加担しておいて『優しい男だ』というのは無理がある。
それで刑期も短い気がしたし、それでいったらこの映画に出ていた人間全員が事情を抱えているはずだよ。もちろん、ベイビーがある程度の人道的な姿を見せていたことは考慮してもいい。
だけれど、それは違和感があった」
亀「不良が更生するのがおかしいと?」
主「こち亀でいうところの『本当に素晴らしい子は新聞配達をしている子であって、暴走族が更生したからといってそんなにもてはやすものではない。落ちるやつは勝手に落ちればいいし、戻りたいやつは勝手に戻ればいい。自分で決めること』っていうセリフだよね。
結局不良が猫を拾って好感度アップ、みたいな物語に落ち着くのかぁ、という思いがある」
亀「……それを言い出すとこの映画の根幹を否定する気がするがの」
主「だから好きじゃないんだよ。
一応言っておくと、自分はピカレスクロマンは大好きだよ? 映画の中の悪党は嫌いじゃない。だけど、それは『悪党という自覚を持つものが迎える最後の男の意地』が好きなのであって……そこから今作のような更生の仕方は違和感がある。
今作でいったら最後まで『悪党らしく生きる』というのでもよかったと思うんだよ。だからハイウェイを爆走して欲しかったし、若者の無茶な暴走を繰り広げて欲しかった。それだったら、本作を絶賛したかもしれない。
暴力から逃げることで……その卓越したドライブテクニックで逃げ切る物語でもよかった。最後まで暴走族で、でも暴力には手を染めないよ、という最後の一線を守りきり、大切な人たちも守りきる物語でよかったなぁ、と思う」
亀「ドライバーの映画じゃからの、そのやり方もあったかもしれん」
主「暴力からの解放をテーマにした映画でいうとさ、やっぱりクリント・イーストウッドが素晴らしくて……『許されざる者』においてイーストウッドの代名詞であるカウボーイやガンマンもので1つの成長を見せて、そして『グラントリノ』で暴力からの解放を見事に描く。
自分はこの映画のように『暴力を持ってして暴力からの解放』というのは、やっぱり受け入れらない。もちろん、ラストをこのようなものした理由もわかる。それはそれで意味もあって、演出もあって、上手いとは思う。現に、他の人の考察なども見ると『その解釈もわかるな』と思うところもある。
だけれど……やっぱり好きにはなれないね」
最後に
主「今回途中で『カウボーイビバップ』をあげたけれど、自分はこの作品をカウボーイビバップぽいなぁ、と思いながら見ていたのね」
亀「主が大好きだと語るアニメシリーズじゃから、そう見えてしまうところもあるのかもしれんが……どの辺りが?」
主「1話ってどうしようもない悪党の男女が逃避行をして、それを賞金稼ぎである主人公のスパイクが追うんだよ。で、逃げ切ったかと思った先で警察が待ち構えていて……という物語でさ。
そして8話はロコというすごく優しいけれど、事情があって犯罪に手を染めてしまうという物語で……どちらも洋画の王道のような物語なんだよ。もちろん、パクリとか言うつもりは全くないよ?
その目線で見てしまったからかもしれないけれど、本作のラストは自分の中では消化不良。カタルシスを感じるものではなかった」
亀「まあ、それは個人の趣味じゃろうな。
おそらく多くの人はこの映画を支持するじゃろうし、熱狂的なファンを抱えることになるじゃろう。特に洋画ファンは必見の1作なのは間違いないじゃろう」
主「なんかさ、今週は逆張りしている気分になるよ。世間的には賛否両論の牛乳石鹸のCMと打ち上げ花火を賞賛して、この映画にクサしてさ……別に他意はないんだけれどね」
亀「そういう週もあるじゃろう。
みんなが同じような評価を与えるのはトンデモナイ歴史的名作か、もしくはプロパガンダじゃ。表現は受け手の解釈も重要なものになってくるからの。
それもまた楽しみの1つじゃろう」
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