今回は人情に篤い昔ながらの任侠が学校経営に乗り出す『任侠学園』の感想記事になります!
注目度は……そこまで高くもないかもしれんの
カエルくん(以下カエル)
「この作品は試写会で鑑賞しましたが……なぜか知らないけれど、うちが当選した試写会は興行的に苦しくなりがちというジンクスがあります」
亀爺(以下亀)
「ふむ……おそらく人気があまり出なくて、分母が少ないためかもしれんの。日頃のお行いがあまり良くないからか、くじ運があまり良くない人生じゃった」
カエル「まあ、それでも大多数の方達と一緒に見る試写会だったんだけれど、今作もそんな目にあったら悲しいので、ぜひ鑑賞してください。
目指せ、興行1位!」
亀「……公開規模はそこそこじゃから、1位は流石に厳しいかもしれんが……せめてTOP5入りはこの週の他作品と比べても達成して欲しいところじゃな。
試写会に行かせてもらった以上、少しでも貢献したい気持ちがあるからの」
カエル「それでも映画レビューに忖度はありません!
ということで、記事のスタートです」
作品紹介・あらすじ
地元密着型のヤクザを主人公とした今野敏が原作を務めた『任侠』シリーズを映画化したコメディ作品。
監督は『劇場版 ATARU THE FIRST LOVE &THE LAST KILL』や2019年では『屍人荘の殺人』なども手がける木村ひさし、脚本には酒井雅秋が担当する。
キャストは主人公の若頭に西島秀俊、人情に篤い親分に西田敏行が務めるほか、伊藤淳史、葵わかな、白竜、光石研、中尾彬、生瀬勝久などのフレッシュな面々や任侠映画に馴染みのある役者など多彩な顔ぶれが揃う。
義理と人情に篤い昔気質のヤクザ阿岐本組の若頭である日村(西島秀俊)は、社会貢献に対する意識の高い組長・阿岐本雄蔵(西田敏行)が引き受けてしまう難題に頭を抱えていた。今回の難題は経営不振に苦しむ高校の立て直しに協力し、経営を上向かせること。ヤクザ稼業とは縁のない話に頭を抱えながらも高校に向かう日村たちを待ち構えていたのは、無気力な学生たちと学校の教師たちだった……
感想
それでは、Twitterの短評からスタートです!
#任侠学園
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2019年9月11日
好き〜!
事前知識や予習の必要もなく娯楽に徹して老若男女楽しめるコメディとして今の邦画に必要な作品!
でも単なるコメディではなく挑戦する姿勢も感じられた
ギャグやコメディは相性があるけど今作は万人に受けそうで試写会場に笑いがたくさん巻き起こる!
シリーズ化希望したい! pic.twitter.com/mhcD1UW8PE
多くの方に見て欲しい、娯楽傑作じゃな
カエル「試写会会場もゲラゲラと笑い声が響き渡り、とてもいい雰囲気だったよね。
普段任侠映画なんて一切見ないような学生さんに OL風の女性から、ご年配の夫婦まで含めて笑顔で帰っていくような映画で!」
亀「コメディ映画というのは相性があり、オススメするのも難しい部分がある。2019年に公開されたコメディもいくつかを、わしは酷評もしたが……どうやら世間評を見る限りではそこまで酷評ばかりにならなかった作品もある。
その中でもわしは……今作に関しては多くの人に受け入られる笑いになっておると思っておる。
それも、エログロや下ネタ、悪ふざけのようなコントっぽい描写もなく、予備知識もほとんど必要ない。オマージュだとかそういったものもないとは言わんが、わからなくても単純に面白いんじゃよ」
カエル「有名俳優目当てで来る人たちも満足できるんじゃないのかな?
見所がすごく多い作品だよね」
亀「学園映画でもあるから若い子たちにもわかりやすく、また任侠映画としての見所もある。
他にもアクションや、先ほども語ったコメディもいい。いくつもの映画の要素をしっかりと過不足なく入れておる。
例えるならば……映画の幕の内弁当じゃな。
亀「飛び抜けた1品で勝負するのではなく、様々な味わいを入れて全体の満足度を高め、多くの人の好き嫌いに左右されづらくしておる。
ドラマも多く撮っている監督じゃし、そのドラマっぽさもあるがちゃんと任侠映画もやっておる。
物語としては粗さもあるが、そこまで目くじらをたてる必要もないじゃろう。
こういった映画はわしは好きじゃし、もっと多くの方に見て欲しいと思っておるの」
現代で重要なタイプの作品
この映画の存在価値は結構大きいんじゃないかな?
もしかしたら映画としては最も重要なことを、キチンとやっておるかもしれん
カエル「もちろんうちだって大好きな作品もあるから、あんまり強く言えないけれど……今の映画界は”そのシリーズの流れ”を知らないと楽しめない作品が多いのって、実はどうなんだろう? って思いもあって……」
亀「それこそ大人気のMCUではあるが、では人生で初めての映画が『エンドゲーム』であり、何の予備知識もなく、スパイダーマンすら名前程度しか知らない人が見たときに楽しめるものじゃろうか?
こういうとわしがMCUにそこまでハマっていないから、というのもあるかも知れんが……2019年では高く評価したアニメ映画にしても『響け!ユーフォニアム』『Fate』にしろ、その文脈を知らないと全く楽しめん」
カエル「『ゴジラ』などもそうなってきているのかなぁ……」
亀「その中で、わしが今の日本映画に最も重要な映画はこの作品じゃと思う」
日本中が愛した名キャラクター、寅さんだね
ちなみに2019年末に新作が公開されるぞ
亀「『男はつらいよ』を挙げたのは、もちろん同じ任侠的な部分があるというのもある。しかし、こちらも強烈なキャラクターを売りにしており、またある程度のお約束はありつつも、どこから見ても基本的には物語が1作で完結しておるのでフラッと見にいって楽しむこともできる。
このような映画作品というのは、わしは重要だと思うが今の邦画には残念ながら見当たらないのかもしれんの」
カエル「本作はそのようになる可能性はあるの?」
亀「冷静に考えると厳しいかもしれん。
しかし、キャラクターも個性があり、物語の骨子となる設定も多くの人に理解されやすく、また今後も様々な広がりができる。今回は高校じゃが、それこそ老人ホームとか、あるいは結婚相談所とか可能性は無限大にあるし、そこに任侠が加わるだけでも面白くなる可能性というのはいくらでもあるわけじゃからの」
カエル「今回のように高校にしたら若手俳優も出せるし、場所の設定次第では様々な年代の人気俳優もキャスティングしやすいだろうしね」
任侠モノを崩しながらも王道に
でもさ、今作って任侠モノなわけだけれど、そこはないがしろにされてないの?
いやいやいや、わしはちょうどいいバランスじゃと思うの
カエル「もちろん近年でも『アウトレイジ』シリーズなどのように任侠映画が0ということはないけれど、ただ時代が時代だけに作るのが難しくなっている部分はあるよね……」
亀「暴力団という存在そのものを追放しなければいけないからの。
今作の場合もそこは少し配慮されており、阿岐本組は指定暴力団ではない、という設定がある。
一応その道にも詳しく、任侠道を名乗ってはいるものの、法律的にはグレーゾーンに近い存在であると描かれているの」
カエル「そうでもしないと多くの人が見る映画にはなりづらいからしょうがないのかなぁ」
亀「しかし、その任侠映画としての側面をキチンと持ち合わせておる。
西田敏行が起用されておるように、決めるべきシーンではキチンと決めてくれる。
また、予告にもある通り『アウトレイジ』のオマージュなどもあり、往年の任侠映画ファンであればよりニンマリとしてしまうシーンもたくさんあるじゃろう」
カエル「でもさ、あんまりガチガチの任侠映画だとそれでも人を選ぶような……」
亀「そのための伊藤淳史などの俳優陣じゃな。西島秀俊は……100歩譲って任侠道の人に見えなくもないとしても、どう見ても伊藤淳史などの部下はコメディや弱々しい印象が強すぎてその道の人には見えん。
しかし、あるシーンでは軽く見せてはおるものの、間違いなくその道の人であることなども示しておる。
そのバランス感覚もわしは好みじゃった」
カエル「それから、本作はアクションシーンが非常に力が入っています!
もしかしたら……2019年に見た邦画アクションシーンでは、かなりのハイレベルと呼べるんじゃないかな?」
亀「カチコミシーンではないが、任侠映画の王道でもあるからの。
そのあたりも注目して欲しい作品じゃな」
役者について
きになる人も多いであろう、役者についてはどうだったの?
この布陣だからこその味が出たのではないじゃろうか?
亀「はっきりいってしまえば、目新しいものは一切ないかもしれん。
しかし、それぞれの役者のもつ個性やイメージを最大限発揮した演技を堪能することができるの」
カエル「まずは主演の西島秀俊だけれど……彼はなんというか、まあ、いつも通りの演技だったのかなぁ」
亀「2019年は『空母いぶき』などで鑑賞しているが、彼の演技は常に同じであり、わしに言わせてもらえば”空っぽ”の演技をしておる。それを下手とみる向きもあるかもしれんが、わしはそれはそれで1つの味だと思っておる。
西島秀俊という器(外見)に対して、どんな設定でもそれなりに演じることができるのではないかの。
その意味では……本作では若頭を演じており、迫力はない。往年の……それこそ高倉健や菅原文太などとは比べることもできないじゃろう。しかし、だからこそのコメディとしての本作が生きたと言えるのではないかの?」
ふむふむ……では、今作のMVPと言えるであろう西田敏行は?
完璧すぎていうことない。
亀「むしろ西田敏行がおらんかったら、この映画は成り立たんかもしれん。コメディもできれば任侠もできる、オールマイティな役者じゃからの。
『アウトレイジ』でも言われておったが健康問題があるために、終始座ったシーンしか撮影されておらんが、そんなことは一切気にならない。
本物の役者の魂というものを見ることができる作品となっておるの」
カエル「では、若手美人女優として葵わかなはどうだったの?
ちなみに主はショートカット姿を見るのは初めてで、金髪に近い茶髪だったこともあって、声優界No1ショートカット美人(主観意見)である井澤詩織に見えて仕方なかったようです」
亀「そのような意見はさておき、彼女の気の強い演技が発揮されておったの。
今作に関してはどの役者も一定以上の演技を発揮しておる。
若干キャラクターとして弱い部分も感じたものの、これは役者の演技というよりは、様々な要素を盛り込んだ上での取捨選択の結果として見るのが妥当とわしは思っておる。
今作はいってしまえばマイルドなGTO……となると『ごくせん』辺りが近いのかもしれん。
そういった作品だと思って見に行けば、それなりに満足すると思うの」
まとめ
では、この記事のまとめです!
- コメディ任侠映画として万人に受けるであろう作品!
- 年間ベストなどではないかもしれないけれど、邦画界に必要な作品では?
- アクションや任侠道らしい部分も込みつつ、マイルドに仕上げる
- 任侠映画お馴染みの役者たちの迫力とコミカルの差のある演技を楽しもう!
わしはオススメしたい映画じゃな
カエル「がっつりネタバレして考察する、というタイプの映画ではないので今回はこの辺りになりますが、娯楽としてオススメしたい作品です」
亀「重い作品や、玄人受けする作品ばかりでは疲れてしまうからの。
ぜひとも映画館に年に1回行くか行かないか、という友達などと軽い気持ちで劇場に向かって欲しい作品じゃな」