今回はアカデミー作品賞・助演男優賞・脚本賞を受賞したグリーンブックに対する感想です!
ついでとばかりに、アカデミー賞に対する雑感もあげていこうかの
カエルくん(以下カエル)
「やっぱり今作はそれだけ高い権威の賞に選ばれたことだけあって、評価もとても高いよね!
特に脚本賞も受賞しているだけあって、物語を重視するうち向きな作品に仕上がっているんじゃないかな?」
亀爺(以下亀)
「これは楽しみにしていきたいが……」
カエル「? なんか含みがある?」
亀「いや、何……これで4年間映画を中心とした感想ブログを運営してきておるが、うちはアカデミー作品賞作品をあまり高く評価した覚えがないのでの。
それこそ、年末のベスト30に入ったことがある作品もなく……ここ数年ではあまりピンとこない賞になっておるように思う」
カエル「あ〜……『スラムドックミリオネア』とか『ミリオンダラー・ベイビー』とかはぁ……と言いたいけれど、もう10年以上前かぁ」
亀「『アルゴ』なんかは評価高かったような気がするが、今ほど映画を見ていない時代であり、正直もうあまり覚えておらん。
賞を獲得したから注目度が上がるということもあるじゃろうが……ワシは逆に、賞をとったからハードルが上がりすぎるのか、はたまた偏見の目で見てしまうのかもしれんの。
そんな一抹の不安もありつつ、映画評を始めていくかの」
作品紹介・あらすじ
アカデミー賞にて作品賞・脚本賞・助演男優賞を受賞し、合計5部門でノミネートを果たし、その他世界中の賞レースで注目を集める作品。
監督は『メリーに首ったけ』などのコメディ映画を中心に活躍するファレリー兄弟の兄であるピーター・ファレリーが担当し、脚本は主人公のトニー・リップ(トニー・バレロンガ)の息子であるニック・バレロンガが務める。実の父親の手紙などから物語を再構成し、そちらも話題に。
主人公のトニー役にはビゴ・モーテンセン、黒人ピアニストのドクター・シャーリー役には『ムーンライト』に引き続き2度目のアカデミー助演男優賞を受賞したマハーシャラ・アリが魅力的に演じる。
1960年代のアメリカでは黒人をはじめとした有色人種による公民権運動が盛んに行われていたが、まだまだ差別の渦中にあった。そんな中、イタリア系アメリカ人であり、用心棒を務めるトニーは仕事を探していたところ、黒人ピアニストのドクター・シャーリーの運転手を務めることになる。
音楽の旅の目的は差別が続くアメリカ南部。トニーの持ち前の陽気さとシャーリーの聡明で真面目な性格はかみ合わないが、多くの苦難の中で2人の気持ちは重なり合っていく……
感想〜アカデミー賞への雑感も含めて〜
それでは、いつものようにTwitterの短評からスタートです!
#グリーンブック
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2019年3月1日
悪い意味でアカデミー賞らしい作品
黒人と白人の融和を描いており意義は大いに感じるかいかんせん長い上に物語のカタルシスを感じない
コメディパートもクスリ程度かなぁ…
マハーシャラ・アリのピアノは素晴らしく決して悪い作品ではないがハードルを上げてみるべきではない佳作か pic.twitter.com/oJssW4YvYW
残念ながら、わしはあまり好きではないかの
カエル「えー? でもさ、アメリカを中心に賞レースでも高く評価されているし、日本でも高い評価を獲得している作品じゃない?
それでもやっぱりダメなの?」
亀「まあ、やはりアカデミー作品賞の作品じゃな、というのが大きなポイントじゃろうか。
これはわしの偏見もあるが……近年のアカデミー賞というのは、決して”1番面白い映画”に与えられる賞ではない。
では、どのような作品かといえば”最もハリウッドのメッセージとしてふさわしい作品に与えられる賞”ということになる。
これは別に問題ではない。そもそも、賞レースとは必ず選考者の思惑があるものであり、それが必ずしも善意、あるいは悪意に基づくものではないからの」
カエル「えっと……つまり”面白い”だけでは与えられるものではないってことだね」
亀「例えば……そうじゃな、近年話題になった作品だと『アクアマン』の面白さと『グリーンブック』の面白さと『ムーンライト』の面白さはまったく違う。それを同一視して、優れた作品を決めろというのはなかなかに難しい。
それを決めるのは、はっきり言えば横暴ですらあるのじゃが、それを言い出したら賞レースや順位付けは全て意味を失くす」
カエル「映画って本来比べるものではないけれど、だからと言ってコンテストや賞レースをなくせ! というと、それはそれで違うだろうって話だもんね」
亀「これは配信の時も主が語っておったが『”賞レースが選んだ作品だからすごい”ではなく、”その作品を選んだからこの賞はすごい”』という視点の方が重要と考えておる。
その意味では……近年のアカデミー賞は少なくもわしの中では決して評価の高い賞ではない。
ただし『アカデミー賞が選びそうな作品』という意味では、確かに高い評価を受けるのも納得じゃな」
カエル「えっと、じゃあグリーンブックの感想を一言で語ると?」
亀「賞レース向けに無難に作られた作品、ということかの」
褒めるポイント
えー、でもさ、結構評価も高いしいい作品だと思うんだけれどなぁ
では、カエルが良かったと思うところを褒めていって欲しいの
良かった点① 圧倒的な演者たちの演技
まずさ、なんといっても役者たちが魅力満点だったじゃない!
助演男優賞も納得の演技じゃったな
カエル「マハーシャラ・アリはやっぱり別格だったよ!
すごく気品のある黒人の役なんだけれど、それが少しだけ鼻に付く部分もあるんだけれど、でも後半になるとそれすらも愛おしいポイント見えてくるし!
何と言ってもピアノの演奏シーンは痺れたよねぇ……天才ピアニストという演者泣かせの設定に違和感を抱かせない、見事な演奏シーンだったし!
『ラ・ラ・ランド』のライアン・ゴズリングもそうだったけれど、短時間でピアノをマスターするのは本当に素晴らしいよねぇ」
亀「確かにここは無条件で絶賛されるものじゃった。
今年のアカデミー賞も役者を楽しむ映画が多かった印象じゃが、本作も他作品と比べても見劣りのしない作品じゃったの」
カエル「またさ、どうしてもアリばかりが注目されるけれど、主演のビゴ・モーテンセンだってとても魅力的なイタリア系アメリカ人だったじゃない?
確かに粗暴なところはあるけれど、それが2人の凸凹コンビ感を見事に演出しているし、バディものとしても一級品だったよね!」
亀「あまりにも育ちが悪すぎて眉をひそめたくなる部分もあったが、それすらも含めての演技力じゃからの。
もちろん他の役者も含めてではあるが、今作の役者に関しては疑問の声が一切出てこない、見事な演技じゃった」
良かった点② 音楽の魅力
次の良かったのは音楽だよ!
本作は音楽映画としての側面も備えておるの
カエル「まずさ、スタートのジャズでノリノリになるじゃない?
ここでこの映画の軽さをアピールしているし、娯楽映画として楽しく見れることを強調していた!
それでいて、やっぱり単純に音楽としても素晴らしくて!
代表的なキャッチーな曲こそないかもしれないけれど、この映画のサントラもまた多く売れるんじゃないかな?」
亀「アカデミー賞では『アリー スター誕生』『ボヘミアン・ラプソディ』などの強力な音楽映画の陰に隠れてしまった感もあるが、今作の音楽も決して劣るものではないの」
カエル「またさ、ジャズって黒人音楽の象徴的な部分もあるけれど、それを白人が演奏して、お上品なクラシック音楽を黒人が演奏するという、イメージや時代を考えるとあべこべな演出も良かったよね!
これから先の、黒人音楽や白人音楽という枠組みを超える、ボーダーレスな時代を象徴しているような気がした!」
亀「本作はそのような描写が非常に多く、白人と黒人の差を感じさせながらもそれを乗り越えていく描写も多く、工夫されておったの」
良かった点③ 差別を含めたメッセージ性を娯楽で魅せる
そして、何よりも難しい社会派映画かと思ったら、娯楽に満ちたコメディー作品じゃない!?
堅苦しい映画ではなかったの
カエル「どうしても近年のアカデミー賞作品を考え観るとさ、難しい映画もあったとおもんだけれど、本作が描いたことって誰にでもわかると思うんだよね。
それこそ、年に1回しか映画を見ない人だったり、子供でもおもしろがれる部分ってあるんじゃないかな?」
亀「人種差別をテーマとすると真面目になりすぎてしまう部分もあるが、今作はそれもない。また、1つ1つの描写も大きな意味がありながらも、ドラマや物語として非常にわかりやすいところもあったので、エンタメ性もあったの」
カエル「だけれど、描いていることが必ずしも軽いってわけではないんだよ。
例えば白人が黒人をナチュラルに差別してきた歴史を描いていて、冒頭からとても重い。でも、その重さを引きづらないようにしていたよね」
亀「この重い描写と軽い描写、シリアスとコミカルのバランス配分もまた素晴らしく、コメディー作品を多く監督してきたファレリーのバランス感覚などが発揮されていたと言っていいのではないかの?」
良かった点④ 細かいポイントで工夫に満ちた演出
そして、細かいけれど見どころの演出もたくさんあったじゃない!
ふむ……例えばどういうところじゃ?
カエル「ドクター・シャーリーの孤独感を見せるために、ホテルのベランダのシーンがあるんだよね。トニーがベランダから外を覗くと、シャーリーの仲間のバンドマンは現地の? 女の子と楽しそうにお話ししているけれど、シャーリーはそれを窓の外からお酒を飲みながら見つめることしかできない……とかさ。
これだけで彼の孤独感が伝わってくるじゃない!」
亀「確かにその手の描写は非常にうまかったの」
カエル「それに、カティーサークというお酒をずっと呑んでいるんだけれど、これって40度以上ある、結構強いウイスキーなんだよね。だけれど、それを寝る前に必ず1本呑んでいると語っていて……
それってもうアルコール依存症になりかけているんじゃないかないかなぁ。
もちろん個人のお酒の強さもあるし、またシャーリーが酩酊した様子もなかったからコントロールはできているのかもしれないけれど……でも、彼の孤独感はよく伝わってくるよね」
亀「『アリー スター誕生』がそうであったが、今のハリウッド業界ではアルコールやドラックの依存症も大きなテーマとして語られることが多い。
今作もそのようなテーマ性を獲得しており、確かにアカデミー会員が評価するのも納得の作品じゃな」
カエル「これだけ色々と褒めるポイントがあるのに、やっぱり亀爺はダメなの?」
亀「ふ〜む……まあ、決して悪い作品ではないが……まあ、佳作といったところじゃと思う。
では、この映画の欠点についてはわしから語らせてもらおうかの」
以下ネタバレあり
今作の欠点
欠点・疑問① 長い&物語の起伏に乏しい
じゃあ、ここからはネタバレありで欠点について語っていこうか……
まずは何と言っても長いのと、起伏のなさが気になった
カエル「うちは長い映画には厳しいからなぁ……特に2時間を超える映画は減点するというか、少し思うところがあるという評価なので……」
亀「もちろん、長い映画が全てダメという横暴なことを言うつもりはない。
長くてもいい映画はたくさんあるが、今作のようにアクション要素もなくロードムービーが続く日常的な作品では、その長さはどうしても感じてしまうところがあった」
カエル「途中で派手な爆発シーンとか戦闘シーン、ミュージカルシーンがあれば話は変わるけれどそういうのは一切ないからね」
亀「その点では物語としての展開の弱さが非常に気になった。
そもそも、明確な目的もない話じゃしの。
それでは劇場の様子はというと……残念ながら、今作はコメディ映画ながらも笑いもないわけではないが、正直物足りない印象じゃった。わしも声を出して笑うシーンはなかったかの」
カエル「笑いに関しては好みはどうしてもあるとはいえね……」
亀「本来、コメディとは社会や政治を風刺して中身があるものである。
そして本作はそれがきちんと機能しておるのじゃが……本作はアカデミー賞ということもあり、非常に上品な映画になっておる。
だからとは言わんが、わしには淡白過ぎるようにも感じられてしまい、どうにも飽きてしまう部分が多い作品じゃったの」
カエル「ちなみに脚本賞を受賞しているけれど、それについては?」
亀「……正直、なんとも言えん。というのも、今作は字幕版で見たが例えばセリフで印象に残ったものがあまりなかった。しかし、これは訳者である戸田奈津子の力もあるじゃろうし、そもそも英語を日本語に置き換えてセリフの含蓄をそのままに表現するのは難しい。
また構成や展開なども特別優れているとは思えず……工夫や配慮は見られたがの。
やはり差別問題などを扱ったことなどが高く評価されているのじゃろうが、少なくともわしは今作に比べたら2019年だけでももっと素晴らしい脚本の作品はあると感じてしまったの」
欠点・疑問② 手紙について
細かい話になるんだね……
わしはあの手紙のやり取りは、正直許せないとすら思ったほどじゃ
カエル「以前にも語ったけれど、名作戯曲である『シラノ・ド・ベルジュラック』をモチーフとしている部分だよね。不細工だけれど文章能力などが非常に高く、文化的に優れた……つまり、外見はアレでも内面のいいシラノと、顔はいいけれど言葉が貧しく文化的な教養の少ないクリスチャンの物語。
それに近い部分もあって『人は見た目ではなく、内面である』ということを示したいいシーンだと思うけれど……」
亀「わしはそうは思えんかったの。
あのトニーの手紙は、あれはあれで良かったではないか。なぜ他人であるシャーリーが口を出す? 家族に宛てた手紙というのは、いつから技巧を競うようなものになってしまった?」
カエル「そりゃ、まあそうかもしれないけれど……トニーは手紙が苦手なわけだしさ……」
亀「わしはこの場面は『人は外見ではなく、内面で評価されるべきである』というメッセージを含むシーンのように感じた。黒人、白人などは関係ない、文化的な教養を語るシーンじゃな。
しかし、手紙における文面というのは外面上のことにしか過ぎん。
大事なのは書かれていること、そしてその思いじゃろう。
つまり、この描写は”手紙の文面という外面だけを取り繕い、内面をないがしろにしている”と受け取ることも可能じゃな」
カエル「……うーん、それは考えすぎじゃない?」
亀「どうにもシャーリーのインテリズムを表現するために、様々な工夫を凝らしておるが……それが疑問を持たざるをえない描写に思えてしまったの」
欠点・疑問③ これは差別の話だろうか?
え〜? 差別が主題のお話じゃない!
その割には差別描写がぬるいんじゃよ
カエル「アメリカでも巻き起こっている『これは白人視点の差別の物語だ!』ってこと?」
亀「それもあるが……シャーリーの生きづらさというのは、果たして差別が原因なのじゃろうか?」
カエル「……どういうこと?」
亀「シャーリーは黒人社会からも距離を置いておる上に、同性愛者でもある。あの時代の黒人について考えると、究極のマイノリティと言えるかもしれん。それは確かに生きづらいじゃろう。
しかし、周囲からしても……あのような性格で、黒人たちがゲームにせっかく誘ってものってこないでスカしておるのは、果たして差別ゆえの問題なのじゃろうか?
それはシャーリーの気質によるものではないかの?」
カエル「……まあ、そうかもしれないけれど南部での差別表現もたくさんあったしさ」
亀「その描き方もぬるいとしか言いようがないかの。
この映画は史実をもとにしていることもあるが、全体的には綺麗すぎる。
例えばトニーも単なる乱暴者であるようじゃが、あの様子を見る限りでは彼はマフィアに極めて近い、ある種の反社会的な存在であるが、それはあまり感じさせないようにしているようにも思えた。まあ、声は映画の演出の問題じゃがな
そして、それは当時のイタリア系アメリカ人を映画で描く場合には多い描き方である。
わしは本作を見て以前に語った『ロッキー』を思い出した」
亀「この時代から10年と少し過ぎたのがロッキーの時代じゃが、この時にはすでにイタリア系の白人と黒人の立場は逆転し始めていた。今作でも冒頭であったが、イタリア系などの白人の中でもマイノリティであり、差別されてきた存在の仕事が次々と奪われ始めておった時代でもある。
つまり、差別と同時に黒人と白人の立場の転換期のお話でもあるが、そういった面はカットされておる。
まあ、それは主題ではないという考えかもしれんが……全体的に今作は美化しすぎておるようにも感じたの」
欠点・疑問④ ケチがついてしまった作品
アメリカでは結構賛否が分かれいるよね……
ここは本当に難しい問題じゃな
カエル「アカデミー賞授与式では同じく作品賞にノミネートされていたスパイク・リー監督が退席しようとして、スタッフに制止されたけれど、その後は作品に否定的なコメントを発表しています。
また、一部のレビューでは黒人を中心に本作への不満が渦巻いており……それは先に挙げたものもあって……
- 『差別表現にダークさが足りない』
- 『白人に黒人が説教される映画だ』
- 『白人の都合のいい映画になっている』
などと様々なことを言われています」
亀「あまりにも過激な意見もあるが、それはしょうがないのかもしれん。
うちも一時期アカデミー賞にノミネートされるかも? と言われていたアジア系のための映画と喧伝しておった『クレイジーリッチ』に対して強烈に非難し『あれはレイシストの映画だ!』と主張しておる。
おそらく、主はその主張を曲げんじゃろうし、仮にアカデミー賞に輝いていたら激怒していたじゃろう。
このあたりは当事者でないとわからないこともあり、特に差別問題を被差別側=黒人があまり関与しない形で作ることの難しさを露呈したかもしれん」
カエル「また、シャーリーの弟からは『兄はトニーを友人と思ったことは一度もない』と批判されています。すでに亡くなっているから確認しようはないし……企画・脚本のニック・バレロンガも『極力真実に忠実になるように努めた』と語りながらも『グレーな部分はある』と認めています。
主要スタッフ・キャストの舌禍問題もあって、脚本家のニック・バレロンガはイスラム系への差別的なTweetが問題となっており、またビゴも『ニガー』と発言して批判の的になり、監督のピーター・ファレリーは今作とは直接関係ないですが過去のセクハラ事件が問題視されています」
亀「もちろん、人間性と作品は別問題じゃが……差別問題を扱った作品の脚本家が差別発言をしてしまうというのは、非難されてもしょうがないのかもしれん。
また、本作は『ボヘミアン・ラプソディ』などもそうじゃが、一部が事実と異なる大きな脚色をしているという指摘もある。
映画であるとはいえ、史実をもとにしたことをこれだけ売りにしている作品がそれでいいのか? というのは、議論になってしかるべきものと言えるかもしれんの」
欠点・疑問⑤ アカデミー賞の傾向ゆえに……
そして、アカデミー賞への文句になるんだ
これは賞の傾向ゆえに仕方がない部分もあるがの
カエル「アカデミー賞はアカデミー会員たちの投票によって決まるシステムですが、数年前からは『ノミネート作品に順位をつけて最下位に選ばれなかった作品が残っていく』という投票形式になっています。
つまり、熱烈に推したい作品ではなく、まあ悪くはないかな、という作品が残るという形式なんだよね……」
亀「その目線で語れば、わしがすでに見ておる日本で公開された他のノミネート作品に比べると突出したものは見当たらないが、かといって特別悪いこともない。差別や同性愛などの社会的な問題も入っており、減点法ならば相当な高得点を狙える作品じゃろう。
しかし、だからこそわしは”佳作”以上の評価はつけられん。
うまくまとまっておるがの」
カエル「う〜ん……このあたりはどうなんだろう……」
亀「近年のアカデミー賞の傾向は……例えば主演男優賞などは同性愛や社会的に重要な役割を演じた人に与えられておる。今年のラミ・マレックも同性愛者であるフレディ・マーキュリーを演じておったの。
うがった視点であるのは重々承知であるが、白人優先やマイノリティ無視の批判を恐れるあまり、同性愛者、あるいは黒人を中心に選ぼうという意図が感じられてしまっておる。
しかし、それは本来の賞レースのあるべき姿なのか、わしは疑問じゃな」
カエル「本当に素晴らしい作品や役者が、白人だったりマジョリティだからと言って排除されてしまうのも変な話だよね……」
亀「それはアメリカの映画界のメッセージを放つために優等生のような発想になってしまうのであろうが……そのメッセージに日本人がどこまで同調するかは難しい問題じゃな。
同性愛問題や差別の禁止については日本も同調するじゃろうが……世界目線では様々な価値観がある中で、アメリカの価値観に無批判で追従する動きには、わしは懸念を覚えてしまう部分もあるの」
まとめ
では、この記事のまとめです!
- マハーシャラ・アリをはじめとした役者陣の演技に絶賛が集まる!
- 社会的なテーマを扱いながらも、多くの人に受け入れられやすい娯楽映画!
- ただし、一部表現に疑問があり、舌禍問題も作品に影を落とす結果に……
- アカデミー賞が選ぶのは納得だが、傾向としてそれでいいのか疑問も……
アカデミー賞とは相性が悪いの
カエル「う〜ん……結局褒めているのか貶しているのかわからない結果になったのかなぁ」
亀「悪い作品ではない。ただ、アカデミー賞の効果がなくてもここまで注目を集めたか? と言われるとわしは疑問があるし、どうしてもその名前で評価されている部分もあるのではないかの?」
カエル「ただ、アメリカを代表する映画であることは間違いないので、ぜひ鑑賞してください!」