今回はグリンチの感想記事ですが、こちらは2000年公開の実写版の感想となります
新作映画の公開前に、少しばかり振り返ってみようという話じゃな
カエルくん(以下カエル)
「ちなみに、僕は今回のアニメーション映画版が公開されるということでグリンチの存在を知ったかなぁ。
映画好きの中ではそれなりに有名かもしれないけれど、一般的には日本では知名度は少ないと考えていいのかな?」
亀爺(以下亀)
「少なくとも、コメディとしては『マスク』やクリスマス映画としては『ホームアローン』の方がテレビでも放映されておるし、一般的かもしれん。
今作はこの2作の影響も非常に強い作品であるが、その辺りもおいおい語っていければいいかの。
ちなみに『ホームアローン』の中にもグリンチのアニメが登場してくるぞ」
カエル「今作はもう20年近く前に公開された作品ということで、ネタバレを含めながら語っていきますので、ご了承ください。
なお、この記事を書いている時点ではイルミネーションエンターテイメントの『グリンチ』は鑑賞前なので、そちらには触れてくても触れらない状況だということをご両所ください」
亀「予期せずしてネタバレをしてしまうかもしれんが、それはご勘弁を。
では、記事の始まりじゃ」
作品紹介
ドクター・スースの名作絵本『グリンチはどうやってクリスマスを盗んだか』を名匠、ロン・ハワードのメガホンで実写映画化したコメディ作品。
主演はコメディ演技に定評のあるジム・キャリー。
世界で最もクリスマスを愛する街フービル。しかし、ひねくれ者のグリンチはクリスマスが大っ嫌い。そのため、街からクリスマスを盗み出そうと、ある計画を実行する……
感想
では、まずは感想から始めるけれど……もちろんジムキャリーだし、面白いんだけれど……
あと一歩たらん印象じゃな
カエル「なんていうか、コメディとしての面白さはキッチリとあるんだけれど、もう一押しが欲しいというのが実情かなぁ」
亀「コメディとしては一定の面白さはあるじゃろう。何しろ、ジム・キャリーの動きなどはコミカルで面白いからの。しかし……これは今の時代に1人で自宅鑑賞したということもあるのかもしれんが、物語自体はかなりおざなりに思えてしまったところもある。
絵本原作だから……とも言えるのかもしれんが、実写化するにあたってもう少し脚本上の工夫があれば、もっと楽しめる作品ではあったかもしれんの」
カエル「ただ、大人だからこその面白いポイントもあって……今作の監督は名匠であるロン・ハワードだけれど、その代表作である『バックドラフト』を思い起こさせるシーンもあって、そこが一番大爆笑したかなぁ」
亀「その見方は映画好きではないとわからんことかもしれんが、小ネタが効いていてよかったの。
他にもスラップスティックコメディとしての見所があるシーンも多く、美術も凝っており、確かにクリスマスに観るにはぴったしの作品である。
物語の展開自体には少しばかりケチをつけたくなる場面もあるが、現代でも人気があり、アニメ版が作られるというのはとてもよく分かる話じゃな」
役者と吹き替え声優について
今回は吹き替え版で鑑賞したので、その感想も少ししておきましょう
まずはジムキャリーといえば山寺宏一の名演技が光るの
亀「今や日本で名実ともに1番の声優と言っても過言ではないし、2000年頃の吹き替えでもすでに一流の腕前を誇っておるからの。
特にこの時代はコメディ=山寺宏一という思いがある人も多いのではないかの?」
カエル「グリンチってただただぼーっとみると嫌な奴で、主人公として感情移入はしづらいタイプじゃない? 最後にはとてもハッピーな展開を迎えるけれど、そこまで彼がやってきたことは、多くの人たちにとってみればただの逆恨みであるわけで……
そんな彼の嫌味なところも、しっかりとコメディとして面白おかしく観れたのは、山寺宏一の名演技があったからこそと言えるだろうね。
それと、今作で褒めたいのはシンディ・ルー・フーを演じたテイラーモンセンの演技力だよね!」
亀「今でもハリウッドセレブの一人であり、もしかしたら大人になっても成功した子役出身タレント一人と言えるかもしれんの。
可愛らしい雰囲気もあり、彼女がいるからこそこの映画はクリスマスに観るのにふさわしい、あったかい雰囲気の作品になっておる。
ちなみに、吹き替えも大谷育江が演じておることもあり、ちょっとした言動でも子供らしい純粋さが伝わって来るものになっておる。
今作では泣く演技はないが、仮にそう言った演技があったら、おそらく今日本で1番泣く演技がうまい大谷育江のことだから、涙腺にビンビン刺さったかもしれんの」
『マスク』などの影響も
今作は明らかに『マスク』の影響が感じられるよね?
例えるならば『マスク』+『ホームアローン』=『グリンチ』と言えるかもしれんの
カエル「もちろん、原作は1957年に刊行されているけれど、ジムキャリーを起用したり、クリスマスの物語ということも考えると上記の作品をどうしても連想してしまうところがあるかなぁ……」
亀「今作と『マスク』で共通するあるモチーフがこの作品を語るのに重要だとわしは思うのじゃが、それが何か分かるかの?」
カエル「え? 何だろう……スラップスティックコメディの要素があるのと、あとは緑色というぐらいしか共通点ってないような……」
亀「その緑色の体というのが、非常に重要なわけじゃな。
例えば、近代でも『ドラゴンボール』のピッコロであったり、あるいは『ハルク』などのように悪魔や制御できない強い力の持ち主は緑色の肌を持つことが多い。
これは中世のヨーロッパでは緑色は不吉な色として避けられていたようじゃな。
これは、当時の顔料が色が定着することが難しく、不安定だったことに由来するようじゃ。
このように、体毛が緑色=悪魔のような体で、そのような印象を与えるという目的がある作品になっておる」
カエル「マスクなんてモロに悪魔だもんね……
スーの一族がグリンチを嫌うのは、そう考えると仕方ない面もあるのかなぁ……」
亀「わしなんかは逆に考えると、非常に現代的な作品とも言えると思うがの。
悪魔というのは現代では複合的な意味合いを持っておる。例えば肌の色が違う=人種差別などのメタファーも含んでいる作品でもある。他にもクリスマスを祝うことのない宗教の人だったり、グリンチは単なる悪魔やひねくれ者ではないということもできるわけじゃな。
イルミネーション版がどのようになるかはわからんが、かなり現代的なテーマを込めることができる作品だと感じたの」
1つの型として
クリスマス映画における1つの型通りの作品だというお話だけれど、それってどういうこと?
この手の作品はディキンズの『クリスマス・キャロル』と同様の作品じゃな
カエル「クリスマス・キャロルって、ディズニーがアニメ映画や実写映画を製作した作品だよね?
確か、意地悪な金貸しのスクルージがクリスマスの日に、亡くなった親友の霊と対話をして、3人の幽霊に連れられて過去・現在・未来の姿を見て改心するというお話だったけれど……」
亀「クリスマスは諸説あるものの、基本的にはイエスキリストの生誕を祝う日とされておる。家族で揃ってキリストに思いをはせる日とでもいうかの。
クリスマス・キャロル自体は作中でも聖書の引用であったり、また訪れるのが東方の三賢者を意識しているように3人の幽霊であったりと、聖書に密接につながる物語でもあり、だからこそ名作とされておる。
ここで注目をして欲しいのは2点。それは『ひねくれ者の主人公』と『孤独を救う子供』の存在である」
カエル「クリスマス映画で本作と似ている作品してあげた『ホームアローン』もひねくれ者の主人公が『家族なんていらない!』ということもあって、大変な事態に巻きこまれるという描写があるよね」
亀「つまり『信仰をないがしろにする者が心を取り戻す物語』と言えるかもしれんの。
その時、きっかけとなるのは純粋無垢な存在、つまり子供であるわけじゃな」
カエル「ホームアローンは主人公が子供だから、救う子供は出てこないけれどね」
亀「あれはあれでかなり政治色の強い映画ではあるが、それをあまり意識させないのがうまいというかなんというか……まあ、それはいいとしよう。
グリンチはそのクリスマス映画の中にある色々な型の中でも、クリスマス・キャロルに近いものを持っておるの」
まとめ
では、この記事のまとめです!
- 展開などに甘いところはあるものの、クリスマスにはふさわしい映画!
- 悪魔のような存在に対する物語として、現代的なテーマも
- クリスマスだからこそできる救済の物語の型に沿った作品
イルミネーション版も楽しみじゃな
カエル「うちは『コメディとホラーは宗教、政治、文化的な批判が込められている』というスタンスだけれど、今作はどのようなテーマなのかな?」
亀「文中でも語ったが『見た目などで差別してはいけない』というとこじゃろうな。
作中の学校での描写などは、見ていてかなり悲しくなってしまったところもある。
生まれながらの悪魔などいない、その後の環境がグリンチをひねくれ者にしてしまった……と考えてもいいかもしれんの」
カエル「ふむふむ……確かに現代的なテーマなのかもね」