今回はエッチで笑えるコメディ時代劇を扱います!
ポスターなどからも、コメディ重視の路線は伝わってくるの
カエルくん(以下カエル)
「あのポスターも浮世絵のようで面白いよねぇ……
ああいうの、大好き!」
亀爺(以下亀)
「今回は気楽に観ていられそうな映画じゃな。
では、早速感想記事を始めるとするかの」
作品紹介・あらすじ
数多くのテレビドラマ作品を手がけ、近年では『後妻業の女』などの映画作品の監督も務める鶴橋康夫が監督・脚本を務めたコメディ時代劇作品。
小松重男の短編小説集『蚤とり侍』のエピソードを再構成した物語となっている。
阿部寛が長岡藩を追い出される小林寛之進を演じるほか、馴染みの客、おみね役には寺島しのぶ、その他豊川悦司、斎藤工、前田敦子など豪華なキャストが顔をそろえる。
長岡藩の藩士、小林寛之進は殿様の機嫌を損ねてしまい『猫の蚤取り』の仕事につくように命じられる。長屋に暮らしながら猫の蚤取りを始めるが、その実態は男娼であった。
殿の命令とあらばと初めての客、おみねと床を共にするが、その後『ヘタクソが』と罵られてしまう……
感想
では、Twitterの短評からスタートです!
#のみとり侍
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2018年5月19日
下手くそが!
といいたくなる部分が多く、決して万人にオススメしたい作品ではない
でも序盤をはじめとしてエピソード1つ1つは笑えるし、コメディ時代劇として駄作ではない
全体的には甘いけれど阿部寛のほぼ裸体が観たい人には特にオススメ! pic.twitter.com/HooCW8ycCh
ゲラゲラ笑えるものの、賞賛はできん作品じゃな
カエル「最近は『殿、利息でござる!』や『超高速参覲交代』などのような、コメディ調の時代劇も多く登場して、それも結構面白いわけでさ。
本作もTwitterの感想では少し厳しいことも書いているけれど、コメディ映画としては結構評価できるんじゃない?
劇場内でも笑い声が多く上がっていたし、ギャグも結構多かったし。
ちょっと邦画らしい過剰な演出などもあったりして、少し疑問は残るけれど、でもコメディだからそこまで目くじらを立てなくていいのかな? と思うし、決して悪い作品ではないんじゃないかな?」
亀「1つ1つのエピソードはそこまで悪くない。
ただ、それが合わさった時の1本の映画として見た時の構成などが……という話じゃな。
本作も連作短編をまとめた映画として公開されておれば、少しは印象も変わるかもしれんが、長編1作としてはその描き方があまりうまいとはいえん。
今作の監督を務める鶴橋康夫は大ベテランではあるもの、テレビドラマで評価された人じゃからな……映画とテレビの作り方や、構成の違いによって、うまくハマらなかった印象じゃな」
阿部寛の演技はもちろん悪くはないものの、硬さは残ったかなぁ……
本作の欠点1 ドラマの作り方
カエル「えっと……長編としての問題点ってどこにあるの?」
亀「そもそも論として、本作の目的は何じゃ?」
カエル「え? 猫のノミ取り(男娼)となって……生活すること?」
亀「本作は描きたいものも多かったのか、男娼のお話がメインであるものの、その他にも武士の生活の悲哀や奉公についての悩みなども描かれておる。
それがバラバラな印象を与えてしまい、結局何がやりたかったのかわからなくってしまった。
わしはこういうことを『話の背骨がない』と表現するが……つまり、ピンと張った1つの大きなテーマや目的、メインストーリーが不在のままドラマが進行してしまう」
カエル「中盤以降も何とかドラマを作ろうと、伏線らしきものを回収してはいるけれど、それがかなり無理があるように見えたりしてしまったのはあるのかなぁ」
コメディ時代劇として、かなり好きな作品です!
本作の欠点2 エロスの描き方
亀「それと、これは致命的な欠点かもしれんが……本作は確かにR15であり、そういうシーンも非常に多い。
多いが、しかしそこまで扇情的でもない」
カエル「え? でも体当たり演技も多かったし、男性も女性もちゃんと肌を見せていて、誤魔化すような描写はそこまでなかったけれど……」
亀「もちろん、ちゃんと胸を見せていたり、キスシーンは舌も入れてディープなものを披露しておる。ここは阿部寛の役得でもあり、さらには大変なところでもあるが……1番役得なのは豊川悦司か? まあ、それはいい。
ただ、それがあまり扇情的には見えんかった。
なんというか……フェチズムが足りん」
カエル「……フェチズム?」
亀「うまく撮る人は女優が服を着て歩いているだけでも扇情的に、魅力的に撮る。
例えば……わしとは相性が悪いものの、園子温はポルノを撮っていたこともあって、女優を本当に魅力的に、エロく観客を煽るように撮る。
他にもアイドル女優が多く出演する若者向けの映画では、主演の女の子を『世界で1番かわいい女の子』として撮る。それが演出であり、カメラワークの力じゃろう。
今作では……出てくる女優陣の年齢が高いのもあるかもしれんが、そこまでのフェチズムや扇情的には思えんかった。
それこそ、豊川悦司が1番エロかったかもしれん
ただ、それもオヤジ臭いエロスじゃからな……」
カエル「う〜ん……個人の趣味(性癖)もあるだろうけれどねぇ」
本作で1番エロかったのは豊川悦司かもしれない……
絡みのシーンは迫力あった……
役者陣について
今回の役者陣の体当たり演技は見所の1つです!
変に恥ずかしがって誤魔化すようなことはしておらんからの
カエル「特に、阿部寛はよくやった! という部分もあるよね。
そりゃ、色々な女優陣との絡みとなると嬉しいかもしれないけれど……寺島しのぶがどうこうではなくて、本当に色々な女優と様々なプレイを行うことになるけれど、誰が相手でも嫌な顔1つせず、フラットに接していて」
亀「中にはコメディらしく、少し、お? と思うような相手との熱いキスシーンもあるが、それでも全く表情を変えなかったからの……
ただ、それが却って良かったのか悪かったのかは、判断が難しい」
カエル「……というと?」
亀「お堅い武士である設定だし、それは阿部寛とよく合っているのじゃが、いかんせん逢瀬の場面においても堅い印象が強くての。豊川悦司が江戸一のプレイボーイであるわけじゃが、そちらと比べるとどうにも……
そういう役だとはいえ、もう少しスケベな面を出しても良かったのではないか?」
カエル「コメディもできる役者なんだけれどね。
一方で、何度も話題に上がっている豊川悦司はさすがのエロさが発揮されていて、見所満載だったね」
亀「それに女優陣もなかなか良い。その身に宿る劣情を吐き出したくても、世間体もありなかなか吐き出せない……そんなモヤモヤとした感情を抱いているのがよく伝わってくる演技じゃった。
変な言い方になるが……『奥さん、我慢できないんでしょ?』と言いたくなるような熱を抱えておったの。
また前田敦子もコメディで生きる女優になってきておる印象じゃが、本作でも熱いラブシーンとコメディで違和感のない演技を披露しておったな。
役者に関しては……特に文句もないかの」
以下ネタバレあり
1つ1つの笑いはいいものの……
では、ここからはネタバレありで語っていきます
もう大方語り尽くし感もあるがの
カエル「まあまあ……実際、どこがどう悪かったのか、作中に言及しながら考えていこうか。
まず、序盤は普通に面白かったんだよね。
ゲラゲラ笑いながら見ていたけれど、松重豊のバカ殿様がしっかりとハマっていたし、あの吟じ方もメチャクチャすぎて、何言っているかわからないのが、さらにバカ感を増していて」
亀「そこでのやり取りで阿部寛が演じる小林寛之進が、いかに空気のよめない男なのか、というキャラクター像もわかったの。このお堅い男だという説明にもなっており、実直さも伝わってきた。
そこではガンガンギターの音なども入ってきており、本作は時代劇ファンが目くじら立てて『時代考証が……』などと言ってはいけないタイプの時代劇である! というのも伝わってきた」
カエル「今作って音楽が結構攻めていて、最近の若者音楽とでも言おうかな? あんまり時代劇では使われていなかったタイプの楽曲が多いよね」
亀「スタートから時代背景の説明、殿様とのやりとり、長屋へ行きノミ取りへ……という流れはとてもスピード感を大切にしておって、これは当たりか? と思わせられたのじゃが……
残念ながら、このスタートから15分がピークだったかもしれんの」
最近はコメディ女優として頭角を現してきた感もある前田敦子
4つのお話
カエル「本作って4つのお話で構成されていて……
- 小林寛之進がノミ取りを始める
- 清兵衛が床上手とは何たるかを教える講座
- 佐伯友之介の人情話
- ラストへ
簡単に言えばこのような構成であり、1つ1つのエピソードは微妙に絡むけれど、でもそこまで密接な関係性はないんだよね」
亀「そう考えると4話放送の30分ドラマの構成と考えた方がわかりやすいかもしれんの。
はじめの2つがコメディ中心なのであるが……清兵衛の話が回想が多く、面白いものの冗長なようにも感じてしまった。これは序盤の15分ほどがスピード感を重視して描かれておったことが原因かもしれんの」
カエル「そこまでじっくりやりたい内容だったのかもしれないけれど……確かに笑えるんだけれどね」
亀「問題は後半じゃな。
唐突に始まる友之介の人情話であるが、それがこの映画とあまりマッチしておらん。
いや、まあやりたいことはわからんでもなくて、エロスを通して人情を描きたかったのかもしれんが……ここでバッサリと作品のテイストが変わってしまった。ここからは単純に退屈だったの」
斎藤工どうこう以前に、この役は必要だったのかなぁ……
無理のある展開が……
カエル「う〜ん……やっぱりあの終盤の展開って無理がかなりあるような……」
亀「ある意味では驚きに満ちておるが、それは悪い意味でじゃな。
殿がなぜノミ取りに任命したのか? というのが明らかになるシーンがあるが、それは全てある人物が口でペラペラ説明している。邦画の悪い癖として『全てを説明する脚本』をよく挙げておるが、今作は映像で見せるつもりもない。
この時点でげんなりするし、その途中にある妄想のシーンも入れる意味がわからなかったり、またその説明をしてくれる人物が唐突な登場で、頭に疑問符ばかりが浮かぶ」
カエル「ご都合主義もここまでくると、いっそ清々しいというか……」
亀「また、小林寛之進がノコギリ引き(罪人を土中などに埋めて街の大通りに晒し者にし、さらに通行人にノコギリで罪人の首を少しずつ切らせていく刑罰)にあうシーンがあるのじゃが、本来はもっとも重い死刑であったはず。
いくら見せしめのためとはいえ、その重い沙汰にも違和感はぬぐえなかったの」
カエル「2日間晒されて、生きていたら無罪放免という話だから、本当にただの見せしめだったのかもしれないけれどね。
確か、一応罪としては存在しているけれど、本当に通行人に首を切られないように監視する役人がいたはずだし……切り始めると役人が止めるんだよね。不思議な話だけれど」
亀「形式だけは残して、実態は特に意味がないというのは、日本らしい話じゃがな。
ご丁寧にその分、監視という手間まで増えておる。まあ、アホらしい話じゃな。
それはそれとして……そのような疑問点が重なりあう上に、最後になんとなく大団円で終わるのが、なんとも納得がいかんかったの」
まとめ
ではここでまとめです!
- 役者たちの体当たり演技は見所の1つ
- 1つ1つのエピソードは笑えるものも多く、序盤はテンポも良し
- ラストがダメダメ……長編としての評価は辛くなるかも?
テレビドラマ出身というのが問題かもしれんな
カエル「テレビドラマが?」
亀「わしは日本のテレビドラマはほとんど……一切と言ってもいいほど見ないが、それは説明台詞のオンパレードだったり、過剰でありながらも予定調和な作品が多いように思うからじゃな。
テレビドラマは多くの人が鑑賞するからわかりやすく、しかも派手な演出の方が受けるかもしれんが……映画でそれをやられると、途端に軽くなってしまう。
もっと落ち着いた演出でいいのに……と、テレビドラマを多くて手がける映画監督にはよく思うの」
カエル「映画とテレビドラマは作り方も全く違うだろうからね。
阿部寛のたくましい裸体などが観たい人は、ぜひ劇場へ急いでください!」