物語る亀

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物語愛好者の雑文

<絶賛>『ブルーロック』原作11巻までの感想 王道と邪道の融合とキャラクター設定の魅力を探る

 

今回は『映画:劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』の公開に備えて、原作を読んでいるのでその感想を語っていきましょう

 

まずはキリがいいところでTVアニメ1期分(11巻ほど)までの感想としましょう

 

 

ブルーロック(1) (週刊少年マガジンコミックス)

 

カエルくん(以下カエル)

原作を読んでみて、ここまで面白かったんだ! ってびっくりしたね

 

TVアニメも全話見てハマっていたけれど、もっとハマった気分だよ

 

カエル「それでは、感想記事をスタートします!」

 

 

 

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感想

 

現在は17巻(U-20戦完結)まで読んでいますが、今回はTVアニメ1クール目分(11巻くらい)までの感想になります

 

正直、TVアニメを観る前に原作を読まないで良かったとすら思っているよ

 

カエル「えっと……それはどういう意味で?」

 

主「多分、原作を読んだ上でTVアニメを見ていたら、その内容に不満を抱いていた気がする。

 TVアニメに関しては映画版を語るときに合わせて語るつもりだけれど……そもそもメディア化というのは原作を売ることも目的だ。その中で、原作と違う意味合いを持たせることも手法としてあるだろう。

 それでいうと、自分はTVアニメを『萌え系ハーレムアニメ』として観ていたんだよね」

 

……男しか出てこないような漫画なのに?

 

潔を取り合う男たちの構図だよね

 

カエル「……それってBL的なこと?」

 

主「それもないとは言わないけれど、何を重視したのかというと、TVアニメは各キャラクターの関係性を重視したんだよ。

 それはそれで間違いじゃない……というか、正しい選択だろう。

 ただ、原作は関係性もさることながら、重要なテーマはやはり『エゴ』であり、上手くなるためにどうすればいいのか、という”感情”を中心に描いている。そして……そのエネルギー量が原作の方が遥かに高かった印象だ。

 決して悪いTVアニメではないけれど、この原作のレベルを知ってしまうと、もっと上を望んでしまう……それほどの強い力を持つ原作だね」

 

 

 

11巻までのうまさ

 

じゃあ、何がそこまで上手いのかってことを具体的に考えていきましょう

 

とりあえず11巻までの内容を考えていきたい

 

主「原作担当の金城宗幸と作画担当のノ村優介の相乗効果によって、レベルが上がっていく漫画だよね。

 絵に関しては一気読みしたので分析ができてないけれど、巻数を重ねていくごとにレベルが如実に上がっていった」

 

元々とても上手いけれど、さらに迫力が増したよね

 

今回は物語展開を中心に考えていこう

 

主「もともと週刊連載って、生物<ナマモノ>だと思うわけだよ。

 先の構想なども当然あるだろうけれど、それを予定通りに出すということは、必ずしもできるわけではない。もちろん、原作というのは物語の構成なども含めて考える仕事ではあるんだけれど、一度発表したものを変更できるわけがない

 

これが映画や連載されていない小説だったら、完結したものを発表できるかもしれないけれど……

 

ある程度まで仕上げて、後から調整というのがなかなか難しいのが週刊連載

 

カエル「だから、週刊連載であると原作者が物語を考えていたとしても、必ずしも物語がまとまっている作品ばかりではないってことだね」

 

主「最近は原作付きの漫画も増えているけれど、必ずしも物語が上手くまとまっているとは言えない。

 作画担当が過酷なのはよく理解されているだろうが、原作担当も話を上手くまとめるのもかなり過酷だし、確実に『あの時こうしていれば』というのは出てくる。

 その中で『ブルーロック』は、少なくとも自分が読んだ17巻までは物語が超絶計算されていて完成している。

 ここまで破綻が少ないのは、とても凄いことだと感じているね」

 

 

王道と邪道

 

『ブルーロック』の凄さを語る上で、スポーツ漫画には大雑把に2種類の作品があるというお話をしましょう

 

王道と邪道だよね

 

カエル「これは『バクマン。』などでも語られているけれど、辞書で引いたら以下のような説明になるのかな」

 

 

 

 

王道

①  徳をもととして国を治めること。儒教で説かれた理想的な政治のあり方。
② 物事が進んで行くべき正当な道。欠点のない方
 
邪道
正しくないやり方。望ましくない方法。

 

本来は邪道の対義語は正道とのことですが、ここでは分かりやすく王道を当てはめます

 
カエル「物語論で語るときの王道って……うちの言葉にすると『ありふれているが、胸を熱くする展開』みたいな意味合いが強いよね」
 
主「今は王道を外してキャッチーな物語を作ることも1つの流れとしてあるけれど、ただ王道は王道ゆえにとても強い。
 お決まりのパターンというのは、多くの人がそのパターンを望んでいて、そして熱くなるからこそ王道なんだ。言うなれば水戸黄門などで、誰もが展開を予想しているけれど、だからこそそれを欲するし、安心して楽しむことができる。
 一方で邪道はその名の通り、王道・正道を外れたやり方で……例えば自分が好きな野球漫画だと『ワンナウツ』などは、賭博や不正行為も絡むまさに邪道な野球漫画。
 だけれど、だからこそ面白いわけだ」
 

今作はその中でも邪道の作品としてスタートしていると

 

明確に代表クラスの選手をディスり、絶対にありえない設定を持ち出しているからね

 
カエル「ブルーロックという監獄に入れられて、その中で切磋琢磨し合いながら一種のデスゲームを行うという話だもんね」
 
主「この時点で、今作は相当に練られているようにも感じている。
 まずは1話を読んでもらうことが大事だから、そこで突飛な設定で読者を食いつかせる。もちろんサッカーファンには賛否があるだろうが、そこも含めて漫画だよね。
 そして邪道の難しさは、展開までを邪道にしすぎてはいけない、ということ」
 
邪道を王道・正道に変えていく
 

展開までを邪道にしてはいけない?

 

邪道の中で何を語るのかが大事ということだ

 
主「自分はプロレスも好きだからそっちで例えるけれど……ヒール(悪役)のレスラーっているんだよね。ヒールは観客が支持するようなベビーフェイス(善玉)と対抗するように存在しているけれど、ヒールだからといって、全てを悪どくすればOKという話ではない。
 きちんと技を受け、技をかけて試合を成立させつつ、時には反則を駆使したり、マイクパフォーマンスで煽るわけだ。
 ヒール(悪役)だから好き勝手に暴走すると、1番大事な観客の心を掴むことができなくなる
 

この話だと、邪道だからといってずっと邪道にすればいいというわけではないと

 

むしろ王道・正道を引き立たせるためのスパイスなわけだ

 
主「まあ、中にはずっと邪道を突き通して人気になる漫画などもあるわけだけれど……そういう作品はどこかで破綻しがちになる。
 それでいうと『ブルーロック』は設定こそ邪道ながらも、その中身は途中からはっきりと王道・正道に変化していく。
 スポーツ漫画として真っ当な少年漫画になっていく。
 そしてその過程で、作画担当の丿村優介の画力もはっきりと上がっていく。
 今回語る11巻まででも、まさに連載漫画において最高の結果を残しているという印象だ」
 
 

 

 

具体的な計算された上手さ

 
『全ての読者がサッカーファンではない』という前提
 

その”計算された上手さ”というのはどこにあるの?

 

まずはキャラクター面に注目しよう

 
カエル「主人公の潔世一をはじめ、各キャラクターがサッカーで覚醒していく描写も魅力的だよね」
 
主「それぞれのキャラクターの個性の作り方がとてもうまい。
 自分はサッカーは全くの門外漢だけれど、ゲームのサカつくをプレイをしていたからFWとかボランチとか、プレスなどの基本的な単語はわかるけれど、リアルなサッカー自体には全く興味がないから、実在のサッカー選手の名前を言われても、わからんちんなんだよ。
 で、スポーツ漫画が難しいのは、専門用語の羅列を含む、うんちくになってしまいかねないところだ」
 

特に野球とかサッカーは競技人口が多いから、当たり前のように説明もなく専門用語が飛び交うもんね

 

ただ、読者の中にはその教義の知識もない人がいるということは、とても大事な視点だろう

 
カエル「以前ににじさんじ所属のVtuberの周央サンゴが、野球をミリしら(1ミリも知らない)でパワプロの高校野球のゲームをプレイしていたけれど、投手・野手という基本的な単語にも疑問符が浮かんでいて、改めてボクたちファンが普段使っている言葉がいかに特殊なのかが分かったよね」
 
 

メジャースポーツだとしても知っている人しか相手にしないとなると、ファンを絞ってしまうよね

 
主「特に今作は少年漫画でもあるけれど、女性ファンも多い作品だ。メジャースポーツだから知っている人も絶対数としては多いだろうけれど、一般的には女性はサッカーなどのスポーツについて、男性と比較すると疎い人が多いとされている。
 今作はサッカーを知らない人でも、基本的なこと……つまりボールをゴールに入れると点が入るとか、そういう知識があればわかるように作られているんだよね。
 逆に王道じゃないサッカー漫画だからこそ、細かいところを説明しない……ボランチとかの専門用語を説明しなくてもいいという利点すらある。
 もちろん、作中では専門用語も出てきているけれど、あくまでも理解できなくても問題がないレベルに抑えられている印象だ」
 
キャラクター設定のわかりやすさ
 

そこで注目するのが、キャラクター設定の方法ということだね

 

何か1つに特化しているスペシャリストを出すことで、分かりやすく演出しているわけだよね

 
カエル「ドリブル、フィジカル、スピード、ヘディングの高さ……その他、色々な面を特化させることで特徴づけをしていると」
 
主「サッカーのスタメンである11人全員を覚えるっていうのは、なかなか難しいんだよ。
 単純に数が多すぎるし、キャラ被りとかもあるだろうし。
 この後にU-20日本代表との試合があるけれど、やはり数が多すぎて最初は混乱する。ある程度、キャラクターや作品の方向性が頭に入ってくる中盤以降ならばいいけれど、スタートからだと結構辛いものがあるよね」
 

そのために印象づけのための能力特化をしていると

 

そうすると、個性にもつながるしめっちゃ分かりやすいでしょ

 
カエル「確かにこの子はドリブルが上手い子、この子はスピードが速い子、と覚えるだけで整理できるのは大きいよね」
 
主「もちろんキャラクターデザインが被らないようにしているとかの上手さもある。
 ちょっと潔と凛が被り気味だけれど、ここはおそらく意図的だろうし。
 サッカーの基本ルールがわからなくても、とにかくキャラクターが理解できて、”ゴールにボールを入れたら勝ち””手は使わずに足を使う競技”ということだけ分かれば、基本的についていけるというのは、とても大きいよね」
 
各試合の意味
 

そして上手いと感じるのが、ここの試合の意味だと

 

物語の運び方が上手いんだよね

 
カエル「簡単にまとめると、一次セレクションに関しては以下のようになっています」
 

 

  • 鬼ごっこ → 漫画の方向性の提示・強力な掴み
  • 総当たりリーグ戦 → 個性の発見・主要キャラクター説明
  • チームX戦 →  試練の投入、潔にない圧倒的な個性の持ち主として馬狼登場
  • チームY戦 → 二子の登場、潔に自分の強みの方向性の提示
  • チームW戦 → 邪道漫画らしい面白さの投入、千切の覚醒
  • チームV戦 → 潔と真逆の才能の塊の天才、凪が登場。潔に近い玲王とのコンビ

 

 

大まかには、上記のようになっている

 
カエル「ここでは各キャラクター紹介と個性を出しながら、チームW戦で邪道の物語というアピールもしているんだね……」
 
主「各キャラクターがどんな意味があるのか、というのも大事だ。
 このあとの三次先行では凛が登場するが、凛は完全に潔の上位互換として存在している。ということで、主要なキャラクターの潔との対比を考えると、以下のようになっている」

 

  • 馬狼 潔が持たないフィジカル・技術などを持ち合わせている強者
  • 二子 潔と同じような能力を持つ存在
  • 凪  潔と真逆、天性の才能を持つ存在
  • 玲王 潔のちょっと上位互換
  • 凛  潔の完全上位互換

 

こういった対比関係になっている

 

カエル「ここでは各キャラクターの役割が、その人物との対決することに意味があるということだね」

 

主「少なくとも、自分が読んだブルーロックのU-20との代表戦までは、とても計画的に練られた構成で話が作られている。

 潔がどのような主人公として成長し、何を獲得していくのか……そこをしっかりと描くことを重視している。

 だから突飛な設定ばかりが目に付くけれど、物語の展開に注目すると作品評価が変わるのではないだろうか。

 そして、その結果として少年漫画の持つ熱さを獲得していくという構図になっているのではないだろうか」

 

 

 

最後に

 

とりあえず、今回はここまでとなります!

 

11巻までの内容分析としては、上記のようになっています

 

カエル「次は劇場版である『エピソード凪』の紹介・感想記事になるので、そこでTVアニメ版も含めて語りましょうか」

 

主「実際、もしかしたら自分にとって2020年代でベストスポーツ漫画になる可能性も感じるかなぁ…

 この先も語りたいことがあるので、もっとしっかりと分析して語っていきたいね」