日本の夏! アニメの夏が到来です!
今月はアニメ映画だけで何本公開されるんだ?
カエルくん(以下カエル)
「それでは、8月1日に公開された『インクレディブル・ファミリー』に対抗するように公開される、日本のヒーローアニメ映画について語っていきましょう!」
主
「間違いなくジャンプの看板作品だからな」
カエル「それこそワンピースがなければ、本作が1番手になってもおかしくないからね」
主「これだけ王道の、誰もが楽しめる少年漫画がジャンプから生まれたのは久々かもねぇ。
アニメ映画化されるのも納得の人気だし、その最新映画はどのような作品か注目していきましょう。
では、記事の始まりです」
作品紹介・あらすじ
週刊少年ジャンプで連載中の堀越耕平の漫画作品を劇場アニメ化した作品。
本作では原作者の堀越が総監修、キャラクターデザインを担当していることも話題に。監督はテレビアニメ版に引き続き長崎健司、脚本は黒田洋介が担当、製作はスタジオボンズが担当する。
主要キャストはテレビアニメ版と変わらず、ゲストキャラクターのメリッサ役で志田未来、メリッサの父親でオールマイトと重要な関係のあるデヴィットを生瀬勝久が演じる。
人口の8割が個性と呼ばれる頂上能力を持って生まれる超人社会の中で、ヒーローに憧れながらも個性を持たない少年、緑谷出久。彼の元にナンバーワンヒーロー、オールマイトが現れる。
そんな彼の指導もありヒーローの名門校に入校したデクは巨大な人口都市『I・アイランド』を訪れる。そこではオールマイトの旧友デヴィットと、その娘のメリッサが暖かく歓迎してくれた。
その平和もつかの間、裏ではある事件が発生しようとしていた……
劇場版ヒロアカ【ロングホープ・ムービー】『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄(ヒーロー)~』/8月3日(金)公開
感想
では、いつものようにTwitterの短評からスタートです!
#ヒロアカ
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2018年8月3日
これでいいんです!
ザ王道の少年漫画アニメ映画であり、最高のヒーロー映画!
後半の展開でテンション上がりまくり、ラストは感涙もので…ホンッットに良かった!
特に自分が好きなものばかりが詰まっていたので…ありがとうボンズ! pic.twitter.com/TnixzYXdkg
これぞ王道の少年漫画原作アニメ映画でしょう!!
主「こういうのでいいんです!
余計な要素は一切いらない、先輩ヒーローであるオールマイトと、彼の教え子であるデクたちの交流と、ヒーローとは何か? を問いただす熱血アニメ!
もうさ、最近のヒーロー映画の色々な成分にちょっと辟易としていたからこそ、この暴力的なまでの熱さに感化されて……
もう終盤は鳥肌の連続で、ちょっと涙目すら浮かべたよ!」
カエル「えー、大変盛り上がっておりますが、実はヒロアカ自体は全く詳しくないです。
そもそも原作コミックも3巻くらいまでしか読んでないし……話題になっていたときに発売していたのがその巻数だったので、特別嫌いというわけでもないですが……」
主「この手の漫画原作作品だと、どうしてもファン向け作品と思われてしまうところもある。実際、それはそうだし、本作もそのような要素は多くあるよ。
でも、本当にいい作品はそのシリーズに初見でも伝わるものなんです!
そして、自分は本作は初見でも面白さが伝わる、とてもいい作品だと激推しします!」
カエル「……これは後々話しますが、好きなものの詰め合わせでもあってちょっと冷静になれない部分もありますが、でも劇場で見る意義もあるし、制作会社のボンズが本気になって作り込んできたことも良くわかる、見事なヒーロー映画です!」
今作の脚本家、黒田洋介について
まずはネタバレにならない程度に脚本について語りましょう
これぞ黒田洋介の本領発揮よ!
カエル「はい、というわけで好きなものの詰め合わせ第1弾は脚本家の黒田洋介です」
主「自分がこういう風になったのも全部谷口悟朗と黒田洋介のせいだから!
そんな与太話はいいとしても、黒田洋介という脚本家は実際、とても力のある脚本家で……おそらく日本で一番熱い『男と男の物語』を書ける脚本家でしょう!」
カエル「特に熱さで有名な『スクライド』や、近年では『ガンダムビルドファイターズ』なども、いい大人が熱中してしまうほどに熱い物語だったもんね」
主「自分が近年の、特にハリウッドの超大手企業が手がけるヒーロー映画に不満があったのは、『女性の活躍する社会』『多様性のある社会』『ヒーローと個人のあり方について』『正義とは何か?』という問いに満ちた物語が多かった。
もちろん、それはそれでメッセージ性としてはとても大事なものである。
だけれど、あの会社のすべての映画がそういう側面を描いているように見えてきていて、かなり辟易としている部分もあった。
その鬱屈を全て吹っ飛ばしてくれたのがこの作品です!」
カエル「はい、別作品の文句はそれくらいにしましょう!」
主「みんながヒロアカに望んでいたのは、やはり少年漫画らしい熱さだったと思うんだよね。
それを本作は忘れないでいてくれて、大人に向けたメッセージ性などは少ないように受け取れる部分もあるけれど、でも1番観たかったヒーロー映画を見せてくれた。
その満足感でいっぱいだし、そういう熱い脚本を書いた黒田洋介の力に、また頭が下がる思いです!」
脚本と映像の融合
カエル「えっと、脚本家の話題ばっかりになったけれど、監督を務めるのはテレビアニメ版から引き続いて長崎健司監督です」
主「もちろん長崎監督もまた素晴らしい実績を持つ人で、黒田洋介とのコンビでいえば『ガンダムビルドファイターズ』の監督なども務められています。
他にも自分は原作信者なので批判していた1期の『血界戦線』の6話は、アンチである自分も黙らせる出来だったけれど、絵コンテを書いたのは長崎監督です」
カエル「コアなオタクにしかわからないトークはここまでとして、今作は何がいいと思ったの?」
主「基本的に連載中の漫画の外伝に当たる劇場作品って難しいじゃない?
本筋にあまり深くは絡めないけれど、でも劇場で見せるクオリティを発揮しなければいけない。
原作の魅力を出しながらも、映像としての魅力も出さなければいけない。
しかも、本作は96分間と映画作品としては短く、この限られた条件の中でどのように物語を発揮するのか? というのが問題になってくる。
その点で言えば、本作の脚本はとてもシンプル。
ちょっとアニメに見慣れた人であれば、何と無く先の展開も予想できる作品です」
カエル「登場人物も多いし、余計なことをしていたら尺はなくなる一方だしねぇ。
『ワンピース』くらいにヒットする作品だったら予算も潤沢に使えるだろうけれど、ヒロアカは正直どこまで売れるかわからない部分もあるし……」
主「ではそれをどのようにカバーするのか? というと演出や映像の力ですよ。
正直、前半は『劇場でこれか……』と思う部分もあったけれど、本領を発揮した後半は圧巻の一言!
序盤はモヤモヤしたところもあったけれど、それが全て吹き飛んでしまった……そんな作品です!」
最高の主人公、デク!
(C)2018「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE」製作委員会 (C)堀越耕平/集英社
声優について
では、キャストの演技について語って行きましょう
今作は見事の一言!
カエル「もちろん山下大輝をはじめとしたいつもの面々は、安定感抜群だし、アニメらしいアニメの演技だから問題なかったけれど、気になるのは芸能人ゲスト声優の志田未来と生瀬勝久だよねぇ」
主「とても良かったです!
声優としての実績もある人たちなんだけれど、今まで挑戦してきたアニメとはまた違う難しさがあって……例えば志田未来が出演してきた作品は『借りぐらしのアリエッティ』や『風立ちぬ』などの芸能人声優が多い作品であったり、『映画クレヨンしんちゃん 襲来‼︎宇宙人シリリ』などのように芸能人声優を受け入れた実績のある映画だった。
でも、今作はすでにアニメとして完成されている作品であり、しかも声優の演技もアニメらしい過剰な演技であるわけ。
普通なら間違いなく浮きます」
カエル「浮いているシーンが0というわけではないし、ちょっと違和感があったけれど、物語が進むにつれて全く気にならなくなっていったよね」
主「アニメ声優との掛け合いの中で、しっかりとキャラクターの個性を出しながら、演技が浮かないようにするということはとても難しいだろうけれど、それを見事にこなしていた。
しかも、今回志田未来が演じたメリッサも、生瀬勝久が演じたデヴィットも出番が非常に多い重要な役だけれど、物語に対して邪魔には一切なっていません!」
カエル「ちなみに……千鳥は?」
主「あれはあれでいいんじゃない? 少年向けアニメ映画らしさが増すしさ」
以下ネタバレあり
批判ポイント
とは言え、序盤は……
では、ここからはネタバレありで語っていきましょう!
ここまで褒めたけれど、序盤から中盤はねぇ
カエル「え? あれだけ褒めたのに?」
主「これは『ポケットモンスター みんなの物語』と全く同じことが起きていて、序盤は物語が一切動き出さないんだよ。
オールマイトの過去のアメリカでのお話とアクションは観客を引き込むのに十分な迫力があったし、そこから物語にスンナリと入っていけるからそれはそれで面白いけれど……
やはり、キャラクターの多い漫画原作作品の難しさが出たかな」
カエル「本作って96分と短い尺でありながらも、キャラクター数はとても多くて、原作ファンのための人気キャラクター総出演みたいなところもあるしねぇ」
主「序盤で、各キャラクターの説明みたいな描写や、本作のヒロインであるメリッサと交流を深めるシーンがあるけれど、そこでは物語は停滞してしまっている。
本筋と関係なくて……いや、ものすごく大事な描写なのはわかるけれど、やはり退屈に感じてしまう部分もあった」
カエル「う~ん……ファンの人だったら違った印象になったかもしれないけれどねぇ」
主「もちろん、これでもかなりキャラクターを厳選したのもわかるし、配慮しているのも伝わってくる。
長年のファン向けのサービスシーンのだというのもわかるけれど、逆にこの作品で重要な、軸となる物語はなんだろう? という疑問になってしまった部分もある。
これは難しい部分だよねぇ……工夫はしていたと思うけれどさ」
本作のゲストヒロインのメリッサ
彼女もデクのあり得たかもしれない未来の、もう1つの姿です
(C)2018「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE」製作委員会 (C)堀越耕平/集英社
作画の配分ゆえに
カエル「とても当たり前のお話だけれど、作画も後半は盛り上げるためにアクション描写もいっぱいで、とてもすごい映像になっていたじゃない?
だけれど、その代わりに前半は、まあテレビアニメくらいかなぁ、と思う部分もあって……」
主「これも難しいよねぇ。劇場で見にきているから、やはりかなりクオリティの高いものを期待する。
特に近年はテレビアニメのクオリティが非常に高いから、劇場アニメのクオリティもさらに高いものを求められていて……それは大変だというのもよくわかるよ。
でも、序盤から中盤はシーンによっては『う~ん……』と唸ってしまった部分があった。
まあ、そこは酷いというほどでもないから、大人なんだから理解しろ、贅沢いうな、と言われたらその通りなんだけれど……」
カエル「それと、同じシーンの使い回しもちょっと目立ったよねぇ」
主「最近は実写邦画もそうだけれど、1度説明したことを何回も説明することで、分かり易さを目指すというのもわかるけれどさ、その流れを何回も見せられてもなぁ、とい思いもあった。
特に本作の重要なアイテムであるガントレットについての説明が3回あったのは、ちょっとありえない。
確かに前後関係を考えるとそう挟むのもわかるけれど、結局は同じシーンを3回見せつけられてるわけだからねぇ」
カエル「あんまり文句を言ってもしょうがないけれどさ、中盤までは退屈なポイントもあったのも事実かなぁ」
褒めるポイント
本作が描き出した大事なこと
でも、一方で本作はヒーロー映画としてとても熱くなるシーンが多かったのも事実なわけで……
自分が挙げた欠点なんて、作り手達はわかっていたはずなんだよ
カエル「だけれど、この短い時間にこれだけのキャラクターを出して、しかもギャグやシリアスも含めて、それぞれに見せ場が少しでもあるように配慮して描いていたことがとても印象に残ったかなぁ」
主「つまりこの映画で最も重要な『ワン・フォー・オール』の精神を描こうとしていたということだよ。
本作がマーベルなどのスーパーヒーローと違うのは、彼らがまだまだヒーローとしては未熟な存在だということだ。
その力はとても強力なものもあるけれど、彼らは所詮学生にすぎない。
たった一人の力で世界を救うようなスーパーヒーローとは、また少し違うわけだ」
カエル「仮にオールマイトという世界最高のヒーローが世界を救う映画になってしまったら、それは本作最大の敵である『オール・フォー・ワン』と全く同じことになってしまうわけだしね」
主「この映画が最大限注意を払っていたのは『みんなで戦う、みんなが協力する』ということだ。
だから物語が停滞することもわかっていて、それを恐れずに多くのキャラクター達の個性や魅力を、シリアスギャグを含めながら描いていた。
そう考えるとさっきの批判も実は絶賛で……それだけのリスクを抱えながらも欠点を最小限に抑えて、効果を最大限に発揮するための計算がされていたことがわかる」
カエル「短所は長所、長所は短所ということだね」
今作を象徴するビジュアルの1つがこちら
(C)2018「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE」製作委員会 (C)堀越耕平/集英社
英雄(ヒーロー)とは何か?
カエル「本作である人が語るように『英雄であるオールマイトの存在が重要だ!』というのはよくわかるんだよ。あの人の選択は間違いではあるけれど、その目的は間違いなく公共のためだし、とても意義があることだよね」
主「オールマイトがいることによって、世界では20%におよぶヴィランの存在が、日本では6%に収まっている、というのはとてもよくわかる話で……今作のヒーローとはそれこそ正義の、平和の象徴でもある。
それは他のヒーローを見てもわかるところがある」
カエル「他のヒーロー?」
主「例えば、自分が日本で1番完成されていると思うヒーローはアンパンマンだけれど、彼は個人としての感情をほとんど持たずに『みんなの笑顔を守る』という公共の平和のために奮闘する。
そしてその姿を心に留めて『僕もあのように頑張るんだ!』という人々を奮い立たせるような存在になる、それこそが英雄だろう」
カエル「現実のスポーツ選手で言えば、イチローみたいになるんだ! と頑張ってバットを振って練習する、というようなものだね」
主「今作に話を戻せばオールマイトほどに完成された究極のヒーローが存在するだけで、悪者が恐怖を抱くというだけでなく、少し劣等感を抱える人……それこそかつてのデクのような子供が、希望を失わずに生きる手助けにもなる。
だからこそ英雄の存在は重要だ、という本作の主張はとても共感する。
悪党を倒す正義の味方以上の意味が、本作のオールマイトにはあるんだよ」
最高のヒーロー、オールマイト
かっこよすぎてしびれます!
(C)2018「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE」製作委員会 (C)堀越耕平/集英社
本作のEDについて
大好きなポイントその②になります
今作のEDに要注目ですよ!
カエル「テレビアニメの第3シーズンのEDをそのまま使っているようだけれど、歌は人気俳優でもある菅田将暉が担当しています」
主「自分がとても注目したのが作詞、作曲が秋田ひろむだということ。
amazarashiファンだから余計に熱くなるし、あの独特の歌詞や曲調で一発でわかってテンションが上がったというのもあるけれど、ここって実はとても大事な部分でもあるんだよ」
カエル「……秋田ひろむが?」
主「『空に歌えば』もいい曲だけれど、正直ヒロアカに使われたときは驚いた。amazarashiが東京グールに使われるのは納得すんだと。
何故ならば、amazarashiって口が悪い人に言わせれば負け犬の唄と呼ばれたように、過酷な状況にある人や事情を歌にしてきた歌手なんだ。
それは今作のEDである『ロングホープ・フィリア』の歌詞を読んでもわかるんじゃないかな?」
カエル「直接歌詞を記載することはできませんが、苦境にいる人が希望を抱いて立ち上がるという楽曲になっています」
主「この歌詞はデクがヒーローになる過程と完璧に一致している。
個性がなく、何者にもなれないとされた人間が、英雄に憧れ続けてついに手にした栄光。
絶望の最中にいた人間が、それでも憧れ続けたからこそ手に入れた力。
この曲のタイトルのフィリアは愛の形の1つであり、日本語に訳すならば友愛になる。
つまり『友よ、長き希望あれ』というタイトルになるのかな」
受け継がれる魂
カエル「……友よ、なんだね」
主「友よ、なんです。
オールマイトとデクは友なんです。
師匠と弟子であるのと同時に『ワン・フォー・オール』なんです。
それはもちろん、他の生徒たちも同じであり、みんな英雄になっていく物語なんです。
そこには個性の強い弱いも関係ない。
大人と子供の違いもない。
ただ自分にできることに模索し、諦めずに挑み続け、そして人々を守り抜くという使命を抱いた人たちの物語なんだよ」
カエル「それが英雄なんだ……」
主「強い弱いじゃない、男だから女だからじゃない、どこの誰で、人種がどうだからじゃないの。
強い気持ちがある人、諦めない人、自分の力で他の人を助ける思いがあり、行動できる人間がヒーローであり、1人だけの強大な力がヒーローの条件なんじゃない。
中には能力があまり約立たない人もいるでしょう、欠点を抱えた人もいるでしょう。
だけど、ヒーローになるという気持ちを持ちつづけるだけで、人は変わる。
英雄から次なる英雄への継承は果たされる。
それを見事に描いた本作は『友情、努力、勝利』を描いた最高のジャンプ少年漫画のアニメ映画であり、最高のヒーロー映画なんだよ」
まとめ
では、この記事のまとめです!
- ヒーローたちの熱い思いに胸が高鳴る!
- とは言え、序盤は少し思うところも……
- 魂の継承、英雄のあるべき姿を教えられる作品!
とにかく観るべき1作だね!
カエル「ちなみに、野暮な質問だけれど日米ヒーロー映画対決の勝敗は?」
主「上手い下手でいえばアメリカの勝利かもね。
でもヒーロー像や胸を熱くしたシーンでいえば、今作の圧勝!
原作も優れているけれど、その魂を失っていない今作は見事の一言に尽きる!
今作はアニメ映画ファンや、ジャンプ作品ファンは見ないと損とまで言ってもいい作品だね」
カエル「重ねて言いますが漫画未読の方でも大丈夫な親切設計です!
是非是非劇場でご覧ください!」