カエルくん(以下カエル)
「……夏のテレビアニメの記事1つも書いてないよね?」
ブログ主(以下主)
「そうねぇ……見てないわけではないんだけれどね」
カエル「夏アニメではどれが人気なのかイマイチわかりづらいね。これが覇権だ! という作品もそんなにない印象かなぁ。
Fateや刀剣乱舞などはコンテンツとしての人気もあるけれど、じゃあ予想以上に大ヒットしているかというと、多分……していないのかなぁ?」
主「良作がないというわけではないけれどね。
その中でも夏アニメでは注目している作品があって、その1つが本作『ボールルームにようこそ』でさ」
カエル「月マガを買って毎月楽しみにしているもんね。
作者の体調不良が多くて、休載も多い作品だけれど、アニメ化するほどの面白さがはっきりとある作品だよね」
主「今月も急な体調不良ということで掲載ページも少なかったしなぁ。
月マガでいえば川原正敏の凄さがよくわかるよ。何年にも及ぶ連載が終わった後に、数ヶ月だけ置いて次もまた連載開始、そしてそれもキッチリと面白いものを作り上げてきているし……」
カエル「秋本治などもそうだけれど、休まないとか、スランプがないというのが1番の才能なのかもしれないね」
主「話はズレちゃったけれど、今回は原作漫画の紹介とアニメ版に対するざっくりとした感想を書いていくとしようか」
登場人物紹介
富士田多々良
今作の主人公。将来にやりたいことの見つからない、一般的な中学3年生であったが仙石と偶然の出会いを果たし、その後ダンスにのめり込んでいく。
祖母に相撲の実況をしていたこともあり、目で見た動きを解釈する能力に優れている。人から教わると考えすぎて混乱するところもあるが、自身が目で見て盗んだ動きを習得しようと延々と踊り続けてしまうほどの異常な集中力がある。
花岡雫
今作のヒロイン。多々良と同じ学校に通う中学3年生。
社交ダンスでは国内屈指のプレーヤーの1人であり、将来は海外留学をしてさらに力をつけたいと思っている。普段をメガネをかけているが、ダンスをするときはメガネを外している。
学校内ではあまり目立っていないようではあるが、ダンスで培ったプロポーションなどから隠れファンは多い模様。
仙石要
多々良をダンスの世界に引き込んだ、国内トップクラスのプロダンサーであり、日本では数少ない海外とも勝負ができるダンサー。高身長であり、さらに体も大きいために海外でも見劣りしない。
一方の性格は細かいことを考えるのが苦手であり、大雑把なところがある。最初は多々良を疎ましく思っていたところもあるものの、徐々にその才能に目をつけて指導を重ねていくが……
パートナーの本郷千鶴も元ヤンぽさがあると言われており、気の強い者同士のカップルとしても有名。
兵頭清春
雫のパートナーにして国内アマチュアの中では屈指のプレーヤー。
多々良にとっての目標であり、ライバルでもあるものの、まだまだ戦えるレベルにはなっていない。天才肌であり、誰もが認める実力があるが性格はマイペースで暗い印象を与える。
しかし芯にあるものは熱く、怪我を押して試合に出場してしまうことも……
その他にも魅力的なキャラクターはいっぱい!
感想
カエル「というわけで、ここから感想だけれど……基本的には王道の少年漫画という印象だよね」
主「そうね。何も夢を持たない主人公が、学校のかわいい女の子と国内トッププロに導かれてダンスを始めるというのは王道の中の王道。
そして次々と現れる強力なライバルに加えて、助けてくれる先生役の仙石などのサポートもあって成長していく、というのは解りやすい」
カエル「月マガってちょっと対象年齢が少し上で、少年漫画と青年漫画の中間というイメージもあるけれど、この作品はもう少し下の年齢層をターゲットにしてもいいんじゃないかな?」
主「本作の最大の魅力は何かというと、やはりキャラクター描写とダンス描写にあるだろう。
例えばキャラクター1人1人を見ても、ちゃんとセクシーなんだよ。健全なエロさがある。それは女性キャラクターだけではなくて、男性キャラクターもそう。
これは萌えの感覚とはちょっと違う印象で……萌えが『かわいい』だとすると、本作は『美しい、セクシー』だ。だけれど、それが嫌らしくないからこそ、スポ根漫画としても楽しめるものになっている」
カエル「ダンス競技において『美しさ』や『セクシーであること』ってすごく大事なことだと思うけれど、それがキャラクターから伝わってくるもんね」
主「作中でも言及されているけれど、首が長かったり少しなで肩だったりするのが、確かにダンサーらしいなって印象を与える。
このキャラクター設計だけでも本作は感心するところが多いかな」
ダンス競技を漫画にするということ
カエル「本作は当然ダンス競技を漫画にしているわけで、そこについてはどう思う?」
主「う〜ん……正直に言うと、題材が悪いという感は否めない」
カエル「え? 悪いの?」
主「まず、競技ダンスという世界がそこまで一般的でないじゃない? 多くの読者は存在は知っていても、この漫画でその内面を知るということも多いでしょう。
もちろん、そこにも配慮されていて、主人公の多々良を素人にすることで説明台詞などがあっても、そこまで違和感がないように考慮されている。作者は競技ダンスの経験者みたいだし、自分はどれだけこの作品の描写が正しいのかはわからないけれど、多分相当研究しているし、ダンサーは納得する描写も多いのだろう。
ただ、本作が難しいのが……ダンスという競技の特性だよね」
カエル「特性?」
主「社交ダンスの魅力は『動き』と『音楽』にあると思うのね。音楽に合わせて踊る、そこが最大の見せ場なわけだ。ただ、漫画という表現媒体は音も流れなければ動きもない。もちろん、絵の躍動感などは素晴らしいけれど、結局は読者の想像力で動いているように見せるわけだ。
これは漫画にするには大きなハンデだよね」
カエル「もちろん競技シーンに魅力があるけれど、その世界を知らないとよく分からないなぁ、ということになりかねないというのはあるかも……」
主「さらに言わせて貰えば、競技ダンスの世界って簡単にカップルを解消できないわけだ。カップルの成立は結婚と同じという描写があるわけだし。
ここで2つの壁ができてしまって……
1つは多々良と雫の経験とレベルの差。
そしてもう1つがこのカップル解消の難しさ。
多々良と雫が惹かれるような描写……それは恋愛ではなくて、ダンスのカップルとしての相性として惹かれるような描写はあるけれど、この2人がカップルを組むというのは相当ハードルが高いわけだ。
この2つの壁を超えて物語を作るというのは、実は結構難しい気がする」
カエル「多々良のカップルの相手を探すだけでも結構時間をかけていた印象だしね」
主「目的、目標の設定が難しんだよ。
妥当ライバル、兵頭&雫ペアだとすると相手は国内トップクラスの天才肌の実力者だからその経験の差などを埋める描写が難しい。じゃあ雫とのカップル成立にすると、今度はダンスのルールが邪魔をする。
面白いけれど、どの方向に行きたいのか、ちょっと見えてこないところもあるかなぁ」
アニメについて
カエル「じゃあ、ここでちょっとここで話を変えてアニメについて語ろうか」
主「基本的には丁寧に作られている良作だと思う。ただ、話題にはあまりなっていないよね。
これもやはりダンスという題材が悪かったんじゃないかな?」
カエル「えー? でもさ、派手で漫画よりはアニメ向きの題材だとも思うけれど……」
主「ここ最近のテレビアニメの作画は異常なレベルでもあって、フィギュアスケートを題材として『ユーリ』があれだけ動かしてきたわけじゃない?
そうなると自ずと本作へのハードルも高くなるんじゃないかな?
その意味では……確かに悪くはないけれど、圧倒するほどの作画の動きというのまでは今の所感じないかな。ただ、これは製作陣が悪いというよりは、ここ最近のテレビアニメのクオリティが異常なだけだと思うけれど……」
カエル「深夜アニメ向きでもないのも大きいんじゃないかな? ちょっと前までなら、この作品ってテレ東の夕方にやっているような作品だったと思うんだよね」
主「それも時代が悪いよなぁ。似たようなニュースばっかりやるなら、子供向けのアニメとかを増やしてあげればいいのに……」
最後に
カエル「ちょっと文句が多くなってけれど、面白い作品であることは変わらないよね?」
主「アニメ化するのも納得するし、なかなかいい作品だよ。
特に5巻以降は新しい登場人物も増えて、物語がまた動き出すから、注目だね」
カエル「今回のアニメ化で初めて作品を知った人にもオススメしたいので、ぜひ手にとって読んでみてね!」
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