今回は社会現象と言ってもいいでしょう、大人気の『鬼滅の刃』の劇場版の感想記事になります!
ここまでヒットするとは、正直思ってなかったね
カエルくん(以下カエル)
「実は、1週間前まで興行成績を予想していたのですが……『まあ、いくらブームといっても深夜アニメの劇場版だし、完結編などでもないから、20億いけば万歳、いっても30億くらいでしょう』なんて思っていたら、もうそんなレベルじゃなくなりそうな勢いで……」
主
「ま、ぶっちゃけて言えば洋画大作もなし、邦画も今週は特に弱いってことで、興行的に期待できるのが鬼滅だけっていうのは、あると思うけれどね」
カエル「またそんな、身も蓋もないことを……」
主「あとは、このコロナ下でも明らかになったのは、アニメ映画の強さだよね。
特にファン層が固定化されているアニメ……最近だとFateとか、ヴァイオレットはちゃんと映画館に貢献している。むしろ、初週に……今回の鬼滅ほどとは言わないけれど、もっと公開館数やら、上映回数を増やしてくれれば、興収は増えたんじゃないの?」
カエル「Fateはドラえもん、ヴァイオレットはテネットいう強力なライバルがいたというのも大きいから……
ただ、やっぱり席半減も無くなったし、鬼滅は2020年で1番の興収をあげるかもね」
主「元々10月は映画業界はそこまで注目作がない時期と言われているのもあるけれど……
色々なタイミングが良かったんだろうな。
というわけで、早速だけれど感想記事のスタートです」
どこよりも詳しく!『劇場版鬼滅の刃』感想&座談会(ネタバレあり)〜アニなら#2〜2020年10月17日回より〜
youtubeに今作の見どころなどを語った座談会の様子をアップしました!
鬼滅の刃とufotableについても語っています!
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感想
それでは、いつも通りのTwitterの短評からスタートです!
#鬼滅の刃
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2020年10月16日
正直中盤までは期待値通りな印象で首を捻る部分も。(だってユーフォーテーブルだし)
終盤は圧巻…!
キャラクター描写や魅せ方が難しい中でうまく調理した印象
ラストは激アツなジャンプ漫画展開に痺れました
しかしこれだけヒットすると今後はどうメディア展開するんだろう…? pic.twitter.com/7h06aJFGX0
……終盤は特に面白かった!
カエル「えっと、最初はいい話からしましょう!
なんといっても”熱い!"
この言葉に尽きるよね!」
主「少年漫画、特にジャンプ漫画の良さというものをとても強く感じたよ。
特に深夜アニメの劇場版ではあるけれど、それ以上にジャンプ漫画のアニメ化なんだよね。ここ最近は、ジャンプも……なんというか、王道の物語ばかりではないからさ。
PG12ということもあって、しかもufotableだからさ、結構刺激の強い描写も多いから、その意味ではジャンプ漫画のど真ん中ってわけでもないと思う。だけれど、見終わったあとは『あぁ、ジャンプ漫画の作品を見たな』という感覚に包まれていくな」
カエル「ふむふむ……
もちろん、映像表現はずば抜けているよね」
主「ただ、個人的な憶測で話すけれど……結果的に日本興業史に残るような異様な大ヒットだけれど、本当は10月公開ということも考えると、そこまで力が特別はいる作品ではないと思う。
物語も……劇場版らしい完結編とかいう話ではなく、深夜アニメならばよくある"テレビシリーズの続きだよ"って感じだし。おそらく、テレビシリーズの後に劇場版を作るって流れは、ある程度決まっていて、予算規模なども決まっていたんじゃないかな。
たぶんだけれど、最初は『10億円くらい儲かればいいな』ってレベルの作品だと思う、
もちろん予算や人手が追加された部分もあるだろうけれど、映像そのものは『Fate』の方が力が入っているように感じられた。
ただ、それでもしっかりと劇場映えする、見事な作品となっているのはさすがはufotableといったところかな」
映像表現の面白さ
アニメにあまり詳しくない方向けににお話しすると、ufotableは2020年の今、最も勢いがあるアニメスタジオの1つです
日本を代表するといっても過言ではないね
カエル「それこそ、今やアニメ業界を代表する作品となり、もはや1つのジャンルと言ってもいい『Fate』シリーズなどを制作するなど、ゲームなどの原作がある作品を多く手がけるスタジオです。
また、その特徴はエフェクトなどのデジタルを用いた派手な戦闘描写の表現であり、作画の緻密な表現と相まって、日本屈指の映像クオリティを提供してくれる会社です」
主「おそらく、戦闘シーンに関しては日本でもトップと呼ぶ声が多いのではないだろうか。
それくらいのスタジオであり、『鬼滅の刃』のヒットもufotableの力が大きかったのは間違い無いだろう。
今作でもそこは健在であり、スタートの新緑の鮮やかな緑とその深さは、まるで実写と見まごうほどだった。この映画は列車の中が舞台ということもあり、8割が人工物に囲まれた空間だけれど、それ以外の……自然の美しさがとてもはっきりと出ていたね」
カエル「鬼滅に関しては何よりも”浮世絵風の絵”の魅力だよね」
主「今作では敵側がCGを中心とした戦闘表現だったのに大して、味方サイドは手書き作画にこだわっている(あるいはそう見えるように工夫している)ように感じられた。
アニメの最大の特徴である”絵が動く”というポイントだけれど、リアルで細い線の作品が続く中で、あえて絵であることにこだわりを持ち続けている作品の1つでもある。
これはテレビシリーズから続いている流れではあるけれど、それがより発揮された作品のようにも感じられたね」
キャラクター描写の難しさ
本作で1番難しかったのは、キャラクター描写だろうねぇ
ぶっちゃけ、テレビアニメを見ていても煉獄って、そこまでメインとは言い難いところもあるしね
カエル「もちろんテレビシリーズでも後半で印象的な活躍もしますが、同じ柱でも明らかにしのぶさんの方が印象深いよね。
パッと出とまでは言わないまでも、そんな人物を中心に描くって、簡単なことではないよね」
主「活躍させすぎてもいけない……いけないってことはないけれど、それもまた違うしね。あくまでも主人公は炭治郎なわけだし。
それでも柱としての強さを見せつけつつ、あくまでも脇役なので炭治郎を引き立てつつ活躍しすぎず、弱く見せない。そして何よりも印象に残る。
この絶妙なバランスを、ほぼこの作品だけでやらないといけないわけだけれど、そこは映像表現も含めて見事。何よりも強さに関しては映像がはっきりと、説得力を持って訴えかけてきた」
カエル「この辺りはufotableだからこそのうまさだったかもしれないね」
主「あとは、この限られた中でキャラクターの過去などを掘り下げたりという面もあり、敵も魅力的に描いて、おなじみの流れをやって……とやることが多いけれど、その辺りもうまく描き抜いたね」
一方で不満点として
ただし、全部が全部褒めというわけではないんだよね……
カエル「その不満点を簡単にまとめると、以下のようになります」
- 序盤・中盤の物語のテンポ
- ギャグとシリアスのバランスの悪さ
ufotableの弱点がはっきりと出てしまった印象もある
カエル「ufotableの特徴として、今作もそうだけれど脚本は明確な脚本家がクレジットされておらず、ufotableとだけクレジットされています。
これはテレビアニメシリーズもそうだったし、社内スタッフで内製しているということではあると思うんだけれど……テレビシリーズから語っているけれど、その弱みが出てしまったのかな」
主「確かに原作漫画があるし、それを忠実に再現しようとしているならば、脚本は原作があるっていうことかもしれない。
だけれど、漫画→アニメには……そうだな、翻訳というべき物が必要なんだよ。
そしてその点において、本作は失敗していると自分は感じてしまった」
カエル「元々、鬼滅の刃ってモノローグがとても多いというのは、共通認識としてあると思うけれど……それがとても物語に停滞感が生まれてしまった要因なんじゃないかな。説明台詞の多さも気になったし……」
主「この映画も3部構成なんだけれど、最後の3部は文句なし。ここは迫力の映像もあり、近年屈指の作品とも言える。王道のジャンプの魅力が溢れているね。
ただし、問題は1部と2部だ。
特に1部は長く感じたなぁ……シリアスで泣かせにくる展開をやったかと思ったら、唐突にギャグを挟む。そしてまたシリアスを再開するから、物語にノリ辛い一面がある」
やっぱり、そこは週刊漫画のノリだよね
主「1作の映画にする以上は、そのノリの整理をする必要があると思う。
ギャグパートはギャグパートでせめる、本筋が始まったらギャグはやめる……とか。
確かに2部が少しグロテスクな面が多くて、自分なんかは慣れた表現だけれどアニメを普段見慣れない人には嫌悪感が強いかもしれない。その意味では1部というのは、ギャグもあって清涼剤として、とても大事なんだけれど、チグハグな印象を受けたかな」
カエル「あとは……正直、ギャグ描写が寒い印象があったかな。ただそれは相性もあるので……」
主「そこも漫画を劇場アニメに翻訳するときの問題だね」
以下ネタバレあり
作品考察
物語的な不満点
では、ここからはネタバレありで語っていきましょう!
……まあ、物語的な不満点は先に述べた通りではあるんだよなぁ
カエル「この作品の構成はざっくりと分けて以下のようになっています」
- 冒頭・夢パート←静かな盛り上げ方
- 列車パート←多くのキャラクター見せ場
- ラスト←今作最大のポイント
主「構成そのものは文句が少ない。
静かに盛り上げながらも、キャラクターの掘り下げを行うと同時に、初見さんへの説明を行う。だから炭治郎の過去などを『実はこんなことがあって……』と説明することなく、映像と物語で見せることができる。
また、今作で一番重要な煉獄の過去を見せたり、思いを描くこともできるわけだ。
ただ、やっぱりギャグパートがなぁ……切れるんだよね」
カエル「そこまで築き上げてきたテンションが、一気に切れちゃうんだね。
しかも、そのギャグが……正直、寒いというか……」
主「まあ、これはテレビシリーズからそうだったけれどね。連載漫画のギャグとはまた違うから、難しい部分があるけれど。
その意味では、1部と2部は若干間延びした雰囲気も感じた。
117分……まあ、EDをのぞいてざっくりと110分として、1部と2部で45分と45分の90分くらい使ったんじゃ無いかなぁ。
じっくりと時間を見たわけでも無いけれど、その尺を持たせるために……あるいは原作をそのまま映像化することに尽力しすぎて、物語がダレタかなぁ」
高く見せない、安く見せない描写
ここも先ほど語った、キャラクター描写の難しさだね
アニメの最大の強みを見せたところだな
カエル「ぶっちゃけ、煉獄がどうなるかっていうのは、僕もわかっていたんだよね。
原作を読んでいないけれど、噂では”かませ”という評価もあったよね」
主「それはでもしょうがないよ。
結局は柱の強さの説明&上弦の強さの説明にあたるわけじゃない?
しかも、ぽっと出のキャラクターでもあるわけで、それを印象深く描くというのは非常に難しい。だけれど……それをずっとやってきたのがufotableで、『Fate/ZERO』なんてそういう描写が山盛りで、全員の正義を描いてきたわけじゃない?
その意味では、やっぱりこの作品も過去作の要素を踏襲していると言えるよね」
カエル「その意味でもとても難しい中で、うまく見せていたよね」
主「よくよく考えるとさ、名前付きの、しかも仲間と言える存在で1番最初の被害者って煉獄だと思うんだよね。誰か忘れていたら申し訳ないけれど。
劇場版になるのもわかるくらい、とても印象深い強さをもち、敵の強大さを示しつつ、己が矜持を見せつけるという意味でも、重要なキャラクターである。
だからこそ、高く見せすぎない、安く見せすぎない、その微妙な立ち位置が求められるけれど、そこを本当にうまくできていた」
鬼と人間のあり方
この作品の”映画的”な要素があるとすれば、やはりこの部分でしょう
鬼の強さと人の強さ、その両方のあり方の違いだね
カエル「鬼の強さは単純な……力としての強さです。そしてそれをもってして弱者を蹂躙していくところに気持ちが傾いている。
一方で人の強さは”誰かを守れる強さ”である、と」
主「それは炭治郎にもつながる強さだよね。
あのラストの叫びも、鳥肌が立つほどだった。自分以外の全てを守り抜き、時間切れまで持ち込んだのは、立派な勝利であるということを高らかに宣言する。
だから、ずっっっっっと夜の中で真っ暗だったけれど、太陽が上がった瞬間はより映えるよね」
カエル「武器持ちの鬼殺隊と素手の鬼では条件が異なるけれど、相手が再生するということで、そこにハンデを一切感じなかった。
またガチンコであるっていうのが、心を熱くするというか」
主「結局、煉獄は最後まで師匠であり続けることが出来たのだろうな。
そう言った人間の矜持を描きぬき、力の種類の違いを描き抜いたこと……それがこの劇場版の意義であり、映画としての意味だったのかね」
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