今回は『鬼滅の刃 遊郭編』の感想記事になります!
2022年のテレビアニメ作品の中でも、ビックタイトルだね
カエルくん(以下カエル)
「音柱の宇髄天元のように、ド派手な今作について語っていきましょう!」
主
「……まあ、無条件でファンの人は、ちょっとモヤモヤする記事になるかもしれませんね」
カエル「では、記事のスタートです!」
感想
それでは、まずは大雑把な感想ですが……
やはり地力のある制作会社が、きちんとヒットすると分かっているからこそ、お金も含めて力を入れれれば、これだけの作品が生み出せるという好例だね
カエル「やはり2021年末から2022年にかけて、テレビアニメとしては近年では少なくなった比較的浅い(0時前)に、大手テレビ局から放送されたことは大きいよね。
しかも全話で無限列車編を含めて18話(1クール半)という半端さというのも異例だよね。
どれほど特別待遇なのかがわかる。
それで視聴率も取れているようだし、歴代No1ヒットした『鬼滅の刃 無限列車編』の勢いそのままに駆け抜けていったね」
とても世知辛い話にはなるけれど、やはり売上がないとどんな名作も作り続けるのが難しくなるからね
主「……ufotableでは色々な問題が発覚して裁判沙汰となり、その時に近藤社長が様々な意見陳述をしていたが、やはり売れることは作品制作においても重要なことの1つなのだろう。それによって制作費が出てきて、時間やスタッフが力を入れることができる。
そしてそれが作品に還元し、より人気を獲得する……
作り上げた作品を商品として考えるならば、これも投資の一環だ。
これがグルグルと回ることによって、良い循環が生まれていくわけだな。その力を思い知った」
作品そのものに関してはどんな印象?
やはりufotable流のアニメ表現の派手さ、レベルの高さが感じられる。一方で見えにくい欠点も露呈した印象だね
カエル「まずは良いことだけれど、やはり映像クオリティの高さだよね。
それこそ誰が見ても『この映像はすごい!』と感じられるものになっていて、目にも止まらないアクションの映像表現とか、あるいは料理作画や日常作画なんかも、とてもすごいことになっていたよね!」
例えば、2話からはこの場面を挙げたい
花魁が歩くシーンだね
主「例えば、このシーンなどがそうであるがこの独特な花魁の歩き方を、しっかりとアニメートしている。しかも、その動きがきっちりと華があり、とても面白い。
ufotableの特徴としては、やはり映像の華が段違いということだろう。なんでもないようなシーンでもきっちりと魅せることができる。
これはもちろん作画(原画・動画)の力もあるだろうけれど、それ以上に撮影セクションの功績が大きいというのもあるだろうね」
カエル「よくufotableで語る際には撮影セクションの話になるよね」
主「近年のアニメの進化はデジタル化によって、撮影セクションがとても発展したことが大きいと言われている。
特にそれが顕著になったのが新海誠の大ヒットだね。
今ではコアなアニメファンの中では、撮影セクションに注目する人も多いくらいだな」
それでいながらも、ちゃんとギャグ・コメディシーンも取り入れているよね
漫画的な誇張表現をアニメで取り入れているね
主「この辺りも漫画の特徴をアニメとして見事に表現しているからね。
またアクションシーンは言わずもがな。
10話は特に話題となったが、あれこそ撮影やCGなどのセクションが力を発揮し、それを前提にした……背景動画などの映像表現を用いることで、驚きの映像表現が可能になっているわけだ。
この辺りは『Fate』シリーズの挑戦もあったかもしれない。
正直なことを言えば『無限列車編』に関しては、『劇場版 Fate/stay night [Heaven's Feel] III. spring song』よりは力が入っていないと思っていたけれど……今作では並ぶくらいには行ったような気がしているかな」
今作の見えづらい欠点
先に語っていた『見えにくい欠点』ってどこのことなの?
やはり、テレビアニメ的な構成ではないと感じてしまうかなぁ
●映像表現の過剰化
ここは趣味の問題もあるのかもしれないけれどね
カエル「じゃあ、まずは原作重視の物語構成についてだけれど……これって、実はずっと言われていることなんだよね。
ufotableは原作重視でアニメ化して、それが支持されている部分があるけれど……でも、それがテレビアニメとしては気になるんだ」
主「これが映画であればいいと思う。
しかしテレビアニメと考えた場合に、今回の構成はあまりうまいとは思えない。つまらないとは言わないけれどね。
例えば……単純にアクション描写が長すぎるようにも感じられる。バトルが始まったのが4話であって、そこからずっとバトルが続いている。それはさすがに長すぎる印象なんだよね」
カエル「昔のジャンプアニメとかは普通の何ヶ月もバトルしていたけれど……」
主「それがアニメ的に高評価を獲得したのか? という問題じゃん。
90年代くらいの作品は……まあドラゴンボールなんだけれど、今でも揶揄されるくらいだしさ。
そしてこれはよく言われていることではあるけれど……いちいちアクションの流れを止めるのが、非常に気になる」
モノローグや過去の回想を入れることへの疑問だね
それくらい過剰な方が、多くの人が理解しやすいのだけれどね
主「この辺りは自分も匙加減について色々と考えているんだけれど……『考えさせる間』というものを作ろうとすると、途端に意味がわからない作品と言われてしまう部分がある。
これは物語に多く触れて、しかも考えることを当たり前にしている層と、そうでない層の差とも言えるかもしれない。
なんか、最近その感覚の違いでモヤモヤすることが多いんだよね」
カエル「少なくともメインストーリーは説明して、サブストーリーを説明しないとかのことが必要かもね。でも考察ブームみたいな部分もあるから、そこもバランスなのかなぁ」
主「話を戻すと、ここで回想などが多く含まれることによって、バトル描写が止まっている印象がある。
もちろん、その辺りはテレビアニメだからこその尺の問題などもあるだろうけどね……
しかし、毎回毎回映像面の迫力がすごいのに、それが止まる、あるいは話が進みが遅いのが非常に気になってしまう。
それだけ丁寧と言えば、そうなのかもしれないけれどね。
特に9話のAパートにあったオリジナルの回想は、やりたいことはわからないでもないが、自分はいらないと思っていてさ。物語の流れが大きく停止してしまい、アクションが静止してしまった。
それもわかるんだけれどね……バトルだけでなくキャラクターに厚みを入れたいのも、ここで1度流れを変えたいというのも、ね。
だからこそ、連載漫画のテンポとテレビアニメのテンポが異なるということを強く意識したし、その例になった作品になったのではないかな」
映像表現の過剰さ
次にあげるのが……ここは本当に、人によるポイントだろうね
ちょっと胃もたれするような部分もあるの
カエル「『鬼滅の刃』ではやはり映像表現がずば抜けて良いという評価が多い印象ですが……」
主「映像に関しては文句なしに近いんだよね。
だけれど……それが2つの意味で危惧する部分ではある。
言わせて貰えば……『鬼滅の刃』はコッテリ濃厚とんこつラーメンなんだよ」
カエル「…濃厚とんこつラーメン」
主「あるいは家系というか、二郎系というかさ。
その映像表現が過剰に見えてしまう。
だから、見ていて疲れる部分が多い」
……あっさりしたものが食べたいって、すっかりお爺ちゃんなんだね
その綺麗さが過剰に見えるものがずっと続くから、前節の”流れが気になる”に繋がるのかもしれないね
カエル「うちは『劇場版 Fate/stay night [Heaven's Feel] III. spring song』の記事の中で、このようなコメントをしています」
違いなく、日本アニメ界の歴史に名前を残す名作にして、時代を象徴する作品の誕生だよ。
時代が動いた。
これは歴史的な事件だ。
それくらいすごかった。
映像表現が圧倒的、他の追随を許さない、ほぼ間違いなく2020年の、外連味あふれるアクション描写では、ベスト作画アニメになるだろう。
それと比べると、今作は少し弱いの?
……自分としては『Fate』の時の方が、衝撃としては大きかったかもしれないかなぁ
主「もちろん、『劇場版 Fate/stay night [Heaven's Feel] III. spring song』は劇場版であり、テレビアニメでそれをやったことを評価する声もあるだろうし……まあ、それが普通なんだろうね。
でも……何というか、テレビアニメでも、もう10年前だけれど『fate/ZERO』の5話のギルガメッシュVSランスロットとかの時の方が、衝撃度は大きかったかもしれない。逆に言えば、これだけのことはできるという信頼が自分の中で構築されている制作会社でもあるから……やっぱりFateとかを含めて、ufotableを追っている人とそうでない人では、見え方が違うかな、と思う」
じゃあ、 Fateじゃなくてヒノカミ神楽と比較したら?
う〜ん……ヒノカミ神楽の方が自分は好きだったかな
主「ヒノカミ神楽の際のエフェクトって、漫画的、あるいは浮世絵とかの絵だからこそできるエフェクトなんだよ。リアルな炎のエフェクトではない」
同じ炎だけれど、描き方がかなり違うのがわかりやすいね
方や漫画的な表現、方や実写的な表現だよね
カエル「特に遊郭編の10話では、このリアルな炎なども凄かったという意見もあるよね」
主「まあ、ufotableですから!」
カエル「……なんであんたがそんなに誇ってるのかは意味がわかりません」
主「まあ、でもヒノカミ神楽のエフェクトを見た時は『こんな引き出しもあったのか』という意味では震えた。
今回は……もちろん、そういうエフェクトの魅力も備えてはいるんだよ」
敵側のエフェクトが、今回も浮世絵風というか、絵だからこそできる魅力を備えているよね
それから、注目したいのはこの表現だ
こちらは更に色鉛筆などのような感覚で絵であることを強調しているというか
こういった表現が見られたな
主「だから、本作はFateなどで培ってきた表現と、鬼滅だからこその絵の表現の両方が融合しているように感じられた。
その意味では、この2つとも過去に発表した表現を使っていることになるんだろう。
だからなのかもしれないけれど……新しさという意味では最先端とまでは思わなかった。
だけれど、この映像を生み出すセンスと、そしてここまで安定して……まあ18話といっても7話分は映画を再構成したから、実質1クールだけれど、それでも安定し続けたことを評価したい」
『鬼滅の刃』に感じる危惧
基本的に表現そのものには褒め要素が多いのに、なんか煮え切らない感じになっているの?
う〜ん……これが”正しい”となることに不安を抱いているからかな
変な例えでしょうが、鬼滅以降の一般の方のアニメ認識が「鬼滅=いい作画」になることは「美味しいラーメンは全部豚骨ラーメン」になりそうな乱暴さを危惧しています
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2022年2月13日
醤油、味噌、塩、魚介系、つけ麺、油そば…色々な味と魅力があるはず
カエル「上記のツイートにも関連することなんだね」
主「……なんだかさ、最近のアニメが見た目のルックの良し悪しだけで語られているような気がしているんだよね。
一時期アニメ作品の一部を切り取って『作画崩壊だ!』とか言い出す本とかもあったんだけれど……いやいや、動画ってそんなもんですから。動いた時にどう見えるかが勝負であって、1枚1枚の絵だけで勝負してないですからって。
でもさ、すごく極端なケースかもしれないけれども……見た目のルックが良ければ、派手な映像演出が為されていれば、それで全てOKになってしまいかねないよなぁって」
カエル「あくまでも鬼滅の方向性はufotableの良さであって、それが全てのアニメの基準になりかねないというのが危惧しているのね」
主「う〜ん……なんかさ、アニメに限らないのだろうけれど、時々そういう極端なことになりがちな気がしている。
なんか批判大会みたいなのがTwitterとかで行われていて、そんな単純に物事の評価を決めて良いのかな? と思うことが……多々あるんだよね。
今作の映像表現が魅力的なのは同意する。
だけれど、そればかりにとらわれて、基準になっちゃうとどうなんだろうって。
例えば……『鹿の王 ユナと約束の旅』がそうだけれど、ああいうリアルな描写というのは、もしかしたら20年後には滅んでいるかもしれない。失われた技術になる可能性がある。
写実的な描写が地味なのはわかるけれど、派手なことばかりに注目して良いのかなぁって気持ちが強い」
だから、もっと遊郭編の1話や2話の動きなども注目してほしいと
それもそうだし……言っちゃえば鬼滅がそれだけビックアイコンだということでもあるんだよ。
主「宮崎駿やスタジオジブリが1つの基準になってしまったように……『鬼滅の刃』が良いアニメの1つの基準になってしまう可能性がある。
もちろん、それを助長しているのが自分みたいなブロガー・ライターなのかもしれないけれどさ。
なんだか、それを危惧するからこそ、手放しで褒めるのもそれはそれで怖いかな……という気持ちがどこかにあるんだよね」
カエル「複雑なんだねぇ」