今回は『大怪獣のあとしまつ』について語っていきます!
……公開初日から、色々と騒がれている作品だな
カエルくん(以下カエル)
「えー、一応言っておきますが、あんまり批判大喜利みたいなことはしないので、それを期待する方は別記事を読んだ方いいかも!」
主
「このレベルの映画なら、毎年出てくるでしょうよ」
カエル「単純に出来が悪かったり、もっと嫌な気持ちになる映画もあるからね。
それでは、早速ですが感想記事のスタートです!」
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感想
それでは、Twitterの短評からスタートです!
#大怪獣のあとしまつ
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2022年2月5日
悪いところは非常に目につきやすく悪口大喜利が始まるのも納得。キャストスタッフは自分の仕事をやりきっている分、悪いところが気にかかるか
ただしやりたかったこととしては社会批判とぐだぐだな政治批判と見れば挑戦する意欲は買います
ただ絶望的にコメディ・ギャグがなぁ… pic.twitter.com/ST6o0NIEUi
コメディ・ギャグに含ませて現実の政治批判をしたかったのは分かるのですがかなりの高等テクを監督が制御し切れなかった印象ですね。テレビ的な笑いは映画だと寒いんですけどそれがテレビ出身だと同じ映像媒体だからか通じない💦
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2022年2月5日
でも普通のレベルの範疇かと
映像面は特に頑張ってますし
まあ、悪いところは確かに目につきやすいかな
カエル「今作って公開初日からTwitterで悪口大会が始まっていて、それが大喜利レベルまで言っているんだよね。座布団ならぬいいねが貰えるとあって、色々な人があれこれと悪口を書きまくっていて……
個人的にはその手の意見には、どちらかと言えば反感を持つので、その意味ではフラットな評価ではないかもしれません。
で、全体的にはどうだったの?」
主「普通か、ちょい悪いくらいかな。
確かに悪いところは徹底的に悪い。
でも良いところが皆無ってわけでもない。映像表現は頑張っているし、VFXは日本の作品としては力が入っている。政府描写は完全にファンタジーだけれど、軍事的表現は……まあ、ファンタジーもあるけれど、それなりに再現しようとしているのが伝わってくるものはある。
だから自分はそこまで徹底的に叩かない。
でも、半年もしたら存在を忘れるだろうね。
そんなに見所が多いわけでも、印象に残るほど悪い部分が根強いわけでもないから……その意味では、普通の駄作ってところかも」
今作が叩かれる要因〜報道番組の太田光問題〜
なんで今作ってこんなに叩かれるのかなぁ……
観客が求めているものと、制作者が意図したものがすれ違っているからだよ
カエル「ここで例に挙げるのが、2021年の衆議院選挙特番の際に、太田光の言動が非常に問題視されたという案件ということだけれど、どういうことなの?」
みんなが望んでいたもの(≒ある種のらしさ)からかけ離れてしまったものを披露したら、大きく叩かれてしまうという好例だと思ってさ
主「自分は太田光が好きということもあって、この番組を見ていたけれど確かに他の番組とは一線を画していた。それはその通りだけれど、同時にラジオ番組で太田光は『選挙特番っていつから真面目なものばかりになったんだろう?』と語っている。芸人だからこそ、ある種のバラエティ的に切り込んでやろうという意図があったのも、理解できる。
でも多くの視聴者にとっては、そのバラエティノリというのは余計だった。
やっぱり選挙特番は真面目に、丁寧にやって欲しかったという声も大きかったということだろう」
あーなるほど、つまりこの映画も『真面目な特撮』としてやって欲しかったと
特に『シン・ゴジラ』のヒットの後だからね
実は監督はインタビュー記事で『シン・ゴジラ』のヒットとは関係なく、2008年にはこの作品の構想があったということを下記の記事で語っています
特撮として、真面目に描いて欲しかったんだ
主「特に特撮ファンから大きな批判の声が聞こえるけれど、そりゃそうだ。
だって、これは悪ふざけに見えるんだもの。
色々な特撮の要素を使って、それをテレビ的な笑いで描き出す。それは特撮ファンほど不愉快な気持ちになるだろう。それはあって然るべき意見だと思うよ。
つまり、太田光の選挙特番と同じで、観客(視聴者)が望んだものに対して、悪ふざけとしか思われないものを提示してしまった。
だから叩かれた。
まあ、このやろうとしたこと自体は自分は理解できるんだけれどな」
テレビ的なお笑いの問題点
今作もそうだけれど、映画ってテレビ的なノリのお笑いが多いよね……
それが大体滑っている印象が強い
カエル「今作の監督である三木聡も、テレビ番組、特にバラエティの放送作家を経て映画監督へとなっています。実際は映画にこだわらず、映像媒体全体の監督を手掛けるということなんだろうけれどね」
主「今作もギャグ・コメディ描写が多いんだけれど、それが……確かに寒いんだよ。もちろん笑いはセンスや相性があるし、劇場内では笑っている観客もいたから、好きな人は好きなのかもしれないけれどね。
でもテレビ出身の監督に多いんだけれど、笑いを入れようとして、失敗する。
映画監督ならば……まあ、これも賛否が激しい福田雄一とか、あるいはわかりやすい例では松本人志とか」
テレビ的なお笑いを映画でやっても……何というか、過剰なんだよね
あれはテレビで見るから楽しめるものなんだ
カエル「今作では下ネタ表現とかも多いけれど、テレビだったら『馬鹿だなぁ』と言って笑えたり、あるいは真面目な人は『くだらない!』と怒って終わるだけかもしれないけれど……映画はそういうわけにもいかないからね」
主「テレビの1コーナーの笑いだったら、今回のような笑いでも行けたと思う。
キノコのくだりとかは、コント番組だったらいかにもありそうでしょう。だけれど、映画の笑いって1コーナーじゃないんだよね。テレビならば10分の1コーナー、1時間(実質45分ほど)の番組の笑いでいいかもしれないけれど、映画はそうもいかない。
テレビ的なお笑いを入れてしまうと作品全体の雰囲気が崩れるし、物語の流れは停滞する。
貯めはいい。
でも、停滞はダメ。
で、今作も徹底的に停滞。物語が加速するための貯めではなく、物語が減速する停滞になってしまっているから、面白くないわけだ。
なぜかテレビ出身の人はそのお笑いをそのままやってしまう……だから失敗したり、文句言われたりするんじゃないかな。映画が高尚とは言わないけれど、舞台とテレビとラジオの笑いは違うように、映画の笑いもまた違うものなんだよね」
あんまり効果的でない笑いたち
役者について
そんな悪ノリに付き合わされた役者さんはどうだったの?
基本的には、みんな頑張っていたよ
カエル「勘違いしないでほしいのは、作品全体の舵取りを失敗しただけで、誰かの仕事が徹底的に悪かったというわけではないということだね。(監督・脚本の三木監督は除く)」
主「間違いなく役者は与えられたものを全力で演じていた。
今回って結構バラエティに慣れている役者も多くて、特に政府政治家側は西田敏行を筆頭に、普段から面白い役者が揃っている。だから、あのノリもきちんと演じてくれるんだよね。
また今回は政治風刺もあるからさ、財務大臣なんて明確に麻生太郎モチーフだったし。笹野高史は、その辺りもトレースしていた。
役者は問題なし。
問題は監督・演出・脚本だね」
じゃあ、現場側の人たちはどうだったの?
とても良かったんじゃないの?
主「例えば土屋太鳳なんかは、どんな作品でも全力だからね。今回もなんでも全力で好印象だった。
山田涼介とか、オダギリジョーとかもそれぞれの役者のイメージをフル活用していたし、良かったよ」
以下ネタバレあり
作品考察
本作が目指したブラックジョークの先にある政治批評
では、ここからはネタバレありで語っていきましょう
今作が目指したものはなんだったのだろうか
カエル「……決して、悪ふざけなだけではないんだよね?」
主「半分はギャグ・コメディの悪ふざけでしょう。監督の売りである笑い描写を入れたかったとかさ。
でも、ちゃんと意味も見出せるし、批評的な価値もある作品だよ。
今作で目指したのは『危機管理下の日本を描く』ことなんだ」
近年で日本の政治や社会を語った『シン・ゴジラ』や『新聞記者』には、あまり語られないけれど明確なファンタジーがあるんだ
……明確なファンタジー?
つまり”政治家や官僚が優秀すぎる”というものだよ
主「これは自分もフォロワーさんに指摘されて気がついたけれど、確かにそうなんだよね。
『シン・ゴジラ』ならば官僚や政治家が的確に行動していくし、『新聞記者』もすごく有能そうな人が明確な意思を持って悪事を働いているように見える。
でもさ……実際問題、そんなに政治家や官僚が優秀なのか? って話」
○ 福島原子力発電事故
○ 新型コロナウイルス問題
こういう国家的な危機のとき、本当に官僚や政治家って有能な行動ができるの?
カエル「……まあ、どこの政権でも限界はあるし、それなりに一生懸命はやっているんだろうけれど、国民としては不満の声の方が大きいよね」
主「つまり、それまでの物語が”優秀な政治家や官僚”を基に描いていたけれど、実際はそんなことないだろうと。もっとグダグダするし、色々な問題はあるだろう。
例えば現場に行くことでリーダーシップを見せようとする政治家とかさ、まさにその通りだったじゃないですか。そういうことを、全て笑い飛ばそうと風刺しようとしたのが今作だったわけだ。
怪獣の名前が”希望”となるなんて、まさにそうじゃない。
死んだ怪獣で後始末ができない状況が”希望”なんて、今の日本人には笑えないブラックジョークだよ」
カエル「コメディで風刺をしようとしていた、と」
主「でも、それって高等テクニックだからね。
正直に言って、失敗している部分ばかりで……それが結局悪ふざけにしかならなかった。
そりゃ特撮ファンは怒るよ。自分が好きなものをブラックジョークまみれにされているんだからさ」
今作における怪獣とは何か?
じゃあ、怪獣ってなんなの?
今作においても怪獣は”人間が関与できないトラブル・災害の象徴”なんだよ
カエル「……それこそ地震とか、台風とか、そういったこと?」
主「それもそうだね。
『シン・ゴジラ』の時も語ったけれど、怪獣とはただ暴れ回るものじゃない。人智を超えた存在でなければいけないんだ。
昭和だったら戦争の象徴、平成だったら災害の象徴、といったようにね。
これらは人間が操作できないことに溢れている」
だから、専門家とかが何をやっても状況は改善しないわけだ
主「監督は先のインタビューでも『不条理』という言葉を使っていたけれど、まさに今作における怪獣は不条理の象徴。
色々な人が知恵を絞っても、何をしても解決できない。
それって不条理だよね。
それは先にいったように、政治家や官僚、専門家を小馬鹿にするのと同時に、人智を超えた存在を描こうとしていたわけだ。
じゃあ、その解決策は何かというと……この映画のオチのように、より大きな人智を超えた存在に救ってもらうしかないという、まさにブラックジョーク満載の作品だったわけですよ」
今作の失敗要因
① 笑いのセンス
そこまでは意図がわかるとして、じゃあなんで失敗したの?
……だから、単純に笑いのセンスの問題かな
カエル「笑いのセンスかぁ……これは難しいよね」
主「先にも述べたように、これって単なる悪ふざけになってしまったんだよね。しかも、中途半端に特撮ファンが喜ぶようなサプライズを次々と仕込むからさ、余計に特撮ファンに喧嘩売っているような気分になる作品になってしまった。
しかも、コメディ・ギャグとしても幼稚だし……政治家たちを幼稚な存在として描こうとする意図があったのかもしれないけれど、寒いよねぇ。
下ネタ表現もそうだし、女性にそれを言わせるというのもセクハラ的で現代的ではない。
多分、若い層ほど面白くないと感じるんじゃないかな」
② 登場人物を絞りきれなかった
次の欠点が登場人物の問題というけれど……
もっと登場人物を減らしたりしないと
カエル「群像劇ではあるんだろうけれど、最後まで誰が主人公か分かりづらかったね」
主「結局、誰に感情移入すればいいのか、観客は迷子になるよね。
しかもメインの物語は怪獣の話なんだけれど、それがあまり動かないで停滞したギャグとかでワチャワチャやっているだけだしさ。
もう少し登場人物を絞ったり、あるいはドラマを描く……それも唐突なキスシーンとか、過去に何があったとかではなくて、もっと骨太なものを描かないとね。
目指すべきは”軽さ”なんだろうけれど、今作はただ破茶滅茶なだけだから」
③ 解決方法
そして最大の原因がここではないかと思います
結局さ、今作って人間たちは何もしていないんだよ
カエル「色々やったけれど、全部ダメでした。おしまいって話だもんね」
主「それって物語として面白くないよね。
人間たちが工夫を凝らして、知恵を絞って戦う様が面白いのに、そこを全否定してしまっているからね。もちろん、それも狙いだとは思うけれど……
不条理コメディって難しいと思うし、この公開規模でやるべきなのかなぁとは考えちゃう。
もっと小規模で実験的ならば、とんでもない作品が出てきた! と言われたかもしれないけれどね」
最後に
というわけで、感想記事でした
まあ、普通の作品だと思いますよ
カエル「ここまで言いながらも、つまらないと切り捨てはしないんだ」
主「意図はわかるし、そのやりたいことは自分も興味深い。
何よりもスタッフとキャストは頑張っていた。
ただ……つくづく思ったのが『無能な味方は最大の敵』だよね」
カエル「……最後に大毒を吐いたな」
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