今回は『グッバイ、ドン・グリーズ』の感想記事になります!
こちらは詳細な感想記事になります
カエルくん(以下カエル)
「東京国際映画祭での初お披露目で鑑賞し、感動したので紹介記事を書いていましたが、公開日に合わせてより詳細な感想記事がこちらになります」
主
「いやー、2021年に見たけれど『早くも2022年ベストが決まったかも!』と思うほどの衝撃だったからね」
カエル「その時の衝撃を綴った記事が以下になります。
それでは、この記事を始めていきましょう!」
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作品考察〜概要〜
男の子の生き方
まずはさ、いきなり核心に触れるようだけれど『グッバイ、ドン・グリーズ』のどんなところが、そんなに刺さったんだと思う?
今の時代って、男の子(大人の男性含む)の生き方が提示されづらい時代だと思うんだよね
カエル「今の時代はガールズエンパワーが主流で、女性たちは『社会に出よう!』という流れがとても強い時代です。特に洋画ではそのような作品も多くて、パワフルなアクションを女性が担当することも増えてきました。
それでいうと、その路線ではあまり語られないですが、日本のアニメも似たようなところがあって……一昔前ならば、男の子が主人公だったバトルものの主役を女の子が務めていたりします」
主「確か『男子高校生の日常』という漫画・アニメだったけれど、『女子高生は何しても華があるけれど、男子はないからかわいそうよね』みたいなセリフがあったんだよね。
もちろん、この作品はギャグ漫画だから、それも冗談ではあるけれど……でも、実際そうじゃない?
それこそ、いしづかあつこ監督の前作である『空よりも遠い場所(通称よりもい)』では、女子高生が南極へ行くことを描いていて、これが一昔前の時代であれば、冒険は男の子の領分だった。でも、今は女子高生の方がパワフルなんだよね」
今って、女子高生が主人公だったら何をやっても受ける時代になったと言えるよね
2000年代中期ごろからの過熱化した萌えブーム以降、そしてオタク文化の美少女好きが産んだ流れとも言えるな
カエル「この辺りはいしづかあつこ監督も東京国際映画祭の時に、このように語っています」
『よりもい』では女の子同士の内面を掘り下げる描き方をしていました。半径二十メートルくらいで彼女たちだけの心の物語を描いていったのに対して、次は外側に向けてエネルギーを発散させていく物語を考えていこうというところで男の子のキャラクターを立てました。
いしづかあつこ監督 東京国際映画祭のワールドプレミアイベントのトークショーより
今の時代、男の子ってどういうふうになるのが正解なのだろうか?
主「現代は理想の男性像がない時代に突入したと感じている。
例えば……昭和の時代ならば、任侠映画が流行ってさ。野球選手とかがパンチパーマとかにして、広島の野球選手がカチコミに来た暴力団に見える、なんて時代もあった。他にも高倉健とかがカッコいい男像とされた時代だよね。
そこからヤンキーブームがきて、男の子の中ではヤンキーがカッコいい時代になる。
そういう風に、時代ごとに合わせた理想の男性像というものがあった。だけれど……今の時代って、そういう共通認識がなされる理想の男性像というものがない時代なんだよ」
カエル「ふむふむ……
まあ、オタクも一般化したけれど決して理想ではないし……少年漫画や少女漫画のヒーローのようには生きられないよね。
それこそ、うちがクリント・イーストウッドの映画を追いかけるのも、もちろん洋画の生ける伝説ということもあるけれど『マッチョな白人男性(かつての男らしさの象徴)が変化していく様を描く』ということに、興味があるんだしね」
憧れはあっても、真似はできない男性像が多い気がする
主「家庭的な男性というのが1つの流れなんだろうけれど、それでも相変わらず旧来の男性像……つまり高年収、高身長、高学歴という3高はいまだに男の価値として根強いものがある。
理想の男像、男の子像は時代と共に更新されていくのと同時に、追加されていくような気がしていて、それについて行けていない人も多い。
男らしさの害悪ばかりが指摘されて、男がどう生きるのか、難しい時代なんだよね」
「ここではないどこかへ行きたい」という感情を描く監督
確か、以前の感想記事では『よりもいが半径20メートルならば、グッバイ、ドン・グリーズは半径5メートルの世界だ』と書いていたよね
それくらい、この作品は世界が狭いんだよ
主「それこそ監督が語っているけれど、遠く遠くへいく物語としたら、現代は女の子が主人公の方が向いているような気がする。それは『よりもい』もそうだよね。
一方で、深さを描くならば男の子の内面を掘り下げる方が向いているかもしれない。先行上映会のトークイベントでいしづか監督が語っていたけれど『よりもいでオミットした”世界と自分の向き合い方”を描く』というものには向いているような気がしている」
これは、いしづかあつこ論になるけれど、監督のフィルモグラフィーを見ると『ここではないどこかへ行きたい』という作品が、近年続いている印象だ
カエル「もちろん、いしづか監督は原作付きのテレビアニメも多く手がけているので、単純に監督の作家性とすることはできませんが……」
宇宙よりも遠い場所 → 日常からの乖離、非日常への冒険
このようなテーマ性があるとすれば、今作も「ここではないどこかへ行く」という物語だよね
主「もちろん、監督としては演出論の方が重要かもしれないけれど、方向性としてはこのようなものになっている。
とても広い、広いものを目指しているんだ。
それと同時に、人間の奥深さというものを描いている。
とても狭い、狭いもの……つまり、人間の内面というものにも向き合っているわけだよね」
人間の内面をより掘り下げていく『ドン・グリーズ』
監督はノベライズ版の解説や、公式ビジュアルブックでも「母親の余命宣告が今作の出発点」という話をしています
これはとてもわかりやすいね
カエル「ここでは余命宣告がきっかけと語っているけれど、でも人生が一変するような衝撃的なことって、誰にでも起こるのではないでしょうか。
それまで見えていた景色と、今見ている景色が違う……身近な人の余命宣告というのは、最も大きい形かもしれないね」
主「でもさ、それってもっともっと身近なことなんだよ。
例えば、初めて飛行機に乗った時。空を飛んで知らない街へ行く、外国へ行った時、自分の世界の小ささと、今までと全く異なる感覚になると思う。
それと同じように、もっと自分の内面を見つめてみた時……苦しんで、足掻いて、もがいた瞬間に、自分の人生が変わるように見える瞬間って、誰にでもあるあると思う。
それこそ……就職とか、会社を辞めるとか、結婚、子供が生まれる……なんでもいいけれどね。
自分にとってはブログを立ち上げる、本を出版する……公に飛び出していく瞬間に、そんな思いがあったかもしれない」
日常の中に潜む小さな変化というのは、実はとても多いものなんだね
人間っていうのは、現状を否定する生き物なのかもしれない
主「”もっといい場所があるかもしれない”
”もっといい生き方があるかもしれない”
そんな気持ちを抱えている人は、ものすごく多い。
それと同時に、だけれどその場所に行くのが怖いという感情がどこかにある。
だけれど、一歩踏み出せば、その恐怖心なんて、なんてこともなかったりもするかもしれないね。そういう心の変化を丁寧に描くこと、それこそが『グッバイ、ドン・グリーズ』に惹かれた1番の理由なのかもしれないかな」
”中高生に見てもらいたい”作品でもあり、同時に”大人に見てもらいたい作品”でもある
そういえば、Twitterにこういう発言もしていたよね
昨夜『グッバイ、ドン・グリーズ』を観てやはり中高生に見てほしい作品だと感じました
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2022年2月11日
でも自分が中高生の頃、そんなことを言う大人が大嫌いでした。今でもその気持ちはちょっと残ってます
子供たちにガンバレ、というだけじゃなくて大人たちにも頑張らないと、と思わせてくれる映画です pic.twitter.com/1GmNeQHIK8
『子供たちに見せたい、感じてほしい』って言葉は真実だけれど、同時に大人にもケツを叩いてくれる作品だと思う
カエル「やっぱり、この作品って高校生になったばかりの15歳の少年たちの物語だからこそ、子供に見てほしいという気持ちが結構強いかな」
主「でもさ、それって自分にはちょっと違和感があるんだよ。
もちろん、中高生や未来に悩む子供たちにも見てほしい。等身大の感情を抱いてほしい。
でも、それって大人の戯言でしかなくて……『じゃあ、お前が頑張れよ』と言われてしまうだけの言葉だ。
”子供は夢を見ろ、大きな翼を広げろ”じゃないんだよね。
なんで大人になると、それができなくなると思ってしまうんだろうか」
カエル「家庭があったり、仕事があったり、色々なしがらみの中で生きているからっていうのは大きいだろうけれど……」
主「それもわかるけれどさ。
でも、やらない理由を述べているだけじゃダメなんだよ。
冒険すること、旅に出ること、挑戦すること。
それがこの映画が問いかけてくるものだ。
それに感銘を受けたならば……小さなことでも、大人でも挑戦したりするのも、いいのかもしれないね」
以下、ネタバレあり
作品の詳細考察
声優陣の演技
では、ここからはネタバレをさらに詳細にした形で、内容に踏み込んでいきましょう!
まずは今作を支えた声優陣の演技を改めて振り返ろう
カエル「うちは役者の演技って一応語りやすいところだから結構語っているけれど、今回ほどそれが力を発揮した作品もなかなかないというか!
これもいしづか作品の特徴だと思うけれど、役者陣の演技がとても良いんだよね。
だからこそ、作品がすごく力をもつし、キャラクターにも感情が入りやすいというかさ」
主「今回は花江夏樹・梶裕貴・村瀬歩の3人だからできた空気感というのも非常に大きいね。
まるでプレスコのような……つまり声を事前に収録して、映像を後から作ったかのような演技のようなほど、やりとりが自然だった。
今作って3人のやりとりが物語の8割を占めるくらい、すごく大事なんだけれど……だからこそここがコケると、全部がダメになる。
もちろんこの3人には人気・実力もあるから集客を見込んでということもあるだろうけれど、なぜ今の時代を代表する若手男性声優陣なのか、はっきりとわかったよ」
特に花江くんは『鬼滅の刃』とかもあって、まさに時代を代表する声になっているよね
今じゃYouTubeでも人気があるし、まさに”等身大の若者像”を象徴するような声と言えるのではないだろうか
カエル「ちなみに、今作では芸能人声優も使われていますが、どうだった?」
主「自分が初見の時はまだ田村淳、指原莉乃の参加は発表されていなかったんだよね。
でも違和感はほとんどなかった。
特に田村淳は……実際は本当に一言って感じではあるけれど、もっとしゃべってほしいと思うくらいだった。
この2人はSNSで注目を集めるインフルエンサーだし、田村淳は最近アニメを鑑賞していることも話題になった芸人だしね。映画を広めるプロモーションの一環としては、本職の3人や花澤香菜、そして田村淳・指原莉乃の起用も含めて、アニメオタクでも好感が持てながらもしっかりと多くの層にPRすることができる。
その面も含めて、自分が考える限りでは完璧だったと思う。
これで多くの人に届かなかったら……オリジナルアニメ映画は本当に集客が難しいって話になっちゃうかな」
映像演出について
印象的に使われたアイテムたち
次に映像演出だけれど、まずはアイテムの使い方がうまかったよね
走るシーンとかも、単純に見せない良さがあった
カエル「今作ではコーラ、自転車、花火、参考書などの多くのアイテムが印象に残る作品になっています。
特にコーラは鑑賞のお供にぜひ欲しくなるのではないでしょうか?」
主「『よりもい』の時の100万円だったり、あるいはパスポート『ノーゲーム ノーライフゼロ』の指輪もそうだけれど、このアイテムの使い方が良いんだよね。
今作でも自転車が冒頭で印象に残るけれど、町の山を登るのもヒーコラと大変なことで、ロウマが抱える鬱屈などが伝わるような描き方をしている。
だからこそ、中盤以降の滑走だったり、冒険が始まった時のワクワクした感覚がこちらにも伝わるようになっているんだよね」
『行ったことのないトンネルの向こう側』というのが、冒険の始まりを予感させるよね
↓
自転車で滑走
↓
歩いて山を登る
↓
アイルランドを徒歩で旅をする
この流れも作品やキャラクターを示している
主「つまり、ここだけでも人生や町に対する鬱屈さとかを表現しているわけだよね。
自転車というアイテムを使うことをやめて自分の足で歩くことは、物語の時間を制御すると同時に、彼らの道筋や心境……ゆっくりと進んでいく姿を示しているわけだ。そして自分の意志の強さがどんどん増していく。
山や海は人生のメタファーとして扱われることもあるけれど、今作なんかはまさしくそうなんじゃないかな」
カエル「ふむふむ……それでいうと、花火もまた魅力的だったね」
主「ここも使い方がうまかった」
町の参加できない花火大会 → 3人の置かれた状況
隅田川の花火大会を動画で見る → 都会(非日常)への憧れと眺めるしかない自分達
こういう形で、心境や立場も表現しているんだ
カエル「ただの事件である山火事を起こすためのアイテムではないんだね」
主「こういったように、いろいろなアイテムの使い方で彼らの日常や立場、心情を表現しようとしている。
単純にストーリーを追うだけではなくて、映像でもきちんと説明しているから、この辺りも着目すると、もっと面白いかもしれないね」
抑えられた色彩
公式ビジュアルブックによる座談会によると、今作って実はホラー映画かと思うくらいに色彩が抑えられているみたいだね
夜のシーンが多いというのもあるんだろうけれどね
この色彩が抑えられたことも、ポイントなのかな
主「はっきりとこの作品のアガるシーン……つまり、アイルランドのシーンだったり、あるいは自転車の滑走シーン、そして終盤のドロップの印象的なシーンなんかは、明確に彩度が挙げられている印象だ。
ここを美しく見せるために、少し暗めの配色にしたんじゃないかな。
それがロウマやトトが感じている鬱屈というものにマッチしていたのではないだろうか」
それから、色彩で言えばなんといっても写真だよね!
あの写真の色彩もハッとするほど美しかったものな
カエル「これって、学校の中で馴染めずにいたロウマに対して、周りに染まることにない色=小さな赤こそが主役になれる、という意味も込めていると思うんだよね。
その意味では、色彩でも色々と語ってくれる作品でもあって!」
主「この映画は感じるものがすごく多いけれど、それは単純に物語で語るだけではなくて、映像でもいろいろな要素で語っているからだろう。
他にも気づきを得る箇所がとても多いだろうから、是非とも探していきたいね」
背景・小物などの美術の良さ
やっぱり、今作は美術(背景、小物など)がとても印象に残るのではないでしょうか
キャラクターだけではなくて、世界を描こうという意志を強く感じるよね
カエル「近年は『君の名は。』などの新海誠作品もあり、わかりやすく美しい映像美が多くなっています。
今作も例えばアイスランドの風景だったり、空の深さだったり、小物類だったり、そういったものが美しく印象に残るのではないでしょうか」
主「それらはまさにロウマたちを取り巻く世界そのものだからね。
こういったアイテムや背景を美しく描くことによって、グッとくる要素がさらに増えるのだと思うよ」
物語について
チボリの正体
では、ここからは物語面について考えていきましょうか
まずは、不思議と印象に残るチボリについて考えていきましょう
カエル「結構大々的に花澤香菜がPRされているから、かなり出番があるのかな? と思ったら、びっくりするほど少なくて……
これほどヒロインが出てこない作品も珍しいんじゃないかな?
でもさ、あの感覚ってなんかわかる気がして……好きとまではいかない……いや、好きなんだけれど、でもそれ以上に何か異性に対して憧れを抱いてしまう感情ってさ」
主「チボリが一体何者だったのか、というのは……とてもいろいろな解釈ができるだろう。
もちろん好きだった初恋の人であるだろうけれど、それ以上の存在……それこそ、直接的な関わりはないけれどメンターみたいなものに近いのかもしれない。
あるいは目標……それから、特殊な相手だからこそ気になっているもの。
自分だったら……そうだなぁ”憧憬”と名づけるかな」
カエル「……憧憬」
主「そこそ憧れなんだけれどさ、それって単純に異性に対するものではないだよね。
この小さな町で異質でいられる勇気、そして自分とは明らかに違う視点、そういったものに対する憧憬。
それこそ、ロウマたちがアイスランドに抱く思いに近いもの。
そのなんでもできる憧憬の象徴こそがチボリだったのではないではないだろうか。
ここはいろいろな解釈が成り立つところだから、是非とも個人でいろいろな意味を考えてほしいよね」
間違いだらけの旅路
今作って、結局のところ何1つとして正解なことはないんだよね
面白いくらい3人が間違っていて、全部失敗から始まっているんだ
カエル「物語冒頭の……ドロップの人生が変わる出来事もそうだし、山火事も多分普通に町の花火が原因なのに、自分達のせいだとロウマが勘違いする。
ドローンを手に入れても飛行に失敗し、その中に証拠写真もなくて、道にも迷いまくって……何か1つでも、目論みどうりに進んだことってあったのかな?」
主「目論み通りに進んだことなんて、何もないのかもしれないね。
でもさ、だからこそ良い作品だと思うんだよ。
何もかも計算づくで、計画通りに進む物語も魅力的かもしれない。でも、遠回りをして、計画通りにいかず、ずっと間違える。だからこそ、手に入れるものがある。
『彼の地を目指し、彼の地にたどり着かず。されど宝に巡り合う』
そんな経験って、誰にしもあるものだよ。
正しいとか、合っているから行動するわけではない。間違っているから苦しいかもしれないけれど、それでも進み続けることで、想像もできないような宝物に出会うかもしれない。
そんなことを教えてくれる作品だよね」
魅力的な嘘
そしてラストの嘘がとても壮大だけれど、でも美しくて、すごく良いよねぇ!
ここでぎゅっと胸を掴まれたような気分になりました
カエル「実際、あれってすごく解釈が多様で……中には『意味がわからない』とか、『投げっぱなし』とか言われている感想なんかもあるけれど……でも、うちが年間ベスト級! って思ったのが、この嘘の美しさなんだよね」
主「『よりもい』の時もそうなんだけれど、映像作品の真髄って”映像に残らないものを捉えること”だと思うんだよ。
例えば感情とか、あるいは友情。
『よりもい』の時は時間だよね。12話の、誰もが泣くであろう名シーンがあるんだけれど……直接は言わないけれど、そこでは”止まっていた時間が動き出す”ということを可視化することができた。
今作もそれに似たようなものがある。
何を可視化したのかと言われると……”偶然”とか、あるいは”人生”とか。
それこそ”距離”とかだよね。
身体的な距離だけでなく、心の距離感というか。
それがとても美しくて、自分は好きだったなぁ」
大事なネタバレをぼかして語っています
人生の証を描くということ
ちょっと直接的にネタバレになるので言葉を濁しますが……実は、うちはいつもだったらある人物の顛末などに関してはあまり評価しません
明らかに御涙頂戴のケースも多いからね
主「それこそさ……いつもあの展開を見ると、作品としては名作中の名作だけれど黒澤明の『生きる』を見てこいよって思うんだよ」
そんな大名作を引き合いに出しちゃうんだ
いや、あの手の描写ではすごく大事でさ
主「『生きる』という作品が偉大なのは、志村喬演じる主人公が死んでいく様を描かないことなんだよね。
つまり1人の人間がいなくなることを、殊更強調しない。
その人間が何を成したかによって、人生を描いていく。
それがとても素晴らしいわけであって、そこに御涙頂戴は存在しないわけだよ」
カエル「それが今作とどう繋がるの?」
主「今作も同じだよね。
あの展開があるけれど、それが感動のピークになっていない。むしろ、そこは余計とばかりに見せない。
代わりに、それで彼らが変わっていったことを示していく。
その姿勢がとても好きだったし、自分は納得した。
これこそが映画がやるべきことだと思った。
最近はわかりやすいフックがあるものが好まれているけれど……まあ、これも今に始まったことではないけれどね。その気持ちもわかる。でもさ、そうじゃないところをしっかりと見てほしいんだよね。
だから、この作品を見て涙を流すとしても、それは悲しいものではないはずだから……そこは強烈なフックになるけれど、そうじゃないところをしっかりと見てほしいって気持ちが、とても強いかな」
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