それでは、日本でも大人気のアニメーション作品である『ダンボ』の実写化作品の感想記事といきましょう!
改めて見直したけれど、クオリティがやばい……今でも十分に通用する作品だよ
カエルくん(以下カエル)
「アニメオタクの視点からすると、そりゃ総天然色(カラー)でこれだけのクオリティのアニメを作り出せる国と戦争したところで、勝てるはずなんて一切ないよね……」
主
「しかも動きの1つ1つが本当に面白くて……子供の頃以来に観たけれど、今ならばどれほど恐ろしいことをしていたのか、よく分かる。
しかもディレクターズカットで約70分弱にまとまっているんだよね……そりゃ子供にも大人気な作品ですよ」
カエル「そんな誰もが知る日本でも大人気のアニメーション映画でありダンボを実写映画化したということで、どのような作品に仕上がっているのか?
早速感想記事をスタートさせていきましょう!」
作品紹介・あらすじ
1941年に製作された初期のディズニーを代表する名作『ダンボ』をティム・バートン監督が実写映画化した作品。脚本は『トランスフォーマー』シリーズや実写版の『ゴースト・イン・ザ・シェル』も手がけてたアーレン・クルーガーが担当する。
主演のサーカス団ではダンボの世話係をする軍隊帰りのホルト役にコリン・ファレル。ブランコのスター、コレット役にエバ・グリーンのほか、ホルトの娘役にニコ・パーカー、息子役にフィンリー・ホピンス、企業家の役にはマイケル・キートンなど多彩な顔ぶれが起用されている。
サーカス団が大きな投資をして購入した象。その世話係となった軍隊帰りのホルトは生まれたばかりの大きな耳を持つ子象であるダンボにサーカスの芸を仕込む。しかし、ダンボはそれがうまくいかず、からかわれたことに起こった母のジャンボは暴れてしまい、遠くに売られてしまい2頭は離れ離れとなることに。
ホルトの子供であるミリーとジョーはその子象が羽を吸い込むと空を飛べることを発見し、これが大きな話題となるのだが……
感想
それでは、Twitterの短評からスタートです!
#ダンボ
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2019年3月29日
これは…ダンボの実写化として大失敗じゃないかなぁ
原作の動きの魅力を無くしてしまった上に主人公交代、さらにはどうでもいい新キャラのドラマが大半を占める悪手の連続
これで満足すると本気でディズニーは考えたのか?
アニメを実写化する意義すら問われてしまう pic.twitter.com/t9P7qkDtXS
……まさかディズニーがこんな作品を生むとは思っていなかったかな
カエル「うちはディズニーに対してかなり厳しい部分はあるけれど……それでも素晴らしい作品を生み出す技術力などはずば抜けていて、今の映画スタジオでは間違いなく世界最高のスタジオだと語っていたけれど……正直それも揺らぐというか……」
主「自分の中ではディズニー基準というものがあって、ディズニー映画として普通ということは、世間一般の映画と比べたら佳作、あるいは良作だと思っている。つまり、1つレベルが違っているという評価なんだ。
だからこの作品は……ディズニー基準で言えば駄作に入るだろう。
ただ、一般の映画と比べたら決して特別劣るような作品ではない。
中には好きな人もいるだろうけれど、でもあのダンボの実写版と考えると、この映画に対して愕然としてくる部分もある」
カエル「……どうしても酷評になってしまうのかなぁ」
主「もちろん、ティム・バートンを起用した理由というのもわかるんだよ。彼は異形や世間から外れた人物を主人公とすることが多く、そのような人々に対する愛をもって映画を作っている。
その意味では耳の大きなダンボというのはゾウからは奇異の視線を向けられる存在であるし……ピンクの象のように、若干ホラー的とも思える演出が原作でもあるけれど、そのような演出だって評価されてきた監督だ。
だけれど……これはディズニーのポリコレを配慮した結果なのかは知らないけれど、この映画はティム・バートンの魅力も出ているとは思えなかった。
正直、誰も得をしない実写化だったんじゃないかな?」
アニメーション版の魅力
じゃあ、ディズニーのアニメーション版はどうなの?
こちらはとても魅力あふれた作品となっており、実写版とは真逆なんだ
カエル「アニメーション版の監督を務めたベン・シャープスティーンは他にも『ピノキオ』などの監督や『シンデレラ』などの総監督を務めており、このディズニー黄金時代を支えたレジェンドの1人でもあります。
そのアニメーション版の最大の魅力はどこにあるの?」
主「何と言っても動物などのアニメーションの持つ最大の力を発揮した”動き”の力だよ。
例えばスタートから少ししたところでサーカス団が移動するシーンがあるけれど、そこに乗り込む動物たちのコミカルな動き。またゾウであれば鼻の動きだけでも多くの快感のある動きを披露することができている。
さらに言えば……ダンボに対する他のゾウや人々の扱いには苛立ちもあるけれど、だけれどそこに理解者であるティモシーがいることによって、コメディとしても成立している」
カエル「さっきも言ったように”ピンクの象”のシーンとかは恐ろしくもあるけれど、現代では湯浅政明のような快感もあるよね。おどろおどろしくて、でも不思議な面白みがあって……」
主「あのあたりは『ファンタジア』の直後というのもあるんじゃないかな?
ファンタジアの場合は箒が勝手に動き出してとてつもないことになってしまうという、オートマティックの怖さを描いている部分もあったけれど、そのおどろおどろしくさを見事に発揮したシーンでもあった。
このような動きの魅力が一切なくなってしまった上に、ティモシーの存在がほぼなくなってしまったことにより、ダンボという作品の持つ面白さがなくなってしまったな」
アニメーション版が持つ大きな欠点
じゃあ、それだけ動きに魅力のある名作でありながらも、その欠点ってなんなの?
この作品は大きなスジがないんだよ
カエル「あー……確かにお母さんを探して空を飛びながら冒険する話かと思いきや、実は鎖に繋がれているだけで近くにはいるもんね」
主「サーカスのシーンをはじめとして、全編にわたってスラップスティックな快感が多いにある作品でもある。
ただし、それはあくまでも”アニメーションの動きを魅せる”というものであって、”物語としての完成度”でいうと決して高いとは言えない……そもそも、ダンボが空を飛ぶ有名なシーンは後半5分ほどであり、そこまでの物語はサーカスの日常を面白おかしく描くだけなんだ」
カエル「しかも、物語自体も60分と少ししかないわけだから、それを今作のように120分弱にしようとしたら……確かに尺があまりまくるような……」
主「そのかわりに、本作ではファリア一家を中心とした物語になったけれど、当然のようにアニメーション版ではでてこない。むしろ、出てくるのは座長とダンボと母親のみであり、しかもダンボはその役割からして主役とは言い難いものになってしまった。
そもそも空を飛ぶシーンが割と序盤に来ていることは、現代の映画の流れからしたら正解ではあるけれど……それにしても変更点があまりにも多すぎて、これをダンボと認めていいとは自分は思えなかった」
カエル「う〜ん……ということは、ダンボを実写化した時点で失敗だと?」
主「と、自分は思う。もちろん、ティム・バートンを起用した意図もわかるし、実写化するには合っている監督だけれど、その方向性を完全に間違えてしまった作品だね」
アニメーションを実写化する意味
でもさ、2019年だけでも『アラジン』や『ライオンキング』も実写化されるじゃない?
…そもそも、アニメーションを実写化する意味がよくわからんのよ
カエル「そこから突っ込むんだ」
主「だってさ、アニメーションの動きやミュージカルシーンが魅力の作品も多いわけじゃない?
ダンボに関しては動物の動き、あるいは機関車などの機械もアニメーション特有のコミカルな動きを見せている。ダンボ自身は一切喋らないで、その動きや表情だけで喜怒哀楽を表現しようとして、それに100パーセント成功している傑作である。
じゃあ、それを実写版にする意義って……どれだけあるのよ?
そのほとんどが劣化コピーになっているんじゃないの?」
カエル「『美女と野獣』のような大ヒット作品だってあるよ」
主「そうね。美女と野獣の豪華なセットや衣装は見応えがあった。そこは実写化する意義があったと言えるでしょう。
だけれど、それぐらいかなぁ……もちろん人間が演じる実写作品、例えば美女と野獣やアラジンだったら、その意義もわからないでもない。
だけれど、今作のように動物が魅力的に動き回る作品に関しては、明らかにアニメーションの方が娯楽性が上。
これは自分がアニメオタクだから、という可能性も否定はできないけれどさ」
カエル「じゃあ、3DCGのダンボも特別可愛かったですか? と言われると、それも微妙なのかなぁ」
主「アニメーション版の方が100倍は可愛いです。
動物を動かすことができないから、人間を動かしているのは明白だけれど……それに対して見事に失敗してしまっているし、それはダンボでは必要ありません。
ということで、自分は『アラジン』はともかく『ライオンキング』に対する恐怖心が一気に出てきてしまったかな」
ディズニーが描く悪役
そして今作もまたディズニーの悪癖が出てしまったね……
お前がそれを言うの? ってさ
カエル「少しネタバレになりますが、今作の悪役であるヴァンデバーは興行を成功させるためにダンボを引き入れようとして、サーカス団を騙すような行動をとります」
主「あれは明らかにディズニーだよね……ティム・バートンが狙ったとは思えないけれど、この作品で唯一価値があるとすれば、それはあの悪役を出したこと」
カエル「無理に悪役を出す話でもないんだけれどね」
主「あの悪役は、間違いなくディズニー社そのものですよ。
それまで多くの場所を移動してきたサーカスを固定化し、夢のある楽園にしようという計画をしているわけでしょ?
作っている形態こそ違うけれど、あれはディズニーランドだよね。
そしてダンボという客寄せのキャラクターが欲しくて、手に入れるためにサーカス団を買収し、その団員たちはリストラする……あれ、最近21世紀フォックスに対して同じようなことをした企業ってありませんでしたっけ?
X-MENなどの魅力的な版権などが欲しくて買収して、その結果すぐに社員のクビを切った企業が!」
カエル「……皮肉だよねぇ」
主「もちろん、それは企業としては正しいのかもしれないけれど、だけれどそれを悪党して描くということに対する厚顔無恥さ。
自分たちがやっていることと言っていることがの乖離に対して、何一つとして反省もないその様子。
あー、これが自分が大嫌いなディズニーですよ!
どうせ今の”多様性のある社会”というのも、売れるからそういうメッセージを発しているんじゃないの? と穿った嫌味の1つや2つも言ってやりたくなりますよ!
ちなみに、アニメーション版のダンボも時代性もありますが第二次世界大戦の戦意高揚アニメとしての側面だってありますから!
その時代時代に即したメッセージを発しているだけなんじゃないですかね!?」
カエル「……タイミングが本当に悪すぎるかなぁ。
誰もが狙ったわけではないけれど、映画業界屈指の大資本であるディズニーだからこその問題かもねぇ」
まとめ
では、この記事のまとめです
- アニメーション版の魅力を全て捨ててしまった印象の作品
- 実写化する意義が果たしてあったのだろうか?
- 映画公開のタイミングとディズニーのメッセージの噛み合わなさが……
最後に関しては個人的な思いもあるけれど、まあ特別いい作品ではないです