物語る亀

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物語愛好者の雑文

Netflix映画『ミッチェル家とマシンの反乱』ネタバレ感想&評価! 映像から革新と多様性への愚直なまでの信念が溢れ出る!

 

それでは、Netflixで配信されている『ミッチェル家とマシンの反乱』の感想記事になります!

 

 

 

やはり、今の時期は配信となってしまうかの

 

カエルくん(以下カエル)

「様々な映画が東京などの映画館が閉まってしまったことにより、公開延期となる中で配信業は注目度を増す一方だねぇ」

 

亀爺(以下亀)

「映画館と家庭の機器ではどうしても作品の味わいに違いが出てしまうからの」

 

カエル「まあ、僕なんかは楽でいいけれどね。映画館まで行かなくてもいいし、時間も合わせる必要もなかったし。

 主もいつも語っているけれど、このまま映画館は少しずつ寂れていって、配信文化がもっと盛り上がるんじゃないかな?」

 

亀「わしは映画館で観ることを大切にしたいがの。

 まあ、この状況では仕方があるまいが……しばらくしたら、ちゃんと映画館で観に行きたいの」

 

カエル「それでは、感想記事のスタートです!」

 

 

 

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www.youtube.com

 

 

 

 

感想

 

それでは、Twitterの短評からスタートです!

 

 

 

欠点のない、2021年でも屈指の作品になることは確定している作品じゃな!

 

カエル「コロナ禍もあって、アメリカ製のアニメーション映画もなかなか公開されづらくなってきて……もちろんディズニー・ピクサーは配信などでお目にかかる機会があるけれど、イルミネーションエンターテイメントの新作とか、次にいつ見れるんだろう? っていう状況でもあって……

 その中でNetflixで公開してくれた本作は、その高まった欲求にも応えてくれる、傑作だったね!

 

亀「わしは何も知らずに鑑賞したが、さすがはフィル・ロードとクリストファー・ミラーが製作に名を連ねているだけのことはあるの。巷では『スパイダーマン スパイダーバース』の製作チームの新作としても注目されているようじゃが……

 まあ、うちはそこまで評価しているわけではないが、今作に関しては絶賛の一言じゃな。

 ストーリー、テーマ、演出、映像、音楽、その他にも様々な要素が一体となっている。こういったアニメーションがアメリカから登場するのを待ち望んでおったし、まさしく”新しいアニメーション作品”になっておったな」

 

 

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”完璧”ではなく、”進化”を求めるアニメーション

 

そのアメリカのアニメーションに望んでいたもの、というのを簡単に語ると、どのようなものになるの?

 

完璧、ではなくて進化・あるいは革新という話になるかもしれんの

 

カエル「……なんか、抽象的な話だね」

 

亀「どうにもうちはディズニー作品とは相性が悪く……ピクサーはそこまででもないのじゃが、ディズニーのアニメーション作品は合わないことが多い。まあ、実写もそうなのじゃがな。

 例えば最新作の『ラーヤと龍の王国』に関しては、確かに映像美がすごい。迫力もあり、見応えもあるじゃろう。

 しかしの……わしは『スターウォーズ』シリーズをずっと見ているような気分になってしまった。つまり『これをやるならば実写でいいのでは?』と思ってしまったわけじゃな」

 

 

 

一見すると実写かアニメか区別がつかないほどリアルになったからこその、違和感なのかなぁ

 

むしろ近年は実写もCGが進み、もはやアニメーションと実写の境界線がどこにあるのかわからんからの

 

カエル「この間もTwitterでバズっていたけれど、今や役者さんが完成図を想像しながら、グリーンバックの前で演技する時代だもんね……

  それをCGで作った背景と合わせるならば、アニメとの明確な違いってどこにあるの? という話になるんじゃないかなぁ」

 

亀「より実写的になればなるほど、アニメーションならではの快楽性は失われていくような気がしてしまう。

 キャラクターの動き、背景の美術、小物類……そういったものが、人間に近づくほどに不気味の谷とはまた違う違和感が、の。

 しかし、今のCGの流れはそっちの、より写実的な方向に進んでおるように見える。

 だからこそ、ディズニーが目指すのは”完璧”じゃろう

 

カエル「ということは、一方でこの作品は”完璧ではない”と?」

 

亀「作品としての完成度だけでいえば、完璧に近い。

 しかし、わしはあえて違う言葉を選択したい。

 それは……進化・あるいは革新という話じゃ。

 本作……というよりもフィルロード&クリストファーミラーは、アニメーションの革新を次々と達成しておる

 

 

CGと手書き

 

そのアニメーションの革新って、簡単にいえばどういうところなの?

 

誰も見たことがないアニメーション、ということかの

 

カエル「確かに傑作である『LEGOムービー』なんかは、CGでレゴの質感や”作る面白さ”を追求したような作品だったよね」

 

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亀「近年のCGアニメーションの一部が”より緻密に、よりリアルに”という方向性に動いておった……いや、これはCGアニメーションだけではない。日本では京アニが顕著であるが、手書きで実写のような動きやリアルさを追求するというのが、それこそ高畑勲やら『人狼』などでもあったわけじゃな。

 その動き自体は全くおかしくないのだが……では、それがディズニークラスまで行き着いてしまった”その先”はどうなるのじゃろうか?

 

その先……ねぇ

 

アニメーションの面白さとはリアルであることではないはずじゃ

 

亀「これはわしもそうであるが……リアルであること=アニメーションの面白さ、ではない。

 そして手書きだ、CGだ、ストップモーションだと語るが、それらは手法の問題であるだけで、対立するわけではない。

 それを成し遂げたのが『スパイダーバース』でもあるわけで、あれはCGで様々な……カートゥーンや、コミックの質感を再現した。それらがスパイダーマンの歴史と重なり、マルチバースである理由にも重なったことで、大変な高評価を獲得したわけじゃな」

 

カエル「ふむふむ……」

 

亀「今作もそれは同じじゃ。

 キャラクターのルックスなどは、リアルなものではない。

 CGで作られたツルツルとした質感ではなく、むしろ、粘土で作られたクレイアニメーションのようなものになっているわけじゃな。

 他にも手書きアニメーションを活用したりと、様々なアニメーションの持ち味を追求しようとしている。そしてそれらを違和感なく、映像に込めようとしているわけじゃ。

 そしてそれが作品のテーマをより強固にする

 ……ここからが、今回の本題になるわけじゃな」

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

 

作品考察

 

本作のテーマ① ”完璧”ではなく”変人”を目指す

 

では、ここからはネタバレありで語っていきます

 

まず、本作のテーマ①は”完璧ではなく変人”という点じゃな

 

カエル「これがさっきまでの『ディズニーの目指す先は完璧』ということにも繋がるわけだね」

 

亀「わしがディズニー映画が苦手な理由も、そのハイアベレージすぎる完璧さにあるのじゃが……それは別の話じゃな。

 今作では何度もミッチェル家が『変人一家』であることを強調しているわけじゃな。

 お隣の完璧家族がいて、そことの対比もまた様々な意味を持つ。ここが有色人種の家系であり、変人家族が白人というのも現代的な描写で評価が上がるが、まあここの話はいいとしよう。

 この映画のテーマの1つが”画一的な完璧の否定”にあるわけじゃな

 

カエル「ふむふむ……つまり、ロボットのような画一的な同一品質の完璧性を否定したり、変な家族がいることでより豊かな社会が生まれると。

 つまり、多様性の話でもあるわけだね」

 

亀「うむ。

 素晴らしい品質のものであっても、同一なばかりになる危険性に警鐘を鳴らす。

 これも現代的な要素であるの。

 つまり、このテーマはそのままアニメーション業界の話にもなるわけじゃな」

 

”完璧”を志向するディズニーとの、差別化……

 

変わったアプローチを繰り返すことで、全く新しい作品を生み出しておる

 

カエル「ディズニーの超大作を支えるためには、その完璧性も大切だし、その方向性も大切だけれど……そっちだけでいったら、アニメーション業界が全部均一化したものになってしまうと……」

 

亀「アメリカアニメーション界が劣化ディズニーばかりになってしまう可能性もあるわけじゃが、そこに反旗を翻すわけじゃな。

 LEGOの質感であったり、コミックやカートゥンの質感、あるいは今作ではエフェクトなどを手書きのカートゥン調にしたり、の。

 素晴らしいのは敵であるパルのロボットたちは、CGっぽさを全開にしているわけじゃな。

 ここで

 

  • クレイ(ストップモーション)アニメのようなキャラクターたち
  • 手書きアニメのようなエフェクト
  • CGアニメ全開のロボットたち

 

 という構図が出来上がっておる。

 作品そのものがアニメーション表現の多様性に満ち溢れているわけじゃな」

 

カエル「なるほど……ヨーロッパとかのアートアニメーションほど先鋭的でもなく、今までのCGアニメーションとも違う……その半歩先の進化こそが、多様性を生みながらもエンタメ性を生み出しているんだね」

 

 

スモールフット(吹替版)

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同じように、多様性の重要性を説いた映画であればフィルロード&クリストファーミラーも関わった『スモールフット』を激推しします!

 

 

本作のテーマ② 古いものと新しいものを否定しない

 

次のテーマが”古いものと新しいものの対比”です

 

どちらが優劣で上、という話ではないわけじゃな

 

カエル「例えば物語だと

 

  • 新しい技術が大好きな姉・ケイティ
  • アナログ人間である父・リック

 

 という対比がなされているよね。

 それでいうと……大昔の存在である恐竜が大好きな弟、アーロンも、古いものが大好きということになるのかな。

 あ、でも最新の研究にも詳しかったから『古いけれど更新されていくもの』の象徴で恐竜なのかもしれないね」

 

亀「これはわしもやりがちであるが、”レトロVSハイテク”という構図が生まれやすい。

 昔ながらの職人芸と、最新のハイテク技術のどちらが優れているか……などの。

 これはアニメーションで言えば”手書き VS CG”みたいな話にもなるのかもしれんな」

 

カエル「特に、こういう作風だとその論争になりがちかもしれないね……」

 

亀「しかし、今作はそういったことをしないわけじゃな。

 レトロにもハイテクにも魅力はある。例えば敵であるロボットたちが、故障することによって重要な味方キャラクターとなるのもその1つじゃ。

 リックのオンボロな車がなければ、移動手段がなくどうにもならなかった」

 

それでいうと最新技術にもロバートソンのスクエアドライバーが必要と、ハイテクの中にも昔ながらのアイテムが使われていることもそうだよね

 

つまり、レトロとハイテクは両立できるわけじゃな

 

カエル「つまり、2つは対比するものではなく、共存できるものだと」

 

亀「うむ。

 実際、この作品がそうであろう。

 先にも述べたCG、手書きの魅力が内包しておる。

 また盛り上がるシーンでは『恋のマイアヒ』を使うことで、ひと昔の前の楽曲でも、物語を推進する力があることを証明しておる。

 そして父がパソコンなどを勉強することで、新しい一歩を進んでいけることを示唆しておる。

 ”進化とは旧来の技術を否定することではなく、それらも飲み込みながらも活かしていくこと”である。

 この辺りはわしも目から鱗が落ちる気分じゃったよ」

 

 

 

 

本作のテーマ③ "映像表現"の力強さ

 

そして、ある種最も感動したのがこの点でしょう!

 

この映画は”映像表現が世界を変える”ということを、愚直なまでに信じておる!

 

カエル「何が素晴らしいって、お父さんが残している家族のファミリームービーも、ケイティが作っている映画も同一の視点なんだよね。

 どちらが優れているとか、どちらが劣っているわけでもない

 

亀「ケイティが父の過去を知るシーンがあるが、ここでは説明されなくても、それを見ればどういう気持ちだったのかが100%伝わってくるの。

 そしてロボット達を倒すきっかけになったものの1つがケイティの映像であるが、ここでは犬のモンチを犬か豚か食パンか判別できない、というものがあった。

 つまり、決めなくてもいいということじゃな。

 この型にはまらない、曖昧な部分こそが、創作の魅力であり、パルのロボット達とは違う部分である」

 

EDのクレジットロールでは、実写を活用して、実際のスタッフの家族写真なんかを使っているもんね……

 

全体的に映像表現が世界を変えることを信じているんじゃな

 

亀「実際、映像表現に痺れたじゃろ?

 『恋のマイアヒ』場面では盛り上がり、家族が仲違いする描写では少し悲しくなり、時に父に、あるいは娘にイラッときて、ラストはホッコリしたじゃろう?

 ケイティと同じように映像を通じて世界は変わる。

 そしてそこにはレトロとハイテクという区別もなく、多様性がある社会になっている。

 それを100%信じている人々の映画に、仕上がっているわけじゃな

 

 

 

 

最後に

 

それでは、記事もここまでとなります!

 

これほどの作品だとは思わなかったの

 

カエル「やっぱり、配信からも素晴らしい作品は生まれているんだねぇ。

 僕なんかも”配信VS映画館上映”と考えがちだけれど、そうじゃないんだね!

 この2つの両立ができる時代も来るんじゃないの? ねえ、亀爺」

 

亀「それはそれ、これはこれ、じゃな。

 わしは映画館に拘りたいという気持ちがあるかの」

 

カエル「……もう、頑固なんだから!」

 

 

現実で勇者になれないぼくらは異世界の夢を見る

 

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