物語る亀

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物語愛好者の雑文

映画『るろうに剣心 最終章 The Final』ネタバレ感想&評価〜原作ファン納得! アクション&キャラクターの見せ場が詰まった”るろ剣の実写化”として成功作!〜

 

今回は『るろうに剣心 最終章 The Final』の感想記事になります!

 

 

 

 

邦画業界では、なかなかの注目大作ということになるかの

 

カエルくん(以下カエル)

僕もるろ剣大好きでさ!

 すごく楽しみにしていたタイトルです!」

 

亀爺(以下亀)

「もちろん、原作も全て読んでおるからの。

 さすがにアニメオリジナルエピソードを追いかけるほどではないが、一般的なるろ剣ファンくらいには知識はあると思うぞ」

 

カエル「……あぁ、思い出すなぁ。

 昔るろ剣にどハマりしていた頃、アンソロにも手を出してさ。中古本屋で大判コミックに手を出して、何も言わずに親カエルに買ってもらって、家に帰って読んだ時の衝撃……

 まさかの、行為がないBL本だったなんて……」

 

亀「そういう大きなお姉さんにも人気の作品ではあったからの」

 

カエル「ちなみに、左之助が人気のようでした。

 良くわかんないけれど、蒼紫×左之助が多かったような……今更ながら、この2人って原作でもほとんど絡みがないから、不思議な組み合わせだったなぁ。そうそう、大体左之助は受け側で……」

 

亀「さて、そろそろ本題に入るとするかの」

 

 

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『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』10周年記念特別映像

 


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感想

 

それでは、Twitterの短評からスタートです!

 

 

非常に満足度の高い作品じゃったな

 

カエル「元々、漫画原作の実写映画ってだけでも、否定的な意見ってどうしても湧きやすいところがあると思うけれど……るろ剣の場合は、その中でも成功作と言われがちじゃない?

 もちろん、その意見がおかしいというつもりは毛頭ないんだけれど、今作はその中でも、過去のるろ剣作品と比べても、完成度がとても高かったんじゃないかな?

 

亀「個人的な満足度は、とても高かったの。

 これに関しては、わしもるろ剣が好きで、原作コミックスは全巻何度も繰り返し読んだものじゃ。そんな個人の熱意や、あるいは過去の郷愁を思い返させると同時に、実写映画として満足する出来となっておった。

 漫画・アニメ→実写という翻訳は難しいところがあるものの、それが色々と制限されがちな大作なのにうまくいった稀有な例とも言えるのかもしれんな」

 

エンタメとしてものすごく良かったんじゃないかなぁ

 

るろうに剣心というタイトルの持つ”エンタメ”部分の総決算といえるじゃろう

 

カエル「今回の『The Final』は、まだ漫画原作の実写映画としては派手なキャラクターだし、必殺技のような超絶アクションも満載で、そして何よりもわかりやすく作っていたと思うんだよね。

 そういうアクション中心のるろうに剣心の魅力を、最大限発揮したのではないでしょうか?

 

亀「おそらく、次の『Beginning』 では、もっと古典的な時代劇にしてくるのではないじゃろうかの。

 その意味では、時代劇としてのるろうに剣心の総決算となるじゃろう。

 言葉を変えれば、こちらは少年漫画的、『Beginning』『るろうに剣心 追憶編』の実写かということもあり、より……写実的といったら実写作品ではおかしいかもしれんが、まあ、王道の時代劇風味になるのではないか」

 

 

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るろうに剣心の縁編を見事にリカバリーする作品に

 

これって意見が割れるだろうけれど……縁編って決して物語としてよくできている、うまいものではないという意見も多いよね……

 

週刊連載ゆえに仕方ない面はあるが、評価は別れるの

 

カエル「どうしてもるろうに剣心って京都編が有名で、志々雄真実との死闘ばかりがピックアップされがちだし、縁はそこまで大物感がないんだよね……」

 

亀「正直に言えば物語としても粗い。

 縁以外の仲間も……鯨波兵庫はわし個人の意見としては、まあキャラも立っており、理解ができる造形がされておったが……それ以外のメンツに関しては、少年漫画的とは思いつつも、十本刀に比べると格落ちのような印象もあったからの。

 最終決戦の四星などは、斉藤や左之助に見せ場を与えるためだけの雑魚に成り下がっておったしの。

 また縁の個人的な復讐、そのものは決して悪くないのじゃが……その見せ方があまり良くなくて、単なる小物に見えてしまっておる」

 

カエル「一部で目にするこの映画の批判点もさ、『それって、もうるろうに剣心の原作の欠点そのものだよ』って、言いたくなるものも多くて……映画ファンだと原作知らないで見にいくことも普通だから、余計に気にかかるんだろうけれど……

 正直、それってもう、縁編&るろうに剣心って物語自体に向いてないんじゃ……と思うこともしばしばあるかな

 

今作は原作を活かしながらも、うまく再構成したのではないかな

 

原作ファンとしては、かなり濃密な”るろ剣”のお話だったの

 

亀「まあ、そもそも言ってしまえば粗がないとは言わんよ。壮大なコスプレ大会じゃし、こんな奴は明治にはいないと思うのも事実じゃろう。また、原作がそこまで緻密な歴史考証をしているわけではないから、詳しい人が見たらツッコミどころ満載じゃろう。

 しかし、今作は実写映画である前に”るろ剣のお話”であるわけじゃ。

 そして、るろ剣の原作を蔑ろにしないというのが、とても重要なわけじゃな。

 その点においては、今作は愛を感じるし、とても高く評価されるべきなのではないかの

 

カエル「この辺りは難しいところだよね……

 例えどんなに傑作でも、るろ剣の名前で黒澤映画のようなものが出てきたら、それはそれで違うわけで……るろ剣の原作、あるいは追憶編のアニメのテイストを大事にしながらも、面白い物語を提示するということができているんじゃないかな。

 だからこそ、本作は”時代劇としての傑作”ではなくて、あくまでも”少年漫画原作の中での傑作”という位置付けになるんじゃないかなぁ」

 

 

 

役者について

 

それでは、役者について語っていきましょう!

 

こちらも基本的には称賛が続くの

 

カエル「なんといっても主演の佐藤健だよね!

 それまでのるろ剣ワールドでもわかるように、抜群の身体能力を発揮しているし!

 今作でも久々の……監督としては佐藤健が20代のうちに撮影したかったようだけれど、それも納得できるような映像表現で!

 今作最大の見どころである、アクション描写を支えたのは、間違いなく佐藤健の身体能力だよね。ワイヤーアクションとかも、吊られているとはあまり思わないようなものだったし!」

 

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亀「アクションに関しては、わしはいうことがないの。

 そもそもあまりアクションを見る目がないということもあるが、このド迫力に対して、邦画もここまで来たか、と大きな賞賛の声を与えたい。

 また、それ以外の役者も悪くなかった。特にわしの中ではそこまで高くなかった薫役の武井咲が、自身も子供が生まれたことも関係しているのかはわからんが、なるほど、と思うような存在感を発揮しておったように感じられた。

 しっかりと巴に対する薫という、大事なヒロインを演じておった印象じゃな

 

それでも今作のMVPは、誰が見ても縁役の新田真剣佑になるのではないでしょうか!

 

元々演技達者だとは思っておったが、今作ではアクションもできることを証明したの

 

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(C)和月伸宏/集英社 (C)2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会

 

カエル「原作でもそうなんだけれど、技の冴えは見事な剣心の最大の弱点は、その体格なんだよね。

 その点においては縁がとても圧倒していて……化け物じみたキャラクターを除いたら、師匠の次に体格がいいのが、縁なんじゃないかな?

 佐藤健が170センチに対して、新田真剣佑は176センチと実は言うほど身長も変わらないんだけれど……体格とか、筋肉量とかで圧倒する姿は、まさしく縁って感じだったね!

 

亀「元々空手の経験者であるし、アクション面でも、そこを意識しているようであったの。

 それまでは1対多数のアクションが多く、いわゆる無双ゲームのようなファンタジーを多く入れていたが、ここでは音楽も少なくし、生身の肉体がぶつかり合う様子を見せておった。

 また所作の1つ1つが縁らしさを出しておる。

 上着を脱ぐシーンなどは絶賛ではないかの

 

カエル「あくまでもるろ剣の”キャラクター演技”ではあるものの、その漫画原作のキャラクターを現実に存在させると言う意味でも、とても良かったね。

 全体的に満足度が高い演技だったのではないでしょうか!

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

 

 

作品考察

 

ファンタジーとなった時代劇

 

では、ここからはネタバレありで語っていきましょう!

 

まず大事なのは、すでに時代劇というのは半分ファンタジーになりかけていると言うことじゃな

 

カエル「え? 時代劇がファンタジー?」

 

亀「わしは最近落語が好きで聞いておるのじゃが……はてさて、江戸の風を感じさせる落語家が何人いるじゃろうな。

 柳家小三治などの名人などは、まだ江戸の風を感じるが……若手を中心に江戸時代を感じさせるものは、あまり多くない。これは仕方ないじゃろうな……何せ、語り手はもちろん、聞き手も江戸のことについて知る機会はほぼないじゃろう

 

カエル「もちろん、古典落語などを学べば知識としては知っているだろうけれど……もう体感で江戸を感じることって、川越のような一部の観光地とか、京都とか行けばまだあるのかもしれないけれど、日常生活ではほとんどなくなったよね。

 池波正太郎も『江戸の雰囲気がどんどんなくなっていく』と語っていて……これは昭和・平成・令和と経済成長や震災による立て直し、都市計画で大幅に街が作り直されているから、仕方ないのかもね」

 

どうしても時代の変化とともに、江戸の雰囲気を語る人も少なくなっているだろうし、江戸・明治はどんどん遠くなるのかなぁ

 

そのために、もはや時代劇は半分ファンタジーの領域となっておる

 

亀「そして、よりファンタジーらしさに拍車をかけるのが本作のような漫画原作実写作品じゃろう。

 もちろん、明治時代を知る人が見たらこの映画は失笑もんじゃろう。美術などは作り込んであるが、リアルな時代劇を見せるものではない。その中でも少しだけリアル寄りに……必殺技を叫ばないなどがあるが、まあ、その程度かもしれん。

 だからわしは、今作は実写で作られたアニメだとも思っておる」

 

カエル「……それはもはや、アニメの定義を壊していない?」

 

亀「もう、これだけCGが氾濫しており、さまざまな表現手段がある中で、アニメと実写を分ける必要があるのか? という問題に行き着くのかもしれんが……それはまた別の話じゃろう。

 今作は明らかに漫画的なエンタメを目指しておる。

 そしてそれは、るろうに剣心という物語を考えれば、至極当然の内容じゃ。

 本作を楽しむのであれば、この作品はファンタジーであるということを共有できるかどうか……そこにかかっているのではないかの」

 

 

 

原作のリカバリーの成功点

 

原作と改変した部分も目立つけれど、それに関しては概ね賛成なんだよね?

 

とても良くできていた部分と、ダメだった部分が重なっておるの

 

カエル「まず、とてもよかった点は以下の通りではないでしょうか。

 

  • 長い原作を2時間少しにまとめたこと
  • 明治の侍はどのように生きるべきか? と言うテーマを描けたこと
  • それぞれの見せ場を作れたこと

 

亀「まずはいくら追憶編の内容が『Beginning』に持っていったとはいえ、単行本では相当長い話になっておる。これを2時間にまとめるのは難しいが、本作はそれを描き切った。縁の話と、過去を説明しながら、の。

 特に終盤の流れは自然に盛り上がるようにできておった。原作より、はるかに良かったの。

 サプライズで登場した宗次郎も、元々原作では縁編で登場させようとしたが、結局できなかったと作者の和月先生は明かしておるから、そこをうまく拾い上げて、原作ファンには嬉しいサプライズだったの。

 また、これはるろうに剣心という実写シリーズを通して描かれているテーマであるが『明治という時代の移り変わりに、侍はどのように生きるべきか?』ということが描かれておる。剣心であれば、不殺の誓いを守り、生きるということじゃな」

 

カエル「このテーマに関しては1作目が顕著だったよね。

 野盗のようになる浪人たち、あるいは人斬りから脱せない鵜堂刃衛との対比で、剣心がどのように明治の時代を生きるのか、というテーマを描いていたよね。

 今作では過去と向き合い、最大の壁であり傷である縁と対立することで、新しい自分を生きるということができたんじゃないかな

 

亀「そして今作ではそれぞれのキャラクターの見せ場が、一応作れておる。

 原作ファンとしては弥彦の扱いがイマイチじゃが、漫画でも違和感があったのに実写でも活躍するとなると、より違和感が強くなるから、あの扱いは仕方ないじゃろう。

 左之助の勝利バトルシーンは欲しかったが、頑丈さこそが最大の武器でもある左之助の魅力は出せたのではないかの。

 蒼士も縁編ではそこまで活躍せんし……あの薫の展開がなければ、あのような扱いになるのは納得ではあるかの」

 

 

 

 

原作のリカバリーの失敗点

 

一方で、不満点としてはこのようになっています

 

  • 薫の死を描けなかったこと

 

わしとしてはこの1点が、ひっかかってしまったの

 

カエル「これは難しいよねぇ。

 少年漫画でヒロインが亡くなるという衝撃の展開があって……まあ、色々と伏線は貼っているし、すぐに撤回されるんだけれど、当時としてはネットもない時代だから、多分騒ぎになったんじゃないかなぁ。

 もちろん和月先生もその辺りの影響は考えていて、単行本ではすぐに薫は生きてますよ! というような形になるんだけれど……中には『るろ剣を読むのをやめました』という投書が来るくらいには、大きな出来事なんだよね」

 

亀「今回の実写版ではそこが描けなかったの。

 それがいいのか悪いのかと言われたら、わしは実写化に際しては妥当な選択だと思う。あの流れをやれば2時間ちょっとに収まらなくなるからの。また実写映画では薫がつれされた後に、ジーっと死体袋を開けるシーンで、緊張感があったのも事実じゃ。

 しかし、ここがなくなってしまうと……その後の剣心の行動が変になるんじゃな

 

カエル「原作だと

 

  • 薫の死亡→剣心の茫然自失→薫の生存発覚→剣心にはそれを教えない→剣心が周囲の助けもあり復活する

 

 という流れじゃない?

 ここで薫が生きていることを教えると、すぐに助けにいくだろうけれど、自分がいるからこそ巻き込まれてしまう人々がいることに心を痛め、薫を助けた直後にいなくなってしまう……だから自分の力で立ち上がるのを待つしかないって流れなんだよね。

 漫画を読んでいるときは、ちょっと疑問符もあったけれど……赤べこ、警察署、署長さん襲撃、そして町の崩壊……あれを見ると、剣心がそのまま神谷道場にいるのが、だいぶ違和感があるんだよねぇ

 

亀「キャラクター描写の難しさじゃな。

 わしは剣心の性格上、あの町の被害の描写を見てしまった以上、町を去るのがベストな選択に思えてしまった

 京都編は日本転覆の企みもあるために、100%剣心のせいではないが、縁に関しては100%剣心がきっかけで、周囲が巻き込まれてしまっておる。

 言葉は悪いが……縁が掴まるとはいえ、剣心がのうのう生活しておることが、納得できなかったとも言えるの

 

 

 

まとめ

 

最後に苦言となったけれど、それでもるろ剣ファンからしたら、十分な実写化だったのではないでしょうか?

 

漫画原作作品において、漫画の味を損なわない見事な実写化と言えるじゃろうな

 

カエル「それこそ、キャラクターや役者ファンも納得するだろうしね!」

 

亀「最近は”漫画原作作品は、より漫画・アニメ的な演出を心がける”という動きが出てきておる。例えば……『賭ケグルイ』などの英勉が、その代表例になるじゃろう。

 映画としてその方向を歓迎しない向きもあるじゃろうが、漫画の味わいを損なわずに映画化するのであれば、この方向性もまた、1つの可能性として考えるべきじゃろうな」

 

カエル「それこそジャンプ作品で女性に受けた作品の1つだし、イケメンパラダイスでもあるから、男女にも受ける幅広い作品ってのはあるのかな」

 

亀「そう考えると、ヒットするのもうなづけるものがあるの」

 

 

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