今回は日本でも歴史的大ヒットを記録したディズニーを代表するアニメーション映画『アナ雪2』の続編のお話です!
今作もアナ雪フィーバー再び! となるのだろうか?
カエルくん(以下カエル)
「冬の映画なのは間違い無いだろうけれど、11月から公開してこのまま冬休み(クリスマス&お正月)映画の目玉の1つになるのは間違い無いだろうね。『スターウォーズ』までは興行収入年内首位独走、場合によっては『スターウォーズ』を抑えて年内ずっと首位もありうるんじゃ無いかな?」
主
「まあ、12月は大注目アニメもたくさんあるから、一概には言えない部分もあるんだけれどね。
ちなみに今作は日米同時公開となっていますが、ディズニーのアニメーションでは『ファンタジア2000』に続く19年ぶり、2回目の出来事とのこと。やはりあの興行収入はそれだけの衝撃をアメリカ本国でも与えた作品ということなのだろうな」
カエル「ちなみに今回はいつも通り吹き替え版で鑑賞しています。
うちは選べる場合は吹き替え版を優先していることもありますが、特にアナ雪の場合は神田沙也加と松たか子の歌声も、ヒットの要因だからね。
もしかしたら字幕版を受けた印象も異なるかもしれませんが、そちらはご了承ください」
主「それでは、感想記事のスタート!」
作品紹介・あらすじ
日本でも歴代3位となる255億円の興行収入を記録したディズニーアニメーション映画『アナと雪の女王』の続編となる作品。
監督は前作に引き続きクリス・バックとジェニファー・リーが共同で監督を務め、リーは共同脚本も手掛けている。
日本語吹き替え版では松たか子、神田沙也加がエルサとアナを魅力的に演じるなど前作の同様のキャスト陣の他に、ピエール瀧に変わり武内駿輔がオラフの声を当てる。
氷や雪を自由自在に扱う力を持つエルサが女王になってから数年がすぎ、妹のアナたちと平穏な生活を送っていた。しかしエルサにしか聞こえない謎の声や、王国に多くの問題が発生してしまう。その謎を追うべくアナたちと冒険に出るエルサは、両親の過去に関わる大きな事件へと巻き込まれていく……
感想
では、Twitterの短評からスタートです!
#アナと雪の女王2
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2019年11月22日
吹き替え版鑑賞
薄い…全てが薄い………
女性解放運動の象徴であった前作に比べると王道でまとまっているものの全体的に小粒な印象
明らかに1よりパワーが減ったかなぁ…
ただオラフは武内くんに変わって可能性が増したかな
悪いとは言わないが良いとも言い難い1番感想に困るタイプ pic.twitter.com/yvFKweyKL1
これは……魅力は薄いと言わざるを得ないな……
カエル「前作があれだけ大ヒットしたこともあって、色々と難しい部分はあったと思うけれど……ダメな作品だったの?」
主「いやいや、そこはディズニークオリティ、貶すほどの作品では無い。
間違いないく平均以上のクオリティはあるし、劇場で観に行っても公開しないタイプの作品になっている。
だけれど……じゃあ1作目と比べたらどうですか? と問われると、非常に言葉に困る作品になってしまっている印象も受けたかな」
カエル「えっと……それはどういう部分が薄いの?
物語なのか、音楽なのか、演技なのか、映像なのか……まあ、映像はディズニーだからあり得ないだろうけれど……」
主「全部薄いかなぁ。
特に近年はピクサーが同じディズニー系列だけれど『リメンバーミー』や『トイ・ストーリー4』で圧倒的な映像表現をしてしまったから、ハードルが爆上がりなんですよ。今作が悪いとは全くいうつもりはない。むしろ、変わらず世界最高峰。
だけれど、毎回びっくりする映像美に慣れてしまった観客としては……あまり驚きがなくて、色々と思うところが多い作品になってしまっているかなぁ」
アナ雪1のテーマなどと比較して
何度も語っているけれど、アナ雪1がどのような作品だったのかを改めて説明しましょうか
紛れもなく女性解放運動の話であり、その象徴となる作品だよね
カエル「もちろん物語もそうですが、今作の共同監督を務めたジェニファー・リーはディズニーでは初の女性共同監督に就任し、アナ雪を完成させました。今作でも名アニメーターとして名高いクリス・バックと共同で監督をしています」
主「女性ヒロインの映画となるとどうしても恋愛メインになりがちな中で、男性に依存しないヒロイン像として誕生したのがアナ雪だ。
2013年(日本公開は2014年)だけれど、この辺りがディズニーやアメリカのエンタメ界の大きな転換点だったようにも感じられるんだよね。もちろん、それ以前にも恋愛に縛られないヒロイン像はあったのだろうけれどさ」
カエル「日本でも高い人気を誇った理由の1つとしてキャッチーな楽曲とともに、社会で戦う女性応援映画としての側面もよく言及されるよね」
主「ただし、では作品としてはどうなのか? と言われると……自分からするとかなり歪な物語でもある。というのは、元々はアンデルセンの童話の『雪の女王』をモチーフにしていたんだけれど、そこから大きく話を改変しているんだよね。どうだろう、もしかしたらロシアの名作アニメーションの『雪の女王』も意識したりしているのかな?
まあ、それはいいとして、いわゆる”魔女”つまり冷酷な雪の女王が消えてしまった」
雪の女王がエルサになっていて、ディズニー初のWヒロイン映画としても注目されたよね
その代わり物語が非常に荒くなってしまった
主「中盤までは明らかにエルサが悪党になる流れだったんだよ。
それこそ、あの有名な氷のお城を作るあたりまでは、そうならないとおかしいくらいの流れ。だけれど物語を大きく変えたことによって歪みが生まれた。
その結果割りを食ったのが男たちで……本来悪役になる必要がない人が悪役に”仕立てられた”という印象があったし、男女の恋愛を蔑ろにしているように受け取られる面があった。
ただし、だからこそ大ヒットを記録し、社会的にも重要な作品になったということもできる」
アナ雪2の歪みのなさがスケール感の小ささに?
だけれど、アナ雪2は違うの?
今作は物語としては、そういった歪みは少ないんだ
主「もちろん素人意見だけれどさ、物語としては特に違和感のない1本道だった。
元々の現代が『FROZEN』だけれど、氷に凍てついた状況……例えば社会や人の心を象徴しており、それを溶かすという意味もあるだろう。
その意味では今作は紛れもなく『FROZEN2』となっている。
物語も前回の違和感はなく、ラストのオチも……近年のディズニー系列の物語に関しては理念が先走りすぎて首を傾げるものもあるんだけれど、自分は一切と言っていいほど気にならなかった。
だけれど、それが物語の味には繋がってこない」
う〜ん……歪みがなくなってストレートになった分、味わいがなくなったってわがままな話にも聞こえるけれど……
物語の難しさだよねぇ
主「今作はミュージカル描写が売りだし、それももちろん多いんだけれど、そのために物語が逐一止まってしまうんだよね。だから『さっさと物語が進展しないかなぁ』と思うシーンも多かった。展開の流れに違和感はないんだけれど、全部予定調和のように見えるというか……前作ってデタラメなところもあったけれど、だからこそ面白い部分もあったんだな、って痛感した」
カエル「またさ、アナ雪ってアメリカで”エルサに女性の恋人を!”という同性愛応援キャンペーンみたいなものもあったことも、物語の幅を狭めてしまったのかなぁ」
主「あとは家族愛を描くうちに男性が蔑ろにされた部分もあって、その反省と思えるシーンもあったかなぁ。
まあ、悪くないんだけれどさ……物語がそうなるのはわかるんだけれど、ちょっと唐突で大人の事情が見えちゃった部分があったのが残念かな」
本作の”魅力的な”見方とは?
じゃあさ、結局この作品をどのように見ると楽しめるのかなぁ?
意外とバトルアニメとしてみると楽しめるのかもね
カエル「一部では戦闘描写などを注目している人もいるよね」
主「自分も観ている最中は『バトル漫画みたいだな』と思っていたのよ。予告にもあるけれど、エルサが炎を消すために冷気を出し続けるシーンは『ダイの大冒険』のポップとハドラーの名シーンを連想した」
カエル「分かる人には分かるネタということで、多くの人は聞き流してください」
主「自分なんかはディズニー映画ってメッセージ性の強さなどが目についてしまうんだけれど、今作はそこがあまりない。
その理由も後で考えてみるけれどさ、今作は王道といえば王道の冒険ファンタジーに仕上がっているわけだよ。
だから、もしかしたら『プリキュア』とかを観にいく感覚の方が近い気がしている。むしろ、ディズニープリンセスにここまで純粋な冒険をさせるということが、今作の特徴と言えるのかも。
今までのディズニーは理念が勝ちすぎている印象だったけれど、アニメとしては正常化したと自分は思っている。ただ、それが物語の面白さに繋がっているか? と言われると、そうなっていないのが残念なところだけれどさ」
吹き替え声優について
今回も実力派吹き替え声優が美声を響かせております!
もちろん、いい演技をされてましたよ
カエル「松たか子と神田沙也加についてはもう、文句もないんじゃない? 2人とも声優としての実績も評価も十分な方だし、安心して観ていられたよね」
主「ただなぁ……前作に比べると衝撃があまりなかったんだよね。
演技も決して悪くないんだけれど、こじんまりとしてしまっている印象を抱いかなぁ。
この辺りは楽曲の問題もあるから、なんとも言えない部分もあるんだけれどね」
カエル「そして……今回は諸事情によりオラフの声優が武内駿輔に変更されていますが、そちらはどうだった?
僕としては違和感が全くなかったと思うし、Twitterとかを見る限りでは評判もいいと思うけれど……」
主「日本語吹き替え版におけるオラフの可能性がさらに広がったと思うよ。
ディズニーは主要キャストを芸能人で固めていて、もちろん実力もあってさほど外しはしないんだけれど、今回は本職声優としての魅力……つまり演技の幅を見せ付ける結果となった。
イケメンボイスもできるし、一部シーンではあるキャラクターの物真似をしているんだけれどしっかりと特徴を掴んでいて、とても良かった。また歌手として楽曲を披露している声優だから、音楽面も問題なし。
オラフというキャラクターは、アナ雪におけるコメディ要因だろうけれど、今後はその役割をさらに幅広い演出プランと一緒に演じてくれるんじゃないかな?」
以下ネタバレあり
作品考察
本作の物語の弱さの原因①〜物語はどこに向かうのか?〜
では、ここからはネタバレありで語っていきましょう!
まずはなぜ物語が弱くなってしまったのか? ということについて考えようか
カエル「ここは”予定調和な印象を抱いた”と先には語っているよね?」
主「そもそも、物語の目的はなんなのか? というものだよ。不思議な声に導かれてエルサ達は冒険へと向かう。その理由が国の危機というのは、まあわからなくはない。
だけれど1においてはエルサの生きづらさや、もっと危機的な状況にあった国を救うためにアナが努力するという、スケールの大きなものだった。
一方で、今作はスタート時点から物語の目的が前作に比べると弱くなっている印象を抱いた」
カエル「う〜ん……この辺りは、もしかしたら共同脚本を務めているアリソン・シュローダーが脚本を務めた『プーと大人になった僕』などと、うちが合わなかったこともあるのかもね」
そして大きな問題は、すでに完成されたキャラクター達の物語なんだよ
主「今作のエルサにしろ、アナにしろ前作で完成し切っているわけだ。
それで物語をまた作り直すのは難しい部分がある。
自分は物語において1番成長するのが誰か? という見方をしている。例えば『ドラえもん』の主人公はドラえもんだけれど、成長するのはのび太くんなわけだ。だから真の主人公、主軸で描くのはのび太くんになるわけ。
それでいうと本作は……もちろん、全く成長しないわけではないけれどさ、成長度合いが小さくない?」
カエル「前作であれだけの大冒険をしてしまっているからねぇ。
今更1からリセットというわけにはいかないし……」
主「というわけで、カタルシスがなかなか得難い作品になってしまっている印象も抱いたかなぁ」
本作の物語の弱さの原因②〜ミュージカル映画の難しさ〜
そして次にあげるのが”ミュージカル映画の難しさ”という点とのことだけれど……
ここもいつも語るし、前述したけれど、ミュージカルは話が止まるんだよね……
カエル「ミュージカルパートは登場人物達の関係性の深化や、単純に観客の興味を引くことには向いているんだけれど、物語を進展させるのは難しい、という理論だよね」
主「もちろんうまくやっている作品もあるよ? でも、今作の場合は歌をいれる理由というものが思いつかなかった。ノルマのように感じてしまったのが痛かったかなぁ。
もうミュージカルはいいから、さっさと物語を進めろよ! と思ってしまった部分もある。
また、そのせいで描くべき描写がおざなりになってしまったのかなぁ」
カエル「例えば、最初の物語の根幹を説明する過去のパートなどはいいとして、その後のミュージカルの全てがないと物語が成立しないのか? という部分というのかなぁ」
主「あとは、今作の音楽で象徴的な楽曲がなかなか見当たらなかったというのもあるかもしれない。
重ねていうけれど、悪くないです。
ただ”悪くない”って言い方は褒め言葉ではないし、ディズニーには”これしかない!”というほどの絶賛させてくれるものが欲しかった。実際、前作ではそれができていたわけだからさ。
今作の場合、どの楽曲が中心になって報道されるんだろう? どれも弱いんじゃないかな?」
本作の物語の弱さの原因③〜前作が現代的すぎたため?〜
3つ目の要因は前作が現代的すぎたため、ということだけれど……
もうやることが思いつかなかったんじゃないかなぁ……
カエル「近年はハリウッドでも過去の名作をリブートする企画が目立ちますが、様々な要素を現代風に改変することで新たな魅力を作っている作品が多いです。簡単にいかに並べますと……」
- スターウォーズEP8→スカイウォーカー家の物語からの脱却
- グリード(ロッキーの続編)→白人のチャンピオンから黒人のチャンピオンへ
- ターミネーター→マッチョな男性像から女性の物語へ
主「他にも典型的なディズニーの作品……過去作の実写化だと2019年でも以下の通りだ」
- ダンボ→ラストが現代的な改変
- アラジン→ジャスミンの活躍を描き、女性の社会を描く
- トイ・ストーリー4→ウッディの現代的な選択
主「『トイ・ストーリー』はピクサーだけれどディズニー系列だからこの中に入れている。時代性というのもあるけれど、当時描いたことが現代では不適切なことというのはありうる。上記の作品は不適切とまでは言わないけれど、現代的なアプローチではない。
- 既存の場所や価値観からの脱却
- 男性主体から女性主体へ
- 白人中心から多様性重視の社会へ
という価値観をリメイク・リブートの際に発揮している。それが政治的な印象も抱くのだけれど、ポリコレ重視はヒットのためにも大事だから仕方ない部分もある」
じゃあ、アナ雪2の場合はどうなるの?
う〜ん……まあ、過去作の反省・否定という作り方は威力を発揮できないよな
主「アナ雪ってアメリカ公開は2013年と近年だけれど、現代の物語として最先端なものの1つなわけ。
だからこそ新しい現代の物語を作り上げるのは難しい一面もあるだろう。
ただし、一部では批判もあって……”男性蔑視”という声や同性愛や多様性の配慮が行きすぎてストレートの恋愛を蔑ろにしているのでは? という意見もあった。また”エルサに女性の恋人を!”という運動も始まってしまい、それが物語の幅を狭くしてしまった印象もある」
カエル「大々的に報道されたりすると、その案はちょっと採用しにくいとかもあるだろうしね……」
主「だから女性解放運動の側面は弱くして、トランプの壁などの政治性を入れているけれど、それも主題にはしないで物語を作った結果なのかなぁ……という印象かなぁ」
本作で連想した作品
あとは、この映画を観ている最中に連想した作品って何なの?
2つあるんだけれど、1つは『おおかみこどもの雨と雪』だな
カエル「ご存知の方も多いでしょう、日本有数のアニメ監督である細田守の代表作の1つである作品です」
主「結局さ、あのラストって『シュガーラッシュ 2』と同じようなものだと思うわけ。ただ『シュガーラッシュ 2』の場合はラルフが男だからなのか、かなり哀愁が漂う形になっているけれど今作の場合は両方女性だからなのか”それぞれの場所で輝く女性を!”というメッセージを発揮している。
で、自然の中で精霊(動物)とともに生きることを決めた姉と、人間界で恋人と共に生きることを決めた妹……姉妹の立場は逆だけれど、これは『おおかみこども』と全く一緒なわけじゃない」
カエル「結果的には、ってところもあるけれどね」
主「で、そこで注目したいのが原題である『FROZEN』ということでさ、前回は冷え切った心を救うというものと解釈できる。
では、今回は? というと、対立してできてしまった民族、あるいは国家の壁だよね。つまりトランプの壁の暗喩がダムとなり、それがああいうラストを迎えることでお互いの融和を描く。
同時に別々の場所でありながらも、社会で輝く女性を描くという目的も達成しているわけだ」
…
…ちなみにもう1つの作品は
昨年、絶賛した『スモールフット』だね
カエル「2018年の映画ランキングでも上位にランクインし、多くの人から高く評価を受けている作品だね」
主「テーマややっていることは実は同じような部分があるんだけれど、それをよりスマートに、わかりやすくしたのが『スモールフット』だと思う。だから、自分が今作を薄味に感じてしまったのは、この映画が好きで無意識に比べてしまったからかもしれない。
ただ何度もいうけれど全体的に悪くはない。
文句をたくさん言っているようだけれど、観にいきたいんだけれどオススメできる? と聞かれたら、万人に受ける内容だと思うよ、と答えるくらいには完成されている作品なんじゃないかなぁ」
まとめ
それでは、この記事のまとめです!
- 悪くはないけれど、いいとも言いづらい微妙な部分も……
- 前作の物語よりは歪さはなくなっているが、却って味も減ったのでは?
- 武内オラフは今後の発展性に期待大!
また続編を作るのかなぁ?
カエル「今作も大ヒットしたらアナ雪3も作るかもしれないけれど、ここからさらに物語を作るのは難しそうだねぇ」
主「う〜ん……もう短編路線でいい気がする。この話も長編でやる意義ってそこまであったかなぁ? と思ってしまったし。
悪くはないって免罪符のように何度も繰り返す作品になってしまったのは……意外な部分もあったかなぁ」