カエルくん(以下カエル)
「今月1番の注目作! ディズニーの最新作実写映画がここにきて登場だね!」
亀爺(以下亀)
「名作と名高い『美女と野獣』の実写化だからの、これは今月トップクラスの動員は約束されたようなものではないかの?」
カエル「亀爺は美女と野獣のアニメ版って見た事あるの?
僕はやっぱり『アラジン』とか『ライオンキング』の方が好きかなぁ……こう、気持ちが高ぶるよね!」
亀「……どちらも水気のない砂漠地帯のお話で、カエルと亀は干上がってしまいそうじゃな。
美女と野獣はわしも見た事あるぞ。20年以上前になるかもしれんが、孫と一緒に見ておったわい。やはりあの当時のディズニーは黄金期でもあっての、作られる作品のどれもが名作というほどのクオリティだったのを思い出すの」
カエル「……え? 亀爺って20年前に孫がいたの? 今何歳?」
亀「鶴は千年、亀万年というからの……自分の歳なんてとうの昔に忘れてしまったわい」
カエル「それってボケ……」
亀「それでは実写版の感想記事を始めるぞ。
ちなみに今回は日本語吹き替え版で鑑賞してきたのじゃが、こちらも素晴らしい出来じゃ。どちらで鑑賞するか迷っている時は、吹き替え版だと魅力半減ということはないということは頭に入れて欲しいの。
わしはこの吹き替え版のクオリティは字幕を超えておるのでは? と思ったほどじゃ」
カエル「それも後々に触れようかな」
1 ざっくりとした感想
カエル「じゃあ感想から始めるけれど……すっごく面白かったよね!」
亀「今作はミュージカル要素が非常に強いのじゃが、わしは『レ・ミゼラブル』クラスの傑作じゃと思ったの。向こうは長い原作を端折ってしまったせいで物語としては若干思うところもあるが、全体的には音楽、演者の力も相まって傑作と呼べるものになっておった。
今作は元々子供向けで2時間弱の作品を再構成したということで、特にテンポが速すぎたり遅すぎたりすることもなく、まとまっていた印象じゃな」
カエル「基本的には分かりやすい物語だからね。誰もがわかっていると思うからザックリと言っちゃうけれど、見た目も心も美しい美女と魔法で野獣にされてしまった王子が出会い、そして恋に落ちるという王道のラブストーリーで……誰もがわかりきっているお話に誰もが予想するラストにしっかりとなるというものだしね」
亀「よくこのブログで触れるのが『ミュージカルシーンは物語の停滞』という話じゃ。
ミュージカルというのは派手だし、音楽との融合という意味でも映画向きの演出なのじゃが、1つだけ大きな欠点があって……それが『物語の流れを阻害する』というものじゃ。登場人物の2人の関係性を深めたりするには向いておるが、物語を展開させることには向いておらん。
じゃからミュージカル映画というのはよほどうまく作らんと物語のテンポが速くなってしまったり、御都合主義のような説明不足に陥るものじゃが、本作はシンプルなストーリーとファンタジーな世界観でそれをうまく補っておる」
幸せな2人の生活を何よりも象徴するのがミュージカルシーン
100のセリフより説得力がある!
吹き替え版について
カエル「じゃあ吹き替え版について語るけれど、本作は当然エマ・ワトソンたちの演技や歌も素晴らしいのだろうけれど、日本語吹き替え版だって決して負けていないよね!」
本作のヒロイン、エマ・ワトソン
亀「今回は本職の声優ではなく、ミュージカル俳優が主体となっておるの。
まず主役のエマ・ワトソン演じるベルの吹き替えを担当するのが昆夏美であり……もしかしたら知らん人もいるかもしれんが、ミュージカル界のニュースターじゃの」
カエル「アニメが好きな人だったら『マジェスティックプリンス』という深夜のロボットアニメでOPを歌っていた人というとわかるかな? あとはアニメ版の『1週間フレンズ』のOPを歌っていた子で……
まだ25歳だけど、レ・ミゼラブルなどにも出演している、実力もあるミュージカル界の女優だよ!」
亀「声の伸びなどはやはり素晴らしくての。字幕版は鑑賞しておらんのでエマ・ワトソンの歌声はまだわからんが……EDは吹き替え版もベル役の歌を担当するアリアナ・グランテじゃったと思うが、わしは昆夏美の方が良かったのではないか? と思うほどじゃな」
カエル「まあ、元々発売されたCDを全て買うくらいにはファンだから贔屓目はあると思うけれど……これ以上の歌って相当難しいと思うんだよね。年齢もエマ・ワトソンと同じぐらいだし、ベル役には最適だったんじゃないかな?
もちろん演技の方も素晴らしかったよ!」
亀「一方の野獣の方は山崎育三郎が担当しておるが、歌声はさすがじゃったの」
カエル「う〜ん……でもさ、最初は野獣には合っていないかな? と思ったんだよね。
山崎育三郎って声がすごく誠実で、声を聞くだけでいい人なんだよなぁって思うんだけれど、初期の野獣ってあんまりいい人でもないんだよ。
だけど、最初はやっぱり声から優しさや誠実さが出ている人だから、そこは違和感があったかな? だけど後半は改心して、いい人のなってからはちゃんと役と合っていてよかったよ」
亀「他にも藤井隆や岩崎宏美などもよかったの。ED後の吹き替え版キャストを見て初めてわかったがの、それまで全く違和感がなかった」
以下ネタバレあり
2 疑問点はあるものの
カエル「……さて、ここまでは基本的に絶賛してきたけれど、でも、まあそこまで大絶賛だけではないというか……ちょっと気になる部分もあったかな? という印象で」
亀「すっごい細かいことを言えば納得できんこともそれなりにはあるんじゃよ。
例えば、お父さんが野獣に捕まり、代わりにベルが閉じ込められるわけじゃな。その時にお父さんは助けを呼びに帰るわけじゃが……その時、どうやって帰ったのかの?」
カエル「馬に乗って帰ったのかな? と思ったら、ベルが逃げ出した時には馬に乗っているんだよね。ということは徒歩で帰ったのかな? なんて悠長に思っていたんだけど……あの狼の群れの中で徒歩?」
亀「そうなると、村からあの城までの距離がよくわからんことになるんじゃよ。
お父さんがガストンを連れて村から城へ向かう際は、往復で5日間かかったようなことを言っておった。馬車で5日、しかも状況を考えれば悠長な旅ではなかったはずじゃが……そこを走って帰ったのかの?
それともグルグルと迷っていたとか?」
カエル「そして後半の民衆たちが城に向かうシーンだと、まるで1キロ2キロくらいの距離のように描かれていて……あれ? 距離感ってどうなっているんだろう? なんて思ったり。
あの狼は火を恐れて逃げたとしても、そのあたりのご都合は否めないかな?」
亀「そういった細かいことは『ファンタジーだから』の一言で片づくんじゃがな。
それから……本作の主題が『見た目は関係ない』でありながら、結局は美男、美女の物語というのも気にはなるかの。まあ、これは原作やアニメ版から続く疑問であるから、仕方ない部分も多々あるが……ちょっとだけ気にかかるポイントではあったの」
本作のMVPはこの2人でしょう!
圧巻の演技力で目を引いただけに、ガストンにちょっと感情移入しちゃうかも……
ガストンについて
カエル「そしてこれも思ったんだけど……ガストンってそんなに嫌な奴なのかな?」
亀「……どうにもわしはガストンが物語の都合上、悪役が必要だから悪役にされたようにしか見えなかったの。
最初の方ではガストンはむしろ良いやつでは? と思ったの。確かに色々と卑怯な真似はするし、デリカシーはないのじゃが……友人としてつるむと中々面白そうな奴じゃの」
カエル「人望があるのもなんとなくわかるんだよ。良くも悪くも単純だしさ、確かに途中からやり方は間違えるけれど、最初の方は結構良い奴だから、脚本の都合上悪役にされてしまった感もあるかな? 特にガストン役のルーク・エバンスと吉原光夫が圧巻の演技力もあって、この映画のMVPクラスの活躍だったし。
親友のル・フウとのデコボココンビっぷりも良かったし、むしろそっちに感情移入しちゃうくらいで……」
亀「この物語をガストン目線で見ると、現実的で辛い物語になってしまうかもしれんの」
カエル「どんなに人望があっても、戦争で頑張っても好きな女の子から『生理的に無理』って言われたらどうしようもないもんね……そりゃ、やり方は結構過激だけどさ、それもこれも愛するベルに振り向いて欲しい一心からの行動だと思うと、なんだかやりきれなくて……」
亀「ベルの愛があるのかないかの違いということなのじゃろうが、愛の形が違うだけで本気でガストンも恋をしていたからの。
愛深きゆえに愛を捨てた男……それがガストンなのかもしれんの」
カエル「いや、サウザーじゃあるまいし」
亀「それは冗談としても、本作は『野獣』をヒーロー役に添えることでお決まりの英雄物語とは180度違う物語を展開し、見た目などは関係ない、大事なのは心であるというメッセージを持っているのじゃが……ではガストンはどうすればよかったのか? という思いも残るの。
阿呆だから悪いのか、それとも性格がねじ曲がっているから悪いのか……というと、最初の時点では野獣とガストンも似たような性格じゃしな。性格が捻じ曲がったのも、どんなに思っても振り向いてくれない彼女を振り向かせたい一心であるし……
ガストンが過去の野獣(過去の王子)であり、その対比というのはわかるのじゃが、どうにもわしは釈然とはしなかったの」
3 母性の不在
カエル「今回はオリジナルとして、母親との関係なども追加されていたね。野獣もベルも母親を幼少の頃に亡くしているという共通点があって、野獣に関しては父親ともうまくいっていなかったということだけど……」
亀「ここも厳しいと思うの」
カエル「厳しい?」
亀「確かに野獣とベルの共通点は親を若くして亡くしており、その母性が不在ということじゃ。それを補完するかのように、ティーポットとカップの親子などは母と子供の理想的な関係を描いておる。
じゃがな、先ほども語ったようにミュージカルというのはそこまで多くの物語を語ることは出来ん。物語が停滞するからの。
その母親の不在、そして父親の違いが物語に決定的な面白みをもたらしているかというと……特にそれもない。あってもなくても大して変わらんような、そんな小さな海辺のように見えたかの」
カエル「う〜ん……ガストンと野獣の違いとしてこの両親のお話が出てくるのもわかるんだけれど、肝心のガストンの家庭環境が明かされないしねぇ」
亀「知識がたくさんあり、本の虫であることにも惹かれたようじゃが……それは王子という生まれであったり、親が裕福な教育な賜物じゃろ?
結局王子様の物語になってしまうことで、容姿は関係ないとか、純粋な中身や知性が大事という教訓すらも『結局は金持ちに生まれたからなんじゃないの?』と思わせる余地を与えてしまっているように思うんじゃがな」
忘れてはいけない家具たちも魅力的
彼らもまた、本作を彩る重要な役者たち
理想の王国へ
カエル「だけど、それだけ色々と物語としては穴があるんだけど、でもほとんど気になならないで『傑作だ!』と思うほどの作品に仕上がっているんだよね!」
亀「結局はおとぎ話を基にしたディズニー作品じゃからの。
正直な話、整合性やら何やらをどこまで求めておるのか? という問題に行き着くのかもしれんの。
それだけ音楽とミュージカル描写が圧倒的じゃ。何度も言うが、吹き替え版のキャストの演技と歌唱力も本当に素晴らしい!」
カエル「そういう細かい整合性を吹き飛ばすくらいの説得力を備えたしまった……まあ、言葉が悪く言うとハッタリとも言えるかもしれないけれど、そんな魅力に溢れている作品だね」
亀「メッセージ性も随所に見受けられるからの。
例えば三銃士が女装をさせられ『あなたも自由になっていいのよ』と言われて恍惚の表情をするのは、明らかにジェンダーフリーに配慮したからじゃ。
そして何よりも魔法の解けた食器たちが人間に戻った時、白人と黒人のカップルじゃったな。これもまた、人種などのを飛び越えた恋愛像、社会像こそが理想というディズニーおなじみのポリコレに満ちた物語になっておる」
カエル「そう考えると村の描写があれだけ閉鎖的で白人が多かったのって……」
亀「白人主導の社会、偏見に満ちた社会からの解放じゃな。
そして野獣の城を解放することによって、村人は偏見の社会から飛び出して理想の社会へと変化するというメッセージを含んでおる。まあ、いつものディズニーじゃの」
カエル「それはやっぱりトランプ騒動などがあるアメリカにとっては重要なテーマなんだろうね」
亀「……そこまでするのであれば初代の『キングコング』のように野獣を黒人の王子様にしてしまい、白人と黒人の恋愛を暗喩しているという風にしてもいいと思うがの。王子様のキャラクターがブレるというなら、結局あの世界に黒人の家臣がいる時点で世界観はある程度崩壊しておる。
そして家臣にアジア人やラテン系なども入れて、もっと『人種に配慮した理想郷』にすることもありじゃな」
カエル「……多分、そんな物語にしたら亀爺は『はいはい、いつものポリコレね。人種差別はダメ絶対、健全なメッセージですね、感激しましたわー』って棒読みでいうんでしょ?」
亀「そのメッセージは100%正しいのじゃが、毎度毎度ポリコレに配慮しまくったものを見せられても辛いものがあるからの。
本作ならば徹底的に白人のみにするか、もっと様々な人種を含めるかに偏った方がいいかもしれんの」
カエル「バランスという意味では今作はいいんだけどね」
最後に
カエル「色々言ったけれど、全体的には間違いなくお勧めできる良作であることは間違いないよ!
これだけ豪華なCGとかも日本ではお目にかかれないし、現代に復活した意義がある作品に仕上がっている!」
亀「……そのCGも若干文句があるんじゃがな」
カエル「えーー!? あれだけしっかりしていたのに!?」
亀「わしが見落としていたらすまないが、この映画の中では基本的に人間の演技のシーンとCGの家具が動くシーンというのは別々に撮られておるシーンが多かった。1カットの中で家具とベルが向き合って話す場面というのはあまりなかったように思うの。
この辺りもCGと人間が画面の中で別の存在として同居しておらず、浮いてしまって強いるように思ったかの」
カエル「う〜ん……そこまで気にする人ってそんなにいる?」
亀「おそらくいない。
じゃから本作は傑作に仕上がっているんじゃよ。細かい粗はあれども、そこに目が向かずに楽しめるようにできておる。それは映画、物語に重要なことじゃ。観客は『整合性がある物語』を見に来るのではなく『異世界の非日常』を見に来るんじゃからな」
カエル「……全体的に褒めたか褒めてないのかわからないけれど、面白い作品です! 是非音響のいい劇場で鑑賞を!」
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