カエルくん(以下カエル)
「ディズニーの新作映画が公開だね。
最近はアニメと実写、さらにはスターウォーズなど、すごくたくさんの作品を手がけているなぁ……」
亀爺(以下亀)
「それだけストーリーテラーとして、企業として優れているということじゃろうな。
あとミッキーなどの著作権が切れるのも、そこまで未来の話ということでもないから新しいスーパースターを作り上げようと必死になっておるのかもしれん。さすがに次もまた著作権法を延長なんてさせないじゃろうし」
カエル「でもこれだけ映画なり物語をつぎ込めて、しかもある程度以上のクオリティの作品を発表できる体力はすごいよね!」
亀「詳しくは感想に入ってから語るが、さすがはアメリカ大資本ということでもあるのかもしれんの。
しかも、誰が見ても『ディズニーらしい映画』に仕上がっており、それが安心して子供に見せられるクオリティを保っておるわけじゃからの。その意味でも驚異的の一言じゃな」
カエル「世界に通用する物語だしねぇ。思想色や宗教色も0ではないにしろ、そこまで発揮されないし、これだけ制限された中で物語を作れるというのは素晴らしいことだよ」
亀「それでは感想記事に入るかの」
あらすじ
幸せな生活を送っていた5歳のピート(オークス・フェグリー)の人生はある日、一変してしまった。家族旅行の帰り道、人通りの全くない道路から車が転落し、森の中へ落ちていってしまった。
暗い森の奥で1人きりにされたピートは森の奥で『秘密の友達』エリオットと出会う。
それから6年後のある日、森林伐採はそんな人里離れた森の奥まで続いていた。森の調査をする女性グレース(プライス・ダラス・ハワード)は森で生活するピートを発見する。それがきっかけでエリオットの存在も知れ渡ってしまい……
1 ネタバレなしの感想
カエル「じゃあ、まずはネタバレなしの感想だけど……面白かったよね」
亀「この時期に公開される子供向け映画として、中々高得点の作品だとは思うの。残虐な描写もないし、幸せな気持ちになれるし、家族の重要性もはっきりとわかるしの。
子供から大人まで、誰が見ても安心することができる映画に仕上がっておるの。
ただ、それが少しばかり仇になってしまった場面もあるが……」
カエル「仇になった場面?」
亀「結局のところ……優しすぎるという気もしたかの。
この映画はあらすじを読んでもわかるように、非常にシビアな状況が続いておる。5歳の子供が森の奥で1人放り出される、しかも両親は事故死しているわけじゃ。明確な死を表す描写は見せないが……誰がどう見てもそう察することができるようにできておる。
となると、そんな状況で生きるということは非常に辛い描写も多いはずじゃが……それが一切ないのが、リアリティに欠けるかの」
カエル「リアリティね……この映画でそこまで重要とも思えないけれど……」
亀「もちろん、多くの観客は『そういうものだ』というイメージで見に行く部分もあるじゃろう。特にこの作品を『ディズニーブランド』として見に行く層も多いしの。
もしかしたら、そういうことを語り出すのはこの映画ではあまり良くないのかもしれんが……どうしても気になる部分でもあったの」
CGのクオリティがすごい!
カエル「これはもう、ハリウッド映画だから特別語ることではないのかもしれないけれど、CGのクオリティの高さがすごく目立ったよね!」
亀「そうじゃの。
『秘密の友達』エリオットの正体が何なのかはネタバレなしのため少し言及を避けておくが、この造形を作り上げて、大きな違和感もなく画面に溶け込ませているのが面白いの。
少し設定にツッコミどころというか、思うところはあるんじゃが……それはまあ、いいとするかの」
カエル「細かいこと言い出すとキリがないしね」
亀「あとは森の描写が圧倒的に美しかったの。舞台となる森が美しく描けることで、ピートが送ってきた生活がいかに豊かなものだったか、それがどれほど幸福に包まれたものだったのか、しっかりと描けておったように思うの。
あとはあのお爺ちゃんの性格が最高じゃった!
ああいう大人がいると、子供は憧れるの……」
以下ネタバレあり
2 大人が鑑賞すると?
カエル「じゃあここからはネタバレありの感想だけど……」
亀「……う〜む……少し辛めの評価になるかもしれん」
カエル「え? さっきと言っていることが違くない?」
亀「いや、クリスマスシーズンに見る、子供向け映画としては評価をすると高得点ではある。みんな幸せになれるしの。
じゃが、これが大人が鑑賞すると、惜しい描写が非常に多い」
カエル「それは何? さっき語っていたように、もっと残虐だったり現実的な描写があったほうがいいってこと?」
亀「いや、そうではなく……それもないとはいえんよ?
例えば子供が狩りをして動物を食べる描写や、木の実をとる姿であったり、調理をする姿、水をどうやって飲むのかなど……そういう描写があればもっと良かったというのはあるが、それはこの作品の主題ではないじゃろう。
じゃがなぁ……ディズニーというとやはり『ズートピア』などの子供向け映画の大傑作も多くある中で、どうしてその脚本の良さが発揮されないのか? という気持ちもしてくるんじゃよ」
カエル「あっちはアニメだしねぇ……明確に比べることはできないでしょ?」
亀「そうかもしれんがの。それだけでも、工夫としてできそうなことはあると思うんじゃがな」
この映画のテーマって?
カエル「この映画のテーマ? それは『友達を思う心』とか『家族の大切さ』とかじゃないの?」
亀「もちろんそれもあるにはあるが……せっかくこれだけの『美しい森』と『ピートとエリオットの絆』という武器があるにもかかわらず、それがうまく発揮されなかったところが気になったかの」
カエル「どういうこと?」
亀「これは作り方の問題じゃが、ピートとエリオットは『森の住民の代表』なわけじゃ。いわば、森林伐採によって居場所を奪われてしまい、さらにその存在を知られてしまう、ある意味では被害者なわけじゃ。
一方のグレース達は森を守りたいとは願うものの、街で暮らす『都会の住民』なわけじゃ。もちろん、森林伐採を進めるギャヴィンなどとは立場が違うから、一概に悪や正義ということはできないんじゃが……
ここをうまく絡ませることで、もっと深いテーマができるように思ったの」
カエル「つまり森林伐採における環境破壊のメタファーってことね?」
亀「そうじゃの。さすがにピートに乱暴なことはできんが、空想上の動物でもあるエリオットに関しては、それなりに乱暴なこともできると思うし、実際やっておったからの。
ある意味では『平成狸合戦ぽんぽこ』と似たようなテーマを持つ映画になれたと思うのじゃが、そこが弱かったのが残念かの。
考えようによってはそういうことをせず、子供向けとして徹したことに意義があるのかもしれんが……」
3 構造の問題
カエル「でもそれをやると、この映画ってどんなラストにすればいいか難しいことになるよね?」
亀「この手の映画はどうしても構造的にもの悲しいものになってしまう。
この子供が森で生活することがいいとはいえんじゃろ? じゃが、森を出て街で生活するということは、それまでの生活や友達を捨てるということにもなる。しかも自分から決心するという形ではない。
それは物語の結末としては少し、もの悲しいものになってしまいがちじゃ」
カエル「でもさ、しょうがないよね。いくら映画だからといって、子供が森で暮らすことを許容すると『保護者は何をやっているだ!』って話になりがちだし」
亀「そうなるとこの映画の結末は仕方ないものじゃが……
それを先ほどの『森の住人』VS『街の住人』という図式を持ち込んでしまうと、さらにおかしなことになる。
つまりピートは『森を捨てて、街の住人になる』ということである意味では森林伐採を認めるような形になってしまうからの……
そう考えると、この映画のテーマがあまり深くしなかったのは仕方ないのかもしれん」
この映画はハッピーエンド?
カエル「この映画がハッピーエンドかと問われると……すっごく難しい問題かもねぇ」
亀「そうじゃの。ピートからしてみれば、この映画中において大きな決断を下すということは1度もなかった……というとさすがに言い過ぎかもしれんが、しかしその多くは流されてしまったものでもある。
例えば最初の森に住むのも事故のせいであり、ラストの選択も大人たちの事情であるわけじゃ。ピート自身が選択したわけではない」
カエル「まあねぇ……ピートは森に帰りたかったわけだし、11歳の少年が5歳から森で暮らすってことは、もう森の中の生活の方が普通になっているわけでさ……
途中で街で無茶苦茶なことをしてしまうという描写があったけれど、そういう一般常識みたいなことが一切ないわけじゃない? 子供ということを鑑みても、やっぱりその生活は過酷そのもので……」
亀「そう考えるとの……この映画というのは、ピートに選択の余地が全くない。
この後のことを想像しても、文字を覚えて、数字を覚えて……という一般生活が送れるかどうかは難しいところじゃ。まあ、あの爺ちゃんなどもおるから、人間関係はある程度築けるかもしれんが……」
カエル「映画として幸せとは言えないよね……」
最後に
カエル「でも基本的には良作だよね?」
亀「そうじゃの。この映画を観る価値もないとか、面白味のかけらもないとかいうことは一切ない。
子供を連れて行くとしたら、この映画も十分お勧めじゃ。今の時期なら『妖怪ウォッチ』や『モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ』などもいいがの。こちらは小さい子供でも楽しめる、さすがはディズニーという作品に仕上がっておる」
カエル「その意味では……少しだけもったいないって評価になるのかもね」
亀「色々と文句を言っているようじゃが、それもわしのような考察が大好きな大人じゃからの……それ以外の方は楽しめる映画になっておるぞ」
カエル「クリスマスっぽくていいよね」
亀「わしも孫と見に行ったが、ケラケラと笑っておったの」
カエル「……亀も映画を見るんだ……そしてそれが理解できるんだ……」
似たような作品でおすすめ絵本!
作者が宮部みゆきであり、こちらは少し物悲しい物語になっています!
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