亀爺(以下亀)
「ちょっとここで問題になりそうな記事をあげるのじゃな……」
ブログ主(以下主)
「本当は『サクラクエスト』か『放浪息子』かヴィルヌーヴ作品の感想記事を書こうかなぁ、と思っていたけれど、ちょっと興味深い話を見つけたので!」
亀「来週には『聲の形』のソフトも発売するからの」
主「その援護射撃だよね。まあ、援護になるのか背中から味方を撃つのかは怪しいところだけど!」
亀「難しい上に、様々な主張が入り混じる話題になるからの。いつも以上に言葉を選ばねば、大変なことになるかもしれん」
主「ただの個人ブロガーの戯言だけど……自分がよく語るのは『障害と物語の関係性』であって、今年入ってから鑑賞した映画の中で高評価するのは障害や病気の作品が多いというのもある。
自分は聲の形は障害者ポルノから脱却した名作だという評価をしているけれど、そうは思わない人もいるだろうし……そもそも7回も劇場に見に行って、さらにソフト発売記念でキャストによる舞台挨拶に行くくらいのファンだから悪く言えないということもあるけれどね!」
亀「それでは記事を始めようとするかの。
今回は様々な意見が上がると思うが、お手柔らかにお願いしたいところじゃな」
主「あと『聲の形』のDVD、BDが2017年5月17日に発売だからね! そちらもよろしくね!
それから丸の内ピカデリーで舞台挨拶もあるのでね!」
亀「……ここまでいくと回し者みたいじゃの」
1 今回の経緯
亀「では、今回なぜこのような話をすることになったのかという経緯を話すとするかの」
主「まあ、いつも通り適当にTwitterで遊んでいたんだけど、そこで興味深いTweetをを見つけたんだよね。
というわけで、今回はこの問題について考えてみようか。
でも、聲の形をきっかけとしてこのようなことが多くの人から意見が出てくるのはいいことだよね。これまで、そんな意見すらもなかなか出てこなかった……あっても見えてこなかったわけだし」
亀「まあ、見てこなかっただけかもしれんがの」
主「でも聲の形から障害に興味が出てくる人が増えるのはいいことだから! あと以前もこれに近い記事を書いていて、それと重複することも、もしかしたら矛盾することも出てくるけれど、それは心変わりしたいうことで! 人間は成長する生き物なんで!」
亀「……朝令暮改の人間じゃからな」
『障害=恋愛における欠点』なのか?
亀「そういえば以前に乙武洋匡が不倫をしておった時にも同じような記事を書いておったの。あの頃はまだ方向性が決まっていなかった時期でもあるが……」
主「その時にも書いたけれど、自分は乙武洋匡があれだけモテたことに対して違和感がまったくなかったんだよ。むしろ『そりゃそうでしょう』って思っていて、それは今でも変わらない。
何せ『五体不満足』という本を書いた上に、障害に負けることなく社会と戦っている人であって、いろいろなことに手を出したりと積極性がある。そういう人は間違いなくモテるよ」
亀「容姿なんて関係ない、とはよく聞く話ではあるが……」
主「個人的に言わせてもらえば障害があることや外見の問題ってもてに関しては些細なものだと思っている。『あばたもえくぼ』という言葉があるように、人の欠点が人の長所に見えることだってある。
石川智晶という歌手がいるけれど、この人の言葉で『モテたかったら人に嫌われなさい』と語っているのね。本人はラジオのその場しのぎだったらしけれど、これが結構的を得ている発言でさ。
1番ダメなのが八方美人であって、それが1番誰の印象にも残らない」
亀「酒のアブサンみたいな話じゃの。世界中の9割の人間が嫌うというほどにクセの強い酒じゃが、一度病みつきになると一生離れらないらしいの。癖の強さ、万人向けではないというのは確かに問題のように思えるが、それが人によっては強烈な味となることがある」
主「これって恋愛においても同じだと思って、なんで同性から見て全くいいと思えない、例えばリア充でウェーイな連中だったりとか、同じ女子から見て絶対見てありえない女の子がモテるのか?
その答えは『その欠点が魅力になる』からなんだよ」
優しいは美徳か?
亀「逆に『優しい』というのは美徳とされがちじゃが、果たして本当にそうなのか疑わしいところもあるの」
主「これもアニメ系のラジオパーソナリティの有名人、鷲崎健が言っていたけれど『優しいというのはただの属性』みたいな話がある。つまり、優しいというのはモテ要素ではなくて、単なる性格の傾向にすぎないという意見」
亀「これもよく聞くのが『私に対して優しい人がすき』という意見じゃの。大事なのは『誰にでも』優しいということではなく『私にだけ』優しい人、という意味じゃが……」
主「つまり、優しいという属性は万人受けするだろうけれど、それが恋愛における決定的な決め手になるとは限らない。もしかしたら『男と見られていない』とか『安全パイ』としか見られていない可能性もある……というか、その可能性の方が高いわけだ」
亀「『優しいだけの男はつまらない』というのもよく聞くの」
主「自分に言わせてもらえば、オタクって実はモテる武器をそれなりに持っていると思っていて……例えば好きなものに対する知識だったり、話のネタは多い。だけど対人コミュニケーションが苦手だから、その魅力をうまく使えない人が多い。
これって経験だと思うんだよ。誰だって最初の1回のハードルが高い。一人カラオケ、一人焼肉、それから告白だったり対人関係についても、1度その経験をするとハードルが下がる。
特に恋愛とか告白とかって成功体験がすごく重要で、1度成功するとハードルはガンと下がるからコミュニケーションもできるようになる」
亀「つまり、モテるのに1番重要なことは積極性であり、そして成功体験による自信や経験ということじゃの」
主「もちろん服や髪型のセットのような外見の問題もあるけれど……そこばかりが問題じゃない。自分の武器を見つけて、積極的に接することができるか、これがモテるかもてないかの基本的な部分だろう」
2 障害は欠点か?
亀「では、いよいよ本題に入っていくとするがの。ここまで『欠点は長所である』ということ、そして『モテるかどうかは積極性と成功体験による経験値である』ということを述べてきたわけじゃが、障害すらも欠点にならずに長所になるのかの?」
主「なるでしょ、間違いなく。
例えば中国にある纏足がその一例であり、足の形を後天的に奇形にすることによって美を強調している。中国人は『纏足の甘みは中国人にしかわからない』と言っているんだよ」
亀「じゃが、纏足は後天的な変化じゃろ?」
主「他にもこのような例は世界中にあって、例えば寺山修司が語っているんだけど……まあ、寺山の言葉をどこまで信用するかは別にしてさ、フランスだと四肢がない娼婦は一生食いっぱぐれないという話がある。
幻の手足、それが独特の美につながり、愛らしく思える」
亀「ミロのヴィーナスがなぜ彫刻として魅力的なのか? と言われると、それは両腕がないから、という意見もあるの」
主「実は欠損フェチって表に出るフェチズムではないんだろうけれど、決してありえないってわけではない。むしろ、より好ましいという人は少なからずいる。だからこそ乙武洋匡はあれだけモテたわけだ」
亀「相手が欠損フェチだとは限らんが、積極性があって母性をくすぐるようなタイプでもあったということじゃの。それから成功体験による経験の積み重ねもあった人であり、そして障害をうまく武器にしていたんじゃろう」
主「あとは自分が大好きな坂口安吾だけど、この人は『白痴』という名作を書いていることでもわかるように、軽度の知的障害を抱える人に惹かれる傾向があると語っている。幸せになるビジョンが見えないような人物にどうしようもなく惹かれるってね。
(風と光と二十歳の私 より)
他にもヤンデレとしか思えない女性を魅力的に描いた『夜長姫と耳男』などもあって、そういった思考回路などが普通の人と少し違うとされる人に美を見出したわけだ。
このように昔から障害を魅力的に思うという風潮はあるんだ」
物語と障害
亀「ではここで現代の、特にアニメにおける障害の描き方について語るとするかの」
主「最近でいうと多いのが『エヴァンゲリオン』における1話であって、そこで包帯にぐるぐるに巻かれた綾波レイが登場する。その瞬間に日本で包帯フェチが生まれた、と言う人もいる。
特にアニメ界でメジャーなのは『足が不自由な美少女』だ。車椅子に乗った女の子ってたくさん出てくるでしょ?
その例をキリがないほどいる。これはおそらく『足が不自由=保護欲をかきたてる』ということにあるのだろう。少しネガティブな語り方をすると相手を自由にすることができそうだ、ということもあるのかもしれないけれど……」
亀「障害の中でも車椅子の少女だけは少し特別かもしれんの。例えば車椅子の中にブースターや武器を持って戦う、などというトンデモナイ設定のものもある。
これだけ多くの作品に出ておるというのは、一般性がある障害ということもできるかもしれんの」
主「あとは王道の病気ものもそうで……『CLANNAD』などが代表作になる。自分はそんなに好きじゃないけれど……まあ、泣いたんだけどね!
病気の女の子、気弱な女の子というのはそれ自体が萌え要素でもある。
ここで重要なのは『先天的、後天的』ということではなくて、弱者であることが可愛いと思われるポイントだということだ」
3 先天的、後天的な障害の差があるか?
亀「ここで重要なのは『先天的、後天的』という部分かもしれんな」
主「だけど、これって人間にとってどうしようもないものないことでもあってさ。自分に言わせてもらえば『白馬に乗った王子様』というモチーフだって生まれながらのもの理想像じゃない? もちろん、現代にいるような理想像ではないけれど、顔や髪型、体型、体質、匂いなどを恋愛における評価基準にあげる人というのは非常に多い。
では顔や体型を恋愛の理想にあげるのはおかしいことだろうか? 決してそうじゃないでしょ?」
亀「その顔や体型といった身体的特徴の1つに障害もあるではないか? ということじゃの」
主「だけど、それは今は語ることをタブー視されている。
『君の障害を抱えている部分が好きだよ』というのは、自分からすると『デブなあなたが好き!』というデブ専だったり、ブス専、ハゲ専であることとそんなに変わらないと思うんだよね。
じゃあ、なんでそれを語ることが難しいのか? それは先天的、後天的という問題だとは思わない。
障害というのは配慮しなければいけないもの、コンプレックスであり、欠点であるという社会の目があるからだ」
亀「それは悪いことではないがの。弱者や差別を受けやすい人を大切にしよう、という発想から生まれたものじゃからな」
主「だからこそややこしい問題でもあってさ。多分『障害を可愛いというなんておかしい!』という人は、善意から発言しているはずなんだよ。障害を抱える人を守ろう、もっと配慮しようという考え方からスタートしている。
だけど、自分はそれが過保護すぎるように思っている」
障害が個性になる日
亀「お笑い芸人を見てもそれはわかるの。ハゲやデブはネタになるが、障害は絶対にネタにはできんし弄ることは許されない」
主「それもまた善意からくるものだけど……乙武洋匡は自虐的にそういうネタをやっているのね。
『手を伸ばした……あ、手がないや!』みたいなネタ。まあ、笑えないんだけど!」
亀「しかし、こういうことの1つ1つが重要なのかもしれんの」
主「自分が以前から語っているのが『ハゲネタ、デブネタと同じように障害をネタにする日が来るかもしれない』ということなんだよ。
そしてそれと同時に障害を抱える役者が普通に物語の主人公になり、ヒロインになり、親友や悪人、親、犯罪者、ヤクザ、警察官……そういった様々な分野で活躍するようになった時、本当に社会はバリアフリーを迎えるということ」
亀「そのために物語に何ができるのか? ということじゃの」
主「その1つの答えが『聲の形』であり『真白の恋』という邦画なんだよ。真白の恋は軽度の知的障害を描いた作品なんだけれど、こちらも美しい物語であり、自分は今年見た邦画の中ではトップクラスに評価している素晴らしい傑作で、小規模公開だから難しいかもしれないけれど、ぜひとも鑑賞してほしい映画だけど……
障害をごまかさない、しっかりと見つめている名作だよ。
この2作に共通しているのが『障害に向き合いながらも逃げない物語』である。もちろんある意味では恋の物語というのも同じ。
そして何よりも『障害を個性として扱い、それを乗り越えた先にある関係を描いたこと』が示されていた」
亀「では硝子みたいな子が彼女に欲しい、聴覚障害を抱える女の子を彼女にしたいというのは問題ないと?」
主「むしろ、それが普通になるのが自分の理想だよ。
デブな人がいい、ちょっとブサイクな子がいい、変わった子がいい、そういったことと同じように障害を抱える人が好き! と言える社会になったら、それが本当のバリアフリーの社会になるんじゃないかな?」
最後に
亀「というわけで、前回語ったことを語り直したような記事になったがの」
主「確かに障害について語ることを憚られるのもわかるんだよ。今の社会でもデリケートな問題だし。
自分は障害を抱えていないし、障害を抱えた人が身近にいない人間である。だから障害を抱えた人だったり、身近に抱えた人やそれで悩む人にとっては気に入らない発言かもしれない。
だけど、障害に全く縁のない人がこういうことを語るのも大事だと思うんだよね」
亀「荒れて欲しくないからの、本来はこのような話はしないほうがいいのかもしれんが……」
主「だけど、どうしても伝えたいことがあった。だからこの話を……おそらく3日もすれば肥やしになるような記事だけどさ。
でもこれがやっぱり伝えたいことなんだよね
亀「では、はっきりともう一度伝えるかの。この記事の結論じゃ」
主「聲の形のソフトは5月17日発売です! ぜひ下のリンクから買ってね!」
亀「そっちかい!」
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