物語る亀

ネタバレありの物語批評

映画『哭声 コクソン』感想と解説、考察 本作が描いた『カオス』の正体

カエルくん(以下カエル)

「今回は先週に引き続き、韓国映画のお話だね」

 

ブログ主(以下主)

「結構いろいろ考察などができるから、このブログ向きの題材だと思うよ」

 

カエル「主はこの映画の意味がわかるの? 結構謎の多いストーリーだと言われているけれど……」

主「なんとなくは納得いく説明はできるかなぁ……

 だけど多くの人が理解できないのもわかる。

 本作は日本人があまり知らない……というか知識としては知っていても、実感としてはあまり知らない韓国の事情を見事に切り取った映画でもあるんだよね。

 それから、日本から見た韓国の印象も……政治的、歴史的、感情的に色々複雑だから、それがまたいい感じに見えづらくなっていて……

 おそらく、この映画が描いたことを理解するのはは日本人が世界で一番難しいかもしれない。それは言い過ぎだとしても、多分西洋人の方が理解しやすい。

 その理由もこれから話していくよ」

 

カエル「じゃあ、この映画には明確な答えがあるの?

主「あるよ。

 決して混沌を描いた映画ではなくて……いや、その感想も間違ってはいないけれど、ちゃんと全ての理由がある。だけど、それが理解しづらいだけ」

カエル「最初に聞いておくけれど、この映画に近い映画って何? やっぱりエクソシストとか?」

主「……レヴェナント:蘇りし者

カエル「え? アジア映画でもホラーでもないレヴェナントなの!?」

主「さて、感想記事に行ってみようか」

 

注! 当然ですが個人の考察による解説であり、公式見解ではありませんのでご了承ください

 

(記事中の文字リンクをクリックすると該当作品の感想記事にアクセスできます)

 

 

 

 

 

 

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(C)2016 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION

 

 

1 ネタバレなしの感想

 

カエル「じゃあ、まずは解説などを抜きにして、感想からスタートしようか」

主「よく言われるけれど、最近の映倫の基準がよくわかんないよね。この映画もグロテスクだけど、それでも PG12すら付いていないんだから。

 『ミュージアム』の時も書いたけれど、これで全年齢向けはさすがに無理があるよ。ちょっと基準が知りたくなってきた」

 

カエル「結構グロテスクなシーンもあるし、血はたくさん出てきて画面が真っ赤に染まる時もあるし……韓国映画はエログロ描写が直接的な作品も多いけれど、この作品も結構すごかったよね

主「あんまりR指定とかを気にしないで見に行くんだけど、本作はさすがにR15かな? と思ったら全年齢向けだからびっくりした。そういう描写が苦手な人もいるからね。ちょっと……考えたほうがいいような気がする。

 しかもさ、サスペンス映画だと思ったら結構なホラー映画でもあって……もともとホラーが苦手な人間だから、そこもなんだかなぁ……って印象」

 

カエル「あんまり得意なジャンルじゃないよね」

主「だけどさ、本作のホラー描写ってなんか相性が悪いのか良いのかよくわからないけれど、結構笑えるんだよね。シリアスな場面なのに何かおかしい。ゲラゲラ笑っている自分がいるわけ。

 『呪怨』とかで『真っ白い顔した子供がいるんだよ! めっちゃ笑えるじゃん!』っていう人の気持ちが何もわからなかったけれど、今回よくわかった。確かに笑える」

 

カエル「多分、あまりにもリアリティが無さ過ぎてホラーとして機能していないんだろうね」

主「『実際にこんなことがあったら怖いなぁ……』というのがホラーだと思うけれど……つまり日常の延長線上にあったら怖ろしいことを魅せる、ということだけど、本作は韓国映画というのもあるのかあまりにもかけ離れすぎていて……日常と全く結びつかなかったから『何やってんだ?』ってなってギャップになったのかな?

『笑いの本質は緊張と緩和だ』なんて言われるけれど、それに近いものがあるかもね」

 

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間違いなく今作のMVP國村隼! なんでもやるお爺ちゃん!

(C)2016 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION

 

 

典型的『誤読』

 

カエル「最初に見終わった時にどのような感想を抱いたの?」

主「多くのブログとかで言及されていることと同じで『よくわからない』という印象。

 Twitterではこう発言している。

 

 

『釈然としないラスト』なんて言っちゃっている時点でね」

 

カエル「感想としてはそれは正しいけれど、おそらくこうであろうという監督の意図を読み取ることには失敗していると」

主「自分みたいな『批評』を生半可にでもやっている人間は映画の中の隠されたメッセージ、テーマを掘り起こすことが必要だけど、それが全くできていないという証明だからね。

 最初に見た時は『ひぐらしのなく頃に』だと思ったのよ。つまり個人の頭の中にある世界に縛られすぎて、非常に歪んだ世界に見えてくる人のお話。結局世界は個人の頭の中にある認識を超えないというね。

 それは大間違いではないけれど……もっと奥にすごいことが隠されている

カエル「ではそれをこれから解説していこうか」

 

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

2 本作の解説

 

カエル「じゃあ解説を始めるけれど……」

主「本作の答えって実は冒頭で示されているんだよ。最初に『ルカによる福音書 第24章』が出てくるでしょ? もう、ここではっきりとわかる。

 自分もこの映画の謎に気がついたのはここを読んでいたから。『この映画のすべてが冒頭に書かれているじゃん!』って」

 

web1.kcn.jp

 

主「ルカによる福音書はイエス・キリストの言動を描いたものの1つなんだよね。だから、この時点で『この映画はキリスト教が深く関わってきますよ』ということがわかる。

 だけど、意地悪なことに明確にキリスト教を代表するものはほとんど出てこない!

 神父はいるけれど、十字架などもでてこない。だからさ、まず『ルカによる福音書』についての基本的な知識を理解していないと、この映画は見誤ってしまう可能性が高い」

 

カエル「だから日本人が世界で一番難しいかも! なんて言ったんだ」

主「そうだよ。日本人って宗教的な知識に乏しくて、嫌悪感すら抱いている場合がある。世界的に常識的であるキリスト教のことも、宗教の意味もその教義も無知である人が多い。

 だけど当然のように西洋や外国では『信仰』というのは1つの大きな人生のテーマでもあって……直接的に『沈黙 -サイレンス-』のように描かれると理解できるんだけど、隠喩交じりになると途端に理解できなくなる。

 韓国は儒教社会だけど、実はキリスト教社会でもあるんだよね。

 これが日本人の実感のない韓国の姿、という意味」

 

カエル「これはしょうがないことでもあるけれどね」

主「自分が『レヴェンナント』に似ているといったのも同じ。

 あの映画ってサバイバル映画でも、実際に起きた事件を描いた映画じゃないよ!

 キリスト教信者にとって非常に重要な事を描いた、宗教映画だからね!

 それがわからないと、その映画のメッセージを見逃す事になる」

 

blog.monogatarukame.net

 

カエル「偉そうな事言っているけれど、このブログもテーマを誤読している作品もあると思うけれどね……」

 

 

 

モチーフについて

 

カエル「この映画の中では色々なものが出てきたけれど、それもキリスト教の考えを採用すると全てつながるの?」

主「つながるよ。

 例えば……本作の中で娘が魚を急にバリバリ食べ始めたじゃない。

『あれだけ嫌いな魚を……』なんてセリフ付きで。この描写の意味って単なる気味悪い行動、少女の変化だと思うし、エクソシスト的だと理解されるかもしれないけれど、とんでもない!

 魚ってキリスト教だと『イエス・キリスト』の象徴なんだよ。イクトゥスと呼ばれる魚の形をした模様が多くの遺跡などに残されている。

 だから、貪るように魚を食べるという行為は『キリストを求めている』という解釈が成り立つよね」

 

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イクトゥス

 

 

カエル「あれって単なる変化じゃないんだ……」

主「気味悪い描写がたくさん出てきたけれど、その1つ1つに意味がある。

 例えば死んだカラスだけど、カラスって日本でも八咫烏がいるように、神の使いでもあるんだよね。だからあそこで『神の使いが死んでいる』というのがすごく象徴的。

 他にも國村隼の家にろうそくがあったけれど、ろうそくは光としてキリスト教の祭場でも非常に重要なものとして扱われている。

 あとは羊はそのまま『迷える子羊』だし……その目線で見ると、ニワトリ、石を投げる女、神父、犬……そういった描写が全てに意味が生じてくる。偉そうに解説をしているけれど、自分もキリスト教に詳しいわけではないから、知っている人が見たら多くのもっと色々なモチーフを発見するだろうね

 

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案外いい親子。このシーンの前がちょっと面白い

(C)2016 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION

 

 

 

湿疹と血

 

カエル「え? でもさ……じゃああの発疹と鼻血にも意味はあるの?」

主「あれもうまいなぁ……って今ならすごく感心する。確かに異常に見えるかもしれないけれど……というか、異常なんだけどあれって聖痕なんだよ。

 たまにテレビとかで『何もしていないのに傷が浮かび上がってきた!』みたいな話があるでしょ? 自然に人が傷つくことってないはずなのに、負った記憶もない場所から傷跡が浮かぶ。それはキリストの痛みを共有したものという、奇跡の所業の1つなんだよ。

 だから、あの少女に発疹が出たのは何も不思議なことではなくて……むしろ、喜ばしいことでもある。祈祷師の鼻血が出たことも同じ」

 

カエル「それを問題視して科学的に治そうとすることって、そんなに意味がないの?」

主「ないよ。その対照的な事件が作中でもあって、雷に打たれたけれど生き延びた男がいたじゃない? だけど奥さんは『漢方薬のおかげで助かった』なんて言っているんだよね。

 これっておかしいよね? 科学的には漢方薬なんて雷に対して何の意味もない。科学的に考えるなら雨に濡れていたから地面にすぐ抜けたとか、少し離れた場所に雷が落ちたとか、そういうことを考えるべきなのに、奥さんは漢方薬のおかげにしている。

 これも1つの信仰だよね、間違った信仰。

 日本でいうと水素水。

 だけど、実際に効果があると信じているならしょうがないけれどさ」

 

カエル「それでいうとこの状況って……」

主「西洋的な科学、医学の価値観が必ずしもこの映画の中では正しいとは限らない、ということを示している。この映画にはそれすらも超えた、ある大きなルールがあるんだよ」

 

 

 

 

3 それぞれの役割

 

カエル「ここからはさらにお話の核心に触れていくけれど……やっぱり國村隼と祈祷師がグルで、謎の女のムミョンが真実を語っていたということなの?」

主「この映画を誤読しやすい、危険な見方だね……

 はっきりと言うけれど、3人ともシャーマンとして、司祭として超一流だよ。

 胡散臭いと思うかもしれないけれど、スピリチュアル的な意味では3人とも本物。だから嘘も言っていなければ、全員真実しか伝えていない。

 だけど、見方が全然違うからその言葉が行き違ってしまっている。ここもうまいよ」

 

カエル「そこの解説を始めるけれど、あの謎の女ってなんだったの?」

主「最初に主人公の警官に出会った時、石を投げていたでしょ? これだけで意味がわかる。

 つまり、ムミョンは実は『マグダラのマリア』である。イエスの弟子の1人であり、一説ではイエスの婚約者とも称される人だね。様々な説があるけれど、元々は罪の女、つまり娼婦であったがイエスと出会い改心したともされる女性でもある。だから美しく、そしてなんとも言えない妖しい魅力を漂わせていたんだろう」

 

カエル「え? じゃあ悪霊じゃないの?」

主「全然? 悪霊でもなんでもない」

カエル「じゃあ、あの祈祷師が嘘をついていた?」

主「いや? 祈祷師も本当のことを言っていたし、あの人は本当に高名で実力もある祈祷師だよ。

 ただ、彼が失敗したのにも大きな理由がある。それが國村隼だよ」

 

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本作において重要な祈祷師イルグァン。作中一イケメンでは?

(C)2016 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION

 

 

國村隼が演じた『役割』

 

カエル「あの人って結局なんだったの? やっぱり悪魔?

主「そう思うなら悪魔なんじゃないの?

カエル「……もう! 意地悪しないで教えてよ!」

 

主「だからルカの福音書に全て書かれているんだって。

 マグダラのマリアと一緒にいる、よく分からないけれど高名な祈祷師だよ? じゃあ、それっていったい誰かというと、ここまでなんども登場しているから勘のいい人あらわかるんじゃない?」

カエル「……え? もしかして……キリスト?

主「そうだよ。國村隼はキリストなの。

 先ほどのルカの福音書を引用すると……」

 

38,そこでイエスが言われた、「なぜおじ惑っているのか。どうして心に疑いを起すのか。

39,わたしの手や足を見なさい。まさしくわたしなのだ。さわって見なさい。霊には肉や骨はないが、あなたがたが見るとおり、わたしにはあるのだ」。

40[こう言って、手と足とをお見せになった。]

 

主「ほら、映画と全く一緒じゃない。こうやってルカの福音書には答えが書いてあるんだよ。ルカの福音書の第24章ってキリストが生き返る時のお話なんだけど、これならわかるでしょ?

 國村隼の手に聖痕があったじゃない。それが何よりの証拠。

 そう見ると、國村隼の発言の全てが理解できる」

 

 

 

 

4 國村隼の言動を追っていくと

 

主「例えば『どうせ信じないでしょう?』というのは弟子たちですらキリストの予言を信じなかったことに由来している。生き返るって言っているのに、弟子たちも誰も信じなかったんだよね

カエル「え? ちょっと待って……じゃあ主人公の警官たちって……」

主「それこそキリストを弾劾し、処刑したユダヤ人たちだよ。あの人がキリスト教徒なのかは分からないけれど、キリスト教徒ならまさしくユダだよね。だから『大地を真っ赤に染め上げて』あのようなことになる。これも聖書に書いてあるよ、ユダの最後って。

 しかも明らかに死んだはずの状態から生き返っているじゃない? あんなにボロボロでも生き延びて……それはキリストだからだよ」

 

カエル「あの犬のような描写は!?

主「犬って今でこそペットの愛玩動物だけど、当時は野犬とか狼が多いから敵とか汚らわしいものの象徴なんだよね。だから夢の中であれだけ國村隼が恐ろしい存在として描かれていた。その意味ではもしかしたら、ジョングもキリスト教徒なのかもね。

 だけど國村隼は犬も飼っていて、当時の汚らわしいものにすら愛を注ぐということが示されているんじゃないかな?」

 

カエル「そう考えると日本語を唯一喋れるのも神父というのも……」

主「象徴的だよね。神について学んだものだから神の子の言葉が理解できるという意味があるんだろう」

 

カエル「へぇ! 本当に宗教的なテーマに溢れているんだね!」

主「あれだけ差別的な態度を取られるのも全てキリストだからだと思えばつながってくるでしょ?」

 

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この対峙はキリストとユダヤ人の対立でもある。

中央の柱がその壁を表している?

(C)2016 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION

 

 

3人の女達〜あの事件はなんだったのか?
 

カエル「じゃあ、あの事件って一体なんなの!?

主「審判の時が訪れたんだよ。

 

 

 多くの人に疑問を頂戴したので、審判の時について書いた『ヨハネの福音書』から少し引用すると、このようなことが書かれている。

 

『5:25まことに、まことに、あなたがたに告げます。死人が神の子の声を聞く時が来ます。今がその時です。そして、聞く者は生きるのです。
 5:26それは、父がご自分のうちにいのちを持っておられるように、子にも、自分のうちにいのちを持つようにしてくださったからです。
 5:27また、父はさばきを行なう権を子に与えられました。子は人の子だからです。
 5:28このことに驚いてはなりません。墓の中にいる者がみな、子の声を聞いて出て来る時が来ます。
 5:29善を行なった者は、よみがえっていのちを受け、悪を行なった者は、よみがえってさばきを受けるのです。
 5:30わたしは、自分からは何事も行なうことができません。ただ聞くとおりにさばくのです。そして、わたしのさばきは正しいのです。わたし自身の望むことを求めず、わたしを遣わした方のみこころを求めるからです。』
 

 参照 

 新改訳聖書 - ヨハネの福音書

 この第5章はこの作品の多くのテーマを語っている章でもあると個人的には思う」

 

カエル「これってどういうこと?」

主「簡単にいうとあの事件は『審判の時』だったわけ。
 この描写をどう捉えるかは難しいけれど……正しい行いをしたものは死からも解放される、それがあの『死者の復活』だったのかな?
 だけど、あの場面ではまるで地獄のように描かれている。本作が秀逸なのは1つ1つの描写がどのようにも受け取れることだけど、本作はキリスト教に関することを……例えば先に挙げた聖痕などもまるで悪いことのように描いている。
 おそらく『信仰のない者には救済も地獄に見える』ということを示したんじゃないかな?」
カエル「つまり、キリストを信じる者はキリストによる救済がある。だけど信じない人間にも平等に審判の時は訪れて、キリスト教徒には神聖な儀式だけど、不信心な人にはただの地獄でしかないってことなのかもね。
 そう考えると最後の審判という儀式の意味とも合致する気がするなぁ」 

 

主「そう。簡単に言うとキリストを信じないから地獄に次々と落ち始めたんだよ。最初に襲ったとされる女も発疹が出たとされるけれど、先ほどのルカの福音書では『3人の女がキリストの墓へ向かった』とされている。

 その3人がマグダラのマリア、ヨハンナ、ヤコブの母のマリヤなんだけれど、おそらくムミョンと少女と主婦の3人は生き返るところを目撃したのではないか? 

 マリアである謎の女のムミョンはおそらく家族がいないか、近しい人物が否定しなかったのかキリストを信じた。

 だけどジョングの娘や奥さんは家族に否定され、さらにキリストの洗礼を受けたのにも関わらず、他の宗教の儀礼を受けさせられたからあのような犯行を起こすしかなかった

 

カエル「そう考えると警察署に現れた時も……」

主「あれは恐ろしいように描いているけれど、多分そうじゃなくて『あなたは信じてあげてね?』というメッセージだと思う。

 だけどそのメッセージは届かない上に、祈祷師を呼んでしまう。

 あの祈祷師は本物なんだよ。だからこそ悪かった。

 キリスト相手に『殺』とかさ、そんなの絶対ダメな行為なのはどの宗教の人にでもわかるでしょ? 相手は神の子なんだから。

 だけどキリストは必ず受けちゃうんだよ! 『右の頬を打たれたら左の頬を……』の人だからね。処刑もされちゃうし……まあ、復活するからいいのかもしれないけれどさ」

カエル「そんなキリストをマリオみたいに……」

 

 

 

5 この映画についてまとめると

 

カエル「じゃあ、まとめると以下のようになるわけだ」

 

ジョング(主人公)……ユダヤ人、もしくはキリストを信じないもの(ユダ?)

國村隼……キリスト

ムミョン……マグダラのマリア、キリストの高弟、婚約者

祈祷師……ユダヤ教の司祭、もしくは別の神を信仰する者(異端者)

ジョングの娘……キリストの弟子、洗礼を受けた?

事件……おそらく終末の時

 

 

主「こうやってみると結構わかりやすい話じゃない? だけど、そのヒントをあんまり出さないからこそ、映画として深みを持たせつつも伝わりづらいものになるというね……」

 

 

やり取りについて

 

カエル「じゃあ、あのラストのやりとりってなんだったの?

主「まずは祈祷師は『死者=悪霊』という過ちがあった。キリストは復活したけれど悪霊でもなんでもないんだからね。

 それを看破していたのはキリスト教の司祭だけで、あの人は『山の上の人に対しては何もしない』と言っている。キリストだとは思っていないけれど、だからと言って何もしないという、標準的キリスト教徒の役割だよね。

 そしてジョングがムミョンの前にやってくる。あれは『ユダ、ないしは無信心者とマグダラのマリアの会合』なんだよ」

 

カエル「じゃあムミョンも國村隼も本気で救おうと?」

主「していたよ。

 ニワトリが3回鳴くと……って言ったでしょ?

 イエスを追っていた人にペテロが『キリストなんか知らない!』と言って、3回ニワトリが鳴いた瞬間に予言通りに裏切ってしまったと気が付き、涙を流すというエピソードがある。

 つまりニワトリには『罪の警告と後悔』という意味がある。だからムミョンはあれだけ止めたんだよ。

 ちなみに3という数字もキリスト教では神聖な数字で、父と子と聖霊(三位一体)といういう意味になる。だからあの甥の名前に3が使われていたんだ」

 

カエル「あの場面では帰らない方が正解だったの?」

主「おそらくは。だけどやっぱり帰っちゃうんだよ。信じないんだよ。

 だから地獄に落ちることになる。本当に救おうとしていたし、弟子を守りたかったけれど……結局はそれもすべてダメになる」

カエル「じゃあ國村隼と甥の会話も……」

主「あれは本当に象徴的な場面で、キリスト教の司祭ですらキリストを信じていない。もしくは死者からの復活を信じていない。しかも、それを悪魔と言ってしまう。

 そんなことを言われたら、キリストだって『あなたが悪魔だと思うならそうなのでは?』と言うしかないでしょう」

 

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恐ろしい光景のようだが『光』に包まれた儀式の1場面

(C)2016 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION

 

日本人の起用について

 

カエル「なんでこの映画に日本人を起用したんだろうね?」

主「それがこの映画のうまいところでもあって……國村隼だったのは偶然かもしれないけれど……韓国まで行って、あんな褌一丁になる役者なんてそうそういないからね。本当になんでもやるお爺ちゃんだなぁって賞賛する。

 まあ『コクソン』が『國村(音読みでコクソン)』になったのは偶然だとしても、日本人を起用したのは意図を感じる」

 

カエル「やっぱり政治的、心情的対立から?

主「そうだろうね。この映画ってなんだかんだ言っても『韓国から見た日本』という意識がないと理解しづらいことがある。これが同じ韓国人だったとしたら……もしくはアメリカ人とかだとしたら、このような映画にならない。

 歴史的にも複雑な事情を持つ日本人がキリストを演じたことによって、この映画は特長的な映画になった。つまり、キリストの時代のユダヤ人社会や、別の宗教を信仰している中でもキリストの姿というのは、やはり韓国から見た日本人に対する思いに近いものがあったのではないのだろうか? ということ。

 キリストは言ったでしょ?

『汝、隣人を愛せ』って。韓国からしたら日本も隣人だよね」

 

カエル「すっごいリスペクトだよね。日本で韓国人をキリストのように扱ったら非難が出るんじゃない?」

主「だからこの映画を見て『反日的だ!』って意見があったとしたら、それは完全に誤読している。

 この映画は日本をすごくリスペクトしている。だけどそれを韓国社会から見ても悟られないためか、相当わかりにくくしているけれど……

 そして、この映画を見て『面白い!』と思ったら、その『汝隣人を愛せ』の精神を日本人も韓国人に示す必要がある。このキナ臭い政治情勢下で製作され、公開されたことの意義が非常に大きい、社会派の映画だよね」

 

 

 

 

最後に

 

カエル「結構深い意図があるんだねぇ……」

主「この映画の面白いところは、みんな『幻覚きのこ』は信じるのに、キリストとか悪霊だと信じないでしょ? 何を信じるか選択する必要性があるのは科学も同じなんだよ。それこそマイナスイオン、水素水のようにね」

カエル「その『信じるもの』について描いた映画なんだ……」

 

主「たださ、1つだけどうしても解せないことがあって……」

カエル「お! 映画批判だ!」

主「だから前回の『お嬢さん』でも語ったけれど、春画は芸術性の極めて高い、技術の粋を極めたものなんだよ! 単なるエロ本当違うの!

 そりゃキリスト教圏のお堅い頭では理解できないかもしれないけれど、立派な芸術であり素晴らしい作品たちであることは、声を大にして伝えたい!

 

カエル「……なんだか映画と関係ないよね?」

主「すっごい大事だから! そこだけは日本の文化を馬鹿にしている!」

カエル「あ、でもそれを言ったのはジョングだからね」

主「む……確かにそうか。

 じゃあ仕方ないか、ジョングには理解できないか……」

カエル「……すっごい単純な人でよかった」

 

 

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