カエルくん(以下カエル)
「2016年に大ヒットを記録したちはやふるの完結となる映画作品が公開されました!
今思うと、あれも2年前の話なんだよね」
主
「なんかあっという間に過ぎていったなぁ……」
カエル「ちはやふるに関しては何度も記事にしていたこともあって、結構思い入れの強い作品でもあって映画版も評価の高い作品だったよね」
主「今回は原作ファンでもあるので、その視点からの記事になります。それから過去作も鑑賞済みなので、ちはやふるを全く知らないという人とは意見が異なるかもしれないということは最初に挙げておきます。
また、今回は非常に語りたいことが多いので、こちらの記事では基本的にネタバレがないor薄めの感想記事になっています」
カエル「これに考察を足していくととんでもない文量になるのでご容赦ください。
では、ネタバレなしのちはやふる結びの感想記事のスタートです!」
作品紹介・あらすじ
『このマンガがすごい!』『マンガ大賞』でも1位を獲得した末次由紀の大人気少女マンガの実写映画化作品。競技かるたを題材にしており、実際に競技かるたを始める人が多く増えるなどの影響を与えている。
2016年に前後篇で公開され、本作はその続編にして完結編にあたる。
前作から2年の時が過ぎて成長した主人公、綾瀬千早などの奮闘が描かれている。
監督・脚本は前作と同じく小泉徳宏が務め、広瀬すず、野村周平をはじめとした主要キャストも継続して起用されている。
高校3年生に進級した綾瀬千早たちかるた部の面々は、所属するのが3年生のみになってしまい、このままでは廃部になってしまうという危機を回避するために新入部員の勧誘に躍起になっていた。
新入部員を2人獲得し、いよいよ全国大会へ向けてスタートするのだが、進路が未だに決まらずに悩んでいる千早。また、太一や他の面々も大きな悩みを抱えながら生活を送っていた。
そんなある日、思いがけない出来事からかるた部に激震が走ることになる……
感想
カエル「では、いつものようにTwitterの短評からスタートです!」
#ちはやふる
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2018年3月17日
もう今年NO1邦画でいいのでは?
終演後思わず拍手してしまったのは久しぶり
かるた、青春、恋愛、困惑、迷い、そして未来……その全てを映像で捉えた完璧なちはやふるワールド
大作青春邦画として、漫画原作の映像化としても理想的な大金字塔作品 pic.twitter.com/XnFbpOXQcw
カエル「大絶賛です!
今年もまだ始まったばかりだし、実は昨年も何度か登場した『今年No1』という言葉だけれど、おそらく邦画に関して言えばこの評価を覆すことは難しいのではないだろうか? という思いすらあるほどです!」
主「もしかしたら今後この映画が大作青春映画や漫画原作映画の1つの基準になるかもしれない。
もちろん、若干の欠点はあるにしろ……今作はそれを補うどころか、そんな細かい部分はもうどうでもいいと思わせるようなとんでもない長所をいくつも抱えている紛れもない傑作であり、漫画原作の理想的な幸せな映像表現であると思うほどの作品でもある」
カエル「もちろん、前作の『上の句』や『下の句』も高く評価されたけれど、その続編として……そして完結編としてつくられた本作のハードルはとても高かったと思うんだよ。
だけれど、そのハードルも見事に超えてきたね」
主「あれだけ長い『ちはやふる』という物語に対して、どのようにアプローチするのか? という問題もある。さらに言えば、魅力的な登場人物たちも非常に多く、誰に注目を集めるのか? ということだけでも一苦労。
しかも、本作はただのカルタ漫画ではなくて……青春、恋愛、友情、努力、才能の壁、迷い、進路……そういった多くの要素を含んでいる。そのどれをピックアップして、どれを捨てるのか、その選択はとてつもなく難しいものだっただろうけれど……本作はそれを完璧にこなしている。
原作ファンが見て紛れもない、本作は『ちはやふる』の物語です!」
カエル「ただし、注意するポイントとしてはhuluで配信中の『ちはやふる〜繋ぐ〜』か、もしくは原作は読んでおいたほうがいいかも……
一応前回の劇場版を見ていない人のための説明もあるけれど、やはり前作を見ておいたほうが楽しめるのは間違いないし、さらに作中の時間が2年進んでいるために唐突な印象も与えかねない可能性は否めないのかな」
主「あくまでも原作ファンの感想なので……ちょっと原作未見の人がどう思うのか? ということはわからないかなぁ」
構成・脚本について
カエル「次にざっくりと構成について語っていくけれど、ここは結構大胆なアレンジをしてきたよね」
主「今回は監督自らが脚本も手がけているけれど、力があるなぁ……と感心した。
ちはやふるは長期にわたって連載している作品だけれど、その分どこをどう構成するのか? というのは難しい作品でしかも競技かるたの特性上、個人戦と団体戦の戦いもある。
もちろんどちらも味があるけれど、じゃあどちらを描くのか? というのも難しい問題でさ。
2つとも描こうとしたら尺なんて全然足りない」
カエル「その中でも、今回は思い切ったことをしているよね。さらに言えば原作ファンが見たい展開にはっきりと描かれているし、しかもこれは原作最新刊である37巻にもつながってくることもあって」
主「ちょっと不思議だったのが、普通は原作本の発売日は劇場公開などが近い場合、だいたいその月に発売するんだよね。ちはやふるならば3月公開だから、3月発売にするとかさ。だけれど、今回は2月に発売していてちょっと首を捻ったけれど、その理由は映画と原作が繋がっているからだとはっきりとわかった。
今作は映画から原作への橋渡しもしっかりとされていて、どこまで計算かはわからないけれど、この両者のスタッフの緻密な合わせ方が感じられたね」
カエル「ちなみに脚本についてはどう? この手の大規模邦画は説明過多な印象もあるけれど……」
主「残念ながら? というかはあれだけれど、やはり説明過多な部分は非常に多かった。
ただ、前作を見ていない人へのカバーもあるだろうし、それを説明的に感じないようにする工夫もあったけれどね。
例えばアナウンサーや解説者に説明させるとかさ。視聴者に説明するのが仕事だから、説明台詞は当たり前だよね。それから、新入部員へのルール説明も当たり前のことであり、映画としての違和感はなくはないけれど、でも許容できる範囲でしょう。
ただし、脚本の粗が若干出てしまった部分もある」
カエル「脚本の粗?」
主「例えば先生と千早が話しているシーンで、太一のことが話題に上がるけれど、とても大事なことをペラペラと先生が話してしまう。それはメタ的には太一についての説明ではあるけれど、学校の教師としては致命的なミスでしょう。それをクラスメイトが話すならばまだ分かるけれど……
他にも名人の強さを演出するために重要な試合中で眠そうにあくびをさせたりとか……さすがに周防名人もそういうことはしないと思う。
ちょっと細かい粗をつつけばいくつか出てくるけれど、でもその欠点をカバーするほどの魅力と構成、そしてちはやふるの味に満ちた作品に仕上がっているよ」
演出について
カエル「では、次に演出についてだけれど……今回、本当に力が入っていたね!」
主「もうさ、1000年前の百人一首に使われている和歌が生まれた時の演出についてはため息が漏れるほどで!
ここで一気に鳥肌がたった。
他にもカルタを取る時の演出などもとても見所があって、飽きることが一切ない作品だったかな」
カエル「前作でも上の句は色々と特徴的な演出を凝らしていたよね」
主「これは下の句の文句もであるけれど、上の句は本当に色々と斬新な演出を凝らしていたのにもかかわらず、下の句はそこまででもなかった。多分、演出プランが尽きたのか予算や時間の問題があったのかもしれない。
だけれど、本作は1部作にしたことによって演出も凝っており、見ごたえがある作品になっている。
ボリュームとしては2部作にしたほうが物語としてはいいかもしれないけれど、でも演出が薄味になりかねないことを考えれば、この選択は大いに支持するね」
カエル「その代わりに動画配信というのもあるのかもね。ビジネスのお話もあるんだろうけれどさ」
主「それからカルタの派手な動きであったり、目に付きやすい動の演出に対して、もしかしたら見逃してしまうかもしれない静の演出についてもとても良かった。
カットの1つ1つがさまになっているし、時折はさまれる福井や街の風景がどれも美しくて、彼らの青春がより引き立たされる。それから競技かるたらしく、百人一首を用いた細かい演出も見事だね。
光が強すぎる部分などもあったけれど、全体的に見所の多い映像作品としても見事な作品に仕上がっているよ」
役者について
カエル「先に語っておきたいのがこの役者についてで……もちろん、前作も役者の演技も見どころの1つである作品であったことは否定しないけれど、でもちょっとケチがつく部分もあって……」
主「ちょっと厳しいことを言うようだけれど、2年前の公開の映画では正直魅力がうまく発揮されていないキャラクターや役者もいて、自分は感想記事でかなり苦言を呈したこともある。
はっきり言ってしまえば広瀬すずという稀代の天才女優……世間では賛否分かれている部分もあるようだけれど、広瀬すずは間違いなく2010年代を代表する名女優であり、時代の象徴でもある存在がお話を引っ張っていて、それについてくるだけで精一杯と思われるキャストもいたんだよ」
カエル「もちろん、全部ダメとまでは言わないけれどね」
主「だけれど、本物の天才が現れた時……つまり下の句で松岡茉優という天才が現れた時、他の10代のキャストたちが一気に霞んでしまったこともある。
また、名優國村隼の演技の前に霞んでしてまった役者もいた。
正直、ちはやふるの映画自体はとても素晴らしい出来だと思うけれど、役者の演技などに関しては『よくある青春映画』のレベルを超えなかったキャストもいた」
カエル「ちょっと辛辣なようだけれど『顔がいいのが1番だから……』といったこともあったよね。
じゃあ、そこから2年過ぎた今作ではどうなった? ということだけれど……」
主「見事に成長を果たしていて、見劣りするキャストなんて1人もいないよ。
この2年間の間に起きたこと、その変化、成長をまざまざと見せつける作品となっている。
……ちょっと話が逸れる上に小規模映画の話になるけれど、昨年に『イノセント15』という映画を見たときに『女の子が女優になる瞬間』を見たのね。その時のことを思い出した。
ただの少年少女が見事に役者となり、爆発的に成長した演技を見せつける……これは若い俳優を起用する青春映画ならではの魅力だよね」
やはり彼女の存在感は今の邦画界屈指のもの!
特に印象に残るキャスト
カエル「じゃあ、特に印象に残るキャストについて語っていこうか」
主「はっきり言えば、全員です!
これが素晴らしい部分だけれど、この映画において名前はあるけれどモブのような扱いの登場人物はほとんどいない。
特にメインの瑞沢高校カルタ部メンバーは全員……本当に全員に見せ場があり、魅力があり、意味があった! 決して少なくない登場人物を全員魅力的に描くのは途方もなく難しいことだろうけれど、今回はそれを見事に果たしている」
カエル「では、それぞれのキャストについて個別に語っていきましょうか。
まずは主演の広瀬すずだけれど、2017年は様々な演技で魅せてこの娘のポテンシャルの高さを感じた1年だったけれど、それが結実したのが今作なんじゃないかな?」
主「もちろん、前作から見事に『美人だけれど残念なカルタバカ』という綾瀬千早の役を演じたけれど、本作ではさらに深みが増している印象で……色々と複雑な心境になるけれど、それを過剰に演じすぎないというか……単純なんだけれど分かりやすいものに逃げていない印象があった。
この手の青春作品ではとても大切な『世界一の美少女』に映画の中でもなっていて、今作は代表作の1つに間違いなく数えられる作品だね」
カエル「次が……前回ちょっとというか、かなり酷評になってしまった野村周平だけれど……」
主「今回真島太一という王子様系に見えて、実は全く王子様ではないキャラクターを演じきったよね。前作では名優國村隼と2人で話すシーンがあると、どうしても野村周平の拙さや技量の違いが出てしまった部分もある。
だけれど、本作でも2人がガチンコで演技を披露するシーンがあるけれど、そこで見事に渡り合っている」
カエル「お次が瑞沢高校メンバーということで、上白石萌音だけれど……多分、この2年間で最も状況が変化した女優だよね。
『君の名は。』のメガヒットによって一躍注目女優の仲間いり、音楽活動も開始しているし」
主「はっきり言えば、今作で最も成長を感じられる役者が上白石萌音なんだよ。
もちろん前作でも登場しているけれど、不満点の1つが奏がほとんど活躍しないこと。ちはやふるの物語の中で、千早を最大限支えながらも叱咤激励を飛ばす親友であるのに、彼女の出番や印象に残るシーンはそこまで多くなかった。
だけれど、今作では特に印象に残る演技をしているし、圧倒的な成長を見せつけている」
カエル「……そんなに感銘を受けたの?」
主「特に素晴らしいシーンが、試合中に先生からタスキを千早に渡されて、それを部員に配るシーンがある。
もちろん、試合中でみんな集中しているから座って前傾姿勢のままタスキを受け取る中で、彼女は唯一立ち上がって受け取るんだよね。これって千早と奏の関係そのものであって、確かに原作の奏であれば同じことをするはずだ、と感じた。
これが監督などの演技指導なのか、それとも萌音の自発的な演技かはわからないけれど……役者としての勘の鋭さに恐れ入った。
それから、彼女はアニメ版の声優である茅野愛衣に近い声質を持っていると思っているんだけれど、読手を務めるシーンではとてもいい声で、しかも聞き取りやすいんだよね。
この子の声や歌、演技に関する感性や才能というのは、この先どれほど伸びるんだろうか? とおもうほどだよ。
声優を目指していたら天下を取る器だね」
カエル「特に大絶賛です。
他にも新田真剣佑は朴訥とした雰囲気で綿谷新の役を魅力あふれる形で演じていたし、コメディリリーフであり部活で重要な役割を果たす肉まんくんの矢本悠馬、部活の頭脳であり縁の下の力もちであり、前回の映画版でも重要な役割を演じた森永悠希、それから新入生の恋愛脳の菫役の優希美青と、同じく新入生の筑波くんの佐野勇斗なども本当に魅力あふれていて……個々に書いていきたいくらい!
もちろん國村隼の安定した演技あったり、2016年最優秀助演女優賞に選んだ松岡茉優も安定して絶賛以外の言葉が出てこない演技をしていました!」
圧倒的な存在感!
主「その中でもさらに語りたいのが名人役の賀来賢人。
今回は結構難しい役でもあって、確かに名人になるほど非常にカルタには強いけれど1人の人間としては欠点もある人物であり、さらに複雑な状況にいる人でもある。だけれど、彼の存在がこの物語にずっしりと重りを載せているというか……ある登場人物の行動に対して様々な意味をもたらしている。
いや、今回は誰もがそうだけれど……賀来賢人は本作が代表作になるんじゃないかな? というほどの熱演だったね」
カエル「そして最後に忘れてはいけないのが、映画で重要な役割を果たす我妻伊織役の清原果耶で……
最近では興行的には苦しい思いをしたけれど『3月のライオン』で三姉妹の次女を演じていて、かなりハードな描写もある中で体当たり演技をしていたね」
主「彼女に対する認識を改めました。
自分は映画版の『3月のライオン』も絶賛したけれど、彼女に関してはそこまで深く印象に残らなくて、神木隆之介などにばかり注目していたけれど、そんなことを関係ないくらいに強烈なインパクトを残したし、途中からは思わず目で追ってしまうほどだった。
この作品では次々と役者の新しい魅力ある演技を披露していたり、それまでのイメージを覆す部分が多いけれど、その意味では彼女が1番かもしれない」
こんなに力がある子だったんだ……
重要な意味を持つ役者の役割
カエル「えー、今回は珍しく役者についてすごく長々と、しかもほぼメインキャスト全員について語っているけれど、それにはちゃんとした意味があるの?」
主「もちろん。
本作はこのキャストの演技がとてもいいということが重要な意味を持つ。
もちろん、誰もが知るようにこの作品はすでに2年前に公開されている劇場版の完結編である。撮影当時から考えると、もうすでに3〜4年はずっとちはやふるに関わってきたというキャストだって多いだろう。
前述したように前作では若干の疑問が残る演技もあったけれど、今作ではそれはほとんど見当たらなくなっている。
これが実は、この映画にとってとても重要なことでもある」
カエル「公開だけで見てもリアルタイムで2年の時が過ぎているもんね……インタビューの記事などでも『ちはやふるという作品が私の青春でした』と語る役者もいたようだし」
主「この映画って一言で語るならば『卒業制作』なんだよね。
高校に入学してきた前作の劇場版の頃ではまだまだ演技に課題のあったキャストたちが、リアルに2年を過ぎてどれほど成長したのか? ということを示す作品でもある。
またそれは他のキャストとの関係性も同じであり、師匠であり演技の大先輩である國村隼であったり、先生である松田美由紀の演技を見て、もちろん他の現場で色々な作品に出演して成長していった面々が、今度は先輩となって優希美青や佐野勇斗、清原果耶という若い人たちにバトンタッチしていく。
これこそ部活動や青春じゃない?」
カエル「学校生活の不思議な部分でもあるけれど、先輩って別に上司でも先生でもないんだよね。ちょっと先に入っただけかもしれないし、場合によっては後輩の方が技術的に上手いこともあるかもしれないけれど……でも色々と教えられたりすることも多いという、不思議な関係でもあるのかな?
そう考えるとこの映画ってそれだけキャストに力があったこと、それがとても大きな意味を持っていたんだね」
最後に
カエル「では、とりあえずまずはここいら辺で一時終了にします。
この後は内容にガッツリと踏み込んだ考察記事になる予定です」
主「そっちもそちらで語ることが多いからなぁ……
とりあえず、ネタバレ少なめに1つ言えることは今作は特に原作ファンは歓喜する内容だよ。本当に、見事とした言いようがない。
文句も『この続きが見たいのに!』というくらいで……あの魅力的な先生がちらりと出ていたけれど、もっとちゃんと見たかったなぁとかさ。本当はいくらでも映画にできる題材だけに、実写映画だからしょうがないけれどキャストが年齢を重ねているのが惜しいと思える作品だったな」
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