物語る亀

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物語愛好者の雑文

映画『劇場版名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)』感想 ラブコメ映画として評価の高い1作! ネタバレなし

カエルくん(以下カエル)

「それでは、今回は毎年恒例のコナン映画の最新作の感想と行きますか!」

 

ブログ主(以下主)

「1番好きなコナンの事件はピアノソナタ『月光』殺人事件の主です」

 

カエル「え〜っと……一応コナンに対して少しはわかっているよ、というアピールも兼ねているんだろうけれど……このチョイス、コナンファンの中では名作と名高い事件だから、逆ににわか臭もするよ?

主「そうか……じゃあ『大怪獣ゴメラ殺人事件』とかだったら、結構わかっているな! っていうチョイスでしょ?」

カエル「それは特撮怪獣映画が好きだからって理由じゃなくて?」

主「う〜ん……それ以外となると、のほほんとしたものなら『イチョウ色の初恋』とかあとは『小五郎の同窓会殺人事件』とかになるかな?」

 

 

カエル「……さっきから古い事件ばかりだね」

主「それくらいの巻数の時は何回も読み返していたからね。印象に強く残っていて……最近はたまに手にとって『あ、新キャラが増えている!』なんていうレベルだから。黒の組織とかキャラクター数多すぎでしょ。

 まあ、それはそれとして……ピアノソナタ月光殺人事件は当時テレビスペシャルで放映された気がするけれど、ネタがなくなったら映画でやっても面白いと思う。人気エピソードだから注目度も高いだろうし、成美先生は1話しか登場しないキャラクターの中では相当な人気があるだろうし」

カエル「今のクオリティで映像を見てみたいお話でもあるね。

 それじゃ、今回の新作コナンの感想記事を始めるよ」

主「あ、当然のことながら作中の内容には触れても、本作のトリックや犯人については一切触れませんのでそこは安心してください

 

 

 

 

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1 今作はラブコメ重視!

 

カエル「じゃあ、まずは今作の感想からだけど……予告編でも言われているけれど、今作はラブコメが中心だったね!

主「前作の『劇場版 名探偵コナン 純黒の悪夢』が記念すべき20作品目ということもあって、黒の組織をたくさん出してアクション多数、爆発たくさん! という作品だったけれど、本作は少し抑えられてきた。

 怪盗キッドか黒の組織が絡むと名作と言われがちだけど、さすがに連続するのもなんだしね」

 

カエル「その中でスタッフが選んだのが服部と和葉のラブコメを中心とした作品だけど……これがハマっていたんじゃないかな!?

主「映画のコナンになにを望むのか、という問題はあると思うけれど、ミステリーとしての整合性やリアリティのあるお話を望んでいる人ってほとんどいないと思う。だから、それを望んで行った人は残念ですが……というお話になってしまっている。

 だけどラブコメとしてみた場合は結構面白くて、王道の朴念仁服部を巡る女子の攻防もそうだし、他にも色々なカップルたちが中々会えない相手を思う描写もあったりしていて、恋愛ものとしても楽しめた」

カエル「よくよく考えてみるとコナンにおいて恋人といつでも会える関係にあるカップルって平次たちと……あとは佐藤、高木刑事くらいなのかな?」

 

主「毛利のおっちゃんも別居中だし、コナンの両親は会える状況にあるけれど登場頻度が特別多いわけでもないし、少年組は恋愛描写は可愛らしいものだし、博士も独身だし……と考えると、恋愛ものをやりたかったら大阪コンビになるのは必然かもね

カエル「いつものように『そんなことあり!?』ってアクションも多いし、大体サスペンダーとボールとシューズで何とかなってしまったりというお約束も交えながらも、楽しめる作品には仕上がっているんじゃないかな?」

 

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今作の主人公と言っても過言ではない和葉

改めて見ると結構かわいらしいなぁ

(C)2017 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

 

 

ちはやふると今作

 

カエル「すでに多くの箇所で指摘されているけれど、今作は『ちはやふる』の影響がすごく大きくてこのような作品になったようだね!

主「最近さ、漫画界って『ちはやふる』『3月のライオン』が中心になって動いている気がするのは気のせいかね? 結構多くの漫画家がこの2作の影響を語っている気がするんだけど……まあ、いいや。

 そのために今作では和葉を始めとしたキャラクター達の設定をモリモリと足していって、これはもはや別人では? というレベルになっているな

 

カエル「最近の原作をあんまり読み込んでいないからあれだけど……和葉の設定とか、それから服部の過去とか、服部母とか……もう超人揃いの物語だよね」

主「でもさ、コナンにその辺りの整合性を求めるのって間違っているとすら思うんだよね。

 そんなことを言い出したら『殺人現場に子供がいる』とかさ

『探偵業務が殺人捜査になっている』

『大人が簡単に子供の言うことを聞きすぎる』

 とか、ツッコミどころしかないわけだ。

 今作の和葉の強さに疑問を覚える声も多いけれど……そしてそれは何も間違ってはいないけれど、だけどコナンにそれを望む? という想いもあるね」

 

カエル「そのあたりはそういうものだと脳内で補完しながら見るのがコナンの正しい見方だと思うんだよねぇ。決してフェアなミステリーというわけでもないしさ」

主「なので『ちはやふると比べて和葉の実力が……』などというのは無粋というか、それはやめましょう。

 コナン自体がそういう物語です! としか言いようがないので!」

カエル「……それでいいのか? って思いも若干あるけれどね」

 

 

 

 

2 声優について

 

カエル「今作はいつも通りのメインキャラクターが勢揃いだから、特別に語ることはないかもしれないけれど……」

主「今作のMVPは間違いなく、大岡紅葉役のゆきのさつきでしょう!

 元々方言大好きなのはあるけれど、紅葉の持つ京都特有のイケズな感じだったり、それでいて凛とした美しさ、一本筋の通った印象などはゆきのさつきだからこそ出せた味!」

カエル「京都出身で、京都弁が違和感なく話すことができる人でもあるけれど、完璧な演技だったね!

 

主「多分、この役を演じることができるのはゆきのさつきと……あとは同じく京都出身で素晴らしい京都弁を披露している進藤尚美のどちらかしかいないんじゃないかな?

 ただ方言がうまいというだけでなくて、そのキャラクターの持つ熱意なども違和感なく演じることができる役者ってそこまで多くないと思うけれど、完璧でした! 自分はゆきのさつきと進藤尚美の京都弁が聞けるなら、すぐにでも劇場に駆けつけるほど好きだけど、もう映画上映中耳が幸せだったね!」

 

カエル「それから、こちらはレギュラーキャラクターの大阪組もよかったよねぇ」

主「元々堀川りょうと宮村優子は関西出身で、大阪弁のネイティヴではあるけれど、さすがの一言だよね。もう何十年も演じられてきたキャラクターに今更どうこう言うこともないけれどさ。

 特にいつもはどうしても脇役になってしまいがちな和葉役の宮村優子だけど、こうやって大阪弁で話すとチャキチャキとした明るさもしっかりと感じられて、すっごく可愛らしくて、しかも京都弁と大阪弁だからそれもまた見事な対比になっている。

 ニッチな見方かもしれないけれど『方言映画』としてみても、結構レベルが高いものになっているんじゃないかな?」

 

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今作のもう1人のヒロイン、大岡紅葉

ゆきのさつきの名演技もあって素晴らしいキャラクターでした!

(C)2017 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

 

芸能人声優、子供の体験アフレコについて

 

カエル「芸能人声優や子供の体験アフレコに関しては……ちょっと違和感あったよね」

主「芸能人声優は吉岡里帆は違和感があったけれど、この手のキャラクター映画では仕方ない。相手は第一線級のアニメ声優だし、おなじみのキャラクターを演じているからそりゃ比べたら落ちるに決まっている。

 宮川大輔は良かったんじゃない? 違和感がなかったというとさすがに嘘になるけれど、でもそこまで気にはならなかったかな? 

 終わった後に『あ、あれ宮川大輔だったんだ』と思うと納得するレベル。そこまで致命的だとは思わなかった」

 

カエル「子供の体験アフレコはさすがに違和感があったけれど……」

主「でも子供向けアニメーションにおいてそういう試みってすごく大事だから。作品世界観がうんたら、っていうのもわかるけれどさ。

 コナンは大人もファンが多い作品だけど、基本は少年漫画であり子供向けアニメーションだから、この試みは自分は高く評価するよ

  

 

 

 

3 コナン作品の難しさ

 

カエル「この手のキャラクターアニメには独特の難しさがある作品も多いけれど、コナンは特に制約が多いんだよねぇ

主「同じ日に公開された『クレヨンしんちゃん』に比べるとさ、あちらは何でもできるじゃない? 

 元々ギャグ漫画だということもあるけれど、ここ数年でも『ロボ父ちゃん』でロボットやSFのお話をやり『サボテン』でパニックホラー『ユメミーワールド』でファンタジーを扱っている。

 戦国時代にタイムスリップしたり、オトナ帝国のようにホロりと泣かせるものもあり……作品として表現できることの枠が非常に広い。

 だけど、コナンはどうしてもそこが限られてしまうわけで……

 

カエル「コナンで高性能ロボットが登場したり、タイムスリップなんかがあるとミステリーとして成立しなくなるしなぁ」

主「だからコナンの映画ってどうしてもミステリーとサスペンスが基本になってしまって、結局はビルを爆破するとか、そういう同じようなシチュエーションになってしまう。

 それはしょうがない。何せ、他に方法がないんだから」

カエル「どうしても映画向きのサスペンスをしようとすると、コナンが銃を撃つわけにもいかず、しかも表現は過激なものにしては子供が観に来れないし……と考えると、爆発ネタは派手なアニメ向きだしって話になるんだろうね」

 

主「例えば今回の映画のような内容であれば、小説だったら冒頭に人物紹介があるんだよ。人数が多いからゴチャゴチャにならないようにするために入れておくけれど、映画版では一気に説明する。

 しかも、重要な写真や証拠もすぐに画面が流れて次に行ってしまうから、物語を理解しながら推理しようとすると無理がある。

 だから余計にサスペンスに傾倒することになって、そうなると黒の組織を出して……ということになる」

 

 

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今作の主人公服部

あの決め台詞はしびれました!

(C)2017 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

 

 

成長できない物語

 

カエル「これも当然のことだけど、映画とはいえ物語としては番外編だからさ、キャラクター達の関係性を変化させることができないんだよ

主「例えばこの作品で服部、ないしは服部の父親が殉職したとする。そうなると原作との整合性がつかなくなる。ということはそんな展開は絶対にできないわけだ。

 これは非常に大きな枷であって、コナン特有……でもないけれど、子供向け映画だとコナンは特にこの制約が強い」

 

カエル「……コナンが特に強いっていうのはどういうこと?」

主「例えばクレヨンしんちゃんやドラえもんの場合、のび太やしんちゃんが成長する描写って結構あるんだよ。だけど、テレビ版に戻るといつもののび太、しんちゃんに戻る。

『映画のジャイアンはいい奴』というのもその一環だよね。

 これはしんちゃんやのび太が『未完成の主人公』だからだ。まだ子供でおバカで、だけど行動力や勇気はあって……成長する要素はたくさんある。

 だけどコナンって最初から完成系なんだよね。工藤新一という完璧な主人公がいて、それは服部も一緒でさ。完成された主人公が成長するということは……特にコナンのようなシリアスな展開で成長するということは、大きな意味を持ってしまう。

 だから物語において重要な『成長』描写を描くことができなくなってしまう

 

カエル「コナンは悪事を暴くだけだもんね……」

主「だからコナンという作品はそれだけの枷を背負って、しかも20作品以上も劇場版が公開されていて被らないようにしようとすると、作劇に制限が多いんだよ」

 

 

 

4 今作の脚本について

 

カエル「そして今作はラブコメ方面に舵をとったね

主「これは英断だと思うよ。

 今作の静野孔文監督は2011年から劇場版コナンを担当していて、今作で7作目なわけだ。それだけ作ってくると、もうやりたいことも尽きてくるじゃない? いつものアクション路線だと飽きられるしさ。

 そこで目をつけたのがコナンのもう1つの売りである『ラブコメ路線』であるわけで、今作はその要素も強い」

 

カエル「今回の脚本ってうまいの?

主「結構うまいと思う。

 まあ、はっきり言ってしまうと平次や和葉を取り巻く状況は全く変わっていないわけだ。あれだけの出来事があって、あんなにカッコイイ台詞まで吐いて、それでも関係性は変わらない。

 大岡紅葉はこの後も原作で登場しているらしいけれど、彼女も関係性は一切変わっていない。むしろ、和葉と紅葉と……それから服部関係の深堀をして終わったわけだ。

 これは番外編としては100点じゃない? 原作の邪魔をしないけれど『あ、あんなことがあったからこの2人ってこんな関係なんだな』ってファンはニヤニヤできるし」

 

カエル「事件の核心には触れずに脚本について語ると、ミステリーとしてもよかったよね?」

主「よかったと思うよ。百人一首である必要性も感じたし、ラブコメとミステリーの相互作用も機能していたし。

 そりゃ、あんなことがあたら和葉も紅葉も惚れ直すわって納得いく出来だと思う。もちろん細かいことを言い出したら色々と穴はあるけれど、いくつもの事件が絡んで最後に繋がる入れ子構造とかも含めて、制約が多い中でよく練られているなと感心した。

 さすが本職のベテランミステリー作家である大倉崇裕が脚本を務めたことはある」

カエル「百人一首をテーマにしたミステリーとしては……他に何があるのか知らないけれど、結構クオリティが高い方になるんじゃないの?」

 

 

blog.monogatarukame.net

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これは恋のお話

 

カエル「でも、最後は恋のお話に終始するんだよね

主「劇中でも語られていたけれど、百人一首って恋の歌が多いわけだよ。

 そしてコナンもなんだかんだ言って新一と蘭の関係、服部と和葉、高木と佐藤もそうだし……小五郎と英理は一応夫婦だからちょっと違うけれど、でも恋愛の話が多いわけだ。

 そこに百人一首を絡ませてきた。

『しのぶれど』が結構ピックアップされていたけれど、これは『ちはやふる』でも結構重要な意味を持っているから、その目線で見ても納得の選出でもある。

 さらに『しのぶれど』の歌の意味を考えても和葉に確かにあっていて、この辺りの組み立て方のうまさにも感心した

 

カエル「ラストのやりとりとかもなかなか良かったよね! 最後を持っていくの結局はあの2人ってことで!」

主「もちろん、ギャグもあって子供からの笑い声も上がっていたし、全体的にうまくまとまった作品になったと思う。

 演出も紅葉の絵作りであったり、冒頭の紹介の場面における和風を意識した作りであったり、すごく凝っていたよ。美しかったし、素晴らしかった。

 強いて言うなら途中の推理パートが長すぎたことだけど……これは仕方ないよね」

 

 

 

最後に

 

カエル「他に気になるところは?」

主「う〜ん……強いて言うならば、途中気になる箇所があって、明らかに1カットくらい飛んでいるような気がしたんだよね。

 まあ、それはあってもなくてもどうでもいい描写でもあるんだけど、そこがちょっと違和感があった」

カエル「あとはテンポが速かったことも気にはなったかな?」

主「だけど『恋愛』『ミステリー』『百人一首』という要素をこれだけ詰め込みながら、そこまでこんがらがっていないのは素晴らしいと思うよ。

 しかも時間も2時間以内にしっかりとまとめているし、何よりもキャラクターがかわいいし

 あとはOPのキャスト紹介でコナンの次に来るのが灰原でちょっと笑ったなぁ……これじゃお前がヒロインじゃないか! ってさ」

 

カエル「でも、このブログは京都弁のキャラクター好きだよね」

主「というか方言を聞くだけで評価がちょっと上がっちゃうなぁ。女の子の可愛さが5割増しになるよね」

カエル「……もしかしてこの高評価の理由はそれだったりして」

 

 

 

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