カエルくん(以下カエル)
「では、2017年度10月度の映画ランキングの発表です!」
亀爺(以下亀)
「今年も残す所あと2ヶ月……そろそろ年間ランキングも作成せねばならない時期になってきたの」
カエル「昨年も激戦区だったけれど、今年も選びにくいよねぇ……今の所は昨年に比べると映画業界が盛り上がっていないという話もあるけれど……」
亀「昨年が異常だっただけじゃがな。
映画ブログ自体も増えてきているような気もすることもあるし、検索順位や競合が増えてきたこともあるじゃろうが、アクセス数は同時期と比べて昨年よりも下がっておる。もちろん、主の努力不足もあるじゃろうが……そもそも熱狂的な支持を集めるような映画がそこまで多くないというのもあるかもしれんの」
カエル「一般層も熱狂する映画が多かったからねぇ。
今年を代表する誰もが覚えているような映画って……何かあるのかな?
やっぱり『ラ・ラ・ランド』とか?」
亀「今の所は『美女と野獣』が興行収入トップだったような気もするが、半年過ぎても話題に上がるほどの人気を博したかというと、そうでもない。アニメ映画はオタク向けに良作が集中しておるし……中々昨年の流れのまま映画業界を盛り上げようという流れにはなっていないのかもしれん」
カエル「では、10月度はどんなランキングになったのか……
世間的には映画の閑散期ではあるものの、注目作も多かった月ですが……では発表です!」
対象作品
記事にした作品
『劇場版 Fate/stay night Heaven's Feel I. presage flower』
『ミックス。』
『斉木楠雄のΨ難』
以上12作品
記事にしていない作品で公開3ヶ月以内の作品
『ハローグッバイ』
『わたしたち』
『ドリーム』
『DCスーパーヒーローズVS鷹の爪団』
『劇場版Free! Take Your Marks』
以上、計17作品がノミネート
今月はいつも通りくらいの本数ではありますが、小規模公開映画をそこまで扱えてないのが悔しくもあり……大作で注目作が多かったこともありますが……
ハローグッバイ、わたしたち、ドリームで『差別やいじめと戦う女たち』の記事を1つ、あとはアニメ2作品をまとめた記事を考えてはいますが……どうなるかなぁ?
『ああ、荒野』
『星空』
『我は神なり』
も気になってはいますが、小規模な事もあり観に行けるかは微妙です。
第5位
アウトレイジ・最終章
作品紹介・あらすじ
世界中で評価を集め、日本人の誰もが知る漫才師、北野武監督の最新作。ヤクザを描く作品が多い北野作品の中でも、抗争劇を壮絶に、バイオレンスに描いた『アウトレイジ』シリーズの最終章となる。
1作目では関東最大の暴力団・山王会の内部紛争を、2作目の『アウトレイジ・ビヨンド』では関西の大物暴力団・花菱会と山王会でのゴタゴタを裏で操るマル暴の片岡の暗躍を描いており、本作のその数年後の物語となっている。
大友(北野武)は日本でも縁のあった韓国のフィクサーである張会長の手引きの元、韓国へと渡っていた。デリバリーヘルスの管理をしながらも用心棒の仕事をこなす日々を過ごしていたが、花菱回幹部の花田は訪れていた韓国でトラブルを引き起こし、大友の子分を撃ってしまう。
なんとか穏便に事を済ませたい花田は自分より格上の幹部、中田に相談することに。しかしその裏では花菱会のトップの座をかけた証券マン出身の新会長野村と、若頭である西野の策略が渦巻いているのだった……
カエル「まずは北野映画の最新作にして、人気シリーズの終焉を告げる作品が登場だね!」
亀「5位は色々な良作があるのかで迷ったが……やはり本作を選ぶかの。
北野映画らしいラストと、その男たちの哀愁が涙を誘い……エンタメ性という意味でも、作家性という意味でも文句のつけようのない作品に仕上がっておる。ちょっと登場人物が多すぎたり、演出上派手にやりすぎてリアリティに欠ける描写があることも否めないが……そんなことを無視してしまる『北野ノワール』映画になっておったの」
カエル「やっぱり人気シリーズを如何に終えるのかって大変なことだと思うんだよ。
しかも1作目、2作目もそれぞれ違う味わいがあって、どの作品が1番いい作品ですか? と訊かれても、多分人によって答えが変わるであろうシリーズだしさ、単なる続編や最終章ってわけじゃなくて、作品全体を通しても強烈なメッセージ性があって……」
亀「わしはまだやっておらんが、どこかの劇場なり家で3作まとめてみると、おそらくその構成力に舌を巻くじゃろうな。1作目のドロドロの抗争劇、2作目のサラリとしたラスト、そして最終章の衝撃……
3段構成も見事の一言。とにかく驚愕じゃな……今月は激戦区でもありこの順位であるが、もっと高く評価する人もいるじゃろうな」
第4位
Fate/stay naight Heaven's Feel
作品紹介・あらすじ
スマートフォンアプリゲームなどにも発展している、TYPE-MONN原作の人気PCゲームである『Fate/stay night』の劇場アニメ化作品。
主に3つのルートに分かれており、本作は作中の謎などが明らかになる3つ目のルートである『Heaven's Feel』(以下HF)ルートを全3部作で劇場公開しており、本作が第1作目にあたる。
製作はテレビアニメ版『Unlimited Blade Works』(以下UBW)の製作も引き受けたufotableであり、監督は原作者である奈須きのこの別作品である『空の境界』なども監督した須藤友徳。
あらゆる願いを叶えるという『聖杯』をめぐり、魔術師(マスター)と英霊(サーヴァント)が組み合って、7組でバトルロイヤルをするという『第4次聖杯戦争』から10年が過ぎた。
冬木市に暮らす衛宮士郎は正義の味方になることに憧れていたが、そんな彼の側には友人の妹であるである間桐桜の存在があった。少しずつ接近していく2人であったが、聖杯戦争が10年ぶりに始まったことによって、冬木市内では様々な事件が起こり始める。
その戦争に参加することになって士郎や桜の命運は……
そしてこの戦争はどのように終わるのだろうか……
カエル「圧倒的な人気を誇る、オタク界の伝説の作品がここで登場だよ!
そのクオリティ、音楽などを考えても文句のつけようがない作品だね!」
亀「この順位は低いかもしれんが、まだ決着の付いていない3部作の1作目であり、今作は物語が明らかに途中で終わっている中でのこの評価は非常に高い。本来は完結していない作品は評価するのが難しいので保留するのじゃが……本作はそんなことを言ってられない作品であったの」
カエル「もうさ! スタッフやファンの愛を最大限に感じる作品でもあったわけで!
監督が元々原作が大好きというのもあるけれど、これほどの作品を作り上げるのは何よりも予算がかかっていると思うんだよ。
だけれどFateであれば……ここまで追いかけてきてくれたファンであれば、これだけの時間と予算をかけても回収できるであろうという計算があるのも見えてくる。それは普通は打算になるけれど……言葉を変えるとファンを最大限信じている作品でもあるんだよね!」
亀「もちろんオタク映画であり、ファン映画じゃ。
『え? 4位なの? じゃあ何も知らないけれど観に行こうかな』という人には悪いことは言わないから、せめてテレビで放送された『UBW』というシリーズを観て、そしてできれば『ZERO』を観てから行った方がいい。そうでないと意味がわからず、たのしめんかもしれん。
その意味では減点される部分もあるが、そんなこと関係なしのクオリティを誇る作品で、間違いなく2017年を代表するアニメ映画の1つとなっておる」
カエル「もちろん続編も公開決定済み!
早く3作通して見てみたいなぁ……」
第3位
アトミック・ブロンド
作品紹介・あらすじ
近年日本でも大きな話題となった『マッドマックス 怒りのデスロード』や『モンスター』で高い評価を得ている女優、シャーリーズ・セロンが主演を務めるスパイアクション。監督は『ジョン・ウィック』のプロデューサーや『デットプール2』の監督に決定している、アクション作品に定評のあるデビッド・リーチ。
他にもジェームズ・マガボイ、ソフィア・プテラなどが脇を務める。
今作は派手なアクション描写の他に、セックスアンドバイオレンスが過激なシーンもあるためにR15に指定されているが、グロテスクというほどではない。
(感想には個人差があります)
冷戦末期の1989年、ベルリンの壁が崩壊しようとしているまさにその時、西側諸国にスパイの名前が羅列された極秘情報を流そうとしてたイギリスの諜報機関、MI6の捜査官が殺された。
リストの奪還と裏切り者の2重スパイを見つけるように命じられたMI6の諜報員、ロレーン・ブロード(シャーリーズ・セロン)は東と西のベルリンの2つの国を行き来しながら諜報活動を始めていくが……
カエル「アクションメインの映画がこの順位になるというのも、このブログだと実は珍しいかも……自他共に認めるアクション音痴だし……」
亀「本作はもちろんシャーリーズ・セロンの演技や体当たりアクション、もちろん色気ムンムンの雰囲気も素晴らしい。それ以外の登場人物もそれぞれ個性があり、アクションも派手で見どころ満載、工夫に満ちていて見飽きることがない。
しかし、わしが最も注目したのは、その脚本であるの」
カエル「一方では『わかりづらい』ということを欠点にあげる人もいて、それもその通りだけれど、じゃあなぜわかりづらいのか? ということがミソだね」
亀「本作を見終わった後に、その結末に『ふぅ〜ん』と思う人もいるかもしれん。しかし、果たしてそれがそうなのか……様々な描写を考えると、実にいろいろな仕掛けが張り巡らされておる。
単なるアクション映画であれば、このような脚本上の工夫はあまりない作品がもある。もちろんアクションが主であり、映画的な脚本は従だとする考え方もあるじゃろう。それについては異論はない。映像表現こそが映画の売りだとするならば、それもまた正解じゃ。
本作は派手さだけではなく、様々な仕掛けに溢れておる……だからこそ何度でも楽しめる作品に仕上がっておる。
そしてその仕掛けがテーマと合致しておるからの。
ケチのつけようがあまりない作品に仕上がっておるの」
カエル「それではここからTOP2の発表だけれど……当然あの作品たちが並んできます」
亀「今回もどちらがどうと決めることができなかったので、同率1位という評価になっておる」
カエル「……最近それが多いよねぇ。星取表式にして、星5はこの作品、とかの形にしたほうがいいんじゃないの?」
亀「ランキングであることが大事なのじゃ。
では、トップ2を発表するぞ」
同率1位
ブレードランナー2049
作品紹介・あらすじ
リドリー・スコットが1982年に公開し、今でも世界中の映像業界に大きな影響を与えたと語り継がれる作品である『ブレードランナー』を35年ぶりに続編を制作。
制作総指揮にリドリー・スコットが名を連ね、監督は『静かなる叫び』でカナダのアカデミー賞とも呼ばれるジニー賞で史上最多の9冠獲得したほか『ボーダーライン』『メッセージ』などでアカデミー賞にノミネートし、世界が熱視線を送るドゥニ・ヴィルヌーヴ。
脚本は『ブレードランナー』を担当したハンプトン・フィンチャーと『ローガン』や『エイリアン・コヴェナント』など近年大作映画を多く手掛けるマイケル・グリーン。
主人公にはライアン・ゴズリング、また前作の主人公であるデッカードを演じたハリソン・フォードが再びデッカードとして出演することも話題に。
前作から30年後の2049年、旧式のレプリカントであるネクサス8を探し出し、それを退役という名の排除を行っているブレードランナーのK。ある日、農家として働くネクサス8の男の情報を聴いて仕事へと向かう。
その後の捜査により男の自宅の敷地にある木の下から重要な証拠が見つかる。解析の結果ある驚くべきことが分かり……
カエル「誰もが認めるヴィルヌーヴの天才的な映画演出ぶりを見せつけた作品は当然のように月間1位を獲得!」
亀「カルト映画の中でも伝説級の評価を受ける『ブレードランナー』の新作制作のことを聞いたファンはかなりざわついたであろう。そんなこと可能なのか? という不安に満ちていたかもしれん。
わしはそこまで SFに詳しいわけではないが……断言しよう。今作は完璧なブレードランナーの続編であり、そしてヴィルヌーヴの映画である、と」
カエル「どちらかというとブレードランナーの続編として見に行ったというよりも、ヴィルヌーヴの新作として見に行った感も強いけれど……イヤイヤ、ここまでの作品を作られたら文句のつけようがないよね……」
亀「前作は若干編集の妙というか、ファンが勝手に深読みしていくことによって哲学性や深さを獲得していった部分もあるじゃろう。
しかし、今作はその余白は全て計算の上に作られておる。そこに当てはまるものは……わしは『愛』だと思うの。そしてこの愛とはヴィルヌーヴがずっと描いてきたことであろう。
これほどまでに深い物語はそうそうない……まさしくヴィルヌーヴが映画史に名前を残すであろう理由がわかる作品に仕上がっておる」
カエル「ちょっと長いし、退屈なシーンもあるかもしれないけれど……でも是非とも鑑賞してほしい1作です!」
同率1位
パーフェクトレボリューション
作品紹介・あらすじ
脳性マヒを患い重度の障害を抱えながらも、障害者の性への理解を訴え続ける活動家、熊篠慶彦が自身の体験を交えた物語を企画し、友人である松本准平が監督を務め、リリー・フランキーが自ら希望して主演を演じた作品。
リリーは本作の挿入歌に銀杏BOYZに使用許可を自ら頼みに行くなど、主演の枠組みを超えた働きかけをしている。
相手役のミツには『ユリゴコロ』などにも出演している清野菜名が演じたほか、小池栄子、岡山天音、余貴美子らが脇を固める。
幼少期に脳性マヒを患い、重度の身体障害により車椅子で生活するクマ(リリー・フランキー)。彼は障害者のセックスについて理解を深めてほしいと活動を続けているが、その講演に来ていたミツ(清野菜名)はクマに惚れ込んでしまう。
様々な困難に立ち向かいながらも、愛を育む2人であったが周囲の反応も思わしくなく、大きな試練に立ち向かうことになる……
カエル「そして『今年1番!』と豪語した作品が当然のように月間1位を獲得!
まあ、今年1番は何度目なんだ? って話もあるけれど……実際見ている最中は本当にそう思っているからね!」
亀「今、恋愛作品を作る上で大切な『恋愛のハードル』はどんどんなくなってしまっている。もちろん、それ自体は歓迎すべきことであるが、しかし物語を制作する上では中々難儀なことである。
生まれや育ちの差というのは恋愛に関係なくなったし、年齢、教師と生徒などのような立場の違いによる倫理の壁も昔に比べたらだいぶ低くなってきたじゃろう。
しかし、それでも消えないハードル……それが『障害』じゃ」
カエル「そして『同性愛』などもそうだけれど、まだ同性愛は世間的にも受け入れる傾向もある。だけれど、障害だけはそうじゃない……だって、なんとなくわかるじゃない?
『障害者に恋愛は難しい』って……
それって偏見だよ? 差別だよ?
でも、社会も家族も……もしかしたら本人ですらそう思っているかもしれない。だからこそ、恋愛に対するハードルとしてとてつもなく高くそびえ立っている」
亀「残念ながら日本は障害に対して向き合おうとしている様子はそこまでない。
障害を抱える歌手やアーティスト、役者などもあまりおらんし、テレビで障害者について語る際は慎重な配慮が求めれられる。しかし、その『区別』や『配慮』こそが、偏見や差別の温床となってしまう事もある。
熊篠慶彦が自ら企画し、奔走しなければきっと公開どころか、企画が立ち上がる事もなかったじゃろう。
現状の日本の世間に対して強く訴えかける作品になっておる。
本作こそが……恋愛映画における『パーフェクト・レボリューション』であるとわしは強く訴えかけたい」
総評として
カエル「では、10月度について振り返ってみると、アニメ、洋画、邦画を問わずに良作が続いた形だね。
このブログではそこまで高い評価はしていないけれど、世間評価も評論家も絶賛する『ドリーム』や『彼女がその名を知らない鳥たち』などを推す声もあるだろうし、9月に引き続いて映画ファンが歓喜するような映画が並んだような結果かなぁ」
亀「記事にしていない中で語ると『わたしたち』などの物語が強く響いてくる人も絶対いるであろうし、また意外と良かったのが『DCヒーローズVS鷹の爪団』であって……これは是非とも語りたくなる映画でもある。
バラエティに富んだ作品を多かった印象じゃの」
カエル「そしてその中で1位を取ったのがあの2作だけれど……」
亀「今年屈指の激戦でもあった。
どちらも愛について語っているのじゃが、その内容が全く違う。違うのに、どちらも尊く、そして気高く、美しい。これほどの恋愛映画を見せつけられて、何1つとして語ることはできん。もはや、理屈ではない。
それほどまでに『究極の恋愛映画』とも受け取れる内容であった。
この2作は年間ランキングでも相当上位に行くことは間違いないじゃろうな」
カエル「年間ランキングに関しては年末に決めるけれど、見た季節が近いという有利なポイントはあるだろうけれどね。
特に『ブレードランナー2049』は多くの人が今年のベスト10に入れるだろうし……」
最後に〜11月の映画について
カエル「では最後だけれど……11月はちょっと不作というか、偏っているからなぁ? という印象もあるね。
まずは11月3日公開の映画が注目! だけれど……」
亀「この週は注目作が一気に公開される。人気シリーズの最新作からハリウッドで大ヒットを飛ばす作品もあり、またドキュメンタリーでも欽ちゃんに密着した作品が話題じゃの」
カエル「大作が少ないというわけではないけれど、趣味じゃない映画が多いかなぁ……『SOW』は絶対に観に行きません! 嫌いなので!
一方でアニメはというと……やっぱり『GOZZILA』が最注目になるのかな?」
亀「いや、このブログとしては『はいからさんが通る』を推していきたいの」
カエル「……また地味なところを攻めてきたね」
亀「アニメ好きならば古橋一浩監督作品というだけで、観に行く価値があるからの。それに、何と言ってもKUBOもある。こちらも要注目のアニメーション作品じゃの。
大作との相性はあまり良くないと思うが……アニメはやはり面白そうな作品が続く」
カエル「11月は正直、底という印象があるんだよねぇ……その中でどれだけの作品を鑑賞して、語り尽くせるか?
あとは過去記事のリテイクだったり、漫画や旧作レビューにも力を入れるかもしれません」
亀「とか言いつつ、実際には16本くらい観るんじゃろうがな」