物語る亀

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物語愛好者の雑文

映画『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』ネタバレ感想&評価 ファンの方に向けられた青ブタらしさが詰まったアニメ映画

 

それでは、劇場公開されました『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』の続編となる『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』のレビュー記事になります!

 

 

 

 

……タイトルが長い上にややこしいわ!

 

 

カエルくん(以下カエル)

「どうやら”青春ブタ野郎シリーズ”という略称で親しまれているようです。

 ちなみに、今回は再放送されているテレビアニメ版も途中までにはなりますが、鑑賞してから映画に臨んでいます!」

 

「いやー、本放送時に録画していたはずなんだけれど、いつの間にか消えていた時は焦ったわぁ。

 再放送していてくれてよかった……欲を言えばこの映画公開に合わせてくれたら最高だったけれど、まあテレビの放送スケジュールを考えたら文句は言えないか」

 

 

カエル「テレビアニメ版の印象などについても後々に語っていくとしましょう!

 今回も音響監督である岩浪さんが調整した川崎のチネチッタでの鑑賞になりますので、音響に関しては最高の状態を鑑賞したと言ってもいいのではないかな?」

主「ただ、この手の作品は原作やテレビアニメファンを対象にしたものだから、テレビアニメを視聴しているとは言え、そこまでファンとは言い難い人間の評価ということを最初に言っておきます。

 多分、そこで評価が大きく変わるタイプの作品だと思うので……」

 

カエル「アニメ映画はそういうファンむけ作品も多いしね。

 それでは、感想記事のスタートです!」

 

 

 

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(C)2018 鴨志田一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/青ブタ Project

 

作品紹介・あらすじ

 

『さくら荘のペットな彼女』などの人気作品を生み出してきた小説家、鴨志田一の『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』から始まる青春ブタ野郎シリーズの劇場アニメ版作品。テレビアニメの続きとなり、本作は原作では6、7巻にあたる『青春ブタ野郎は夢見る少女の夢を見ない』と『青春ブタ野郎はハツコイ少女の夢を見ない』のアニメ化作品となる。

 監督はテレビアニメシリーズと同じく増井壮一が務め、脚本は横谷昌宏などが務める。

 声優陣もテレビアニメ版で声を当てた石川界人、瀬戸麻沙美、水瀬いのり、東山奈央などの人気若手キャストがキャラクターたちを魅力的に演じる。

 

 

 都市伝説して知られている病気、思春期症候群。この病気に罹患すると、人に見えなくなったり存在が消えていくなどの様々な特殊な状況に陥ってしまう。

 藤沢に暮らす高校2年性の梓川咲太は先輩で女優でもある恋人、桜島麻衣と楽しい日々を過ごしていたが、クリスマスも目前に迫ったある日咲太の初恋相手である牧之原翔子が現れた。

 しかも翔子は中学生と大人の2人が存在している。思春期症候群に罹患してしまった彼女に翻弄される日々を送っていたのだが、事態は思いもよらない方向へと発展していくことになる……

 


「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」本予告

 

 

 

 

感想

 

では、Twitterの短評です!

 

 

刺さる人にはすっごく刺さるんだろうなぁ……というのがわかる作品ではあった

 

カエル「この手のテレビアニメの続編でもある劇場アニメの場合、ファンの方が見にいくから平均的な評価は高くなる傾向になるけれど、今作も大手レビューサイトの評価が非常に高いよね!

 やっぱりファンの方にはとても嬉しい作品になったのではないでしょうか?

 

主「ただ、ファンでない方には相当辛い作品だったとも思う。

 まずさ、この作品の大元にある”思春期症候群”という特殊な病気の説明や、テレビシリーズなどでどのようなことがあったのか、という説明は一切なかった。そうなるとこの映画の根幹に関わる部分だから、もしかしたら混乱する可能性があるのではないか?

 本当にテレビアニメの最終回の後の続きをぬるりと始めた印象でもあったかな

 

カエル「そのあたりのバランスはこの手の映画の難しい部分でもあるよねぇ。説明しすぎてもいけないし、ファンの人以外は見にこないと割り切って制作するのもそれはそれでありだしね」

主「その意味では、本作はテレビアニメか原作を愛したファン以外を対象にしているとは言い難い作品になってしまってはいる。

 ただ、完全に初見さんであっても思春期症候群の設定以外は現代を舞台にした日常劇の要素が強いから……ちょっとだけSFはあるけれど、それもわずかでよくあるものだから、理解はしやすいのではないかな?

 あとは……少し映像のクオリティなどもテレビアニメレベルであり、特に最近は飛び抜けた傑作を多く鑑賞してしまったから物足りなさが大きかったなぁ」

 

 

テレビアニメ版に対する印象について

 

じゃあさ、テレビアニメ版を見ている時はどんな感想を抱いたの?

 

…正直、あんまり好きじゃないんだよなぁ

 

主「やっぱりよく言われるように『化物語』『涼宮ハルヒの憂鬱』などの有名ライトノベルの要素をうまく取り入れているように思ってしまう。

 ただ、作品全体がパクリだ! という訳ではなくて、それらの……言ってしまえば売れる要素をしっかりと内包しながらも、破綻しないように構成されているのはさすが。

 た、思春期症候群も思春期特有の悩みをSF混じりに見せることによって、より想定している読者であろう10代の子達に届きやすくなったのではないだろうか?

 

カエル「えっと……一応褒めているんだよね?」

主「作品としての全体のバランス感覚がいいのだろう。

 ただし、この作品でなければダメな理由となりうる強烈な個性というものに関しては、そこまで感じられなかった。

 あとはこれはしょうがない部分もあるけれど、お話によって結構差があったかなぁ……一部の話はとても引き込まれたけれど、そうでもない話もいくつかあったようにも感じた。

 ただ、文句というか愚痴は確かに多いけれど、この作品が受けるのはわかるし、先にもあげたように思春期症候群の設定だったり、青春の描き方や伏線と回収などでも評価するポイントも多い作品だな」

 

 

青ブタのキャラクターについて

 

キャラクターについては?

 

……多分、自分がハマらなかった1番の理由はここだな

 

カエル「最近流行りのタイプの主人公像ではあるよね」

主「なんで最近村上春樹の主人公のラノベ版みたいなキャラクターがこれだけ流行っているんだろうな?

 いや、村上春樹に影響を受けた作家たちは好きだけれどね。本多孝好とかは何作も追いかけてきたし、別に春樹を意識している訳ではないのだろうけれど……あの咲太のキャラクター性、特に物言いにはかなりイライラする部分があった。

 それにハーレム系なんだけれど……もう、ラノベのハーレム系は見飽きた感もあるというか」

 

カエル「好みの問題だろうね。好きなキャラクターとかはいなかったの?」

主「月並みだけれど双葉かな。

 双葉の話はやっぱり感動したし。

 ただ、自分は本作をみてキャラクターデザインの失敗というか、難しいポイントも感じてさ……

 というのは、今作の初見さんの場合を想定すると、メインヒロインである麻衣と翔子が似ているデザインだったのは少し見分けがつきづらいのではないか?

 

カエル「初恋の人の面影を追っているという解釈もできるし、慣れると全然違うと思うけれど……」

主「似ているキャラクターデザインを見分けるのはオタク特有の特殊能力だよ。もちろん、自分も状況や声などで見分けはつくけれど、完全初見の時だったら混乱していたかもしれない。

 あとは……劇中での麻衣の人気具合がよくわからん。

 天下の人気若手女優で、現実に例えたら橋本環奈くらいの知名度がありそうな雰囲気なのに、普通に街中を歩いていたり電車に乗っていたりしてさ。

 そのあたりがノイズになってしまったのかなぁ」

 

以下ネタバレあり

 

 

 

作品考察

 

構成の巧さ

 

では、ここからはネタバレ込みで語っていきましょう!

 

ただ、うまく構成したんだろうなぁ……とは感じたんだよね

 

カエル「原作が2巻分ある物語としてびっくりしたよね。それまでの物語を説明しなかったりと色々と短くするようにはしていたとはいえ、結構大胆な構成変更があるのだろうけれど、それを感じさせなかったというか……」

主「物語が始まって唐突に翔子が訪ねてきたときは『だいぶ唐突だなぁ』とは思ったけれどさ。しかも咲太と麻衣の2人は同棲しているようにも見えたし、そこにびっくりした。

 だけれどそれはそれで良かったんじゃないかな。

 今作では双葉などの何人ものキャラクターも登場するけれど、そこも深掘りをせずにあくまでも3人の物語として見せるように再構成されていた

 

カエル「終盤の葛藤などはあの3人の描き方をしっかりしていたからこそ! という部分があったもんね」

主「さっきから色々と文句は言っているんだけれど、それでも終盤の展開には若干胸が熱くなる思いもあった。

 まあ、タイムリープ設定が割とご都合的な部分もあったりしてモヤモヤした思いもあったんだけれどさ。それは映画に限った話ではないんだけれど……

 でも、物語を愛してきた人たちであればそれぞれの登場人物の葛藤は特に胸に刺さると思うし、限られた時間で収めるための工夫でもあったのではないかな?

 

 

 

青ブタが描いてきた青春

 

このシリーズが描いてきたテーマとかってなんなの?

 

恋愛やハーレム系でありながらも選択や辛い物語を描き続けてきたな

 

カエル「振られることで思春期症候群を脱することができるとか、結構観ていて辛いことも多かったよねぇ」

主「結局のところは痛みを伴って人は成長する、ということを描いており、決してその痛みは過ちやダメなものではないということを伝えていると感じた

 

カエル「ちょっとビターな作品であることが他のハーレム要素のあるライトノベルとは違うところなのかもね」

主「選択をきっちりと描いたというのは、いいと思うんだよね。

 それぞれの選択として誰を選び、誰との別れを選ぶのか。そこを曖昧にすることなく、しっかりと描いている。そんなに甘いことだけではないからさ、ここも人気のポイントの1つのように感じられたかな」

 

 

 

個人的なモヤモヤポイント

 

最後になるけれど、どこにモヤモヤしたの?

 

まぁ、大きく分けて2つかなぁ

 

カエル「2つ?」

主「この2点だね」

 

  • 自己犠牲の物語
  • ドナー登録について

 

主「この作品はでは必ず1つの命が失われてしまうとき、誰の命を奪いますか? ということが命題となっている訳だ。そこで登場人物たちは3人とも”自分の命”という選択をする。

 ここはとても美しい自己犠牲のようでもあるけれど……なんかな、これが合わなかった」

カエル「でも設定からするとその選択肢は間違いではないし、他に方法がないならば自己犠牲と受け取られても選ばなければいけない面もあると思うけれど……」

 

主「それもわかるんだけれどさ、自己犠牲意を強いる物語がドナーのお話として最適なのか? という思いもあるんだよ。

 これは2つ目の『ドナー登録について』にも繋がってくるんだけれど、最後にドナー登録がたくさんされて、翔子の心臓は助かる訳じゃない。そして新しい未来を見つけるという笑顔であり、感動して終わることになっている。

 でも自分はそうは思えなかった。というのは、その翔子の命をつなぐために犠牲になった誰かがいる訳じゃない。

 そしてその誰かには家族がいて……ということが普通に考えられる

 

カエル「……まあ、でもドナーってそういうものだし」

主「主人公たちはあれだけ悲しみを打ち破ろうとしており、そのために必死の思いでSFのようなことをしてまでいて手に入れた平穏がある。

 だけれど、その物語を観た後で別の誰かがドナーとなることで繋がれた命を観て『ああ、良かったね、ハッピーエンドだね』とは自分はならない。

 あの3人が助かればそれでオールOKって訳ではないのではないか? ってこと」

 

カエル「う〜ん……でもドナー登録が増えて救われる命が増えるというのはとてもいいことじゃない」

主「そりゃそうだけれどさ、この感動の物語にドナーという難しい問題を入れることが正解なのか? という印象を抱いてしまった。

 最後の彼女の笑顔が『良かったね』ではなくて、その裏に助かることなく失われてしまった命があるという悲しみを連想してしまい、なんかモヤモヤしてしまったかなぁ

 

 

 

まとめ

 

では、この記事のまとめです!

 

  • ファン向けに特化された作品あがらも評価が高いのもうなづける作品
  • ただし、映像などのクオリティが高いとはいいきれない面も……
  • 青ブタらしい感動ポイントもあるが、そこが個人的にはモヤモヤ感が……

 

色々語りましたが、決して悪い作品というつもりはないです

 

カエル「まあ、テレビアニメ版もそこまで……という人だったらそんな感想になってしまうのかなぁ」

主「う〜ん……評判がいい作品だったからハードルをあげすぎたのかもしれない。

 ちょっと最近、こういうラノベ作品は相性の悪さを感じている部分もあるから……それも1つの理由かもね」

 

 

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