物語る亀

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物語愛好者の雑文

漫画『食戟のソーマ』最終回! ネタバレ感想&評価 もっと名作になれる要素が山盛りだけにもったいないという言葉が出てくる!

 

いよいよジャンブ本誌にて最終回を迎えました”食戟のソーマ”について振り返っていきましょう!

 

 

 

昔は好きでジャンプで読むだけでなく、コミックスも買って読んでいたんだよなぁ

 

 

カエルくん(以下カエル)

「ジャンプに現れた久々の料理漫画ということもあって、注目度が高かった印象があるね。

 特に絵がとても綺麗だったし、読み応えがあったし!」

 

テレビアニメ化もされたし、間違いなくジャンプを支えた作品の1つではあると思う。

 今は他にも中堅層が分厚いから、いまだにジャンプの層の厚さを感じさせるというか……この娯楽が増えて漫画などが売れ辛い時代においても、大きな存在感を発揮しているのは純粋にすごいことだよなぁ」

 

カエル「それでは、早速ですが感想記事に入りましょう!」

 

 

 

 

作品紹介

 

 2012年に連載を開始し、原作・附田祐斗、作画・佐伯俊によって週刊少年ジャンプにて連載されていた作品。料理監修は森崎友紀が担当している。

 シリーズ累計1500万部を突破しており、3回にわたるテレビアニメ化やゲーム化も果たすなどの高い評価を受けている。特に佐伯によるキャラクターデザインやお色気を含んだリアクション表現などが高く評価された。

 

 名門料理学校である『遠月学園』に編入することになった定食屋の息子である幸平創真。そこには神の舌と呼ばれる絶対的な評価を下す薙切えりなの存在があった。

 遠月学園では課題に合格できなければ退学という厳しいチェックがあり、さらに食戟という戦いが伝統として存在していた。学校の課題をこなしながらも、時に退学のリスクを抱えながらも食戟によって様々なトラブルを解決していき、成長する姿を描く。

 


『食戟のソーマ 神ノ皿』制作決定PV

 

 

感想

 

じゃあ最終回までの評価ってどんなものになるの?

 

……週刊連載って大変だなぁ、というのが1番大きいかな

 

カエル「30巻以上続いて、初期の頃は評価が高いのは当然としても、その先もずっと名作の作品なんてほとんど無いしね。

 特にジャンプはその傾向が強いけれど……大体名エピソードとされる、その作品の代表的なお話は10巻から20巻後半までに出てきて、そのあとは半ば惰性で続いている印象もあるかな」

 

主「まあ、当然といえば当然のことでさ、ほぼほぼ休みも与えられることなくずっと描き続けているから、そうなるのも無理はないというか……むしろ、そこで無限のアイディアが浮かんでくる方が常人離れしているというか、すでに週刊連載って時点で常人ではないというか……

 ただ、やはり多くの人が指摘するだろうけれど、これほど勿体ない漫画も他にはないよなぁ……と云う思いが強い

 

カエル「テレビアニメも4期も決定しているし、間違いなく2010年代のジャンプのみならず、少年漫画や料理漫画界を代表する作品なんだけれどね。

 やっていないのは……あとは劇場版くらい?

 それも4期もあるなら、決してありえないってレベルではないし」

主「特に近年はグルメ漫画は隆盛を迎えているけれど、基本的には可愛い女の子が何かを食べるというお話が多いから、純粋な料理勝負の漫画は少ない気がしている。

 その意味では近年では珍しい作品なのかもしれないな」

 

 

最大の売りを放棄してしまった

 

今作の終盤の評判が悪くなってしまったのは、どこが問題だと思うの?

 

やっぱりキャラクターの使い方が下手くそなことじゃない?

 

カエル「今作がここまで人気が出た最大の要因って、やっぱり魅力的なキャラクターだもんね。

 男子も女子もキャラクターデザインなどの力もあって、とても人気が高くて、その”おはだけ”と呼ばれるお色気要素の方で人気を獲得していった印象もあるけれど…

主「ジャンプの……というよりは少年漫画ではよくある描写ではあるけれど、さすがは佐伯俊と言えるようなエロスに溢れている作品ではあった。

 ただし、その魅力を自分から放棄してしまったのが、この作品最大のミスだったのではないか?

 

カエル「自分から放棄?」

主「薊政権との対立の時にさ、例えば寮を潰そうとした時にでも、寮の中から薊政権の味方になる人間もいれば話は大きく変わった。

 あの時っていうのは、いわば”料理界の究極のチェーン店化”を目指す薊政権と、それに対抗して対立するソーマたち、と云う見方もできるわけじゃない?

 そりゃ、遠月学園のシステムは学校としては異常だし、初期のキャッチーな設定によって引っ張られてしまった印象もある。

 だけれど現実の料理界というのは、あの設定のように過酷なものであり、最初は流行ったけれどすぐに廃れてしまう店もたくさんあるわけだ。

 そして個人経営の定食屋出身であり愛着のあるソーマには薊政権のやり方は当然納得できるものではない……という風にすれば、対立軸としてしっかりしたと云う印象もある

 

現代ではチェーン店によって多くの個人経営店が淘汰されているし、超高級店か激安店以外の、普通のお店は経営が難しくなっているという話もあるもんね」

 

その薊政権側に寮生から何人か裏切るというか、そちら側もありだと選択させるべきだった。

 

主「その前に選抜試験という最高の舞台を用意していたわけで、そこで多くのキャラクターの魅力や売りを表現できていた。

 それらのキャラクターを活用することなく、ただのモブのような扱いで終わらせてしまったこと……そしてそれは以後も続き、数々の人気キャラクターを使い捨てにしてしまったこと、それが最大の欠点である

 

カエル「例えば薊政権の時ならどんなことが考えられるの?」

主「あくまでも後出しの素人考えではあるけれど、例えば一色・榊・伊武崎・丸井あたりを寝返らせれば、また違うドラマになったのではないか? 個人的には学園の方針に疲れた恵あたりも敵にすると面白かったようにも思える。 

 対抗するソーマたちは残った寮生と肉魅やタクミ・アリス・秘書子あたりと共闘するとかさ……そうやってキャラクターを活かすようにして物語を作ると、また違ったのではないかな?」

 

 

 

十傑編について

 

十傑編についてはどうだったの?

 

やっぱりここもキャラクターの使い方が弱すぎた

 

カエル「ここもほぼ1ページくらいで退学がほぼ決定になってしまったキャラクターが多かったもんね」

主「アリスや秘書子といった人気キャラクターまで一掃したのは大変に痛かった。

 ましてや、実力もあると描かれていただけに……そしてこの後はほとんど出番がなくなってしまっている。スタジエールであれだけ深掘りした意味がなくなってしまった。

 ここも対立軸がよくわからなくて……なぜ3席だった女木島は反感を抱いたのか? という点においても弱い

 

カエル「後出しだけれど、どんな理由ならば納得いったの?」

主「それこそソーマと同じだよ。

 女木島の調理するラーメンという分野はほぼ大衆店が中心となっている日本人のソウルフードと言える。ラーメンの高級店もあるにはあるのだろうけれど、それはあまり一般的ではなくて、少し高くても1杯で1000円ほどが多いだろう。ましてやラーメンは今現在でも”ラーメンとは何か?”とい定義付けが難しいくらいにさまざな形に発展している」

 

カエル「それこそつけ麺や油そばなんてラーメンの1種として入れていいのか? という思いがあるかなぁ」

主「つまり、精神としては大衆文化となっており、また定義ができないほどに毎日のように新しいラーメンが生まれているという、どこの店でも同じ品質のものを作り付けるチェーン化に反対するに足る料理文化だと思う。

 そこのあたりを対立軸とすれば、またお話は変わってきたのではないだろうか?

 

あとは……やっぱり非難が多いのは体力設定なのかなぁ

 

味方には一切適用されない、敵にしか不利にならない設定って最低だと思うけれどね

 

主「例えばさ、ここも色々とやりようはあると思うんだよ。

 司の調理は食材の魅力を最大限発揮するものだけれど、その調理法に耐えられる食材は遠月でもなかなか揃えられない……とかさ。竜胆もレア食材すぎてなかなか調達できないとかさ。

 そうなるとソーマは強いよね、定食屋だから食材にそこまでこだわっていられない。だから食材の不利をカバーする料理をたくさん作れるはずだし、そこで戦えば司に勝てる理由がわかる。

 あの学園に通う生徒のほとんどは有名料亭や高級店の子供たちみたいだから、ソーマ最大の武器である”町の定食屋だからこそ司に勝てる”ということができたでしょうに。

 それでいうと一色の強さも”自分で食材を1から作るから食材の不備が少ない”などもできるわけだ」

 

カエル「……ちなみに、そのあとについては?」

主「まあ、ジャンプらしい蛇足だよね。

 相変わらずキャラクターの使い方が下手だけれど、親父や司をあんな使い方しかできないことに愕然としたし……

 せっかくの人気キャラクターや格上キャラクターを新キャラのために使い捨てにする手法には一切納得しなかった

 

 

料理描写について

 

この漫画最大の売りでもはずの料理描写についてはどうでしょうか?

 

……ここは正直、同情する余地が大いにある

 

カエル「まあ、この作品自体の料理が多岐に及びすぎている部分はあるよね。どんな料理研究家がワニとかのゲテモノ肉を扱っているんだ? という思いもあるし……やっぱり週刊連載に合わせるのは難しいのかなぁ」

主「連載開始当初は森崎友紀も人気もあったし、起用するのはわかる。

 そのあと結婚して出産とかもあったから、ソーマに注力することもできなくなったのは読んでいるだけで丸わかりでさ……料理の描写すらないシーンも山ほど出てきて、新しい料理監修を呼ばないと立て直しは不可能だろうな、というレベルではあった

 

カエル「ましてや現代は情報化社会で、お手軽にできる……いわば手抜き料理の情報も山ほどある時代だからね」

主「そう考えると『ミスター味っ子』とかのような往年の料理対決漫画のようなことは難しいのはわかる。

 また、各キャラクターの個性を出すために強みとなる調理法や食材を用意したのも漫画としては正解だったけれど、料理モノとしては失敗だったかもしれない。

 だけれど、本来料理漫画の主役って料理であるべきなんだよ。

 もちろん、味も匂いもしないし、色も限られる中で絵だけでそれを表現するのは至難の技だけれど……それがないと野球をしない野球漫画のような、変な作品になってしまう。

 そこにケチがついてしまったこと……それが最大の問題点なのかもしれないな

 

 

 

 

まとめ

 

それでは、この記事のまとめです!

 

  • 美麗なイラストやキャラクターの個性が魅力のある作品ではあった
  • ただしキャラクターの使い方があまりにも弱くてひどい!
  • 魅力的な料理描写の少なさなどが物語の説得力を欠く結果に

 

ただ、、週刊連載で疲弊している中でもこれだけ連載が続いたことは紛れもなく素晴らしいことだ

 

 

カエル「ソーマも終わって、いよいよジャンプも新しい時代に入ろうとしているのかもしれないません!

 ソーマが終わって次はどんな作品が連載されるのか、注目していきましょう!」