物語る亀

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物語愛好者の雑文

漫画『タコピーの原罪』ネタバレ感想&評価・考察 ネット発作品の持つ特徴について考える

 

今回はネットで話題の漫画『タコピーの原罪』の感想記事になります!

 

また、すごい作品が出てきたね!

 

タコピーの原罪 上 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

カエルくん(以下カエル)

「Twitterを中心に、すごく話題だよね! 2022年でもトップクラスの話題作ではないでしょうか!」

 

「しかもジャンプ+で手軽に読めるというのも大きいのかもしれないね」

 

カエル「それでは、早速ですが記事のスタートです!」

 

 

 

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感想

 

それでは、Twitterの短評からスタートです!

 

 

なるほど、これは話題になるのもわかるかな…という思いが強いかな

 

カエル「ジャンプ+で連載されている作品としては『怪獣8号』『推しの子』『SPY×FAMILY』などの話題作を中心に読んでいる形ですが、今作もそれだけネット上で騒がれるならば、きっと何かあるはずだ! という思いが強くて読んだ形だったね」

 

主「全体としては、自分の趣味や好みとは大きく異なるけれど、でも話題性がすごく強いのもわかる作品だったかな。

 しかもTwitterなどでの”考察”も盛んだったし……その意味では、週刊少年ジャンプ本誌とは異なる、ネット媒体だからこその消費のされ方をしたのではないだろうか。

 これが漫画のあり方として正しいのかはわからないけれど、現代の漫画の楽しみ方として『すぐに手軽に読んで感想・考察を共有する』という意味では、とても現代らしい作品と言えるだろう」

 

少なくとも、日本流行語大賞にノミネートされたり、あるいはネット流行語大賞候補には入るだろうしね

 

ネット関連で言えば『100日後に死ぬワニ』みたいな流行り方をしたのではないだろうか

 

 

 

blog.monogatarukame.net

 

カエル「もちろん、100ワニとは異なる点もあるけれど、ネット媒体で感想をTwitterなどで共有して話題性を集めていく、という意味では同じようなムーブメントなのかもしれないね」

 

主「既存の漫画のように、紙媒体で週刊、あるいは月刊誌で発表して……とは異なる宣伝&販売する形が既に完成しているということかな。

 この作品がヒットしたということは、既存の漫画連載のあり方に1つの方向性を決定づけるのかもしれない。

 とはいえ、旧来の漫画の在り方がなくなるとかではないけれどね。現代のSNS文化とネット文化、そして無料で漫画を読む文化が合流した先に生まれたムーブメントとして象徴としたい」

 

 

随所に感じる『浅野いにお』イズム

 

そういえば、作者はインタビューでも漫画家の浅野いにおを参考にしていると答えているよね

 

rookie.shonenjump.com

 

浅野いにお作品といえばデッドデッドデーモンズデデデデデストラクションが、アニメ化も発表されたばかりだね

 

 

 

作者のタイザン5も、最も影響を受けた作品に『おやすみプンプン』を挙げているなど、浅野いにお作品の影響はとても強いようです

 

 

 

主「それは読んでいる時から、すごく伝わってきた。

 自分も浅野いにおは影響を受けていて、それなりの作品数を読んでいるけれど……浅野いにおって簡単にいえば、平成後期に若者の中で漂っていた、ある種の諦観に近い感覚や社会情勢を描き上げる漫画家なんだよ。

 だから、刺さる人にはものすごく刺さる作品になる。

 タコピーでもそれは感じていて、特に1話の展開って『おやすみブンブン』のある展開の影響を受けたのかな? と感じるほどだった」

 

『ドラえもん』の影響もあるという話だけれど……

 

まあ、そうなのかもしれないけれど、浅野いにおの『デットデットデーモンズデデデデストラクション』でも、いそべやんというドラえもん風の作品があるしね

 

主「それでいうと、自分としては感覚としてタイザン5流の『おやすみプンプン』であり、『デデデ』であると感じたかな。というか、ドラえもんってかなり広くわかりやすいように語っているけれど『デデデ』の影響も大きい印象もある。

 浅野いにおファンだからこそ生まれた作品という印象もあるかな」

 

以下ネタバレあり

 

 

 

今作の強みについて

 

今作の強み① タコピーのキャッチーなキャラクター

 

やっぱり、タコピーのキャラクターの良さは語らないといけないでしょう

 

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『タコピーの原罪』(ジャンプコミックス)

 

カエル「『〇〇ッピ!』という独特の口癖も真似したくなるよね。

 Twitterのバズりツイートでも、この語尾を使っているものもいくつも見受けられたし……あの『わ、わからないッピ』というシーンは、もはやネットスラングの1つとして定着している感もあるよね」

 

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『タコピーの原罪』(ジャンプコミックス)

 

主「たぶん、これも『おやすみプンプン』のキャラクターデザインを参考にしているのかもしれない。プンプンって、背景とかはすごく緻密でリアル志向なんだけれど、プンプンたちのキャラクターデザインだけはとても特徴的なんだよ。だからこそ、漫画的でわかりやすい。

 今作も異星人ということもあるけれど、キャラクターが簡素でかわいらしく描かれている。だけれど、そのキャラクターがシビアな状況に巻き込まれていく、というギャップが面白いわけだね

 

ある意味では『魔法少女まどか☆マギカ』のキュウベェとは、言動こそ逆だけれど、キャラクターの効果としては同じような意味合いがあるかもね

 

劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語 キュゥべえつままれキーホルダー

 

可愛らしい見た目に反して、毒のあるキャラクター性という意味では似ているかもね

 

主「もちろん、タコピー自体には毒はないけれど、無邪気ゆえの毒があるというか。

 キュウベエは無邪気な子供たちを突き落とすけれど、タコピーは無邪気な自分が突き落とされていくという、逆の立場になっているよね。その意味では、タイムリープも含めて『まどマギ』的な作品ということもできる。

 そのタコピーというキャラクターの強さこそが……ネットミームとしても、そして物語を多くの人が受け取るキャッチーなとっかかりとしても、とても強い魅力を獲得したのだろう

 

ポイント! ネット文化で、より話題性が出やすいキャラクター性と口癖とギャップ

 

今作の強み② わかりやすく描かれた『バカの壁』

 

次に挙げられるのが『バカの壁』ということだけれど……

 

これは養老孟司の大ベストセラーでも書かれていることだね

 

カエル「簡単にいえば人間にはバカの壁があって、どれだけ丁寧に説明しても相手には理解できないことがある、ということだよね」

 

主「『タコピーの原罪』でいえば、それはハッピー星人であるタコピーと、一般のひどい環境にいるしずかちゃんなどの状況に表れているよね。

 タコピーにはしずかちゃんの状況はわからないし、人間の状況はわからない。だからこそ、お気楽とも言えるハッピー星人の性を発生してしまい、壁ができてしまう。一方では、絶望の地獄の中にいるしずかちゃんには、タコピーの感覚がわからない。

 だからこそ、この2人の差を……『バカの壁』を描いた作品ということができると思うんだ」

 

ふむふむ……

 

結構、難しいことをサラリと描いているとも言える

 

カエル「今のご時世で言ったら、ウクライナの人の戦う気持ちと、日本から『降伏すべき』と語る人、みたいなことでもあるよね」

 

主「前提条件が全く違うから、話にならないんだよね。

 タコピーはそんな地獄があるとは全く思っていない。お気軽でみんなが幸せなハッピー星人だから。たぶん、ハッピー星人のハッピー道具の掟の中に『ハッピー星人の見える範囲で使う』という項目があるけれど、ママの掟にそれがあるということは、ハッピー星人には思いもつかない方法でその道具を悪用するということが可能であることを前提としているということでもある。

 その生きている認識の差を描いた作品であり、可愛らしい絵柄も含めてギャップがあって、わかりやすさがあったのではないだろうか

 

ポイント! 生きている世界の違いを描くことで、バカの壁(住む世界の違い)を描き出す!

 

今作の強み③ 誰にでもわかる問題と暴力性

 

次に挙げるのが……実はうちと相性が悪いポイントでもあるけれど、『誰にでもわかりやすい物語性』とでもいうのかな

 

強い言葉を使うならば、それこそバカにでもわかる物語ってことだよね

 

カエル「それだけ、多くの人に届きやすいキャッチーさがある、ということだね」

 

主「これってしょうがないことなのかもしれないね。

 特にネット媒体の場合だけれど、ジャンプ本誌のような長期連載作品のようにじっくりと物語を紡ぐことはできない。むしろ、ジャンプ本誌すら出だしの数話のアンケートで大体人気と連載期間が決まってしまうような部分もあるから、もう1話からフルスロットルであることが求められてしまう。

 そしてその作品のキャッチーな部分を特に前面に押し出していく必要がある。

 その結果……エロや暴力表現などに力を入れていく作品が多くなっていると感じる

 

まあ、エロと暴力表現がある作品が人気なのはいつの時代も同じだけれどね

 

今作では過度な暴力表現を1話から前面に出すことで、読者に伝わりやすい物語にしているんだよ

 

主「例えば、先に挙げた『100日後に死ぬワニ』も、”死ぬ”という極めてわかりやすいキャッチーな要素があるからこそ、ヒットしたといえる。

 残念ながら、じっくりと進めていくタイプの作品のような、じわじわと出てくる良さというのは、あまり多くの人に伝わりにくい。それよりも”死”とかの、キャッチーな要素がとてもわかりやすく、多くの人に届くんだ」

 

カエル「これって、15年くらい前に流行った、おなくネット文化発の文化としてケータイ小説が、いじめやレイプ、自殺などを多く扱っていたことと似ているのかな」

 

主「そうだろうね。

 一昔前のケータイ小説的な感覚が、姿を変えて出てきたという印象が強い。もちろん、ケータイ小説よりも商業だからレベルが高いと言えるけれどね。

 余命モノが流行る理由と一緒かな。やっぱり、死という衝撃の展開があると、読者にすごくわかりやすいんだよ。

 『タコピーの原罪』に関してもそれはあって、しかもネグレクト、親の問題、いじめなどなどの様々な問題が描かれている。それらが自分には暴力性が過剰に感じられるけれど、だからこそそれを許容できる人にとっては”わかりやすく面白い作品”になるのではないだろうか」

 

ポイント! 死や暴力を題材の1つにするからこそ、わかりやすくてキャッチなー物語に!

 

 

 

個人的に思うこと

 

実際は、そこまでははまってはいないんだよね?

 

……どうだろう、相性は悪いと思う

 

カエル「結局、最終話でも2人を取り巻く状況は、そこまで変わっていないんだよね。両親のことも何1つとして解決していないし……」

 

主「う〜ん……個人的には違和感もあるんだよね。

 あれだけ悪意を煮詰めたようなスタートから、そしてタコピーが自己犠牲を払うことによって、明るい物語になるという、一瞬ハッピーエンドに見えるけれど、本当にそれでいいのか? って。

 なんか、解決になっていない気がするし、それを許容するには、あまりにも極端から極端に行きすぎているような気がする

 

元々全体の話は決まっていたようだけれど、これだけヒットしたから、ちょっと変えた可能性とかもあるけれどね

 

どれだけ構想通りかはわからないけれど……ちょっと極端に過激すぎる印象かな

 

主「それがいいのか悪いのかって話じゃなくて、個人的な違和感として強く残る。

 もちろん、これは自分が浅野いにおファンであり、そこと比較しているからこその違和感かもしれない。こんな違和感を抱く方が少数派かもしれない。

 ただ0と1を極端に描きすぎていて、その中間が全くないように感じられたのは、ちょっとビックリした。 

 あとは……これはもう趣味の問題だけれど、単純にスタートのゴア表現で衝撃の展開! とやるのが、好きじゃない。

 これは、100ワニの記事でも書いたけれど……やっぱり、ネット文化から爆発する作品って『死や暴力を安易に消費する』作品が多すぎる印象がある。そのキャッチーさがないと、そんなに通じないものなのか? という疑問は、ずっとあるのかな」