物語る亀

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物語愛好者の雑文

鳥山明先生の功績を振り返る

 

2024年3月8日、鳥山明さんの逝去が発表されました。

謹んでご冥福をお祈りします。

 

 

 

……鳥山明先生が、亡くなられたとの発表があったね

 

とても色々な思いが交差してくるな

 

DRAGON BALL モノクロ版 42 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

カエルくん(以下カエル)

本当は訃報に対する記事で、この形式はふさわしくないという思いもあったんだけれど……

 

でも、あえてエンタメ界の大巨人だからこそ、この形式で楽しく語っていきたいという思いが強かった

 

カエル「うちは鳥山先生に関しては、どれくらい作品を読んでいるの?」

 

主「多分、大多数の人と同じレベルかな。

 幼少期に『Dr.スランプ』と『ドラゴンボール』を読んで『ドラゴンクエスト』をプレイして……という、当たり前に鳥山明という人の作り出したものに囲まれた生活をしていた。

 逆に言えば、当たり前すぎて、それが普通に感じていた部分もあったかもね。

 大ファンということではなかったけれど……でも、いて当たり前、あって当たり前と認識していたかな」

 

今回はそんな鳥山明先生の功績について簡単に振り返りましょう

 

ここから先は敬称略の記事となります

 

 

 

 

 

漫画表現の巨人

 

鳥山明を一言で表すと、どんな言葉が出てくる?

 

う〜ん……やっぱり、漫画表現とキャラクターデザインに卓越した人、ってところかな

 

カエル「追悼文を読んでも、やっぱりキャラクターデザインなどに触れる方がとても多いよね」

 

主「例えば同じ大巨人である手塚治虫と比較しても、その功績は結構違うと感じている。

 手塚治虫の功績は漫画の近代化というか……漫画というジャンルに、映画やさまざまな書籍から影響を受けて、ストーリーを作り上げていった。そしてそれが独自に発展していき、今の漫画文化の礎を築いた、というのが自分の大雑把な認識。

 鳥山明はその逆で……ストーリーではなく、漫画という表現の力に特化していった人物だね

 

長期連載作品も2作だけで、あとは短期連載とか読切、デザインばかりなんだね

 

それだけ漫画連載って過酷な仕事なんだろうな

 

主「『ドラゴンボール』とかは、確かに偉大な名作なんだよ。でも、重要なのはそのストーリーラインじゃない。

 むしろストーリーそのものは突出している印象が全くない。『Dr.スランプ』にしろ、重要なはキャラクターデザイン、そして絵の動かし方なわけだ」

 

最大のヒット作である『ドラゴンクエスト』

 

漫画の話も大事だけれど、やっぱり『ドラゴンクエスト』のキャラクターデザインも多数発表しているのも触れないとね

 

むしろ、鳥山明の最大の功績は『ドラゴンクエスト』だったのではないだろうか

 

カエル「その理由を説明すると?」

 

主「まあ、スライムのデザインだけでも素晴らしいよね」

 

スクウェア・エニックス(SQUARE ENIX) スマイルスライム ぬいぐるみS スライム

シンプルでありながらもわかりやすい、ベストなデザインだ

 

主「ここは詳しい人に突っ込まれることを覚悟しているけれど……それまでのRPGっておどろおどろしい、ホラーのような描写が多いものだった。

 何せ、やっていることは命を賭けた戦いなわけだからね。

 でもドラクエはRPGにおいて、キャラクターが可愛らしくデフォルメされていて、それがヒットの要因にもなっただろう。

 その後、日本はRPG人気が世界に比べて高すぎるという指摘もあるけれどドラクエとFFがその大きな要因となっていることは疑いようがないし、ドラクエはモンスターを可愛らしくすることに成功した。

 仮に『ウィザードリィ』のようなデザインだった場合、モンスターズのような作品は作られただろうか?」

 

世界のゲームの流れを1つ変えたんだね

 

デザインというのが、どれほど大切なのかを証明したわかりやすい例だろう

 

主「より拡大解釈をすれば……これは完全にIFの話だけれど、ドラクエがなければモンスター=恐ろしいものという意識がさらに強くなったかもしれない。そうなると『ポケットモンスター』のような作品も生まれづらくなったかもしれない。

 日本の一種の萌え文化などとの融合は起こったかもしれないけれど、今ほど大きな物ではないかもしれない。

 その意味では、世界のゲームに対して与えた影響もとてつもなく大きい

 

 

漫画という特殊性のある媒体

 

次に漫画について語るけれど、漫画の特殊性ってどこにあると思う?

 

止まっている絵が、動いて見えるというところだろうな

 

カエル「単純に絵が上手い=漫画が上手い、というわけではないんだね」

 

主「もちろん映画上手いことは大切なんだけれど、でも絵が動いて見えるということが、特にアクション漫画で求められている部分だろう。そのためにコマ割りなどを工夫して、魅せることができる。

 わかりやすく『ドラゴンボール』から引用しよう」

 

画像

©バード・スタジオ/集英社

 

このシーンだけでもよくわかる

 

主「ここは適当に検索して持ってきた画像だけれど、それだけでも素晴らしさがわかる。右の1ページだけで奥から手前へと攻撃して、その後左のページではベジータを手前から奥へと攻撃する。

 この一連の流れだけでも、動かない漫画に動きを見出すことができる。

 また絵柄そのものもシンプルなのも大きいね

 

これだけでも、凄さがわかるんだね

 

もちろん、こういう漫画だけが素晴らしいというわけではない

 

主「一方で今はシンプルな漫画が減っている印象もあるから、そこは考えもの。

 『ドラえもん』とかはすごくシンプルだけれど、でも低年齢層の子どもが初めて読むならば、ああいう漫画が優れている。

 その点では『ドラゴンボール』シンプルでありながら、迫力を感じることができるという点においても、一定の年齢以上にも理解されやすい。

 かなり間口が広い漫画だと思う」

 

 

映像化が難しいほどのレベルの高さ

 

それでいうと、鳥山作品は映像化も多く果たされているけれど……

 

正直に言えば、本当の意味で鳥山明の漫画を映像化できたことはないんじゃないか?

 

カエル「勘違いしないで欲しいのは、決してアニメスタッフが無能だとか、レベルが低いという意味ではありません」

 

主「それだけ鳥山明という人の才能が素晴らしすぎた。

 『SAND LAND』は……記事を書いていなかったか。でもあの作品を観た時にやはり思ったのは、そのデザインなどの真似をしていても、動きなどの再現はアニメでも難しいということなのかなって。

 それは『SAND LAND』が、映像表現のレベルが低いというわけではない。むしろ、高いと思う。だけれど……その元となった漫画のレベルがその遥か上にあって、高いんだよ。

 その意味では……鳥山明の漫画を再現できた映像表現というのは、いまだに生まれていないんじゃいか? という思いすらあるほどだ」

 

SAND LAND (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

 

物語性が薄いという強み

 

絵の上手さが天才だったということだけれど、物語に関しては?

 

悪口みたいになってしまうけれど、そこまで練り込むタイプではなかった印象だ

 

カエル「鳥山明作品ってすごくシンプルな印象かなぁ……」

 

主「最初に手塚治虫を引き合いに出したけれど、手塚作品とは真逆な印象なんだよね。

 自分は鳥山明作品について語れることは少なくて……どうしても物語の作り方、テーマ、社会性などに着目してしまう。その意味では、鳥山作品というのは、いい意味で力が抜けていて、そういったテーマを持たないことを強みにしていた印象だ。

 だからこそ、さっきの映像化の話にもなるけれど、鳥山明の”物語”をトレースすると上手くいかない。

 それはあの画力を120%活かすための物語表現であって、同時に画力があるからこそあれだけシンプルで良かった

 

そして、その物語性が薄いということが、最大の強みとなる

 

カエル「さっきから言っている物語性の薄さというのは、貶しているわけではないよね?」

 

主「鳥山明の場合は全く貶しにならない。

 なぜ『ドラゴンボール』が世界的に受けいられているかといえば、そのシンプルなストーリーにあるのではないか。

 物語表現を凝るほどに、その前提となる条件が複雑化していく。例えば恋愛描写だって、恋愛観はその国文化に直結しているから、宗教、習慣などに左右される」

 

鳥山作品は無国籍であり、主張が少ないんだよ

 

主「鳥山明の物語は、そういうことを考えないで済むくらいシンプルだ。チチやブルマのような結婚相手はいるけれど、あれを恋愛描写とは言わないでしょう。多分、もっとも『ドラゴンボール』で恋愛描写をやっているのはビーデルだろうけれど……それでももっと濃い作品はいくらでもある。

 シンプルだからこそ世界的に受け入れられるハードルが低くて、わかりやすくて、世界中で愛される……その領域にあった作品なのではないかな

 

最後に

 

『ドラゴンボール』に憧れた人って、本当に世界中でたくさんいるよね

 

鳥山明が変えたものは、振り返れば相当多い

 

カエル「劇画ブームの時に登場して、あの絵柄で一斉を風靡したのはとても凄いことだよね」

 

主「色々な考え方はあるだろうけれど、1980年代〜90年代の漫画界において、鳥山明という存在は1つの象徴だったのではないだろうか。

 その意味では、鳥山以前と以後という括りになってもおかしくない。

 亡くなられたということは、歴史になったということだ。ここからさらに研究が進み、歴史的な位置付けも決定してくることだろうけれど……日本漫画界を語るときに欠かせないレジェンドであることは、今の時点で間違いない。

 鳥山明という才能がなければ、日本のエンタメの形は全く違うものになっていたかもね

 

 

長年、お疲れ様でした

改めて謹んでご冥福をお祈りします。