今回は日本でも高い人気を誇るシリーズの実写版『CITY HUNTER シティハンター 史上最香のミッション』の感想記事になります!
大変楽しみにしていた作品です!
カエルくん(以下カエル)
「確か、日本公開決定の話が2月とか3月くらいにはあったような印象なんだよね。その頃からずっと楽しみに待っていた作品でもあります!」
主
「みんな、あの『シティハンター』の実写版ということで注目している人も多いのだろうけれど、自分の場合はあのフィリップ・ラショーの監督・脚本(共同)・主演作品として非常に楽しみです!」
カエル「ちなみに、うちはシティハンターに関してはほぼ無知な状況です。
まあ、エンジェルハートの方は読んでいたから、基本的な設定は知っていますが、ファンであればあるほどエンジェルハートは無し! と言われるような作品もあるからね……」
主「そういえば2月に公開した『プライベートアイズ』も色々と思い出深いなぁ……結局、ネットで話題になった”批判した批評家”って誰のことだったんだろう?
言っていることは自分とほぼ同じだったけれど……まさかねぇ」
カエル「そんなこんなもありますが、贔屓の監督・主演ということでかなり甘めな評価になるかもしれません。
それもそれということで、1つご愛嬌でお願いします!
ということで、記事のスタートです!」
作品紹介・あらすじ
北条司が原作をつとめ、累計発行部数は5000万部を突破した国民的人気漫画『シティーハンター』がフランスで実写映画化した作品。
監督・主演・共同脚本は『世界の果てまでヒャッハー!』などのコメディ映画を得意とするフィリップ・ラショーが担当。今作では冴羽獠を魅力的に演じる。
日本語吹き替え版では山寺宏一、沢城みゆきが新たな冴羽獠と槇村香を演じる他、玄田哲章、一龍斎春水、田中秀幸などオリジナルキャストも勢揃い。神谷明、伊倉一恵の吹き替え参加も決定している。
最強のボディガードであり、最強のスイーパーとも言われるシティーハンター・リョウは相棒であり同居人のカオル様々な依頼を請け負っていた。今回受けた依頼は嗅いだ人を虜にしてしまう惚れ薬『キューピットの香水』の奪還という任務だった。その香水をつけた人の匂いを最初に嗅いだ人物はメロメロになってしまい、48時間以降は解毒剤を使っても永遠に効果を発揮してしまうという危険な代物の奪還に務めるのだが、そこに強力なライバルである海坊主が立ち塞がる……
『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』11/29(金)公開
感想
では、Twitterの短評はこちらです!
#シティーハンター
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2019年11月29日
笑いあり、アクションあり、お馬鹿あり、もっこりありの良作娯楽映画!
ラショーファンとして満足するシーンも多々あり、笑わせていただきました
シティハンターを全く知らなくても大丈夫な親切設計、人気漫画原作の実写版ながら文句のつかない作品として名前を残すでしょう! pic.twitter.com/xm4Vr4rLv4
最高の”おバカ”ムービーとして満足する良作娯楽作品です!
カエル「おそらく、漫画原作の実写映画……特に海外で制作された作品に対して否定的なコメントを発してしまう人は、それなりに多いと思うんだよ。それは僕もしょうがないと思っていて、原作のイメージもあるし、それを外国のスタッフが実写化するとただでさえ難しい作品がさらに変になってしまう部分もあると思うんだけれど……
でも、この作品は否定的な部分は一切なくて!
今後漫画原作映画の実写化として、輝かしい成功を収めた作品として名前が残るんじゃないかな!?」
主「先にも述べたけれど、自分はシティーハンターの原作もアニメも知らない人間で、一応エンジェルハートは読んでいるのね。その程度の知識だけれど、この映画はうなづくところが多かった。特にキャストの演技は熱演で、もう人種の違いとか一切気にならなくなったよね。
誰もがいうけれど、海坊主は本物の海坊主にしか見えなくて……日本人だとマフィア梶田しか演じられないと思っていたけれど、外国人だからこその迫力もあったね」
ちなみにさ、この手の作品って映画としては1つ落ちるって印象もどこかにあると思うんだけれど、それはどうだった?
本作が2019年ベストです! という人ばかりにはならないかなぁ、と思うけれど、娯楽としては一級品でしょう
主「これからラショーについて軽く触れていくけれど、ラショーの映画は映画としても、物語としても優れている部分が多い。
今作はリョウという人物のカッコよさや魅力を引き出しつつ、1つの物語としても楽しめるものになっていた。
いくら国民的シリーズだからと言っても『シティハンター』は、若い子は名前だけ知っている、という人も多いかもしれない。
だけれど、丁寧に基本設定は説明してくれるし、映画としての起承転結もしっかりとしており、初見にも通じるであろう魅力の多い作品となっている」
カエル「原作に最大限の敬意を払いながらも、監督の作家性を活かし、単なるキャラクタームービーになっていない作品です!」
フィリップ・ラショー作品について
では、今作で中心的役割を果たしたフィリップ・ラショーについてご紹介します!
フランスで注目を集める若手コメディ映画監督だな
カエル「邦題『真夜中のパリでヒャッハー!』で共同監督デビューを果たし、この作品では共同で脚本・さらに主演も務めています。それがフランスで大ヒットして続編である『世界の果てまでヒャッハー!』が公開、そちらは3週連続興行収入1位を記録する大ヒットになりました。
それらの作品の実績が認められて、何かやりたい企画があればどうぞ! という話になり、大好きだったシティーハンター(フランスではNicky larsonの名前で親しまれている)の実写化を手掛けます」
主「上記の2作とは直接関係はないけれど、そのあとに作られた『アリバイ・ドット・コム』も含めて、基本的にはお色気&下ネタギャグが全開の監督なので、このスタッフ陣が発表された瞬間に”絶対面白いものになる!”とガッツポーズをしたのを思い出すよ」
カエル「また、大の日本びいきとしても知られており、ラショーは映画監督か漫画家になりたい! という夢を持っていたほど。ちなみに『真夜中のパリでヒャッハー!』では日本の有名ゲームを題材にしたネタがあったりと、日本人でも……むしろ日本人の方が? 楽しめるであろう作品になっています」
さらに言えばラショーは映像も挑戦的な部分もあるし、またコメディを単なるギャグでゲラゲラさせておしまい、というタイプではない
主「言ってしまえば”お馬鹿”な映画を撮るんだけれど、笑いの中では痛烈な社会批判であったり、あるいは物語としての美しさも兼ね備えている。
本人も認めているようにカンヌ国際映画祭などで認められるような作品ではないけれど、でも娯楽として非常に重要な……むしろ、今日本で欠けているタイプの映画を撮れる監督と言えるかもしれないね」
魅力的な3バカトリオ
ラショー作品を観る際に覚えておいてほしいのが3バカトリオの存在だよね!
こちらのポスターを見たとき「右後ろの3人は誰だ?」と疑問を覚えた人も多いでしょうが、彼らはラショー作品を語る上でとても重要です
カエル「基本はラショーが主演を果たしていて、その珍道中についていく親友などの役回りが多いよね。
シティーハンターでは帽子を被った清掃員のパンチョを演じたグレク・ブダリ、そして物語のキーとなるお馬鹿なジルベールはジュリアン・アルッティという役者さんが演じています」
主「基本としてはこの3馬鹿トリオが一組となって、物語を作っていくというのが作風なわけだ。
なぜこのオリジナルキャラクターが登場したのか? と言うと、それがラショーの作風に欠かせない役者だからという理由もあるだろうし、また今作はヒャッハーシリーズの演出などが踏襲されている部分もある。フランスやヒャッハーシリーズが好きな人であれば『待ってました!』となる3人組だ。
まあ、なんだ。
例えるならば福田雄一作品で佐藤二朗とムロツヨシが高確率で出てくるのと一緒と言えるのかもね」
吹き替え声優について
今作は吹き替え版しか上映されていないという、ちょっとあまりない上映形態だよね。字幕だけならば小規模映画ではよくある話だけれど……
ここは字幕も見てみたい、という思いもあるかな
カエル「今作では神谷明・伊倉一恵のコンビに変わって山寺宏一・沢城みゆきのメンバーで物語は進行していきます」
主「ここがなぁ……もちろん、演技そのものに文句はない。当代随一の実力を持つ2人だし、知名度もあるし納得する面もある。
だけれど、何でもかんでも山ちゃんと沢城みゆきっていう風にも感じられてしまい……
もうちょっと選ぶ側にも芸がないものかな? と思う部分もある。ルパンもそうだし、今年は『アラジン』の吹き替えも……もちろん、もともと山ちゃんだったこともあるけれど、そこで沢城みゆきを持ってくるかぁ……という思いもあった。
声優ファンとしては実力がある人が活躍されるのが嬉しい反面、同じ人たちの重用は作品の色を壊しかねないと思うけれどね」
カエル「公平な選考の結果なのだろうけれどね」
主「演技そのものはやはり素晴らしかった!
というか、山ちゃんのコメディ演技って神谷明を下敷きにしている部分もあるんだろうな、って印象も抱いた。神谷明は『北斗の拳』のケンシロウなどのイケメン役なイメージもあるけれど、同時に毛利小五郎とか、それこそ上記の『アラジン』のオウムであるイアーゴなどの笑いどころもあるコメディ演技もされている幅の広い方だ。
その幅そのものを受け継ぎつつ、自分なりのリョウの姿を演じたのではないだろうか」
ただ、字幕も見てみたいって思いもあるんだね
今作は色々なアニメのオマージュも含まれているんだ
カエル「それが何かはここでは語らないけれど、インタビューではそれを示唆するセリフがコメディとしてたくさん散りばめていくそうです」
主「もちろん、自分はフランス語はわからないから結局は字幕を作る翻訳者さんに頼ることになるんだけれど……そちらのニュアンスで色々と見たかったかな。
あと、これはちょっと贅沢な話かもしれないけれど、日本語のセリフが若干違和感があった。
今作は確かにシティーハンターの実写版だから当然ではあるんだけれど、アニメ版に引っ張られている印象もあって、それがノイズになった部分もある。
どうせならば言語版で字幕で鑑賞して、まったく別の……シティーハンターを原案とした”ニッキー・ラーソンの物語”としても鑑賞してみたい、という思いもあるかな」
カエル「当然ながら吹き替えに関しては日本のテレビアニメ版のシティーハンターを参考にする部分が大きいだろうから、今作のバランスって難しかっただろうね……」
以下ネタバレあり
作品考察
ラショーらしさが爆発した映像演出!
では、ここからはネタバレありで語っていきましょう!
ここから先も自分は”ラショーの作品”としてこの映画を語っていきますよ
カエル「シティーハンター要素を感じたのは(ほぼ)最初のセリフが神谷明で始めたことだよね。
単なるコメディのためのキャラクターだけれど、ちゃんとオリジナルの主役に敬意を込めて、神谷ボイスからスタートさせるぞ! という気概を感じたかなぁ。あとは北斗の拳オマージュもあって、ラショーがやっていたセリフでの日本アニメオマージュも、ここでやられていたのかな? って。
山ちゃんとかがやると『シティーハンターで何をするんだ!』って反感を買うかもしれないけれど、神谷さんならファンもOK出すよね!」
主「今作は予算が出たのか、ラショーの過去作と比べても映像的にリッチになっている。それと同時に過去作での演出が多く用いられているんだ」
カエル「簡単にまとめると以下のようになります」
- 時系列改変による物語の進め方(過去編の導入)
- 一人称でのアクションシーン
- 家族に見られているとは思わない告白映像で衝撃の真実を知る登場人物
- 派手でありながらもコメディ調のカーチェイス
- 漫画を意識した演出
主「これらの要素は過去の作品にも見受けられており、それらを更にリッチにしている部分もある。特に一人称でのアクションはラショーも『オリジナルな部分で良いシーンを作れた』と語っており、それも納得のシーンとなっている」
カエル「また、他の今作はアクションシーンも面白かったよね!
そちらを目当てに行っても満足する作品になっているんじゃないかなぁ?」
主「ラショーらしいコメディも忘れず、ただのお荷物と思われたキャラクターにもその人物らしい見せ場を作り、きちんとカッコイイ印象を残すアクションを作ることができていた。
ハリウッドのインパクトの強い映画と比べると見劣りする、という意見もあるかもしれないけれど、これだけ物語を補強するアクションとしての工夫に関しても自分は高く評価したいかな」
物語面の描き方〜いくつもの視点〜
物語面ではどのような印象を抱いた?
いくつもの視点が感じられる作品であったかなぁ
主「まあさ、ぶっちゃけてしまえば、物語面ではおきまりの王道パターンなわけじゃない?
終盤に大きな展開があるけれど、観客のほぼ全員がその先の展開をわかっていたと思うんですよ」
カエル「あの展開のままで行ったら、それこそ原作破壊もいいところだよね……」
主「でも、その王道パターンて……例えばルパンとかでも何度も使われているわけ。
わかっているけれど、盛り上がる。
だからこそ王道だ。
それらをきっちりと描ききったことも高評価である。また、シティーハンター要素も多かったけれど、同時に社会批判の目もあったようにも感じられた」
日本だと『クレヨンしんちゃん』もそうだけれど、性的な描写は今の社会ではなかなか難しい部分があるよね。もしかしたらそれを疑問視する声が出てくるかも……
今作には”愛や性への視点”が面白く感じたんだよね
主「リョウが香水によって男に惚れてしまうシーンは香水の威力の強さと共に、どこかしらの切なさも感じさせた。そういう部分はコメディシーンであるのはわかりつつも、同性愛と異性愛を区別しない意図もあったのではないだろうか?」
カエル「”真実の愛”みたいな視点は特に強く感じられたし、あのオチは素晴らしく綺麗だったね」
主「欲をいえば、その視点が弱かった印象もある。ラショーは前作の『アリバイ・ドット・コム』もそうなんだけれど、その部分がヒャッハーシリーズで共同監督を務めたニコラ・ブラムがいなくなってからは弱くなってしまったという思いもある。
でも、ラショーは彼なりにその点を意識していることも感じられたし……この原作&物語だからこそのもっと突っ込んだことも見たかったけれど、そこまでやると原作とのバランスも崩れたりするから、難しい部分もあったのかなぁ。
でも、個人的には概ね満足です!」
まとめ
では、この記事のまとめです!
- おバカで笑えてセクシーでカッコイイ期待通りの娯楽作品!
- ラショーらしさとシティーハンターらしさの融合が見事!
- 声優陣の演技もいいものの、同じキャストの選考に違和感も…
- 愛の描き方などもう一歩踏み込んで欲しかったが見事にまとまった作品!
期待した通りのものが出てきたのではないでしょうか?
カエル「アニメ映画の『プライベートアイズ』では『生姜焼き定食を頼んだら生姜焼き定食が出てきた』みたいな文言が話題になったけれど、この作品もそうだったんじゃないかな?」
主「レベルの高い作品だと思う。
自分は200館くらいで公開するのかな? と思っていたから、100館規模はちょっと意外な面もあるけれど……でもこれでラショーが日本でもヒットしてくれたら嬉しいな。
日本人向けの作品を多く作っている監督でもあるしさ。大好きだから、次回作も大きな公開規模でやってほしい!
だからこそ、本作でさらに人気が出てほしいと痛切に願うね」