物語る亀

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物語愛好者の雑文

映画『ポッピンQ』感想 この映画を女児向けと見るか、大友向けと見るか難しいところだ……

カエルくん(以下カエル)

「今回は東映アニメーション60周年記念作品であり、このアニメ映画大豊作で名作続きの2016年最後のオリジナル劇場アニメーションとなる作品だね」

 

ブログ主(以下主)

「新作のアニメ映画に関してはこの作品で締めになるのかなぁ?

 今年もいろいろと面白い映画もたくさんあったね

 

カエル「この映画ってどの層に向けた作品になるのかな?」

主「劇場では8割男性だったけれどね。子供は数人だけ。

 でも本作鑑賞後の感想としては子供……特に女の子は好きな作品かもね。それこそ東映アニメっっぽい部分も多々あるし」

カエル「子供向け魔法少女みたいなものがあるからねぇ」

主「この手の映画は結構……オタク層には『子供っぽい』と敬遠されて、子供(親)には『オタクっぽい』ってことになって結局収入も少ないてことになりかねないからなぁ」

カエル「じゃあ、感想記事を始めるよ」

 

 

 


劇場アニメ『ポッピンQ』予告映像

  

1 ネタバレなしの感想

 

カエル「じゃあ、ネタバレなしの感想だけど……面白かったよね!

主「……え? 面白かった?

カエル「え? 面白かったよ?」

主「そうかなぁ……いうほどかな?」

 

カエル「どういうこと?」

主「たぶん、本作ってアニメ映画に何を求めるか、ということによって評価が変わりそうだなって思ったんだよね。とびきり悪い作品でもないけれど、大絶賛する映画でもない。

 ある面に注目すると賛だけど、もう片方の面に注目すると否というね。ある意味では『女児向けアニメ』であるから、別に悪いことではないけれど……その子供向けの部分が足を引っ張った感もあるかな?」

 

良かったポイント

 

カエル「じゃあ、良かったポイントというと、やっぱりキャラクターの可愛らしさが第一に上がるよね。

 今作って8割女性キャラクターで、男性もお父さんとかお爺ちゃんのような家族を除けば、ちっさい妖精のようなマスコット的立ち位置のポッピン族と、後1人くらいだもんね」

主「もちろん女の子たちの可愛さもさることながら、このマスコット的役割を果たす2頭身のポッピン族が愛らしいんだよな。彼らを見ているだけで小さな子供は喜ぶんじゃないかな?」

 

カエル「後はこの映画のテーマでもあるダンスは良かった!

 予告でも流れているけれど、基本的にCGでできているけれど『プリキュア』シリーズなどの EDでも流れている通り、そのクオリティも高いんだよね。だから可愛らしくて、見ているこちらの体も揺すぶるような出来だったし」

主「やっぱり注目するポイントとしてダンスというのは必ず上がるけれど、この部分は見事だったな。アニメにおける最大の強みは『絵』と『音』の融合というのが持論だけど、それを発揮した映画になったかもね」

 

 

悪かったポイント

 

カエル「じゃあ、逆に悪かったポイントってどこよ? 作画とか?」

主「いや、作画も良かったと思うよ? 特に大きく違和感のある部分もなかったし、それこそ脚本も明らかな大きな矛盾は感じなかったかな?

 たださぁ……これはもう子供向けアニメだからしょうがないって割りきるべきかもしれないけれど話の流れがあまり良くないと思うんだよね

 

カエル「流れ?」

主「これはネタバレありのパートで語る部分だけど……今作はその流れがあまり良くないから、お話にノッていきにくい部分もあるんだよなぁ……

 これは冒頭の『どの層に向けているのか?』ということがわからないところにあると思う。女児向けとしても中途半端、大人向けとしても中途半端な結果になっちゃったんじゃないかなって印象もある

 

カエル「う〜ん……まあ、それは少しあるかもしれないけれど……」

主「あとは、個人的な思いとしては音楽が少しあっていないような気がした。ただこれは趣味の問題かもしれないけれど、子供向けにしてはスタイリッシュだし、オタク向けにしては一般向けすぎる気が……

 ただ、そういういかにも『オタクが喜びそうな音楽』『子供が喜びそうな音楽』ではない音楽を選んだということなら、その気持ちはわかるけれどさ」

カエル「ここは個人の趣味だね」

 

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声優について

 

カエル「声優については?」

主「余計に分かりづらくなったのがここかもなぁ……オタク知識が邪魔になってしまった部分でもあるかもしれない。

 本作に出ている声優に不満はないよ? 基本的に若手が抜擢されているけれど、主役の瀬戸麻沙美は『ちはやふる』の千早役でもあるけれど、現代の活発系女子を演じさせたら、これほど合う声もあまりないと思う。その意味では声優界の広瀬すずじゃないかな?

 他にも井澤詩織とか、種崎敦美、小澤亜李、黒沢ともよも人気がある若手声優だし、ポッピン族も石原夏織やMAOとかいるし……と考えるとアイドル声優大活躍映画として、ケチのつけようがない

 

カエル「ベテランとしての新井里美もいるしねぇ……石塚運昇などもガッツリと絡んでくるし」

主「この作品は『アニメ的なアニメの演技』なんだよね。君の名は。とかこの世界の片隅に、は役者が演じていることもあって演技の方向性もリアル寄りだったけれど、これはもうアニメ的な演技でさ……

 その煽りを食らったのが島崎和歌子とモブのゲスト声優だと思うけれど、それは仕方ない。あの演技の中で違和感のないように演じろっていうのはスキルが必要だから」

 

カエル「それで何が不満なの?」

主「不満というか……この声優陣を見て、ますます『オタク向け』なのか『女児向け』なのかわからなくなったんだよね。

 なんか今話題の人気声優陣を集めたように見えて……まあ、この辺りは個人の感覚だけど」

カエル「う〜ん……下手に知識があると難しい部分かもねぇ」

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

2 小さく積み重なる不満

 

カエル「じゃあここから語っていくけれど……どういうところが不満なの?」

主「大きな『これはどうしようもない!』という不満があるわけではないんだよね。たださ、少しずつ不満が重なっていった結果『どうにものれないなぁ』ってなっちゃう。

 その大きな理由の1つが設定でさ」

カエル「東映アニメらしく、魔法少女みたいな設定もあるよね。それでいながらプリキュアのように肉弾戦もあるという、それぞれの個性につながっていった部分でさ」

 

主「魔法少女を主人公にすることの難しさでもあるけれど、そこに制限がなくなるんだよね。なんでも魔法を使えば解決しちゃうでしょ?

 だから多くの魔法少女ものは『人間に魔法をかけちゃいけません』とか『人に見られてはいけません』とか、他にも『変身能力のみ』と限定することによって魔法の万能性をある程度封じ込めているわけだ。

 ある意味ではドラえもんもそうで……だからドラえもんの映画って毎回のようにドラえもんが出なくなるか、ポケットを失くすわけだ。便利すぎるから。

 本作もそれはそうで、魔法の代わりになる『ダンス』は最初は下手だから踊れないなどの制限があるんだけど……」

 

カエル「でも、この映画は魔法で全て解決ってわけではないよね?」

主「だからこそかもしれないけれど……そのピンチの乗り越え方とか、お話の進め方が結構ご都合主義でさ。特に魔法も何も関係なく、なぜそうなったのかがわからないままに話が進められちゃう。

 例えばスタートのあの世界に入ってしまった理由もそうだし、なぜあの5人だったのか、それから眠くなるから着替えなければいけない設定の理由とか……そういうことに特に理由がないんだよね。

『そういう現象が起きたから、こうなりました』の連続なわけだ」

 

カエル「まあ、ご都合的に見えた部分はあるかも?」

主「それがラストバトルまで続くわけじゃない? 

 急に敵が落とした魔法の道具が暴走して、それによって敵は致命的なダメージを負うわけだけど……そこも含めてご都合に見えちゃった。しかもそれが『魔法』とかのロジックもないからさ、単なる偶然にしか見えないんだよね」

 

 

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 わかりやすいがゆえに……

 

主「それは会話でもそうなんだよ。

 例えば今がどんな状況なのか、どんな気持ちを抱いているのか、なぜそうなったのか、どうしたいのか……その全てを台詞で説明してしまっている

カエル「あー……台詞での説明ってあまり好きじゃないもんね」

 

主「これは女児向けアニメだから仕方ない、っていうかもしれないけれど、やっぱり減点ポイントじゃない?

 だからすごくわかりやすいはわかりやすい。なんでそういう行動をとったのか、過去の何があったのか、そのキャラクターの真意は……とかって考えるまでもなく全部説明してくれる。

 序盤であるキャラクターが『今は寂しくても将来は!』とか言っちゃった時、マジか……って思ったよ。そういうのは演出とか、寂しさって会話の端々とか態度で表現するべき部分だと思うんだよね。

 そういうところが重なっていくと、ノれなくなっちゃう」

 

 

 

 

3 キャラクターについて

 

カエル「でもさ、キャラクターは抜群に可愛いじゃない?」

主「ここも不満がないわけではないんだよね」

カエル「えー? 個性もあって、可愛らしいのに?」

 

主「ここが意見が分かれるポイントだと思うけれど、確かに可愛らしくて、キャラクターもいいんだよ。それぞれの個性もある程度あるし、沙紀とかは如何にもオタク受けしそうだなぁって思いながら見ていたし。

 方言があるというのも可愛らしいし、キャラクター性を増していて良かった。

 それから熱血系の主人公と、クール系で頭脳派の組み合わせも王道だけど面白かった。武闘派だったり、音で勝負という個性もある程度発揮できていたと思うけれど……やっぱりさ、尺不足は否めないよなぁ

 

カエル「まあ、5人全員が活躍したか、キャラクターとして目立っていたかというと、そこは意見が割れるかもね」

主「全員女の子だから個性をつけるのが少し難しい面があったと思うけれど、武闘派などの個性はあったにしろ、やっぱり小夏とあさひの差別化が明確ではなかった印象がある。アクションがあるからあさひはまだ良かったけれど……

 それからもっとまずいのはポッピン族でさ、長老とポコンとレミィ以外は、そこまで活躍もしなかったし

 

カエル「でもそれを全部入れていたらこの尺に収まらないんじゃないの?」

主「だから、そこが問題だよね。

 結局のところ説明が多い台詞まわしも、キャラクター性の薄さも、尺と内容の不釣り合いなところにあると思う。たださ、なぜこのような作品になったのか、ということもわからないではないから、悩ましいところでもあるけれど」

 

 

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EDの後も必見!

 

カエル「結局はここの話になるわけだよね」

主「明らかに本作をEP0として、その後をテレビアニメ化なりにする気満々だからなぁ……

 それだったらわかるんだよ。この5人の掘り下げもできるだろうし、1話につき1人をピックアップすれば、ポッピン族との交流やキャラクターの深堀もできる。

 あのラスト見る限りにおいて現実世界に来るとポッピン族は人間形態になれるみたいだし、そうなると差別化もより容易になるし……って考えるとさ、この判断もあながち間違いではない」

 

カエル「う〜ん……難しい部分かもねぇ」

主「その意味では1本の映画として判断してはいけないのかもね。ここから始まるスタートだし……

 しかもこの後は高校生でしょ? プリキュアとかは中学生だったり、東映アニメに限らず魔法少女ものって小中学生が多いけれど、今作は高校生に進学するとなると、もしかしたら女児向けアニメっていうのがミスリードだった気がする」

カエル「色々と考えさせられる映画だねぇ……」

 

 

 

 

最後に

 

カエル「東映アニメだし、60周年記念作品というのに縛られすぎた気もするね」

主「魔法少女ものと言っていいのかも微妙なところだし……その意味では挑戦的といえるかもね。

 この手の作品では最近でいうと『SHOW BY ROCK!!』がサンリオ主導で女児向けぽくもありながら、オタク層も盛り込み、さらに音楽ゲームとしてスマホでも人気という先駆者がいる。

 この作品もスマホゲームを出すだろうし、とりあえず人気になれば収益もあげられるだろうし、っていう計算もあってのことじゃないかな?」

 

カエル「それが主の語る『ターゲット層のあやふやさ』につながったのかな?」

主「プリキュアとかは明らかに女児向けで、サブとして大きなお友達を獲得できるように作っているけれど、本作は大きなお友達がメインで、サブが女児向けってことなのかもしれないな。

 それが違和感として働いたのかも。

 ただ、この作品がこれから先、どのように成長していくか、というのはすごく楽しみでもある。アニメが起こすビジネスという意味でも中々面白そうだし、儲からないとされるアニメ業界が起こす新たな形になるかもしれないしさ」

カエル「……作品とは別の部分で注目するんだね」

 

 

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