今回は『ジュラシック・ワールド 新たなる支配者』の感想記事になります!
早くも賛否が入り乱れてますねぇ
カエルくん(以下カエル)
TLや映画付きの中では、結構否定的な意見が目立ちます
主
そういつ時こそ、うちは擁護を言いたくなる天邪鬼体質なもので……
カエル「とは言っても、いいものは良い、悪いものは悪い、とはっきり言い切りますので、とりあえずはフラットな気持ちで接しましょうか」
主「自分はジュラシックシリーズは全部見ていて、人並みに好きだけれど、そこまで過度なファンではない、ということは最初に話しておきます。
それでは、記事のスタートです!」
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感想
それでは、Twitterの短評です!
#ジュラシック・ワールド新たなる支配者
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2022年7月29日
バイオテクノロジーの進化により人間の飽くなき真理の探究とそのリスクに迫った、まさにジュラシックワールドらしい物語だと感じました
特に序盤は丁寧すぎるくらい丁寧に作りながらも後半は少しバラついたものの全体的にはうまくまとまっていると思います pic.twitter.com/gw3TIMPIc7
しかしTL上では、あまりにも評判が悪くて「そこまで言うほどかなぁ?」と思ってしまうほど
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2022年7月29日
全体的にジュラシックシリーズが描いてきたテーマもありつつ色々とな要素をバランスよくまとめた印象ですけれどね
確かに1→2→3の順に好きですけれど、悪いとは思いません
これってあんまりジュラシックシリーズで生命倫理とかの話が求められてないってことなんですかねぇ
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2022年7月29日
自分はむしろそこが見たかったので、アクションシーンすらいらないと思ってしまいましたが
うまくまとめられていた作品だと思うけれどねぇ
カエル「それこそジュラシックシリーズに何を望むのか? というのが、大きいのかもしれないね。
恐竜が大暴れ! を望むのか、それとも人間との共存を望むのか、はたまた役者のアクションを望むのか、単にVFXなどの特殊映像技術や音楽の良さを望むのかによって、印象が変わるのかも……」
主「自分としては、ジュラシックワールドシリーズが描いてきたことが、バランス良くまとめられていた印象なんだよね」
●『人間が太古の生命を再生させる』という生命倫理
●恐竜のかっこよさや怖さに満ちた演出
●役者のかっこよさ
こういった魅力をきちんと内包し、1つの作品としてまとめられていた印象なんだよ
カエル「実は意外とうちのTLでは評判が悪いんだけれど、そこまでいうほどではないんじゃないか? という思いがあるんだよね……」
主「確かに、このシリーズで順位をつけるならば、自分も1→2→3の順に好きだと言えるかもしれない。
自分はジュラシックワールド1が大好きで、あのオリジナルを見た時の興奮を思い出したし、何よりもラストの大恐竜バトルに胸が熱くなった」
今回も同じコリン・トレボロウ監督ということもあり、1作目などのジュラシック・パークのオマージュや同時代の名作たちのオマージュに満ちていながらも、きちんと核を外さない作品になったと感じている
主「強いて言えば……もっと個性=バランスを崩した作品でも面白かったと思うけれど、娯楽大作としてはかなりバランス良くなっている。
あとは最初に立てた問いに対して、最後のメッセージ性が若干弱くなってしまっているけれど、それも問題が壮大だから仕方ないかなぁ……と思うけれどね」
以下ネタバレあり
今作品が投げかけたテーマについて
じゃあ、今作のテーマってなんだったの?
いくつものテーマが複合的に語られていたけれど、その中で特徴的なのはこれらだね
●遺伝子操作(科学)による進歩と滅びの可能性
●人間は神になるのだろうか?
本作は、実は多層的に語られている作品でもあるんだ
カエル「一部では『テーマがない』という話もちらほら聞くけれど……」
主「いや、無茶苦茶テーマが強いと思うよ?
ジュラシックシリーズが立てた基本的なテーマというのが『科学の進歩による生命の創生などは倫理に合うのかどうか?』という問題だ。
初代の『ジュラシック・パーク』の時代である93年というのはクローン技術による生命登場という論理感の揺れる問題があった。だからその時代というのは、例えば日本では『劇場版 ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』のように、クローンと生命倫理を扱った作品というのは増えていった印象だ」
初代から時代に即したテーマだったんだね
それが今はさらに進歩している部分もある
主「今作ではバイオシンという巨大なテクノロジー企業が悪役として登場している。
もちろん、遺伝子操作で世界中をイナゴ大繁殖というのは、問題行動ではあったけれど……でも似たような行為、つまり遺伝子操作というのは、今や当たり前に行われている。
例えばわかりやすいところでは遺伝子組み換え作物だよね。
大豆やトウモロコシなどは、すでに遺伝子操作によって病気に強かったり、色々なメリットがあるように遺伝子操作がなされている。日本においては色々な意見が出てくる問題ではあるけれど、アメリカでは一般的なんだよ」
カエル「作中で『バイオシンの農作物だけ被害に遭っていない』というセリフがあったけれど……」
主「それで株価操作だぜ! というような悪巧み描写をされていたけれど、でもそれは決して絶対悪ではない。というよりも、自分の感覚ではバイオシンは色々と事故を起こしてしまっているけれど、絶対悪の企業だとは思わなかった。
もちろん、イナゴの問題というのは副次的に発生してしまっているけれど……遺伝子操作技術などは、当たり前に行われていることでもあるわけだ」
すでに始まっている遺伝子治療
作中では『恐竜の遺伝子が人類を救う!』みたいなことも言われていたよね
恐竜という部分はフィクションだとしても、そのような最先端技術はすでに使われている
カエル「そのような、遺伝子とかDNAが関連する治療技術があるの?」
主「それこそ流行している病気のワクチンがそうじゃない?
以下の記事では既存のワクチンとは異なり『遺伝情報の一部を打ち込むことで、ワクチンとなるウイルスのタンパク質の一部が作られ、それに対する抗体などができることで、ウイルスに対する免疫ができる』と書かれている。
これも遺伝子を用いた治療による、ワクチンの効果と言えるだろう」
ワクチンも確かに考えてみれば、RNAの遺伝子を用いた予防法だね
それに遺伝性疾患に対する治療だって、すでに始まっているわけだ
カエル「これを考えると、全くの妄想というわけではないんだね」
全くの妄想ではないフィクション
そう考えると、実は社会的な問題を説いている作品という解釈もできるわけだ
むしろ、今回の話である遺伝子の話をするのであれば、以下のように組み替えることもできる
●メイジー → ワクチン
主「上記の図式にすることで、よりわかりやすい構図になる。
こうなると、本当に近年、世界中を騒がせている感染症の映画になるよね。
ウイルスがどこかの研究所から漏れた! というのは陰謀論としても、新しく生まれたものがあっという間に世界中に散らばってしまい、何万人、何百万人に感染し、時には命を奪ってしまう。
それでもウイルスを0にするのは大変なように、恐竜を0にすることはできない。それは物理的な問題もあるし、希少な生命に対する倫理観もある。
時には命を奪われ、インフラが破壊されるような大きな出来事になったとしても、一度発生してしまった生命や騒動とは、ずっと付き合っていかなければいけない……それを描いた作品だ」
カエル「……そう考えると、本当にそのままバイオハザードみたいな話になってもおかしくないというか」
主「実際、生命倫理と遺伝子操作の話だからね。
恐竜なのかゾンビなのかの違いだけと言われたら、そうかもしれない。基本としては、パニックホラーの構図は変わらないからね」
新たなる支配者とは〜人間は神になれるのか?〜
そうなってくると、色々と宗教的・倫理的な問題も大きそうだよね
だからこの映画では、しきりに何度も宗教的な問題を描いている
主「象徴的なのはメイジーの母、シャーロットの描写だ。
シャーロットは父親の存在なしに妊娠している、いわば処女懐胎である。
つまり、聖母マリアなんだよ」
処女懐胎かぁ……ちょっとSWのEP1のアナキン・スカイウォーカーの誕生を思い出したかな
まあ、アメリカのようなキリスト教社会ではなかなかセンシティブな話題だよね
主「つまりメイジーというのは、処女、あるいは男性なしで生まれてきた、いわばキリストだったわけだ。
現代のフィクションではキリストが女の子というのが、まさに現代的ともいえる。ポリコレということもできるけれど、この試みがかなり面白いと個人的には感じるかな。
科学の力によって、人間は神にも等しい技術を手に入れることができたわけだ」
カエル「そうなるとイナゴというのは、作中でも説明があったエジプト記なわけだね」
主「そうだね。
モーセのエジプトでの出来事を記したエジプト記の中で、以下のような記述がある」
12 主はモーセに言われた、「あなたの手をエジプトの地の上にさし伸べて、エジプトの地にいなごをのぼらせ、地のすべての青物、すなわち、雹が打ち残したものを、ことごとく食べさせなさい」。
13 そこでモーセはエジプトの地の上に、つえをさし伸べたので、主は終日、終夜、東風を地に吹かせられた。朝となって、東風は、いなごを運んできた。
14 いなごはエジプト全国にのぞみ、エジプトの全領土にとどまり、その数がはなはだ多く、このようないなごは前にもなく、また後にもないであろう。
15 いなごは地の全面をおおったので、地は暗くなった。そして地のすべての青物と、雹の打ち残した木の実を、ことごとく食べたので、エジプト全国にわたって、木にも畑の青物にも、緑の物とては何も残らなかった。
16 そこで、パロは、急いでモーセとアロンを召して言った、「わたしは、あなたがたの神、主に対し、また、あなたがたに対して罪を犯しました。
17 それで、どうか、もう一度だけ、わたしの罪をゆるしてください。そしてあなたがたの神、主に祈願して、ただ、この死をわたしから離れさせてください」。
18 そこで彼はパロのところから出て、主に祈願したので、
19 主は、はなはだ強い西風に変らせ、いなごを吹き上げて、これを紅海に追いやられたので、エジプト全土には一つのいなごも残らなかった。
つまり、イナゴはイナゴでなければいけなかった理由が、まさにここにある
カエル「エジプト記からの引用だからこそ、イナゴをあれだけ巨大化させて、恐怖の出来事を起こしたんだね」
主「そうだね。
つまり、人間は神と同じ所業を起こせるまでに科学を進歩させてしまったことを、処女懐胎とイナゴで表現している。
そしてその科学は2つの道……つまりイナゴなどによる凶作や滅びの道と、人類や地球の永続という道の2つが示されているわけだ。
このように様々な切り口から科学と倫理、あるいは科学と宗教という異なるアプローチを行うことで、今作のテーマは描かれていたわけだ」
となると新たなる支配者というのは……
人間VS恐竜、という対立軸ではないと感じるんだよね
主「おそらく、本作に対する新たなる支配者の対立軸というのは……旧支配者が神であり、新たなる支配者が人間なのだろう。
つまり神VS人間の話でもあり、人間が支配者になるには荷が重いけれど、でも科学の進歩は続けていかなければいけないという話だと思うね」
今作が描いたテーマの帰結
それじゃあさ、それだけ広げた風呂敷とか、テーマというものが、今作では回収されているの?
ある程度は、というレベルに収まるかな
カエル「完璧だ! というものではないんだ」
主「だって、こんな壮大なテーマに明確な答えなんかないよ。
一応ヘイリー・ウー博士が最後にイナゴを研究して、解き放つことで物語は終わっている。これは科学の暴走に対する、科学的なアプローチによる贖罪ととることも可能だよね。
またずっと強者や上司によって流されてしまったウー博士が、ようやく自分の良心に従って行動することができた。その結果主要な科学者が全員同じ方向性を向くことで、生まれた結論であり結果ということもできる。
徹底的に科学者に寄り添った映画ということも可能だ。
すでに発生してしまった生命に関しては人間と共存しながらも、新たな脅威は拭い去るようにする。
むしろ、科学というのはそうやって進歩してきたんだ」
カエル「ある意味では公害などの科学産業による問題に対しても、人類は少しずつだけれど進歩していると」
つまり、この映画の描いた帰結というのはSDGsであり、持続可能な開発目標であり、発展とともに人類と地球を永続させていくための取り組みをしましょうという、何でもない結論なんです
カエル「……それって、実際、物語の帰結としてはどうなの?」
主「劇的なことはないかもしれないね。
でも、科学技術の発展というのは、劇的なことは起こらないんだよ。
むしろ、自分はそれが誠実だと思うし、正解だと感じる。
フィクションとはいえ、劇的なこと解決策を模索するからこそ、恐竜を生み出したり、イナゴのような問題を発生させてしまうわけでさ。
少しずつかもしれないけれど、その歩みを止めないようにしないといけないかな、という思いはあるかな」
最後に
というわけで、作品テーマに関する部分が多い記事になったけれど、他に語っておくべきことはある?
自分はあいつが最後に大暴れしてくれただけで、満足みたいなところがあるからなぁ
カエル「結局は怪獣映画が好きなように、大きな恐竜が大怪獣バトルをしているだけでも良かったってタイプだね」
主「どうしても人間の脅威となると小さめの……2、3メートル級の恐竜が中心になるから、あれだけ大きい恐竜の大暴れが見れたのが良かった。
あとは炭鉱のシーンはすごく際立っていたし、恐怖感も強くてアトラクションとして面白かった。
何よりも、ラストの象とトリケラトプスが夕日で歩くシーンは……まんま『ライオンキングかよ!』とは思ったけれど、壮大な自然の強さを感じさせてくれて、すごくグッとするシーンだったね。
というわけで、ボクは求めたものが全部入りだったので、満足でしたよ」
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