今回は、みんなが注目する大ヒット映画のリメイク版である”ミュウツーの逆襲 エヴォリューション”の感想記事になります!
今回はどんな作品になっているか、非常に楽しみじゃの
カエルくん(以下カエル)
「特に2019年は5月に『名探偵ピカチュウ』が公開され、誰もが知るポケモンシリーズを代表する大傑作である本作をリメイクすることで、ポケモン熱が一気に高まってほしいね!」
亀爺(以下亀)
「少し疑問があるのは脚本では前作同様、首藤剛志さんのクレジットのみというところじゃな。
一応、構成には監督の名前が入っておるが……」
これはリメイク前の脚本を務めておるだけだけに当然ではあるが、すでに2010年に亡くなれている首藤剛志さんの脚本をそのままリメイクするのか、それとも手を加えているがノンクレジットなのかが気になるの……」
カエル「大きく変えると監督などがクレジットされるはずだから、全く同じなのかな?
そのあたりも含めて色々と注目していきたい作品だよね」
亀「今回はポケモンシリーズ初の3DCG化も話題となっておる。
手法の変更がどのような変化を生んだのかということも含めて、感想を語っていきたいの。
それでは、記事のスタートじゃ」
作品紹介・あらすじ
現代を代表する人気シリーズ『ポケットモンスター』の劇場版シリーズの初代にして、過去最高収益を記録している『ミュウツーの逆襲』を3DCGでリメイクした作品。邦画としては北米で歴代1位の興行収入を誇るなど、高い人気をほこる作品のリメイクとあって注目度が高い。
監督はポケモンシリーズの劇場版シリーズを多く手掛けてきた湯山邦彦と『ルドルフとイッパイアッテナ』などでもタッグを組んだ榊原幹典が務め、脚本はオリジナル版も手掛け、2010年に亡くなった首藤剛志がクレジットされている。
キャストには松本梨香、大谷育江、林原めぐみ、三木眞一郎、犬山イヌコなどのおなじみのキャストの他、オリジナル版にも登場した市村正親がミュウツー、山寺宏一がミュウを演じる他、主題歌を務めた小林幸子、おはスタにて人気を集めたレイモンドも再び起用されている。
全てのポケモンの始まりとされるミュウの遺伝子を元に作られたポケモン、ミュウツー。人間のエゴの元に生み出されたミュウツーは自らの存在理由もわからぬままに多くのコピーポケモンを率いて人間やオリジナルの存在への勝負を挑むことになる。
ポケモンマスターを目指すサトシとピカチュウたちの一行はミュウツーと激突する……
感想
それではTwitterの短評からのスタートです
#ミュウツーの逆襲
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2019年7月13日
確かにCGのクオリティなども中々頑張っておりリメイクとして意義はあったと思う
ただし思い出補正も込みで語ればオリジナル超えはないか
今作を初見の少年少女が楽しんだようであればこれに勝る意義はないだろう pic.twitter.com/zWxkZesjcU
これは、まあこうなるであろうな……評価は非常に難しい作品じゃの
カエル「基本的にはオリジナルに忠実な物語となっており、感動のポイントなども同じなんだけれど……でも、なんだろう、思い出補正もあるとは思うけれど、ちょっとそこまで感動しなかったというか……」
亀「評価が難しいの。
物語が同じだからこそ手描き作画とCGの違いがはっきりとわかる作品になってしまったとも言える。
しかし今作の存在そのものが”コピー”であり、ミュウツーと同じなのだからテーマ的にもおかしなものにはなっておらん」
カエル「オリジナルであるミュウVSコピーであるミュウツーの戦いが今作と同じことになっている、という評価だね」
亀「ただし、どうしても物語の軽さを感じてしまったのも事実。
なぜこの時期に3DCG化したのか? ということに対しての憶測に関しては以下の2記事を読んで欲しいが……どうしても『みんなの物語』でうまく世代交代をしただけに、再び今作で湯山監督を起用し、このような作品として生まれ変わったのが正しかったのかは意見が別れるじゃろうし、わしもなんとも言えん。それは今後の興行収入次第じゃな。
じゃが、子供達がこの映画を楽しんでくれたならば、それでいいのではないか? という思いも強いの」
CGのクオリティは高いものの、欠点も浮き彫りに
じゃあ、CGのクオリティが特別高いのか? と問われると……これも難しいところだよね
間違いなく映画館で見るべきクオリティであるが、比較対象がピクサーやディズニーになりがちじゃからの
カエル「そりゃディズニーと比べてしまったらどのアニメ映画も勝てるはずがないよね……
今作に関してはエフェクト、特に炎や水などが素晴らしく、そこだけでも見応えがあり、迫力がありました」
亀「ポケモンたちもしっかりと描かれておった。生まれたばかりのミュウツーの肌の……爬虫類のような質感や、毛のあるポケモンの毛並みなどはしっかりと再現されておった。
このクオリティのCGアニメが日本でも見られるというのはとてもいいことではあるのじゃが、その一方でどうしても違和感を抱いてしまうのが演出面や人間キャラクターじゃの」
カエル「人間キャラクターは非常に難しいために、今作ではゲーム版を基本としたデザインとなっていたけれど、それがちょっと違和感を抱く原因にもなったのかなぁ」
亀「今作は物語としてのメリハリをつけるためにギャグ描写を入れるなど非常に頑張っている部分もあるにはあるのじゃが、いかんせんそれがメリハリにはなりずらいように感じられた。
というのも……例えばタケシが女性をナンパするシーンなどは、アニメ版は誇張されたデフォルメなどがされて、目がハートになったりタケシの周囲がキラキラするような漫画的な表現がされておる。
しかしCGアニメにはそのような演出は見られず、硬い印象を抱いてしまった」
カエル「それがメリハリがあまりなくて、ちょっと退屈に感じた理由かもね」
亀「ただ音楽などでメリハリをつけようとしたり、またロケット団とラプラス船をこぐシーンなどでは純粋に楽しいと思ったので、工夫は感じた。
じゃが……それで終わってしまった印象じゃな。
わしはオリジナルの方が好きであるが……これも思い出補正込みのために、なんとも言えない部分かもしれんの」
声優について
今更語る必要もないかもしれませんが、キャストについて語りましょう
おなじみのキャラクターたちの演技も良かったものの、どこか硬い印象を抱いたの
カエル「今作では松本梨香や大谷育江はもちろんのこと、ミュウツーの市川正親やミュウの山寺宏一も再び起用されています」
亀「わしが一番グッときたのはナレーションに、亡くなられた石塚運昇さんを起用していたことかの。
明らかに過去の作品から音源を引っ張ってきており、若干音質に難がある印象も抱いたが、それでもポケモンのナレーション=石塚運昇さんじゃからの、それだけで感動するものがある」
カエル「あとは声優陣ではちょっとだけオリジナルと違うところがあって、ミュウツーの館に招待されるポケモントレーナーに神谷浩史、佐倉綾音などの今の時代を代表する人気声優が起用されていることも特徴かな。
それに小林幸子は明らかき一人だけ演歌歌手だとわかる異質な発声ではあるんだけれど、でもそれも独特の味につながっていて良かったよね」
亀「市村正親は他の声優陣とは明らかに発声から異なっており、それがミュウツーの異質さを表現しておった。
山寺宏一がミュウを自然な……他のポケモンと同じように演じたのに対し、その真逆とも言える演技を披露することで、より異質さが際立つの。今作でもそれは一緒であり、市村節を感じることができた」
カエル「レイモンドの登場でちょっと懐かしくなる人もいるんじゃないかな? 考えすぎかもしれないけれど、セリフもイマクニ? を連想させたしオールドファンを狙い撃ちだね」
亀「少し話が逸れるようであるが、ある世代にとってはレイモンドというのはとても重要な人物である。
何故ならば、子供時代では知らない、あるいは知っていても知識として処理してしまう黒人という存在にレイモンドという固有名詞がついて、初めて黒人を認識した人も多いと思うからの。
実質『おはスタ』のみでの活躍じゃからあまり語れることはないと思うが、ある世代の人には今でも大きな影響を持っている人じゃな」
カエル「それを考えると子供向けアニメ映画も、大人になっても色々な影響を与える可能性があるだけに、その表現やテーマにしっかりと向き合わないといけなくなってくるね」
ミュウツーの逆襲の魅力とは?
① 特殊な事情のもと誕生した作品
でもさ、なんでミュウツーの逆襲ってここまで人気なんだろうね?
子供向けアニメ映画の常識を覆した作品の1つだからではないじゃろうか?
カエル「うちではアニメ映画の常識を覆した人……つまり、アニメ映画=子供向けの作品という概念を覆し、アニメも映画になると証明した人は押井守だという評価だけれど、もしかしたら”子供向けキャラクターアニメが映画になる”と証明したのがこのポケモンシリーズだったのかもね」
亀「やはり、ゲームからアニメとなり、順調に劇場版となった時に第1作だから色々と挑戦できたのも大きいかもしれん。
あとは……ポケモンシリーズ最大の問題が、もしかしたらいい方向性に動いたのかもしれないの」
カエル「アニメ版のポケモンを語る際に欠かせない、また日本アニメ史において大事件となった”ポケモンショック”だね。当時ポリゴンが登場する回を見ていた子供達が体調不良を訴えて、病院に向かったという大きな事故で……当時もセンセーショナルに報道され、一部ではポケモンというゲームそのものに対するバッシングにも繋がったという、ポケモンシリーズを揺るがす大きな出来事だったね」
亀「首藤剛志さんの書かれた回想録を読むと、本来この作品は”逆襲”とつくとおりテレビ版でミュウツーを出してからの映画化という予定だったようじゃ。
しかしポケモンショックによってテレビ版は放送中止で劇場版も大きな危機を迎える。
もちろん制作自体を止めることはなかったが、本来口を出すはずのプロデューサーなどもそれどころではなく、首藤さんの脚本が企画を通りやすい状況だったようじゃな」
カエル「このあたりの事情は以下のリンクで詳しく読めますので、興味がある方はぜひお読みください」
② 自己の存在理由の探求というテーマ
あとは、やっぱりこのテーマが素晴らしいよね!
カエル「子供向けのアニメ映画で自己の存在理由の探求をテーマにするって、なかなかない挑戦だったし……」
亀「このあたりは『トイ・ストーリー4』でも書いたが、前年に公開されたトイ・ストーリーの1と実は根底のテーマは同じなんじゃよ。
トイストーリーは”オモチャである自分の存在理由の探求”がテーマである。一方で今作ではコピーであり、作られた存在である自分に存在理由があるのだろうか? と問いかけるものであった。
これは幼児向けアニメの定番である『アンパンマン』とも繋がるテーマであり、自分というものを発見した子供に強く刺さるテーマなのかもしれん」
カエル「もしかしたら、この手のテーマって子供の方が強く考えているのかもね。
大人になると『自分とは何者か?』なんて考えることはあまりないけれど、子供の頃ってよくわからないなりにも哲学的なテーマを考えていたりするじゃない?
初めて死や宇宙、自分と他者の違いなどに向き合う年頃だからこそ、大人よりもしっかりと考えているということがあるのかもしれないね」
亀「また首藤剛志さんはミュウツーに市川正親を起用したことが大きかったと明かしておる。
ミュージカルや舞台で大活躍する当時からのトップスターであるし、それらに思い悩み、自問自答する姿が強く印象に残る演技をされる方じゃからの。
アニメ映画ではあるが、アニメ声優以外が声優を務めた中でも最大の成功例と言えるのではないかの?」
③ ポケモンのテーマを否定する物語?
ポケモンのテーマを否定するというとちょっと過激なようだけれど、バトルそのものを否定する部分があるよね
首藤剛志さんはポケモンシリーズのあり方に苦悩していたのかもしれんの
カエル「後半の大感動ポイントでは劇場内からも『痛そう』という子供達の声も聞こえてきました。この声を聞けただけでも、今作がリメイクされた意義はあったのではないでしょうか?」
亀「『最強のポケモンを生み出す』というのはポケモントレーナーにとっては当然の夢であるが、その野望によって誕生したのがミュウツーである。その不遇な状況を思えば、必ずしもそれが良かったのか、考え込んでしまうところがあるの」
カエル「ロケット団のボスであるサカキの言うことは過激だけれど、強いポケモンを欲しているという点ではプレイヤーとあまり変わらないのかなぁ。
特に日本の場合はポケモンの公式大会などでも強豪プレイヤーは同じポケモンを使用していたり、個性が感じられにくいという批判も聞いたことがあるかな」
亀「本来はポケモン内の名台詞である『強いポケモン、弱いポケモン、そんなの人の勝手。本当に強いトレーナーなら 好きなポケモンで勝てるように頑張るべき』というセリフが全てであるようにわしなどは思ってしまう。
そういった”強いポケモンを作る、育てることに執着する行為そのもの”であったり、さらに”ポケモンバトルそのもの”を否定するような作品になっておる」
カエル「初めての劇場版作品なのに攻めた作品だよねぇ」
亀「そのある種の矛盾した状態が今作の魅力を生んでいるのじゃろうが」
以下ネタバレあり
作品考察
リメイクで変更されない脚本は有りか無しか
ここからはネタバレが有りですが………でもオリジナルとあまり変わらないので積極的なネタバレにはならないと思います
リメイクにあたり変更されない脚本がいいのか悪いのか、という視点は必要かも試練の
カエル「近年たくさんリメイク作品を生み出し、さらにうちでも否定的な意見も時にあげてしまうディズニーさんの過去のアニメ映画をリメイクする実写作品などを見ても、単なる同じ話をやるリメイクではなく、しっかりと現代の時代性を取り入れた描写を入れているんだよね。
でも、それがあることによって色々と変な意味になってしまったり、またこの見飽きたメッセージかよ! と言いたくなることもあるんだけれどさ……」
亀「今作はその意味ではほぼ忠実に物語が作られておる。
ただし本当に名作に忠実に作られた物語が面白いのか? というと、実はそうではない。
カットや構図すらもすっかりと真似をした映画などもあるのじゃが、そこまでやってもあまり面白くない場合もあるからの」
カエル「普遍的なテーマを扱っているのにも関わらず、時代性とかもあるのかなぁ?」
亀「そうかもしれんの。
今作が公開された1997年前後には遺伝子組み換え食品などを発端とした化学の脅威や、クローンの是非を巡る論争が多くされており、またオカルトではあるがノストラダムスの大予言などもあって不穏な雰囲気もあった。しかも日本はオウム真理教の事件などもあり、多くの人が迷っていた時代でもある。
その中で”自分の存在意義とは何か?”という問いは多くの人に刺さるものだったのかもしれん。
だが、今は時代性が違う。
今回のリメイクで時代性に合致しているとすれば……ラストシーンの嵐が収まるところで東日本大震災と絡ませることもできるが、それも論拠は弱くなってしまうじゃろうな」
カエル「時代にあった脚本ではないんだね…」
亀「もちろん構成を変えていることもあるじゃろうが、いまいちガツンと響かなかったのは脚本の時代性が問題かもしれんの」
3DCGで作られる意義があったのか?
最後に、今作を3DCGで作る意義はあったと思う?
う〜む……難しいが、ないとは思わないかの
亀「本来はゲームであるポケモンシリーズをより表現できるのは、同じくコンピュータグラフィクである、という思いは、わしにもどこかしらにあるんじゃよ。
また、近年どうしてもネタ切れを起こしていたポケモン映画シリーズを考えると、ここいらでテコ入れをしたいというのも伝わってきた」
カエル「その手段としてのCGであり、キャラクターデザインなどはアニメ版よりはゲーム版に近かったのかな」
亀「じゃがこの功績を大きくするのか、それともなかったことにするのかはこれからじゃろう。
それこそ日本以外での興行収入もあるが、来年のポケモン映画を手描き作画で行くのか、それともCGで表現するのか。
予告を見る限りでは手描きの可能性も高いが、それであれば今作でCGで描いた意味が薄くなる気がしてしまうの」
カエル「でも日本の場合は手描き作画の方が一般的だし、アメリカなどの比べると差が大きいよね?」
亀「CGのクオリティをあげるにはそれだけたくさん作って技術を積み、潤沢な予算を確保することが大事じゃからな。
そりゃ今はアメリカと大きな差がある。
これは永遠に埋まらないかもしれないくらいの差である。
しかし、そこで諦めたらそこでおしまいじゃ。
特に北米でヒットさせたいならばCGアニメ化というのは必要な手段になると思うし……この1作を無駄にしないようにしてほしいが、果たしてどうなるか……
今後の動きに注目じゃの」
まとめ
では、この記事のまとめです
- オリジナルに忠実なリメイク作品に!
- ただしCGの難しさなどを露呈した形にも思えた……
- 現代的なテーマの不足が痛いか
- 今作の意義があるかないのかは、これから次第!
今後のポケモンシリーズはどうなるのかの
カエル「それこそいつまでも湯山監督がやるわけにもいかないし、そのあたりも含めて注目していきましょう!」
亀「まずは来年どうなるかじゃなぁ」