それでは、Netflixオリジナル作品の感想です!
値上げしてもNetflixは解約できんの
カエルくん(以下カエル)
「まあ、他の動画配信サービスと比較しても割高というほどでもないのかなぁ」
亀爺(以下亀)
「それだけ独自コンテンツに自信があるということでもあるし、お金もかかっているということじゃろう。
本作も買い付けに33億円かかったという話も聞くしの」
カエル「いい作品を見るためには、これくらいの出費は我慢するしかないのかな」
亀「あとは、どこの配信サービスもそうじゃが古い映画をもっと配信してほしいの。どうしても00年代以降の作品ばかりのように見えてしまい、古い映画も見たい人間からすると悲しくなる。
せめて映画史に残る名作くらいは、是非とも残してほしいの」
カエル「もしもレンタル店が潰れたら、今後はソフトを買わないと見れなくなるかもね……
そうなると名画座も復活してきたり……あれ? それはそれはいいような……」
亀「そんなバカ話はここまでとして、記事を始めるとするかの」
感想
Twitterの短評からスタートです!
#ネクストロボ
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2018年9月8日
やっぱNetflix劇場欲しいなぁ〜テレビ画面でなく映画館ならさらに楽しめたであろう一作
人間とロボの物語という古典的なストーリーはご都合主義な面もありながらもしっかりと楽しませて泣かせる演出もある
何より映像クオリティが全くストレスない! これが中国とカナダ合作か… pic.twitter.com/e0jjs2x1fA
これは見応えのある作品じゃったの
カエル「短評にもあるけれど、なんでこれがNetflixで公開なのかがわからないくらいだよね。
もちろん、Netflixを映画館より下に見ているわけではないんだけれど、これほどのクオリティがあって、しかもアクションも派手なアニメ映画を、劇場で公開しないというのがちょっと信じられないくらいの作品で……」
亀「時代かもしれんが、これは是非とも劇場で見たかった作品じゃな。
そうなったら評価も少し変わったかもしれん。どうしても家の小さなテレビと音響では、臨場感などで限界があるからの」
カエル「それだけレベルがとても高い作品なんだよね。
特にアクションシーンなどはとてもクオリティが高くて、最初は『ああ、中国のアニメか……』と小馬鹿にしていた部分もあったとしても、気がつくと熱中して食い入るように観てしまうようなほど!」
亀「もしかしたら、劇場で観たら『インクレディブル・ファミリー』などと並ぶクオリティと絶賛したかもしれん。だからこそ、少しもったいないと最初に表明させてもらった。
決して手放しで絶賛できるわけでもなく、細かい粗などもないわけではないが、そんなことを吹き飛ばしてしまうほどの快感にあふれた作品じゃったな」
中国のアニメーション作品
カエル「近年、世界各国でいろいろなアニメ映画が登場していて、それが各国それぞれの実情を備えたような作品ばかりで、とても面白いことになっているという話だけれど……」
亀「どうしても日本にいると日本のアニメ映画や長期シリーズ作品や、ピクサーやユニバーサルなどのアメリカの作品が目につきやすいが、近年はデジタル化の恩恵もあってアニメーションを作るハードルがとても下がっておる。
いつも語るが、ブラジルの軍事政権による政治の混乱を背景とした『父をさがして』
台湾と中国、アメリカ、日本との歴史について言及した『幸福路上』
タリバン政権など女性蔑視の社会で暮らす中での女性しかいない家族の苦悩を描いた『生きのびるために』など、多くのアニメーション映画が生まれておる。
その中でも、本作は中国とカナダの合作であるが、このクオリティは驚いたの」
カエル「アニメーション業界にあまり興味がない人相手だったら『ピクサー/ディズニーの新作なんだよ』と言っても信じてしまいそうなレベルだよね……。
同じく、Netflix限定で公開した『赤き大魚の伝説』とは全く違う、CGの魅力のあふれたアニメーションで……」
亀「正直に言えば、わしはショックじゃったな。
CGアニメ映画の分野で言えば、すでに中国に抜かれたかもしれん、とも思った。まあ、中国単体ではどの程度かはわからんが……
少なくとも『赤き大魚の伝説』と2作セットで見ると、中国アニメーションのレベルの高さに驚愕するじゃろう。
日本に並ぶのも、10年もかからんじゃろうな」
カエル「今作はカナダとの合作ということもあるけれど、それだけのポテンシャルを感じさせてくれる作品なんだね……」
オマージュした作品たちも
今作は一部では『ベイマックスのパクリ』という意見もあるようだけれど……
あくまでもオマージュの範囲内じゃろうな
カエル「それから、赤き大魚の伝説もジブリっぽい雰囲気も感じたかなぁ」
亀「中国のアニメーションの方向性は未だに固まっておらず、日本の方向性と、アメリカの方向性をミックスしているからこそ、より強くそう感じるのじゃろうな。
もちろん、オリジナリティを出すというのはとても難しいことである。本作が既存の作品を強くイメージしていることはよくわかる。
しかし、それは技術の向上のための模倣であり、パクリというレベルは大きく超えているということは、言っておかねばならないの」
カエル「それでいうと、本作に関してはマクロスの影響は強く感じたよね。
あの独特のミサイルの動き、通称”板野サーカス”とか、それから敵のフォルムがそのまんま”SDF-1マクロス”をモチーフとしているのはよくわかるし!」
亀「わしはそこまでメカの違いがわからんので、なんとなくフォルムが似ているなどというレベルじゃが、インタビューなどを見る限りでは相当強く意識しているようじゃな。
それから、わしは本作は『ターミネーター』シリーズを連想した」
カエル「特に2だよね。最初は怖がっていた機械と子供が、大きな危機に立ち向かうという意味でも結構踏襲しているんじゃないかな?」
亀「もちろんロボットバトルとしても魅力があり、またバディアクションとして、他にも子供の成長物語という意味でも見所が多いにある作品じゃな」
以下ネタバレあり
作品考察
中国らしい”無茶苦茶”も感じられる作品
では、ここからはネタバレありになります!
アメリカや日本よりも、少しだけ過激な部分も垣間見えたの
カエル「結構、暴力シーンなどはダイレクトにあるんだよね。
ある登場人物が敵にやられてしまう場面もあるけれど、このキャラクターデザインを考えると、結構マイルドなお話なのかな? と思ったら、実はちょっとえげつない物語でもあって……」
亀「それでも、だいぶ子供向けに意識されてはいるが、中盤のバットを持って暴力的に立ち向かうシーンなどは、少しびっくりしたところもあるの」
カエル「もちろん、そんな行為はいけないことだという忠告も入るけれど、過激とも受け取れる暴力描写を躊躇なく描けることもまた、本作の魅力の1つかもしれないね」
亀「これだけ聴くと少し問題のある作品のようではあるが、決してそういった描写がメインの作品ではない。
序盤の主人公の行動などに思わず苦言を呈したくなる人もおるじゃろうが、キチンとそのような描写に対する諌めや、あるいはアニメ的な描写という説明で解決する場面でもあるからの。
むしろ、本作が描き出したテーマは、現代人に響くものだとわしは考えておる」
本作が提示したテーマとは?
カエル「そのテーマって?」
亀「簡単に言えば、以下の3つがそのテーマといえるじゃろう」
- 機械文明への警鐘
- 武器の否定と思い出の重要性
- 完璧な人間などいない
カエル「まずは1つ目の機械文明への警鐘だけれど、これは明らかにあるよね。
もっともターミネーターっぽい部分でもあって、今作で重要な立ち位置にいるピン博士などは、明らかにその見た目や描き方などからスティーブ・ジョブスをイメージしているよね……」
亀「特に今作のようなロボットが……というのはあまり現実感はわかんとしても、これがアイフォンなどのようなものであれば、誰でもその恐怖は抱くのではないじゃろうか?
アイフォンが何らかの理由により暴走し、そしていつの日か爆発する危険性があるとしたら?
バッテリーの故障などでなく、それが人為的なものであれば……ターミネーターなどのような、核攻撃などよりも最も身近にある恐怖といえるじゃろうな」
カエル「主人公のメイのお母さんもロボットが大好きで、ほとんど依存症にも陥っているけれど、これも現代人らしいよね……ちょっとでも時間があればスマホに触ってしまう人って、すごく多いと思うし……」
亀「特にお母さんは過去に辛い体験をしてしまったからこそ、自分を裏切ることがない機械にはまり込んだのかもしれん。
明確にそんなシーンはないものの、ネットゲームやSNSに変換すれば、家族や子供よりもはまり込んでしまう姿というのは、決してアニメーションの絵空事と笑えるものではないの」
武器の否定
後半の展開には、かなりガツンときたなぁ
とても印象に残るアクションじゃったの
カエル「もちろん、アクションの迫力や爽快感もそうだけれど、そこに至るまでの7723の葛藤もさることながら、あの音楽の使い方がとても卑怯で……」
亀「興奮を煽るような派手な音楽ではなく、しんみりとした曲を流すことによって、この戦いの重みを非常によく表現しておったの。
こういった作品はよりアクションを見せるために派手な音楽にしてしまいがちじゃが、却ってしんみりさせることによって、派手なシーンなのに感動を巻き起こすことに成功しておる。
スイカに塩のようなものじゃな」
カエル「その例えであっているのかなぁ?
でもさ、この展開があるからこそ、前半や中盤に行われるドタバタのアクションも全部許せるわけで……あれだけど派手に色々とやらかしているのに、最後には7723のことを応援したくなるもんね」
亀「特にロボットと人間の絆というと、鉄腕アトムからドラえもんなどを通して日本人に強く埋め込まれている価値観じゃ。
これらの作品のことを思い返すと、本作の7723の決断というのは、とても重いものであるというのがわかるのではないかの?」
本作のマスコットキャラクターのモモもまた、面白いやつです!
完璧な世界とは?
本作で重要なのは『完璧は幸せの敵である』という言葉だよね
完璧を追求することは大事かもしれんが、それに固執してはいかんということじゃな
カエル「もちろん、それを追求するあまりに極端な人間になってしまい、結果的に排他的な姿勢につながってしまうという啓蒙もあるんだろうね」
亀「それと同時に……うがった見方であるが、これは中国が重要な意味を持つと考えると、ある種の政権批判のようにも受け取れなくはない」
カエル「……え?」
亀「今の中国政府がどこまでやる気かはわからんが、一応中国というのは共産主義社会である。まあ、実態はともかくとして、の。
この中で描かれておる完璧な人間や、完璧な社会を求めるのはある種の共産主義的とも受け取れるわけじゃな。
それを求め始め、極端なことになれば、それは虐殺などにつながってしまう。そんなことは、歴史上いくらでもあるわけじゃ。
だからこそ、現代は多様化する社会へと西側諸国は舵を切っているわけであり、それにはそれなりの問題もあるものの、その価値観が良いものとされておる。
今作は『不完全なものが良い』とする物語であると考えれば、ある種の政権批判とも受け取れなくもない」
カエル「う〜ん……考えすぎじゃないかな?」
亀「もちろん、これだけではないぞ。本作で重要なのは『思い出、記憶』である。例えば辛い記憶であろうとも、それを抱えて生きることがとても大事である、というのが本作の最大のテーマである。
記憶や記録を残す、不利なものを無視せずに正視する姿勢が大事というのは、どこかの政権批判のようにも消えてくるが……その政権をどこと捉えるかは、観客の自由じゃな」
カエル「なんかキナ臭い話になってきたなぁ……」
亀「ただ、1つの見方として大事なのは、かつて共産主義圏では優れたアニメーション作品が多く発表されていたが、その中には気がつかれないように政権批判を取り入れた作品も存在する。
その暗喩こそが作品をより魅力的なものにしているのは間違いないじゃろうな」
まとめ
では、この記事のまとめです!
- カナダと中国の合作であり、世界クラスの見事なクオリティ!
- 本作の多くのオマージュに心が震えながらも、ラストは見事なオリジナルな着地!
- よくよく考えてみると、色々と考えさせられる物語でもあるわけで……
最後の話は深読み妄想じゃな
カエル「今年、Netflixでの傑作が相次いでいるよね……2時間くらいで終わるアニメ映画ばっかり見ているからそこまで数は多くないけれど、ドラマやアニメの連続シリーズまで含めたらどれだけの傑作が生まれているのか……」
亀「この流れはもう止まらんの。
だからこそ、どこかの劇場を買い取るなり、提携するなりして劇場を作って欲しいというのは切なる願いじゃ。特に、今後さらに力を入れるとなると、古い人間の戯言かもしれんが、劇場の大迫力でみたい作品はいくらでも増えていくしの」
カエル「今後も世界のアニメから目が離せない! という作品でした!」